Interview
#58

とにかく楽しく!発信する
「ビーガン王子」に聞く
食、環境、健康のこと

「ビーガン王子」ことアレックス・デレチさんALEX DERYCZ

モデル タレント
ビーガン王子株式会社 CEO

1996年まれ、ロサンゼルス出身。アメリカとフランス、ウクライナのミックス。5カ国語を話すマルチリンガル。カリフォルニア大学ロサンゼルス校で日本語を学び、 2017年卒業後、ビーガンを広げる活動をするため来日。2020年に「ビーガン王子株式会社」を設立し、プラントベースの分野における商品開発、コンサルティングやPR活動を行うほか、モデル、タレントとしても活動。「ビーガン王子」としてヴィーガンの商品、お店、ライフスタイルなどの情報を幅広く発信。
https://veganoji.jp/

私たちが365日向き合い続ける「何を食べよう?」という問い。栄養バランスや、お財布事情、宗教上の理由など、「食」にはその人の生き方が強く反映されます。そんな中、ヴィーガン(完全菜食主義)を選ぶ人たちは、どんな考えでどんなくらしを送っているのでしょうか? 日本でヴィーガンのライフスタイルを発信する「ビーガン王子」ことアレックス・デレチさんにお話を伺うと、環境問題や健康について新たな発見も。アレックスさんが目指す未来とは?

「ビーガン王子」と
日本の出会いとは?

なんと、英語・フランス語・スペイン語・日本語・ドイツ語の5カ国語を話すマルチリンガルのアレックスさん。自分自身のルーツが多国籍であることも手伝い、新しい文化を学ぶことにはずっと興味を持ってきました。

「僕が日本語を専攻したUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)は東アジアの研究がかなり有名なんです。僕はそれまで、日本といえば『お寿司』『忍者』『テクノロジー』みたいな典型的なイメージしかなかったのですが、言語を学ぶことで文化の理解が深まりました」

大学で日本について学ぶだけでなく、ヴィーガンの魅力を広めたいと来日して起業までするバイタリティの持ち主です。

「ヴィーガンはアメリカではもうかなり浸透しているけれど、日本ではまだ僕が影響を与えられたり、貢献できたりする余地があるんじゃないかと思いました。それに、若いうちに海外に住む経験をしてみたかった。僕は今までいろんな国を訪れてきましたが、日本が一番住み心地が良いです(笑)」

アレックス・デレチさんイメージ

ヴィーガンを知って
「目からうろこ」だった

実は、17歳でヴィーガンを実践するようになるまで「何でわざわざ食べ物を制限するの?」と否定的に捉えていたそう。ある日同級生が「ヴィーガンになった」と言うのを聞いて興味を持ち調べてみると、家畜の肉が生産の過程で多くの温室効果ガスを排出しており、菜食が環境問題の解決に貢献できるとわかって「目からうろこ」だったとのこと。

「学校で環境問題を学んだ時、一人ひとりができるアクションとして、シャワーを浴びる時間を短くしよう、電気を消そう、と教わっていましたが、他にもこんな効果的なアクションがあったのか!と思いました」
完全菜食主義者であるヴィーガンの他にも、ゆるやかに菜食を取り入れるフレキシタリアン、乳製品と卵は食べるラクト・オボ・ベジタリアン、魚介は食べるペスカタリアンなど、いろんな種類があります。

「僕の周りの友だちには、家ではヴィーガンだけど外で食事をする時は状況に応じて肉も食べる人や、逆に外ではヴィーガンだけど、家ではパートナーに合わせて肉を食べるという人もいます。日本のヴィーガンは『誰かと食事をするときに気を遣う』という人が多いかもしれない。大事なのは、無理のない範囲で、少しずつでも取り入れることだと思います」

アレックス・デレチさんイメージ

体調や、健康への
考え方も変化

肉を食べなくなることで、体にも変化が起こったとアレックスさんは振り返ります。

「十代の頃はぽっちゃりしてたのですが、痩せてちょうどいい体重になりました。食べ物の消化がスムーズになって、胃もたれがなくなったのがわかります。あとエネルギーが増える。意外かもしれませんが、最近はアスリートでも体づくりや回復力を上げるためにヴィーガンになる人が増えてます。あのアーノルド・シュワルツネッガーも今は9割くらいヴィーガンだそうです」

実は、アレックスさんもこの取材の前に14kmのランニングをこなしてきたというかなりの体力の持ち主。来年はハーフマラソンにチャレンジしたいと意気込んでいます。この日取材で場所をお借りしたHemp Cafe Tokyoでは、一緒にボディメイクに励んでいるという友人と鉢合わせ。彼は植物性のタンパク質の方が効率的に筋肉をつけられるということを知ったほか、食べ物を買うときに原材料表示を必ず見るようになったことで、添加物などにも注意を払うようになり、健康意識が高まったそう。「肉を食べる」という文化や習慣について、根本から考えさせられるお話です。

アレックスさんは、人間の先祖は肉を食べて進化してきた歴史があると思うものの、現代にはたくさんの食の選択肢があると語ります。

「肉食が産業として巨大になりすぎて環境を害するほどになり、病気のリスクも高めてしまう今、可能ならば菜食を選んでいくべきなのかなと思います」

アレックス・デレチさんイメージ

自炊も楽しい
ヴィーガンの世界

食べることが大好きで、週の半分は自分で料理をするというアレックスさんは「とにかく美味しい!」というヴィーガンフードの魅力を教えてくれました。

「ボロネーゼみたいなパスタとか、ケサディアとか、ワカモレとか、食べたいと思ったものがわりとなんでも植物由来で作れちゃうんですよ。旬の野菜、もやし、豆腐、お米は取り入れやすいし、ソイミートは1kg1500円程度で買えるし、思っているよりずっとリーズナブルです。ヴィーガンバターや、ヴィーガンチーズなど今は供給の少ない商品も、これからどんどん安くなっていくはずです」

世界的にも広がりつつあるヴィーガン。日本はまだまだ発展途上のイメージがありますが、現在、多くのレストランチェーンが次々にヴィーガンメニューを展開しており、これから急速に浸透していくだろうとアレックスさんは期待を寄せています。

「Hemp Cafe Tokyoのようなヴィーガンのお店で食事するのもインスピレーションになって、楽しいです。例えばここのお店だと、ビビンバやKFCバーガーなど、すごくオリジナルで、クリエイティブなメニューがたくさんあります」

アレックス・デレチさんイメージ

楽しく、わくわくしながら
発信することを大切に

何度も「楽しく」という言葉を繰り返し、いきいきと語ってくれたアレックスさん。お話を聞いていると、「制約が増える」「大変そう」というヴィーガンのイメージが次々と覆されていきます。

「僕は昔、牛乳しか飲んだことなかったけど、今はアーモンドミルク、豆乳、オーツミルク、ライスミルク、ココナッツミルクなど、逆に選択肢が広がってます。『こんなに楽しいんだ!』『こんなに美味しいんだ!』『こんな料理もできちゃうんだ!』という発見を伝えていきたいです」

最近は友人とポッドキャスト番組『愛の架け橋』をスタートしたばかり。新しいことにもどんどんチャレンジしています。2019年に『ASEBOUND』というアイドルグループに所属していたこともあって、またアイドル活動を再開し、その中で気候危機をはじめ社会正義(Social Justice)のテーマで発信することができないかと画策中。さらに、ヴィーガンの文化を広めるため日本での暮らしで発見した魅力を、逆に海外に向けて発信したいとも考えています。

「夢を持って、それに向かって頑張っている時がいちばんわくわくしているし、人生が充実していると感じます。これは僕の性格で、とにかく新しいことや楽しいことを追い求めていきたいという気持ちがある。楽しく発信していきたいです。世界は完璧な場所ではないけれど、自分のできることをして、それが結果的に社会課題の解決につながったら嬉しいです」

アレックス・デレチさんイメージ
アレックス・デレチさんイメージ
アレックス・デレチ Everything Has A Story
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