Interview
#63

人生どう生きるか?探るのも発明
「楽しい」を追求し続ける
発明家の日常

カズヤシバタさんKAZUYASHIBATA

発明家

1994年生まれ、広島県福山市出身。近畿大学理工学部電気電子工学科を卒業後、ロボットの製造・販売を行うPLEN Robotics株式会社に就職。在籍中に本格的な発明活動を始める。「タモリ倶楽部」「月曜から夜ふかし」など、テレビ出演も多数。代表作にゴージャス登場箱「デルモンテ」、「つぶつぶトルネード」、「顔面スマホシールド」など。「ギリギリ役に立つ発明」をテーマにしながら、通販番組風に紹介するスタイルを軸に発明品を発表。
https://www.seevua.com

子どもの頃から発明家になるのが夢だったというカズヤシバタさん。ロボット開発の会社で働いていた時に生み出した「ゴージャス登場箱」がTwitter(現X)で注目されたことをきっかけに発明家活動を始めました。数々の発明の背景にある思い、ご自身のライフスタイルについて詳しくお話を伺ってみると、独自の人生観が浮かび上がってきます。「人生どう生きていくかを探るのも、ある意味で発明」と語るカズヤシバタさんの、「くらし、たのしく。」とは?

発明家を夢見た子どもが
発明家になるまで

「ゴージャス登場箱」や「全自動ティッシュ取り出し機」、コーンが入った缶飲料のつぶつぶを綺麗に飲みきる装置「つぶつぶトルネード」、突然のスマホ落下から顔を守る「顔面スマホシールド」など、カズヤシバタさんの発明品は、思わず笑ってしまうものばかり。

「基本的に私が発明で解決しようとしていることは、別に解決しなくてもいいことなんですが(笑)。それを、あえてわざとらしく、周りくどい方法で解決するのが楽しいんです」

掲げるテーマは、「ギリギリ役に立つ発明」です。

昔から、手を動かしてものを作るのが好きな子どもだったそう。でも、どうやって発明家になったらいいのかわからず、とりあえず理系だろうと進んだ理工学部で電子工学を学びました。その後、転機になったのが就職先のロボット制作会社での経験。

「その会社では、芸術系の大学を出て、アーティスト活動をされている人がたくさん働かれていたんです。その人たちが作品を発表している様子を見て、技術畑の自分は『論文とかにいちいちまとめず、こんなライトに発表していいんだ!』と衝撃を受けました」

カズヤシバタさんイメージ
カズヤシバタさんイメージ

後悔が改良のバネに。
注目された「ゴージャス登場箱」

そんなカルチャーショックを経験したシバタさんが、2017年、まず手掛けた発明品が「ゴージャス登場箱・デルモンテ」でした。

「あれはおもちゃ屋さんでモーターの工作キットみたいなのを買ってきて、接着剤で貼り合わせて作ったようなものだったので、時間が経つと部品が落ちて動かなくなってしまいました。かなり反響があって、企業さんから『プロモーションのため借りたい』とお声掛けをいただいたんですが、レンタルできる状態ではなかった。ものすごく後悔しました」

そして、「次こそ絶対に壊れないものを」「今自分にできることを全部詰めてやるぞ」という思いで改良を重ねた「デルモンテ2020」が完成。3Dプリンターで出力された重厚感のあるパーツ、光と音の演出など、何もかもがアップデートされています。

「これはもう、散々使っていただきました。テレビ番組が多かったですね。お料理コーナーで完成した料理を出すとか、芸人さんが紹介したいものを出すとか。歯磨き粉やお酒といった商品のプロモーションのためにも使われました。それで、レンタルのときのタイミングで『実は私、発明家をやっていまして・・・・』と売り込んでいった結果、取材していただく機会が増えていったんです」

カズヤシバタさんイメージ

日々の習慣の中にも
「課題解決」の視点が

本格的に発明家としてやっていこうと、2021年に独立。現在は発明を軸に、動画配信を行うインフルエンサー業と、企業から依頼を受ける製造や設計の仕事で、日夜ものづくりに取り組んでいます。

「今、自分自身の発明の発表が大体2ヶ月に1回くらい。1年くらいアイディアを練っていることもありますが、これを作るぞ、と決めたらそこからはけっこう早くて、3週間くらい。残りの時間は動画の撮影、編集作業ですね。その作業を中心に一日が回っていくのですが、工作機械がトラブルを起こすなど予想外の出来事が起こると、その対応に集中してしまうので、生活のバランスは不規則かもしれません」
しかし不摂生かというとそうでもなく、健康にはかなり気を使っているそうです。

「まず、毎日絶対に湯船に浸かる。それから、食事には野菜を取り入れる。ジムにも定期的に行きます。でも面倒臭いから、自分がその気になる方法をいろいろ試して、ランニングマシンの上で必ずNetflixのドラマを1本見るという習慣を作りました(笑)」

日々の習慣の中にも「課題解決」の視点があるのが、シバタさんならでは。

「自分を甘やかしてしまったことが原因で健康を損ねてしまって、ここぞという時にパフォーマンスをフルに出せないのは嫌だなって。これも全部、楽しいことを100%全力で楽しむためなんですよ」

カズヤシバタさんイメージ
カズヤシバタさんイメージ

目指すはスティーブ・ジョブズの
プレゼン!?

この「楽しい」というキーワードが、発明家カズヤシバタさんの原動力です。会社を辞めた理由は、多くの工数と長い時間のかかるロボット製造の世界で働くより、個人で作って発表するというサイクルを目一杯楽しみたかったから。

憧れていた発明家のイメージは「スティーブ・ジョブズ」。
作ることと、それを的確にプレゼンテーションすることを兼ね備えた手法を追求してきました。

「イメージしている発明家としての未来の姿は、Appleの製品発表会なんですよね。巨大スクリーンの前で自分の作品を紹介して、お客さんに楽しんでもらうっていうのを、一回やってみたい!」

伝え方に注力することは、自分のやりたいことと、他者が求めるものの交わるポイントをなんとか探ることでもあります。

「大人って、世の中のいろんな不条理に対して、ある程度『これは仕方ない』と割り切って生きていく部分があると思います。でも、たった一度きりの人生じゃないですか。人生どう生きていくか、妥協せずにちゃんと考えていきたい。それを探るのもある意味発明だと思うんですよね。将来の計画を立てている時が、一番わくわくします」

カズヤシバタさんイメージ

正しいものを、
正しいと思っていたい

発明を続けることのモチベーションの根底には、人生の中で少しでも多く貴重な経験をしてみたいから、という好奇心も潜んでいます。

「ただの会社員だったら、こうして取材をしていただくことも、テレビ局の内部に入るということもなかったと思います。いろんな経験をするため、名前を売るのは効果的。人生一度きりだ、と本気で意識すると、無駄な時間を過ごしてられないです。焦っちゃいけないとは思いつつ、メメント・モリ(死を想え、という意のラテン語)が浮かんでは消えて、という感じ」

有名人になりたい!という野望があるのでしょうか?

「それとはまたちょっと違って・・・・正しいものを、正しいと思っていたい、というんでしょうか。私は子どもの頃『陰キャ枠』だったので、先生や陽キャの人たちという、いわゆる『声の大きい人たち』を教室の隅っこから観察していたのが原体験にある気がします。正しいと思ったことが一部の層の利益のためだけに潰されてしまっても、抗えなくて、悔しかった。自分にもっと発言力があったら、と思ってました。自分の意見を通したい、という強い感じじゃなくて、もっと平和的に何か解決する方法があるんじゃないかって、信じてるんです。うん・・・・そんな感じです(笑)」

カズヤシバタさんイメージ
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