風に〝乗る〟ことができる
不思議な乗り物
父が著名な熱気球競技選手だった藤田雄大さんは幼い頃から空に慣れ親しんできました。
「車に乗ってどこか行くか、という感覚で父の気球に乗ってきました。小さい頃は興味がなかったので、中で寝てたりしてましたけど(笑)」
熱気球競技では、制限時間内でどれほど正確にフライトができるかを競います。風を〝切って〟操縦する他のスカイスポーツと違い、熱気球は風に〝乗る〟もの。風と共に動くので、バスケットの中は常に静かな無風状態、という不思議な体験を味わえます。
「風を読み、ゴール地点へと向かう競技です。風の流れる方向にしか進めないので、ある意味不自由ですが、空と一体になると不意に自由を感じられる瞬間がやってくる。それがパイロットとして一番ぞくぞくします」
競技にはたくさんの駆け引きもあります。
「他の気球よりも先に行けば、風が変わる前に目的地点に到達できますが、後から行けば、先行の気球が乗る風の流れを見てルートを修正できる。ここが駆け引きです。僕の場合は、楽しくて、とにかく飛んでいきたい、という気持ちが強いから、先に行っちゃうことが多いんですけどね。これは親父ゆずりかもしれません」