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専門家「風景」をつくるガーデニング術

2月末、京北バラ園(六ヶ畔・花簾庭)の雪模様

居場英則

3月に入り、ようやく温かくなってきたのもつかの間、一転、寒の戻りというか寒い日が続いています。

今回は、僕がデザインさせてもらった京都の山間部・京北にあるバラ園、「京北・香りの里/六ヶ畔・花簾庭」

(通称:京北バラ園)の今期2025年の運営について、現地のスタッフとの打ち合わせも兼ねた作業のため、

先月2月末に京北に行ってきました。

今回は、今この時期(冬から春へ)の京北バラ園の様子をレポートしたいと思います。

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僕の自宅のある奈良から、はるばる京北まで約2時間半少し掛かって、朝9時前に現地に到着しました。

毎年、この時期、京北は雪が降るので、現地のスタッフに聞いたところ、家屋の屋根や田畑には

多少雪が残っているところもあるけれど、道は大丈夫とのことでした。

何とか無事たどり着けて、こちらが、京北バラ園のメインエントランス(ゲート)です。

周囲の里山風景に馴染むよう、和の趣きを随所に入れて、神社の鳥居のようなデザインのゲートにしています。

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メインエントランスの横には、オーナーが所有する別の土地からずいぶん前に移植した紅梅が植えられています。

いつもこの時期に京北に行くと、だいたい満開手前くらいまで咲いているのですが、今年は寒かったのか、

まだ蕾が固いままで、全く咲いていませんでした。

一昨年、結構、強めの剪定がされて、残念な樹形になっていたのですが、ようやく元の美しい樹形に戻りました。

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スタッフ用の勝手口から、バラ園の中に入ってみました。

まだうっすらと雪が残っています。

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こちらは、メインエントランス近くの木立性のイングリッシュローズエリア。

地面全体に、雪が残っています。

既にバラ園スタッフがバラの剪定を行っていて、低く樹形が保たれています。

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こちらは、つるバラを壁面や屋根に誘引するための家形形状の「東屋(パーゴラ)」。

周囲にある日本家屋の切妻屋根の景観に調和するようなデザインとしています。

この東屋の屋根や垂木にも雪が残ったままです。

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東屋の南側には、木立性の和バラを集めたゾーンがあります。

この和バラは、弱くて厳しい環境の中で次第に淘汰され残っているのは、当初の半分ほどになってしまいました。

寒さ対策で、株全体に不織布を掛けたりしています。

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東屋を引きのアングルで全景を写してみました。

バラ園ができてもう7年ぐらいが経つので、木部は結構傷んでいて、今回屋根の木部の防腐塗料を塗り直すことに

なりました。

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そのため、東屋の屋根の上に持ち上げていた大型のつるバラ、メイクィーンが東屋の両側に2株植えてあるのですが、

今回誘引を一旦解いて、外してあります。

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こちらは、反対側の柱を伝って屋根に持ち上げていたメイクィーンを、屋根から外したところ。

今年は、一旦強めに剪定がされているので、春の花数は多少減るかもしれません。

屋根の防腐塗料塗りが終わったあと、誘引のためのステンレスワイヤーを張ってから、

ようやくつるバラの誘引が始まります。

いろいろ段取りがあって、ひとつづつ地道にこなしていかないと前に進みません。

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こちらは、バラ園西側にある八連の大型アーチです。

アーチの下を軽自動車が入れるようにしてあるため、かなり大きなアーチで、一番高いところで4.5mくらいあります。

このアーチも周囲の里山風景に調和するように、半円形の一般的なアーチではなく、不等辺の屋根型形状をした

オリジナルデザインで、地元・京北のアイアン作家さんに製作していただきました。

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バラ園の中央~後方あたりは、香りのオールドローズゾーンになっています。

その中でも、大型のつるバラは岩の後ろ(北側)に植栽し、その岩を川の水が越えるようなイメージで

つるバラの花を咲かせるような誘引をお願いしています。

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横から見るとこんな感じ。

春になって花が咲くと、まさに水の流れをバラの花が表現しているように見えます。

現地のスタッフの皆さんたちが、毎年工夫を重ねながら、見事な誘引をしてくださっています。

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こちらは、バラ園の中心部ですが、少し引いてオールドローズゾーン全体を見たアングル。

あちこちに置かれた岩を乗り越えるように、オールドローズのつるバラを手前に引っ張るように誘引しているのが

分かりますでしょうか?

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こちらも、横から見るとこんな感じ。

なかなか他のバラ園では、このような誘引をしているところはないんではないでしょうか?

バラ園のコンセプトが、「バラ園の横を流れる上桂川の渓流の水の流れをバラの花で表現する」ということで、

このような岩(石)の配置と、つるバラの誘引方法を採用しています。

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こちらの写真は、東屋パーゴラから、バラ園の奥(北側)を見たアングルになります。

バラ園の中央部に、シンボルツリーの株立ち樹形のエゴノキを植えています。

その更に奥には、棚田の段差を活かした「バラの滝」ゾーンと呼んでいる、木塀で化粧をした段差花壇があります。

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こちらは、つるバラのオールドローズのエリアの東端です。

ここも岩を乗り越えるような誘引を行うのですが、まだ手付かずで、たくさんのシュートを伸ばした

オールドローズが暴れているのが分かります。

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バラ園の東側には、「六ヶ畔茶寮」と呼んでいる建物と、オーナーの事務所の建物があり、

和風庭園も造られています。

その茶寮側のバラ園には、低い木製のフェンス(塀)が作られていて、そちらにもつるバラを誘引しています。

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こちらが、その木塀。

まだ、こちらの木塀へのつるバラの誘引作業は手付かずの状況です。

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そして、こちらが、当バラ園のメインとなる見せ場、「バラの滝」ゾーンと呼んでるエリアです。

棚田の段差を活かして設けた「擁壁花壇」に、日本のつるバラ、群星・群舞をランダムに植栽し、

バラの花が咲くと擁壁の上から水が流れ落ちるような、とてもダイナミックな風景になります。

このバラの誘引にも、かなりのノウハウと技術が必要で、現地スタッフの皆さんが、毎年工夫を凝らしながら

作業をしてくださっています。

今年は、降雪の影響で、バラ園の作業(剪定・誘引・施肥など)が遅れているとのことでした。

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こちらが、その「バラの滝ゾーン」の裏側(北側)になります。

新しく伸びたシュートは、裏側にも放射状に広がります。

それを、内側(バラ園側)に向けて、引っ張るように誘引してもらっています。

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こちらは、バラ園の北側、棚田の2段目です。

こちらには、低めのアイアンで製作してもらったパーゴラがあり、そこの大型のつるバラを3本、誘引しています。

この写真のつるバラは、フランソワ・ジュランビル。

大型化して、パーゴラの手前にスクリーンをつくるように、豪快に咲いてくれます。

この誘引も、現地スタッフの腕の見せ所なんです。

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棚田2段目のパーゴラを東側から見たところ。

ここは、圃場的なエリアで、調子が悪くなったバラをこちらに移して、養生をしたりしています。

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パーゴラの西側には、大型のつるバラ2本を植えています。

桜のソメイヨシノのような淡いピンク色の花を咲かせるポールズ・ヒマラヤンムスクというつるバラと、

超遅咲きで鮮やかなピンクのポンポン咲きのつるバラで、ドロシー・パーキンス。

実は、この2本のつるバラは、僕の自宅ガーデンから移植したつるバラです。

一般の住宅ではなかなか扱いが難しい、とても大きく育つつるバラで、手に負えなくなって、

バラ園オーナーの了解を得て、数年前に、こちらに移植させてもらいました。

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京北バラ園は、4枚棚田の一番南側、国道に面した田んぼ一枚分がバラ園になっていますが、

今期より、4枚棚田の2枚目と3枚目にも、バラ園を拡張することになりました。

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こちらが、棚田の2枚目と3枚目の段差を活かして作った、1期エリアの「バラの滝」ゾーンと同じ「段差花壇」。

長さは約25mほどあります。

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2段目の「段差花壇」を横から見たところ。

棚田の段差は50㎝程度のものですが、そこに1.5mほど段差ができるように、ブロックを積み上げて

花壇を作っています。

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その2段目の「段差花壇」にも、この冬、つるバラ、群星・群舞を植栽しました。

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植えて間もなく寒い冬を迎えましたので、現地スタッフが案じて、つるバラの株元に敷き藁を敷いて、

枝にも新聞紙を巻き付けるなどの防寒対策をしてもらいました。

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手前が、2枚目の段差花壇、その奥に見えているのが3枚目の段差花壇です。

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棚田の2枚目、東側から、北側を望んだ全景です。

奥の山麓には、茅葺屋根の古民家も見えています。

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この古民家も最近オーナーが手に入れたため、バラ園と古民家が一体的なデザインで、

里山の景観を構成しています。

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4枚棚田の最奥から、3枚目の「段差花壇」の裏側を見たところ。

こちらの「段差花壇」にも、1枚目、2枚目と同じ日本のつるバラ、群星・群舞を植えています。

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4枚棚田の最奥には、地元の造園業者さんがデザイン、施工された日本庭園が造られています。

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こちらの写真は、隣接する古民家のある高台から見た、バラ園のある4枚棚田の最奥の様子です。

3枚目の「段差花壇」の奥に、日本庭園が設けられています。

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こちらは、4枚棚田の3枚目。

新たにつくられた「段差花壇」に両側を囲まれた広いエリアです。

まだ、このエリアをどのようにデザインしていくか、詳細は決まっていません。

とりあえず、今年は「段差花壇」に、「バラの滝」をつくることを主眼に置いています。

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そして、こちらが、棚田2枚目。

中央に低いアイアン製のパーゴラがあります。

この2枚目もどのようにデザインしていくかは、今後、オーナーと相談しながら作っていくことになります。

バラ園の全体をご案内したので、ここからは、この日の作業の様子もレポートしたいと思います。

10時頃、スタッフが集まり、今年の業務内容を確認して、各々作業に取り掛かりました。

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僕のこの日の担当は、駐車場に面した木製フェンス(塀)へのつるバラの誘引作業です。

昨年末に誘引を外して、仮剪定していたつるバラを、麻ひもを使って、壁面に貼り付けて誘引していきます。

こちらは、勝手口近くに植栽しているつるバラで、ダフネ。

鋭い刺のある剛直な枝を、猛獣を扱うようになだめすかしながら、制圧していく感じです。

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午前中は、何とか曇り空のままだったのですが、お昼過ぎから、急に雪が降ってきました。

天気予報では、今冬最後の最強寒波到来ということで、降雪の心配がありましたが、

やはり京北は、山あいの町で寒いのか、雪が降り出しました。

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降り出した最初は、こんな感じで、パラパラと雪が舞う程度だったのですが・・・・。

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あっという間に、こんな吹雪に近い状態になってきました。

近県から駆けつけてくれるスタッフの皆さんは、雪には慣れているのか、ものともせず作業を続けておられます。

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次第に、奥の古民家も霞んできました。

この日は、バラの株元に寒肥をやる作業がメインのようで、スタッフの皆さんは、バラの株元に肥料を入れる穴を

掘っておられますが、雪でも手を休めることはない、つわもの揃いです。

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雪を避けられるのは、東屋パーゴラのみです。

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別のスタッフは、東屋パーゴラの屋根の下で、作業を続けています。

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僕が園芸ショップで買いこんで持ち込んだ薬剤を含め、今年このバラ園で使用する薬剤の在庫管理を

してくれています。

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一段と雪が強く降ってきました。

このままだと道路にも雪が積もるかもしれなくなってきたので、ノーマルタイヤの僕は、

一足先に現場を離脱することになりました。

他のメンバーは、スタッドレスタイヤを履いていたり、普段から雪が降る地域にお住まいで、

この程度の降雪には慣れておられるため、遅れている作業を取り戻すため、

可能な限り、作業を続けるとのことでした。


日々、こんな作業を積み重ねながら、5月中旬~6月中旬のオープンガーデンを万全の体制で迎えるよう

頑張っています。

バラ園のオーナーの厚意で、今年2025年もオープンガーデンを開催する予定です。

後日また、オープンガーデンの情報を公開いたします。

乞うご期待!


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居場英則

『進化する庭、変わる庭』がテーマ。本業は街づくりコンサルタント、一級建築士、一級造園施工管理技士、登録ランドスケープアーキテクト(RLA)。土面の殆どない庭で、現在約120種類のバラと、紫陽花、クレマチス、クリスマスローズ、チューリップ、芍薬等を育成中。僕が自身の庭を創り変える過程で気づいたこと。それは、植物の持つデザイン性と無限の可能。そして、都市部の限定的な庭でも、立体的な空間使用、多彩な色遣い、四季の植栽の工夫で、『風景をデザインできる』ということ。個々の庭を変えることで、街の風景も変えられるはず…。『庭を変え、街の風景を変えること』が僕の人生の目標、ライフワーク。ーー庭を変えていくことで人生も変えていくchange my garden/change my lifeーー

個人ブログChange My Garden

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