家具の端材を彫り始めたのが
きっかけ
「家具職人になりたいと思ったのは純粋な憧れからでした。僕らの高校時代って、ファッション雑誌に家具特集が組まれて、ミッドセンチュリーの家具などがもてはやされていた頃。そこに出てくるデザイナー、職人という人たちが格好よくて、モテるだろうなと(笑)」
この道を目指したのは、そんな、ややミーハー心のある動機でしたが、実は幼い頃から、もの作りに親しむ環境は整っていました。小学校の頃、漫画を収納するカラーボックスが欲しいと親にねだると、木材だけ渡され、これで作るようにと言われたそうです。
「市販のものはサイズが決まっていますが、自分で作れば、必要な容量は自由自在ですよね。ないものは自分で作れ、という環境で育ちました」
飛騨高山の学校に通い、そこで、家具のスケッチ、デザイン、設計、加工、販売に際しての損益計算までを学びます。彫刻を意識したのは、家具工房に就職して働いていた時のこと。椅子などの制作時に、使わない端材が出るとストーブで燃やすのですが、当時の師匠から「それが何になるのか一回考えてから捨てなさい」と教わったそうです。
木材は、山から下ろしてきた人がいて、製材所で加工され、寝かされ、市場に出て、そこでようやく家具の加工に使えるようになります。このように多くの人が携わってきた大切な資材をゴミにするのかと、美藤さんは考えるようになりました。