くらしは一つの住空間では
完結できない
「人間は、狩猟・採集の生活に戻りつつあるのではないでしょうか。季節ごとに別の場所に移動するっていう生活が、一番ストレスがなくていいと思っていて」
インタビューは、まずそんな興味深い言葉から始まりました。実際、隈さんは仕事で海外に月に3度くらいの頻度で滞在しており、国内でも東西南北に移動し続けているという生活を送っています。「朝から晩まで東京にいるという日はほとんどない」というほどの忙しさです。
「一つの住空間で自分のくらしが完結するというのではなく、小屋というような考え方で、その小屋が自分の生活の全体ではなく『パート』を形成してくらしを満たしてくれる──そういう状況があったら面白いと思いますね。自分がその住まいを使っていない時は友達が使ってくれてもいい、という形のシェアのあり方も楽しいと思います」
最近では、コロナ禍がきっかけとなって都市と田舎の二拠点生活を始めたという人の声も聞きますが、拠点を分散させる生活の魅力を語る隈さんの考え方は、どのように形成されたのでしょうか? ヒントは、子ども時代の記憶にありました。