自分の知らない
世界を知りたい
片岡さんの転機は、大学生の時にアメリカに留学したこと。20世紀の美術史を学びながら、ニューヨークで実際に有名な作品を見ることができたのは大きな経験だったそう。
「美術の先生になろうかな、なんて、なんとなく考えてましたが、それどころじゃないと思ったんです。世界がいかに広いかということを学び、とにかく、自分の知らない世界のことをもっと知りたい、と」
美術系の出版社、ギャラリーを経て、シンクタンクのニッセイ基礎研究所で東京オペラシティアートギャラリーの開館準備に携わりました。
「世界中のアートシーンで起きていることが、同時に東京でも起こるような場所にするべきだと思っていました。誰が企画の方向性を決めるのかという話になった時期に、推薦されている方々の名前を見て、僭越ながら、これでは目指している場所にはならないと思ったんです。それで『私にやらせてほしい』と言いました。当時私は30歳くらいで、美術館で働いたこともなかったので、今だったら考えられない人事です」
99年、オペラシティの開幕展が初めて手掛けた展覧会となりました。以降、現場に身を投じながら経験を積みます。
「丁度その頃は同世代のアーティストが急増する国際展などに出始めた時代。東京オペラシティアートギャラリーが開館し、どんどんネットワークが広がっていきました。良いと思うアーティストに出会えたら、なぜこういうことをしているの、どうしてこうなっているの、と取材を重ねる。展示はそうやって作らないと、心に響くものはできないと思います」