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専門家「風景」をつくるガーデニング術

県立奈良高校・創立100周年記念事業の中庭「竪義の庭」冬のメンテナンス

居場英則

僕の母校である、県立奈良高等学校の創立100周年記念事業でデザインさせてもらった中庭「竪義の庭」ですが、

完成後、学生たちが様々な使い方で活用してくれています。

昨年の11月に創立100周年の記念式典も挙行され、一区切りついてからは、学校に行く機会もめっきり減りました。

そんな中、学校側からの要請で、中庭の冬のメンテナンス(雑草引きや樹木の剪定など)作業を、

この庭の造園工事に携わっていただいた造園施工会社さんに依頼されまして、

そのメンテナンス作業の監修ということで、僕も学校に呼んでいただきました。

今回は、「竪義の庭」の冬の様子と、メンテンス後の様子をレポートしようと思います。

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こちらは、久しぶりに訪問した奈良高校の中庭「竪義の庭」。

ちょうど冬休みの前で、学生もほとんど登校していない時期だったのですが、朝イチの中庭はとても静かで、凛とした緊張感のある中庭でした。

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中庭に入る昇降口側から見た全景。

落葉樹が多いガーデンは、冬枯れで少し寂しく見えました。

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中央広場の一部、日当たりの良いエリアには、芝生の代わりにグランドカバープランツの「クラピア」を敷き詰めています。

クラピアも寒さのためか、葉を落とし茶色く変色していました。

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地面を這って広がるクラピアも、まだびっしりと生えきっていないので、隙間から雑草も多数生えてきています。

今回の冬のメンテナンスでは、これらの雑草引きがメインの業務となります。

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こちらも、中央広場の一角、排水性を考慮してインターロッキングを敷き詰めた一部を欠き込んで、

宿根草のクラピアを敷き詰めているエリアです。

このあたりは、もうだいぶクラピアが広がって、雑草も生えにくい環境になっているかと思います。

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生駒石のベンチから、プラトン・アリストテレス像方向を見たアングルです。

写真左側は、ガーデン(植栽)エリアとなっていますが、こちらの宿根草エリアも冬枯れの状態です。

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こしらは、プラトン・アリストテレス像後方の巨大アーチ中編です。

アーチの両側の植栽ゾーンは、冬枯れの宿根草とともに、雑草も結構はびこっています。

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プラトン・アリストテレス像の背後をR状に囲む、コンクリート製の壁面です。

この壁面を使って、両側からつるバラを誘引していますが、そのつるバラも伸びたシュートが乱れていますし、葉も残ったままなので、今回のメンテナンスで、葉を落とし、剪定の上、誘引しなおす予定です。

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こちらは、僕が気に入っているツツジゾーン。

手前の赤く見えるのは、クルメツツジだと思いますが、花ではなく、葉が赤く紅葉したものです。

このあたりも、冬枯れのガーデンの醍醐味のひとつかと思います。

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このあたり(巨大アーチの向かって右側)は、生駒石のロックガーデンと、モミジゾーンです。

モミジは落葉してしまって、ほぼ枝だけの状態になっていますが、里山のような風景がとても気に入っています。

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巨大アーチの向かって左側の植栽ゾーン。

こちらも、生駒石を使ったロックガーデンと宿根草、高木を植栽したエリア。

宿根草は冬枯れで、それはそれで独特なナチュラリスティックな風景になっていますが、

こちらも、かなり雑草が侵食してきています。

今回のメンテナンスで、綺麗にしたいと思います。

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西側の通路につながる出入口に設けた、高さ約4.5mの巨大アーチ。

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巨大アーチを正面から見たアングル。

向かって左側に、白い花が咲くつるバラ、アルベリック・バルビエ、

向かって右側に、黄色い花が咲くつるバラのイングリッシュローズで、モーヴァンヒルを誘引しています。

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アーチを裏側から見たアングル。

両側のつるバラも、植えた時は1.5mほどの長さしかありませんでしたが、

この1年で、特にこの写真では、右側のアルベリック・バルビエは4m以上に伸びました。

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西棟2階にある図書館へつながる、鉄骨の屋外階段から巨大アーチを見下ろしたアングルです。

まだまだ枝は細くひ弱な感じですが、ツルの長さはかなり伸びたので、今回のメンテナンス作業では、これらのツルを一旦外し、剪定した上で、再度、この巨大なアーチに誘引します。

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こちらは、巨大アーチの横の、土盛りした部分。

斜面部分には、土が流れないように、グレゴマやツワブキといったグランドカバーの宿根草を植え付けています。

こちらも、まだ全面をグランドカバーの宿根草が覆いつくしていないため、

その隙間から雑草が旺盛に生えてきています。

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今回の冬のメンテナンス作業では、昨年の冬に、植栽工事を担当してくれた造園会社の職人さんたちが

関わってくれました。

多彩な宿根草を植えた宿根草ガーデンでは、雑草と宿根草を見分けるのが難しいのですが、

プロの職人さんたちに任せておけば安心です。

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その間に、僕はつるバラの誘引・仕立て直しを担当させてもらいました。

まずは、プラトン・アリストテレス像後方のコンクリート壁に誘引しているつるバラ2本の誘引作業を行いました。

こちらは、赤い花が咲くつるバラで、フロレンティーナ。

残っていた葉をすべて落とし、不要な枝を剪定して、曲面状のコンクリート壁に設けたステンレスワイヤーに

麻ひもを使って誘引していきます。

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巨大アーチに誘引していたつるバラも一旦誘引を解き、絡まったつるをほどきながら、残す枝を選別していきます。

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こちらは、イングリッシュローズのつるバラで、黄色い小花を咲かせる、モーヴァンヒルです。

まだ、最長部で2mほどしかありませんが、枝を広げて誘引しておきました。

京北バラ園では、4m近くまで大きくなって、春の開花期には、とても見栄えが良いので、

ここ奈良高校でも、数年経てば美しい風景をつくってくれると思います。

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こちらは、反対側のつるバラで、アルベリック・バルビエの誘引の様子。

バルビエは、最長部で約4mはつるを伸ばしていましたので、アーチの先端まで十分届く長さです。

枝を間配りながら、編み込むように誘引しています。

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アルベリック・バルビエの枝の先端を、巨大アーチの頭頂部まで誘引するのですが、

3mくらいの脚立の最上段部に上らないと届かなくて、

さすがに僕では怖くてできないので、手慣れた職人さんにお願いしました。

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アーチの最上部まで届いた枝は、まだ1本のみですが、

これからどんどん伸びて行くことでしょう。

毎年の誘引が楽しみです。

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巨大アーチの両側のつるバラの誘引が完了した様子です。

特注で製作してもらった巨大アーチですが、メーカーの担当者の方も、

これだけの大きなアーチは作ったことがないとおっしゃっておられまして、

このアーチを覆いつくすようにつるバラが咲くと、かなり見事な風景になるのではないかと思います。

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アーチの奥、プラトン・アリストテレス像を守るように設けたRの壁面の両側から誘引したつるバラ。

どちらも、赤い花が咲くつるバラで、フロレンティーナ(左側)とバロン・ジロー・ドゥ・ラン(右側)。

こちらも、まだ植えて1年ということで、小さいままですが、数年経つとこちらもRの壁面を覆いつくすように

赤いバラが咲いてくれると思います。

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向かって左側のつるバラ、フロレンティーナの誘引の様子。

R壁の下部には、創立50周年記念でつくられた前の校舎の中庭整備の趣意書が銅板にレリーフされたものを

設置しています。

その銅板になるべく掛からないように、ツルを誘引しています。

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こちらは、バロン・ジロー・ドゥ・ラン。

反対側のフロレンティーナとともに、我が家の庭から供出(現物寄付)させてもらったつるバラです。

ほぼ一季咲きですが、花形がとても美しいので、早く壁面全体で咲くよう、大きくなって欲しいものです。

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R壁の表側、創立50周年で前の校舎の中庭でつくられたプラトン・アリストテレス像。

今回の100周年記念事業の一環で、今の新しい校舎の中庭に移設されました。

その像の足元両側にも植栽スペースを設けています。

フッキソウ、ギボウシ、ツワブキといった葉物の植物ばかりで構成していますが、

このエリアも、結構、雑草に侵食されていたので、それらを引き抜いてキレイにしました。

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巨大アーチのつるバラを剪定・誘引し、その両側の宿根草ガーデンも、落ち葉や雑草を清掃し、綺麗になりました。

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反対側からも撮っておきました。

やはり雑草を抜いてスッキリすると、冬枯れでも美しいですね。

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盛り土の外側(中庭中央からは見えない場所)も、雑草を除去してすっかりキレイになりました。

中庭の四隅にある同じようなエリアは、面積も広く、まだグランドカバー植物が地面を覆うほどには

成長していないため、雑草が生えやすい環境にあります。

今後も重点的にメンテナンスしていくエリアになるかと思います。

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多くの宿根草を植えた、宿根草ガーデンエリア。

ここも雑草や落ち葉を掃除して、綺麗になりました。

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宿根草ガーデンの反対方向を見たアングル。

かなりの宿根草が枯れたり、夏の高温で溶けて消えてしまったりしていますが、

その中でも健気に残っている宿根草たちが、冬の風景をつくってくれています。

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少し引いてみたアングル。

手前が、中央広場に設けた生駒石のベンチ。

このエリアも雑草を除去して、見違えるほどきれいになりました。

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こちらは、中庭の日陰ゾーン。

校舎南棟の足元で、中庭の中で、最も日照条件の悪いエリアですが、問題なく植物は育ってくれています。

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反対側、東方向を見たアングル。

冬のガーデンでも、それなりに植栽ボリュームがあり、単調にならない感じが良いです。

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こちらは、中庭の南側センターに植えたシンボルツリー的な(まだ小さいですが)樹木で、

プンゲンス・トウヒ・ホプシー。

青い葉が特徴的で、将来的に奈良高校のクリスマスツリーになって欲しいという想いで、植栽しました。

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こちらは、楕円形のベンチとの境界部分。

宿根草のアジュガを群生させているエリアです。

アジュガの中でも、葉が赤紫色のタイプのものを入れたので、冬でも赤紫色に染まり、なかなか良い感じです。

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引きで、中庭全景(校舎南棟方向)を見たアングルです。

まだまだ高木も小さく、緑豊かなガーデンという感じではありませんが、

数年経てば1階部分は緑のスクリーンになるようなイメージです。

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中庭を斜めから見た全景です。

中央広場(プラザ)の一部のクラピアゾーンも、雑草を抜いてとてもきれいになりました。

春になって、グリーンの新芽が出てくるのが待ち遠しいです。

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こちらは、北東角の盛り土の外側。

こちらには、ユキヤナギの大株を植栽したのですが、こぼれ種で、ユキヤナギがグランドカバーのように

そこかしこから芽吹いています。

造園業者さんとも相談し、当面はそのままにして、春に根際でカットしようかということになっています。

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東側の昇降口からの出入口の両側ゾーン。

こちらには、春に可憐な花を咲かせるシャガを群生させています。

このあたりもうまく着いてくれています。

昨今の温暖化の影響で、一年目の夏を越せなかった樹木や宿根草もいくつかあるのですが、

概ねは何とか夏越しでき、来春を迎えられそうです。

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ほぼ一日掛けて、母校の中庭のメンテナンス作業に関わらせていただきました。

スッキリ綺麗になり、また新たな一年を迎えることができました。

2年目の春が今から待ち遠しいです。


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居場英則

『進化する庭、変わる庭』がテーマ。本業は街づくりコンサルタント、一級建築士、一級造園施工管理技士、登録ランドスケープアーキテクト(RLA)。土面の殆どない庭で、現在約120種類のバラと、紫陽花、クレマチス、クリスマスローズ、チューリップ、芍薬等を育成中。僕が自身の庭を創り変える過程で気づいたこと。それは、植物の持つデザイン性と無限の可能。そして、都市部の限定的な庭でも、立体的な空間使用、多彩な色遣い、四季の植栽の工夫で、『風景をデザインできる』ということ。個々の庭を変えることで、街の風景も変えられるはず…。『庭を変え、街の風景を変えること』が僕の人生の目標、ライフワーク。ーー庭を変えていくことで人生も変えていくchange my garden/change my lifeーー

個人ブログChange My Garden

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