人間と動物は、
見えている世界が違う
「これまで、言葉は人間だけに与えられた特別な能力だという考え方が主流でした。従来の研究では、チンパンジーやボノボ、イルカなどに、実験室で手話を教え、理解できるかを確認し、成果があったら報酬の餌をあげる、というアプローチが多かった。それで結局、人間と意思疎通ができなかったら『やっぱり動物には言葉がない』と認識する。でも、僕に言わせればそれは当たり前。なぜなら、動物はそもそも僕らと見えている世界が違うからです」
鈴木さんの研究の独自性は、その動物のくらしや、日々捉えている世界の見え方そのものに着目した点です。
「シジュウカラは、人間みたいに両眼視ができない代わりに、目が横についているので視野がかなり広い。人間はRGBが見えるけれど、彼らは紫外線が見えてしまう。人間の世界では必要だけど、シジュウカラの世界では必要のない言葉があるから、人間中心で考えることがそもそも間違ってるんです」