2024.8.23 / 県立奈良高校・創立100周年記念・中庭プロジェクト
僕の母校である、県立奈良高等学校の創立100周年記念事業でつくる中庭(竪義の庭)プロジェクト。
今年(2024年)3月末に完成し、4月より供用されていますが、このたび、奈良高校の卒業生を中心に完成披露会が
先日、2024年8月10日(土)に、催されました。
夏休み期間中で、ちょうどお盆休みに合わせて開催されたイベントで、高校生たちは夏休み中でしたが、
多くの卒業生が、新しくできた中庭を見に来られました。
当日は、現役の学生、卒業生OBOGによるイベントが企画され、僕も、この中庭の設計者として、
来場された方により詳しく新しくできた中庭の魅力を知っていただくために、「ガーデンツアー」と称して、
中庭を中心に学校内を案内させていただくことになりました。
今回は、その中庭「竪義の庭」の完成披露会の様子をレポートしたいと思います。
久しぶりにやってきた母校の中庭。
夏休み期間中で、学生が登校していないので、中庭はとても静かでしたが、猛暑の影響で、
この日も朝から暑かったです。
そんな中、中庭の完成披露会は10時スタートなんですが、その前に、朝早くに、僕の奈良高校の同級生有志が
駆けつけてくれました。
少しでもきれいな状態で中庭を見学してもらいたいという思いで、仲間が中庭の雑草引きをボランティアで
手伝ってくれました。
今年3月の、中庭完成直前の最後の仕事「宿根草の植え付け」を、同級生や後輩が手伝ってくれたのですが、
( → ※ レポート記事「その16 宿根草植栽ワークショップ」)
今回も、その時のメンバーを中心に、同級生が朝早くから駆けつけてくれました。
まずは、汗だくになる前に、参加メンバーで記念撮影を行いました。
芝生替わりに敷き詰めている「クラピア」というグランドカバープランツのエリアを中心に、
雑草を手作業で抜いて行きます。
朝早くにも関わらず、日差しも強い上、気温も高く、すぐ汗だくになります。
学校の先生も参加してくださいました。
クラピアのエリアが終わると、ロックガーデンエリアの雑草もきれいに抜き取り、1時間半ほどで、
概ね中庭はキレイになりました。
途中から加わってくれたメンバーも交えて、作業終わりにもう一度、記念撮影。
これで、無事、中庭の完成お披露目会へとつなぐことができました。
10時、中庭完成披露会がスタートしました。
こちらが受付で、先生方が対応してくださっていました。
三々五々、見学者の方がお越しになっていました。
中庭での最初のイベントは、現役の高校生(奈良高校・ダンス部)によるパフォーマンです。
奈良高校のダンス部は、今年全国大会にも出場する、実力のあるチームで、そのパフォーマンスを
中庭で見ることができました。
中央広場(プラザ)のマス目状の床パターンが、良い舞台となっています。
やっぱりライブでパフォーマンスを見るのはいいですね!
こちらが、最後のキメのポーズ!
手前の「羅針盤」(黒い御影石で製作した石板プレート)にも反射して、なかなか良い感じです。
続いて、中庭で行われたのが、現役の書道部によるパフォーマンス。
この時、すでに僕が引率する「ガーデンツアー」も始まっていたので、案内しながら、校舎上層階から
中庭を見下して写真撮影しました。
中庭の中央にブルーシートが敷かれ、そこに大きな白い紙が広げられました。
大きな白い紙の四辺に沿って置かれた、小さな紙に、まず文字が書かれました。
青龍、朱雀、白虎、玄武という、いわゆる「四神」です。
奈良高校の中庭を囲む校舎が東西南北に正対していることに加え、中庭の設計においても「四神思想」を
植栽計画などにも採り入れているのですが、そのあたりも含めて書いてくれたのかなと思います。
中央の大きな紙には、奈良高校・創立100周年のテーマ(スローガン)でもある、「百の歴史、百の個性」という
言葉がしたためられました。
中庭のベンチから、どのように見えるのか分からないですが、上から見下ろすと、よく分かりますね。
是非また、9月の文化祭(青丹祭)でも書道部のパフォーマンスを見てみたいと思いました。
ここからは、僕が担当させてもらった「ガーデンツアー」の様子を少しお伝えしてみます。
午前と午後の2回、ガーデンツアーを開催させていただきましたが、参加者の方には、中庭横の1階の教室に
集まっていただき、そこで少し中庭の設計コンセプトなどについてお話させていただいてから、
校舎内を巡りながら、中庭をいろんな角度から見ていただこうという流れです。
まず最初に案内したのが、校舎東棟2階、書道教室前の廊下です。
ちょうど、中庭へ入る出入口(昇降口)の真上にあたり、まずはここから中庭の全貌を見ていただきました。
ガーデンツアーの午前中の回は、結構な人数の方にご参加いただきました。
移転した校舎を見られたのも、ほぼ初めてだと思いますし、そこに新しくできた創立100周年記念事業の中庭に
関心を持っていただき、とてもありがたかったです。
こちらは、普段入れない校舎屋上を、特別に開けていただき、ガーデンツアーの参加者の方に屋上から見渡せる
学校周辺の風景を見ていただきました。
旧校舎(法蓮校舎)の屋上から、奈良公園の若草山など旧市街地の風景が見えていましたが、
移転した朱雀校舎の屋上からも、少し距離は遠くなりましたが、奈良公園の若草山が見え、
若草山、春日奥山原始林から続く、平城山丘陵(ならやま丘陵)も一望でき、緑豊かな自然環境の中に、
新しい学舎が移ったことを実感していただきました。
こちらも、普段は学生以外、なかなか入ることができない図書室に、特別にご案内させていただきました。
図書室は西棟の2階にあり、図書室の窓から中庭を見ることができます。
図書室の、中庭に面した窓を開けて、参加者の方に中庭を見ていただきました。
最初に見てもらった東棟2階の廊下のちょうど反対側にあたり、手前にモミジを中心とした森のゾーンを
つくっていることなど、植栽計画について解説させていただいたいるところです。
設計者としてはこのアングルで見える中庭のシーンをとても気に入っていて、自分が今、学生だったら、
中庭を見ながら勉強したり、ぼーっとしたり、図書室に入り浸っていただろうな、と思います。
最後に、中庭に降りて、ガーデンツアー参加者の方に、アイレベルで、中庭を見ていただきました。
旧校舎(法蓮校舎)の中庭に、創立50周年記念でつくられたプラトン・アリストテレス立像は、
旧校舎から新校舎(朱雀校舎)へと移設されることが叶った数少ない、卒業生・現役の学生、そして未来の学生を
つなぐ紐帯(結びつけるもの)です。
このコンクリート打ち放しのR壁の裏側(中央側)に、奈良高校の「学びの原風景」とも呼べる、
プラトン・アリストテレス立像を設置しています。
R壁の裏側(写真では手前側)足元に、黒い銅板が見えますが、こちらが、創立50周年記念事業の際の
「建造の記」という設計趣意書を、銅板に転写したものです。
奈良高校の先輩から後輩へと受け継がれるメッセージが、格調高い文章で書かれています。
そういった受け継がれるストーリーを、中庭の設計にも反映させていることを、ご説明させていただきました。
そして、創立100周年記念のモニュメントとして、現役の学生とワークショップをして制作した
「羅針盤」と呼んでいる黒い御影石の石板プレートです。
この石板プレートの中心から水が噴き出す仕掛け(噴水)があり、この日も何度か噴水を上げていただきました。
写真では、人と重なって「羅針盤」が見えていませんが、楕円形の「焦点」のひとつである「羅針盤」から伸びる
白い線が、「楕円の反射定理」を表現していて、楕円(スタンドベンチ)の内壁に反射して、もう一つの焦点である
プラトン・アリストテレス立像へと向かっていく様子を実感していただきました。
こちらは、午後の部のガーデンツアーに参加いただいた方々と、記念撮影したものです。
実際、我々は今のこの学舎で学んだわけではありませんが、奈良高校の持っているDNAというか、想いや
ストーリーを後輩たちに受け継いでいく、新しい中庭「竪義の庭」がそういう空間になっていると
感じていただけたなら、嬉しく思います。
この日の中庭完成披露会では、中庭でのパフォーマンスやガーデンツアーの他に、美術部や写真部の
展示がありました。
こちらは、美術部のメンバーの作品が展示されていた教室です。
昨年秋に、「羅針盤」制作ワークショップを、現役の学生と実施したのですが、その時も、美術部の学生が
多く参加してくれました。
その「羅針盤」制作ワークショップに参加してくれたメンバーの作品が、いくつか飾ってありました。
彼らの作品は、今年1月に開催された奈良県高校生アートグランプリにて、
グランプリ(最優秀賞)や準グランプリを受賞していて、とても素晴らしい作品なんです。
こちらは、奈良高校のOB(卒業生)で、有名なイラストレーターの芳岡ひできさん(先輩)の作品展示ルーム。
愛らしいキャラクターを、エアブラシを使ってファンタジーに描かれた作品がたくさん展示されていました。
こちらは、奈良・東大寺の大仏殿と、愛らしいキャラクターの動物たちがコラボした作品で、
ジグソーパズルになっています。
学校の先生方が、この日のために、協力してパズルを完成されたそうです。
こちらは、新しく出来た朱雀校舎の中庭「竪義の庭」をモチーフに描いてくださった作品です。
鳥型の恐竜が中庭の上を飛んでいるという、まさしくファンタジーな設定です。
芳岡ひできさんは、直接お目に掛かってお話したことはないのですが、元々は公園の設計をされていたそうで、
その後、独学でエアブラシの技法を身に着けられ、イラストレーター・画家として活躍されています。
こちらは、奈良高校の「学びの原風景」、プラトン・アリストテレス立像の前に、芳岡ひできさんの
愛らしいキャラクターが、学生服を着てカップルで座っているというシーンが描かれた作品です。
芳岡ひできさんのプロフィールを拝見すると、ちょうど奈良高校の創立50周年記念の際に、在校されていたようで、
このプラトン・アリストテレス像が、旧校舎の中庭に設置されたのをご覧になっていたかもしれませんね。
こちらは、中庭で開催されたイベントで、奈良高校の卒業生がメンバーの一人の、アカペラグループ、
「うたかるた」さんのパフォーマンスです。
TV番組の『青春アカペラ甲子園 全国ハモネプリーグ2023』で、優勝したという素晴らしい実績のチームです。
中庭でのパフォーマンスの様子を、引きで撮ってみました。
アカペラの美しい旋律が、中庭に響いて、聴衆を魅了していました。
新しい中庭を見学に来られた方、先生方、メンバーの保護者の方などが見守っていました。
このアカペラグループの主旋律を歌っていたのが、奈良高校の卒業生のTくん。
何と僕の知り合いの息子さんでした!
何とも不思議なご縁を感じます。
彼らは現役の大学生ですが、これからも、多くの卒業生や、地域の方々に愛され、奈良高校を盛り上げるために
この中庭『竪義の庭』が、様々な形で活用されていってくれると、設計者としては嬉しく思います。
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【 奈良高校・創立100周年記念事業について 】
今回の奈良高校・創立100周年記念の中庭プロジェクトは、50年前の創立50周年の時と同じく、
OBOG(卒業生)をはじめとした、様々な方々の寄付によって創られる事業になります。
「奈良高校 100周年記念特設サイト」も、2023年9月1日よりオープンしております。
[ 奈良高校 100周年記念特設サイト] は、こちら ⇒ 奈良高校 創立100周年 (narahs100th.jp)
創立100周年を機に、ますます発展する奈良高校へご支援いただけましたら幸いです。
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