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専門家「風景」をつくるガーデニング術

県立奈良高校・創立100周年記念事業・中庭プロジェクト、その18(「竪義の庭」活用編)

居場英則

僕の母校である、県立奈良高等学校の創立100周年記念事業でつくる中庭プロジェクト。

ひとつ前のブログ記事で、今年3月に完成した新しい『竪義の庭』を、僕が撮影した竣工写真を使って、

ガーデンツアー風にご紹介いたしました。

竣工写真ということで、中庭には人が写っていない状態の写真ばかりでしたが、高校の中庭ということで、

普段が学生たちが、生き生きと活動している風景もお伝えしたくて、

今回は中庭の使われ方の一端をご紹介したいと思います。

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こちらの写真は、今年2024年に新1年生として奈良高校に入学してきた学生の入学式の日に学校にお邪魔して

撮影させてもらった写真です。

各クラスに毎に分かれて、担任、副担任の先生と一緒に、新しくクラスメイトなった学生のクラス写真を

学校専属のプロカメラマンの方(実は、この方も奈良高校のOBでした。)が撮影されていました。

初めて対面する先生、クラスメイトと一緒に、緊張した面持ちで、

新装になった中庭のプラトン・アリストテレス像の前で、記念撮影されていました。

まだこの時は、中庭の供用は始まっておらず、真っ先に新一年生が中庭に入ることができたようです。

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そして、4月18日の中庭『竪義の庭』オープニングセレモニーのあと、中庭の供用が始まりました。

ランチタイム、学生たちが三々五々に中庭に降りてきて、スタンドベンチでお弁当を広げたりする光景が

見られました。

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楕円形のスタンドベンチのあちこちに散らばって、おしゃべりをしながらお弁当を食べている様子です。

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スタンドベンチを横から見ると、こんな感じ。

すり鉢状に備えられた楕円形のベンチは、どこかのスタジアムのようです。

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こちらは、ありそうでなかった写真。

学校専属のプロカメラマンさんが撮影された写真を提供してもらいました。

あらたに創立100周年記念のモニュメントとして、現役の学生たちとワークショップをして制作した「羅針盤」と

呼んでいる石板プレートに、一人学生が立って、正面に見えるプラトン・アリストテレス立像の方を向いています。

楕円形の2つある「焦点」のひとつに据えられた「羅針盤」の中心から放射状に四方に伸びる白いラインが、

楕円(スタンドベンチ)の内壁で反射して、もう一方の楕円の「焦点」に設置された

プラトン・アリストテレス立像へと向かっていくイメージがよく分かる写真です。

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写真は、中庭供用が始まって2か月ほど経った6月4日。

この日は、ランチタイムに、中庭「竪義の庭」で、旧校舎時代から恒例だった「中庭コンサート」が開催される

とのことで、高校へお邪魔しました。

午前中に、中庭にうかがったら、いつもと少し違う光景でした。

この日は、ランチタイムに吹奏楽部の演奏があるとのことで、すでに朝一番に、譜面台などのセッティングが

されていました。

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そして、午前の授業の終わりを告げるチャイムがなったあと、一気に学生たちが中庭になだれ込んできました。

演奏する吹奏楽部のメンバーに加え、良い席で演奏を聴きたいという学生が、どんどんベンチに座っていきます。

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150人くらいは座れる中庭の4段あるベンチは、あっという間に満席になりました。

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中庭にこれだけの人数が入ったのを見たのが初めてでしたが、なかなか壮観です。

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吹奏楽部の顧問の先生が指揮棒を振り、演奏が始まりました。

大編成で、楽器で音を奏でる吹奏楽部の演奏は、とても迫力があります。

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こちらは、校舎南館3階共用廊下から、中庭全景を見下した様子。

プラトン・アリストテレス立像の前、中庭の中央広場(プラザ/アリーナ)に、演者である吹奏楽部の大編成が

陣取り、その周りの楕円形のスタンドベンチにオーディエンス(聴衆)である学生が、取り囲んでいます。

まさにこの光景こそが、この中庭の設計で追い求めた風景というか、シーンです。

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吹奏楽部のパフォーマンスは、楽器だけでなく、最前列では部員がダンスパフォーマンスも行ってとても動きのある、

見ごたえのある演奏でした。

このブログでは音が伝えられないのが残念です。

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こちらは、僕のお気に入りのアングル。

校舎西棟の屋上から、特別に撮影させてもらっています。

このアングルから見ると、パフォーマーである演者とオーディエンスである聴衆との一体感がとてもよく分かります。

プラトン・アリストテレス像も、後方からこの学生たちのパフォーマンスを見守るかの如く立っています。

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少し引いて超広角レンズで撮影したのがこちらの写真。

中庭だけでなく、校舎の各階の廊下や教室からも、学生たちが吹奏楽部のパフォーマンスを見ています。

四方を校舎に囲われた中庭は、校舎の反響もあって、中庭での演奏はとても響きが良いように思いました。

また、このアングルからでしか見えませんが、正面の隣接する平城第二公園の緑も見渡せ、

中庭の緑との連続感も感じられる、とても良いアングルです。

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中庭コンサートの持ち時間は20分くらいで、吹奏楽部のあとは、コーラス部でした。

この日は晴天で、青い空が中庭の上に広がって、とても映える絵(空間)になりました。

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吹奏楽部の大編成に比べると、コーラス部の編成は、人数が少なくなりましたが、

プラトン・アリストテレス立像前に設置した階段をうまく使って整列していました。

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楽器編成と違って生の人の声でしたが、コーラス部の透き通るような美しいハーモニーが、中庭中に広がって、

聴衆に静かな感動を与えていました。

この日(2024年6月4日)の中庭コンサートは、吹奏楽部とコーラス部でしたが、

この前の週には、軽音楽部、筝曲部、ダンス部などのパフォーマンスも行われたそうです。

改めて、今回の創立100周年記念の中庭整備プロジェクトを振り返ってみると、

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こちら↑が、昨年(2023年4月)の工事着工前の中庭です。

旧平城高校の中庭がそのまま残っていましたが、中庭の構成が通路と花壇という空間で、

積極的に中庭で何かのイベントやパフォーマンスを行うというような作りにはなっていませんでした。

(旧平城高校に限らず、数十年前につくられた学校の中庭、このようなタイプが多かったのだと思います。)

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今回の創立100周年記念事業で、改修した中庭空間は、奈良高校の学びの原風景とも呼べる

「プラトン・アリストテレス立像」を移設し、新たな奈良高校の原風景を再構築する、という

ミッションもありつつ、現代の高校生のライフスタイルにあった、様々なイベントや活動の場として

中庭空間の使いたいという要望に応えた設計となっています。

四方を校舎に囲われた同じ中庭空間ですが、大きく変化を遂げ、新たな使い方が模索されていくことでしょう。

そして、これからまた、50年、100年と、奈高生に愛されるような中庭になって欲しいと願っています。


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ひとつ前のブログ記事でも告知いたしましいたが、

実は、このたび、この奈良高校・創立100周年記念事業の中庭『竪義の庭』の

お披露目会が、この夏(2024年8月10日)開催されます。

学校の中庭ということで、普段なかなか見ることができない空間ですが、

このたび、卒業生や、この100周年記念事業にご寄付いただいた方ほか、

一般の方にも見学していただける機会がございます。

事前申込制になりますが、ご興味のある方は一度、奈良高校のホームページに

詳しく案内が出ておりますので、そちらをご覧ください。


 ※ 奈良県立奈良高等学校のHPはこちら  『竪義の庭』完成披露会のお知らせ


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居場英則

『進化する庭、変わる庭』がテーマ。本業は街づくりコンサルタント、一級建築士、一級造園施工管理技士、登録ランドスケープアーキテクト(RLA)。土面の殆どない庭で、現在約120種類のバラと、紫陽花、クレマチス、クリスマスローズ、チューリップ、芍薬等を育成中。僕が自身の庭を創り変える過程で気づいたこと。それは、植物の持つデザイン性と無限の可能。そして、都市部の限定的な庭でも、立体的な空間使用、多彩な色遣い、四季の植栽の工夫で、『風景をデザインできる』ということ。個々の庭を変えることで、街の風景も変えられるはず…。『庭を変え、街の風景を変えること』が僕の人生の目標、ライフワーク。ーー庭を変えていくことで人生も変えていくchange my garden/change my lifeーー

個人ブログChange My Garden

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