Interview
#42

アフリカのイメージを
ポジティブに変えていく
自ら動き、伝え続ける事業家の挑戦

銅冶 勇人さんYUTO DOYA

株式会社DOYA 代表取締役社長
特定非営利活動法人Doooooooo代表

1985年生まれ、東京都出身。2008年慶應義塾大学卒業後、ゴールドマン・サックス証券会社に入社。並行して2010年にアフリカで教育・雇用の創出、食料支援などを行う特定非営利法人Dooooooooを立ち上げる。2014年に会社を退職し、翌年株式会社DOYAを設立。アフリカの伝統的なファブリックをはじめ現地の手仕事・文化を生かすアパレルブランド「CLOUDY」を展開。NPO活動との両輪で事業を行う。
https://cloudy-tokyo.com/

個性的な色柄が目を引く、アフリカの伝統的なファブリックを使ったCLOUDY(クラウディ)の服や小物。ブランドを主宰する株式会社DOYAの代表・銅冶勇人さんは、大学の卒業旅行で訪れたアフリカでの強烈な体験を機に、現地の文化や手仕事を生かすプロダクトを生み出し、その収益を資源に現地の人々の雇用や教育、食の現状を変えていく活動を精力的に続けています。アフリカへの熱い想いと、アクションを起こし続ける原動力について伺いました。

当たり前が「ない」、
アフリカ・スラム街での衝撃体験

銅冶さんがアフリカへの興味を抱いたのは、小学生のとき。幼い頃からスポーツが大好きで、プロ野球やNBAの選手名鑑に載っているアフリカ系の外国人選手に憧れを抱き、夢中で眺めていたそうです。

「かっこいいな〜と思う選手にアフリカンアメリカンの人が多くて、ペンで印を付けていました。そこから派生して、中学生になるとブラックミュージックも聴くようになって。ちょうどその頃、毎日のように通っていた図書館でふと、世界の様々な民族が載っている写真集を手にしたんです。顔に赤土を塗っている人や耳にでかい穴を開けてる人を見て、こんな人たちがいるのか! と、アフリカにルーツを持つ人や文化にあらためて興味を募らせたのを覚えてますね」
そんなアフリカへの興味が、はからずも今の活動につながる大きなきっかけへと拡張したのが、大学の卒業旅行。「二度とできないことをしよう」と、マサイ族の家でのホームステイのため、一人訪れたアフリカ・ケニアで目にした現実に大きなショックを受けました。

「一番衝撃的だったのが、滞在中に訪れたアフリカ第二のスラム街といわれるキベラ地区。悪臭が漂うゴミだらけの道。仕事も学校もない日常。親がいなくて、明日食べるものもない子どもたち。自分が当たり前のように得てきたくらしやものが、そこには何一つなかった。この旅を機に、自分はアフリカの人たちに対してどんなアクションができるだろうかと、強く想いを巡らせるようになりました」

銅冶 勇人さんイメージ
銅冶 勇人さんイメージ

会社員として働きながら
NPO法人を設立

帰国後もアフリカへの想いが冷めることはなかった銅冶さん。即座にスラム街への送金サポートを始め、また、就職したゴールドマン・サックス社で多忙な日々を送りつつ、年休をすべて使ってケニアを再訪。さらに入社3年目の2010年には、アフリカ支援のNPO法人Doooooooo(ドゥ)を立ち上げます。

いわゆる知名度もブランド力もある大手企業に属しながら、周囲の環境に流されず、アフリカ支援のために地道な活動を続けることができたのはどうしてなのでしょうか。
「簡潔に言うと、周りと群れて同じことをしたくなかったんです。自分は同期の中で圧倒的に能力が低いと自覚していたので、他の人とは違う視点を持って、周りが遊んでいるときに努力や経験を積み、自分にしかできない勝ち方や価値観を編み出さないと成長できないという意識が強くありました。だから本業もNPO活動も全力で取り組めた。社員全員が競争意識と課題解決への高い執着を持ったゴールドマンでの経験があったからこそ、『結果を出す、数字をつくる』という今に通ずる仕事上のポリシーを持つことができました。それがアフリカ支援活動でも生きていると思います」

銅冶 勇人さんイメージ
銅冶 勇人さんイメージ
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すべてを現地の
尺度で考える

NPO設立から12年、CLOUDYは今年で創業7年目。銅冶さんが一人で始めたアフリカ支援と服づくりの両輪ビジネスは着実に共感の輪を広げています。NPOとしては現地で700人弱の雇用を生み出し、これまでに3つの公立学校を開校。また、CLOUDYでは2020年に東京・渋谷の商業施設「MIYASHITA PARK」に初の実店舗をオープン。毎月全国各地でもポップアップイベントを展開するなど、勢いは止まりません。

「事業としては順調に成長していますが、やっぱりアフリカと日本の文化や常識の違いもあって、トラブルは日常茶飯事。現地の縫製スタッフが工場のミシンを勝手に売ってしまったり、学校の建設現場に半年間誰も来なくて作業がストップしたり。ただ、そのときに僕ら側のルールだけで語らないことが大事ですね」
現地の人とはくらしの中の優先度が違うだろうし、文化や宗教観も異なります。だから、不備があるからと機械を入れて効率化を図るとか、そういうことはしないのだそうです。
「あえて現地の不便を追求することが、僕たちの目的である『あらゆる人の雇用機会を平準的に増やす』という視点では大切なんです」

銅冶 勇人さんイメージ
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人生の軸となった
両親の教え

決められた道や慣習にとらわれず、常に「自分のやり方」で人生を切り開いてきた銅冶さん。振り返れば、その原点は両親の教えにあると話します。

「両親によく言われていたのが、『よそはよそ。うちにはうちのやり方があるし、あなたにはあなたなりのやり方があるはず』ということ。僕も兄も小中高〜大学まで一貫校に通っていたこともあって、ともすれば同じような経歴・思考の人種で群れやすい環境だったんです。だからこそ両親は、周りに流されないことを熱心に教えてくれたのかもしれません」
印象深い思い出のひとつが、小学校で行っていたユニセフへの寄付です。周りの子はみな親がお札を封筒に入れて持たせていたのに、銅冶さんとお兄さんはいつもジャラジャラの小銭を寄付。これは、両親が「人のために何かをしたいなら、自分でお金をつくり出しなさい」という方針だったからだそうです。

「兄と一緒にお手伝い表をつくって、毎日お風呂掃除や新聞取りをすることでお小遣いを稼いで、寄付のお金に充てました。今思えば、そういう両親の教えが〝自分の頭で考えて、動く〟という、僕の人間性の土台になっているなと、ホント感謝しかありません」

銅冶 勇人さんイメージ
銅冶 勇人さんイメージ
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アフリカの魅力にフォーカスし、
ポジティブに変えていく

走り続けている銅冶さんですが、次なるアフリカでのプロジェクトや夢の実現に向けても、動き出しています。

「新しく二つのことを始めていて、ひとつは、アフリカの若者の可能性を広げる新しいライフモデルをつくること。その第一歩としてこの夏、ガーナでテキスタイルデザインや写真・映像の専門性を育成するクリエイティブアカデミーを開校しました。ゆくゆくは料理や音楽などにもジャンルを広げたいですね。アフリカにはこんなにすばらしい能力を持ったかっこいい若者たちがいるんだと、CLOUDYから世界に発信していきたい。

もうひとつは、ガーナの街にあふれるビニールゴミを回収、洗浄、縫製してショッパーへとアップサイクルする取り組みです。すでに試験的に動き始めているのですが、これが実現すれば、街ごときれいになるし、現地の人の環境への意識も変えることができて、かなりおもしろい動きになるんじゃないかと」

アフリカと聞くと、多くの人が貧困や飢餓といった社会問題のみを思い浮かべて、哀れみの気持ちでとらえてしまいがちではないでしょうか。銅冶さんはこうしたネガティブなイメージをポジティブに変えていきたいと力強く語ります。

「現地に行くと、いつも『ガーナのいいところを伝えてくれ』と言われるんです。ガーナ人だって問題はあっても自分の国に悪い印象を持ってほしくないはず。アフリカといえば『色鮮やかなテキスタイルの国ね!』『笑ってる人が多い陽気な国』と、僕らの発信を通してプラスのイメージへと変えていきたい。そのために、これからも新しいアクションをまだまだ起こしていきますよ」

銅冶 勇人さんイメージ
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