2018.1.30 / 僕のオススメ
前回の記事「僕のおススメのバラ園・関東編」に続いて、今回は、「僕のおススメのバラ園・関西編」として、
地元のバラ園をご紹介させていただきます。
ポイントは、やはり「風景」。
僕の庭造りのテーマである「バラのある風景」という点において、特に参考になるバラ園を選んでみました。
■ 靭公園バラ園(大阪市西区)
まず最初にご紹介するのが、大阪市西区のビル街の中に位置する靭公園(うつぼこうえん)。
大きな緑地が点在する東京の中心部に比べ、大阪の中心部には、大きな緑地空間は意外と少なく、
大阪城のある大阪城公園と、ビジネス街にあるこの靭公園が有名くらいでしょうか。
靭公園のバラ園は、大阪市内で最も歴史のあるバラ園で、約170品種、3400株のバラが植えられています。
バラを眺めながら、ベンチや芝生で休憩出来るほか、公園周辺には、おしゃれなカフェやレストランも多く、
美味しいランチやティータイムを楽しめます。
この靭公園バラ園で見るべきは、「系統別の植栽」。
● 緑に囲まれたビジネス街のオアシス
靭公園は、テニスコートや音楽コンサートが開催されるスタジアムのある「西園」と、
バラ園を中心とした緑地の「東園」に分かれています。
バラ園のある「東園」は、緩やかに起伏する地形を生かしバラが植栽され、バラの花壇を囲むように遊歩道、
中央に水が流れるカスケードもあり、お昼休憩のサラリーマンやOL、保育園児まで、さまざまな年代の方が
気軽にバラを楽しめる都会のオアシスとなっています。
● 系統ごとにバラを配置した「バラの海」
ここは斜面には、フロリバンダ品種のバラが密に植栽してあり、まるで「バラの海」。
低い背丈で群れて咲くフロリバンダの風景を眺めることができます。
この手前の赤紫色のバラは、「ニュース」という品種。
このバラ園では、香りの強いイングリッシュローズやハイブリッドティー品種のバラは、
後述する中之島公園と比べて、背丈を高く咲かせており、豪華な花を目線の高さで眺め、
香りを嗅ぐことができます。
● 秋バラも美しい風景をつくる
超高層マンションを背景に咲く、バラの風景。
この写真は、10月の様子。
よく管理されている靭公園では、秋バラも綺麗に咲いています。
このバラは、靭公園の中で、僕が特に気に入っている「オータム」という品種。
アメリカで1928年に作出された古いハイブリッドティー品種のバラですが、フロリバンダ並みの花付きで、
秋なのに圧巻のこの景色。
表は珊瑚色、裏弁が黄色がかかるオレンジ色で、その名の通り、まるで紅葉しているかのような見事な秋色。
是非、秋の靭公園を訪れて見ていただきたいです。
■ 中之島公園バラ園(大阪市中央区)
大阪の中心部、行政施設や大手企業のオフィスが集中する淀屋橋、北浜エリア。
堂島川と土佐堀川にはさまれた中洲(中之島)にある大型都市公園、中之島公園内にあるのがこちらのバラ園。
聳え立つビル群を背景に、公園内には美しく整備された散歩道やバラ花壇に、約310品種、3700株が咲きます。
中之島公園バラ園で注目すべきは、「時代の変遷とともに変わるバラの流行」。
● 高層ビル群を背景に、川の中州に広がるオープンスペース
バラ園中央につくられた遊歩道の両脇には、シンメトリーにデザインされたパッチワーク花壇が並んでいます。
実は、この花壇は、1800年代から2000年代まで、10年ごとに区切られており、時代とともに移り変わる
バラの流行の変遷を歩き見ることができるようになっているのです。
● 時代背景を想像しながら、バラの旅に出る
リニューアルしたこのバラ園を監修されたバラ園芸家、小山内健さんによると、18世紀後半、産業革命がおこると、
黄色や赤などはっきりしたバラが好まれるようになったそうです。
戦後は、容姿の大きく華やかなハイブリッドティー品種のバラ、90年代バブルが崩壊すると、
癒しを感じる淡いアプリコットやライラック色のバラが流行し、時代を映し出すバラの好みの変化を、
この花壇で見て取れるのです。
写真は、遠くに見える高層ビルを背景に、低い背丈で力強く咲くバラ、「チャールストン」。
そのコントラストが街中のバラ園らしく、とても興味深い風景を作っています。
周辺がオフィス街という環境に配慮して、このバラ園では、農薬を使わずに管理していると聞いています。
■ ひらかたパークローズガーデン&京阪園芸(大阪府枚方市)
大阪の中心部から京阪電車で約30分、「ひらぱー」の愛称で有名な「ひらかたパーク」遊園地があります。
この遊園地内に併設されているのが、「ひらかたパークローズガーデン」。
僕の世代の関西人には、ひらかたパークといえば、大菊人形というイメージがありましたが、
時代の変遷と相まって、人々の興味は菊からバラに移っていったのかもしれませんね。
このバラ園では、管理をされている京阪園芸さんオリジナルの品種をはじめ、約600品種、4000株のバラが
植栽されています。
ひらかたパークローズガーデンで見るべきは、「樹形を活かした誘引」。
● 大きな壁面を覆いつくす下垂して咲くつるバラ
建物の巨大な壁面に誘引したこのバラは、フランソワ・ジュランビル。
ライトピンクのランブラー品種です。
垂れ下がって咲き乱れる風景は、圧巻です。
広いバラ園だからこそ生きてくる、「引きで見て美しい風景」です。
● レンガづくりのアーチに映える多花性のつるバラ
こちらは、園内の散策路に設置された、レンガ造りの大きなアーチに
誘引されているつるバラで、ドクター・ヒューイ。
常々、風景をつくるつるバラは、その背景となる壁面や構造物とバラの花や姿の
調和がとても重要と考えています。
ここ、ひらかたパークローズガーデンでは、至る処でこのようにつるバラと
工作物とが調和した美しい風景を見ることができます。
● 京阪園芸のサンプルガーデンも見事な風景
ひらかたパークバラ園を管理されている京阪園芸さんは、このバラ園から
徒歩で10分ほどの距離に、ガーデナーズショップを構えておられます。
この京阪園芸さんのガーデナーズショップ内のサンプルガーデンでもあるので、
つるバラの誘引のお手本となるような、美しいバラの風景に出会えます。
写真は、同系色のつるバラをコラボレーションさせたガーデンで、
足元の低い位置にスイート・ドリーム、パーゴラの高い位置に
バター・スコッチが誘引されています。
このバタースコッチは、パーゴラにぴったりと張り付けるのではなく、
樹の自然な形を活かすように、あえて枝先をふんわりと遊ばせるような、
緩やかな誘引がされています。
光に透ける黄金色の花びらが、より美しく見える柔らかな雰囲気の誘引術です。
■ まつおえんげい(京都市西京区)
最後に番外編でもうひとつご紹介します。
ここは、「バラ園」ではないのですが、関西にお立ち寄りの際には、是非訪れていただきたい、バラの聖地です。
京都市内の西端、西京区の山の麓に位置する、バラ専門ナーセリーの「まつおえんげい」さんです。
実は、6年前、僕がバラを始めようと思い立った時、友人の紹介で、まつおえんげいの松尾正晃社長に
お会いしました。
それから毎週末、奈良から京都までセミナーに出かけ、バラの知識を深めました。
現在も、定期的にセミナー等が開催されており、多くのロザリアンが通う聖地となっています。
● バラの最盛期、バラの海と化す売り場
5月のバラの最盛期に撮影した一枚です。
いかがですか?
超広角レンズ撮影しているのですが、カメラの目線を少し高めに上げると、
地面に並べられた無数の鉢植えのバラが織り重なるよう咲いています。
まるでバラの花が絨毯のように見える、まさに「バラの楽園」と呼べる風景です。
● 美しいバラのアーチ
こちらの写真は、まつおえんげいさんのエントランス横に設置された、
オブジェのような美しい曲線を描くアーチ型のパーゴラ。
足元には、販売中の満開のバラ苗が並び、パーゴラ上部には零れんばかりに
咲くつるバラが誘引され、強い太陽の光が作るストライプ状の影が地面に落ちて、
とても趣深い風景をつくっています。
● 実際に咲く花を眺めながら、購入するバラ選びができるガーデン
こちらは、バラ苗の販売コーナーの一部につくられたモデル(サンプル)ガーデン。
フェンスにアーチ、パーゴラ、ガゼボなど、いろいろな工作物に適したつるバラが
誘引されています。
そのバラ特性を活かした展示が、バラ初心者にもとても分かりやすく、
実際に咲いた状態を確認しながら、バラ苗を購入できるところが良いですね。
この写真は、上から流れるようにしなだれて咲くつるバラと、周りの低い位置に
配置されたシュラブ樹形のバラが、立体的で美しいシーンを作り出しています。
いかがでしたでしょうか?
今回は、関西のバラ園の中でも、最寄り駅からアクセスが便利なバラ園3か所と、
番外編で京都のバラ専門ナーセリーを紹介させていただきました。
バラ園には、それぞれコンセプトがあり、その意図に沿って、公園のデザインや
バラの品種選びがなされています。
そのコンセプトを少し頭に置いてバラ園を見学すると、また新鮮なバラの風景に
出会えるのではないかと思います。
機会があれば、是非足を運んでみていただければ幸いです。
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