2025.4.30 / ガーデニング術実験集合住宅・NEXT21の緑化
いよいよゴールデンウィークに入り、我が家のガーデンも様々な花が咲き始め、何だか気ぜわしい季節に
なってきました。
さて、今回は、4月のツツジシーズン真っ盛りということもあって、美しいツツジの咲く風景をご紹介します。
といっても、観光で見に行くツツジガーデンではなく、都市の中の集合住宅に咲くツツジの風景です。
以前にも何度か、こちらのブログコーナーで紹介させていただきましたが、インフラ・エネルギー会社の
大阪ガスさんが所有・運営されている大阪の中心部・上町台地にある「実験集合住宅・NEXT21」という建物の
「立体街路」と呼ばれる共用廊下に植栽されたツツジの様子をご覧いただきます。
この建物・NEXT21は、エネルギー会社である大阪ガスさんが「暮らし」、「エネルギー」、「環境」をテーマに、
社員の方が実際に住みながら、様々なデータを収集し、未来の暮らし方の提案のための実証実験をされる施設で、
1993年に居住実験が始まり、昨年は30周年の節目の年にあたり様々な記念事業やイベントを開催されたのですが、
その事業企画のお手伝いをさせていただきました。
企画だけでなく、ガーデンデザイナーとして、共用部分にいくつかの新しい植栽も担当させていただきました。
前回の記事(実験集合住宅・NEXT21のつるバラ誘引)では、
冬の季節におこなったつるバラ誘引作業の様子などを紹介しましたが、
その時は、樹木の多くは落葉していて、少し殺風景な風景の写真をお見せしましたが、
今回は美しい新緑に覆われた、本来の姿をご紹介いたします。
一般的な集合住宅と違って、地表面の庭だけでなく、屋上庭園や、壁面や廊下など
建物のいたる所が緑化された、他に類を見ないような都市空間となっています。
上の写真は、北西角の建物のメインエントランス付近の様子です。
左端には、シンボルツリーのカスミザクラの大木が大きく茂っています。
こちらは、反対側の南側。
一般的な集合住宅では、南側に住戸を設けるのが定石ですが、
NEXT21では、建物はコの字型に配置され、中央のくびれた部分の
地下1階に、大きな中庭(エコロジカルガーデン)抱えています。
その中庭を囲むように、コの字型の共用廊下が配置されています。
その共用廊下のスペースを使って、様々な建物緑化が施されています。
中庭(エコロジカルガーデン)から、建物正面(南面)を見上げたアングルです。
コの字の両端から空中ブリッジが渡され、それに対峙する南向きの共用廊下には、様々な植栽が施されています。
少し斜めから建物を見上げてみます。
建物を支える中央の柱を、つる性の植物が駆け上がっているのが印象的です。
反対側から見上げると、このような感じ。
建物は、SI(スケルトン・インフィル)という考えで、構造体と可変可能な住戸とが分離されるようなシステムが
採用されています。
その外部に見える構造体を使いながら、様々な植物が配置されています。
再び正面から見上げたアングル。
赤や白、ピンクの花が咲いているのが、3階の共用廊下です。
3階、4階の共用廊下には、建物からはみ出すように、植物が育っているのが分かります。
こちらは、コの字型の建物に囲われた、地下1階の中庭(エコロジカルガーデン)。
写真左側が1階の地表面(道路)で、そこから1階分斜面を降りていくような立体的なガーデンがつくられています。
既に新緑に覆われて、全貌が分らないほどですが、この斜面を使って、蛇行するせせらぎが配置されています。
このエコロジカルガーデンは、ほとんど園芸品種が使われていない、この地域に生息する固有種の植物で
植栽計画が行われています。
そのエコロジカルガーデンから、建物を見上げてみました。
3階の共用廊下に植栽された植物が旺盛に茂り、中庭(エコロジカルガーデン)に、滝の水が流れ落ちるような
雰囲気で、植物が下垂しています。
こちらは、建物2階の共用部分から、南側を見上げたアングルです。
コの字の両側の住棟を結ぶ、空中ブリッジが見えています。
その手前、3階の共用廊下に配置された大株のツツジやサツキの枝が、大きく空中に張り出しています。
その枝の先に、満開の花が咲いているのが分かりますでしょうか?
反対側のコーナーにも、白花のツツジが大きくオーバーハンギングしています。
ツツジの花を下から見上げることもなかなかないと思いますが、とてもレアな見え方です。
ツツジ・サツキが植栽されている3階の共用廊下を、側面から見たところです。
ちょうどコの字の角の部分に、ピンクのサツキ、白いサツキ、赤いツツジが満開です。
赤いツツジの向かって右隣に、つるバラを植栽させてもらいました。
またひとつ上の4階にも、白花のモッコウバラを植栽させてもらいました。
早咲きの白モッコウバラは、すでに咲き始めていて、滝を流れ落ちる水のように
その花を階下へとつなげています。
3階共用廊下のコーナー部、満開のツツジが見事です。
3階の共用廊下より、斜めから撮影してみました。
手前に色とりどりのツツジとサツキ、その上から白モッコウバラが枝垂れ咲き、
さらにその奥、建物の柱を伝って上へ上へと伸びるつる性の植物が重層的に
見えています。
縦位置の写真の方が、より立体的な動きが出るでしょうか?
中央の白いツツジが、太陽の光を浴びて、輝いています。
こちらは、艶やかなピンク色のサツキ。
春らしい華やかな風景を彩ってくれます。
共用廊下から、引きのアングルで、この壁面緑化の全景を切り取ってみました。
集合住宅の風景とは思えないほどの緑量です。
こちらは、コの字の住棟の両側を結ぶ、3階の空中ブリッジより、真正面の3階共用廊下を見たアングル。
緑に囲われた美しい緑化空間が目の前に広がっています。
こちらは、逆に3階の共用廊下から、正面南側の空中ブリッジを見たアングル。
コの字の両側を結ぶ空中ブリッジは、3階と5階の2か所に設けられています。
少し斜めから見たアングル。
上の階(4階)から枝垂れ咲く、白花モッコウバラのツルが、
共用廊下の眼前を覆い始めています。
その白モッコウバラを横から見たところ。
この場所に植えさせてもらって、今年で3年め。
株もかなり大きくなり、大迫力で風景をつくってくれています。
引きで見ると、こんな感じ。
まだ、バラの季節には少し早いので、白モッコウバラは2分咲き程度。
咲き進むと、滝のような風景をつくってくれるはずです。
階段を少し登って、5階の共用廊下から、3階のツツジ・サツキゾーンを見下ろしたアングル。
下の階(2階)に飛び出している三角形の部屋は、講演会などができるシアタールームです。
シアタールームの窓からも、この満開のツツジを見ることができます。
満開のツツジ・サツキを見下ろしたアップ。
建物の南面の共用廊下に植栽されているため、日照条件も良く、大きく枝を張り出して、
多花性のツツジらしく、ボリューム感のある花の風景をつくりだしています。
基本的には、日本庭園のような丸く刈り込むような剪定はせず、自然樹形で、外側に枝を伸ばしています。
こちらは、5階にある空中ブリッジより見下ろしたアングル。
通常の集合住宅では見ることができない、さまざまなアングルから、植栽を楽しむことができる、
とても魅力的な建物となっています。
4階の白モッコウバラと3階のツツジ・サツキのコラボレーション。
撮影したのが、まだバラには少し早かったので、モッコウバラは満開ではないのが
残念ですが、このあとは、白い滝のように咲いてくれると思います。
ツツジは、こんなところにも。
5階の共用廊下の角の住戸専用庭スペースに植えられた、
ショッキングピンクのツツジが満開でした。
実は、このスペースには、大型のつるバラを2本植えていて、
そのうちの一本は外壁に沿って下垂させています。
そのつるバラの様子もうかがえます。
アルコーブ状のこの専用庭は、かなり広く、共用廊下と空間につながっているため、
住民の憩いの場所となっています。
ひとつ上の6階から引きで見ると、こんな感じ。
5階の空中ブリッジのたもとに、このアルコーブ状の専用庭が配置されています。
そして、その住戸専用庭の壁面に、もう一本のつるバラ、パレードを植栽しています。
こちらも植栽して、今年で3年目を迎えるので、株もかなり充実して、大きく育っています。
もう間もなく、この壁面はパレードのローズピンクで埋め尽くされることになる予定です。
6階から見下ろした、このアルコーブ状の住戸専用庭。
この住宅に住まわれている方が、日常的なメンテナンスをされていまして、四季折々の花が咲きます。
正面の手すりの際に、もう一本の大型のつるバラ、フランソワ・ジュランビルを植栽しています。
このバラは、10mほどにも伸びるタイプで、しかも下垂しても花を咲かせるため、
外壁に沿って、長いツルを枝垂れさせています。
ここも、今年で3年目を迎えるため、たくさんの淡いピンクの花が、滝のように咲くはずです。
こちらが、最後の一枚。
5階から、中庭のエコロジカルガーデンを見下ろしたアングルです。
途中階(3階)のツツジ・サツキの張り出しと一体的に見え、とても重層的な都市の緑化空間となっています。
いかがでしたでしょうか?
なかなか写真だけでは伝わらない部分もあるかもしれませんが、実験集合住宅・NEXT21の美しい都市緑化を
ご覧いただきました。
ツツジの次は、バラへと開花が続きます。
次回は、また、NEXT21のバラの風景もご紹介できればと思っています。
乞うご期待!
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