2025.2.21 / ガーデニング術
大阪市内のど真ん中、上町台地の集合住宅やオフィスビルが建ち並ぶ一角に、
大阪ガスさんが所有・運営されている「実験集合住宅・NEXT21」という、近未来的な建物があります。
建築業界では有名な建物ですが、一般にはほとんど知られていない建物かとは思います。
この建物では、エネルギー会社である大阪ガスさんが、「暮らし」、「エネルギー」、「環境」をテーマに、
社員の方が実際に住みながら、様々なデータを収集し、未来の暮らし方の提案のための実証実験をされています。
この建物(NEXT21)が竣工し、居住実験が開始されてから30周年を迎え、
昨年よりさまざまな記念事業が行われていますが、
その企画提案に関わらせていただいています。
以前のブログ記事でも、この「実験集合住宅・NEXT21」について書かせて
いただいておりまして、特にNEXT21の豊かな「都市緑化空間」について、
以下の動画で紹介しています。(ご興味のある方は、是非ご覧ください。)
※ 詳しくは、こちら → 園芸YouTubeチャンネル「ショクナナ」・第9回
この実験集合住宅・NEXT21では、当初の植栽計画を維持しながら
現在に至っておりますが、30周年を機に、少し新たな展開があり、
建物の共用部分のいくつかの場所に、つるバラを植栽させていただきました。
既に2年が経過し、今年の春には3年目を迎え、
バラ本来の開花が期待できるように充実してきました。
今回は、その実験集合住宅・NEXT21に植栽したつるバラのメンテナンス
(冬剪定&誘引作業)について、レポートしたいと思います。
写真は、NEXT21の中央・南側にコの字型に設けられた屋外空間
(最下階の地下1階)には、「エコロジカルガーデン」と呼ばれる
緑地空間(中庭)がある場所を撮影したものです。
外壁の改修工事が始まるタイミングで、中庭には足場が掛けられています。
中庭(エコロジカル・ガーデン)の上空、3階部分と5階部分には「空中ブリッジ」が架けられています。
南側に面した共用廊下とともに、回遊できるようなプランニングになっています。
この3階のブリッジの正面上部の角(写真左上)に、共用部の植栽スペースがあって、
そちらにつるバラを植栽しています。
その部分を下から見上げたところ。
手すりを越えて、何本ものつる状に伸びたバラの枝が垂れ下がっているのが見えています。
こちらは、3階の空中ブリッジから、建物中心部方向を見たアングルです。
格子(グリッド)状の梁と柱の部分に、多くの植栽が見えています。
こちらは住戸の南側に設けられた共用廊下に植えられた植物たちです。
その多くは、竣工時に計画的に植栽された植物です。
正面に見えている2層にわたって垂直に伸びる植物は、勝手に生えてきたものらしく
(鳥の糞や、風で飛んできた種が発芽したもの)、
今ではアニメの「天空の城・ラピュタ」のような様相を示しています。
実は、この共用廊下の花壇にも、新たにつるバラを植栽させてもらいました。
3階廊下から4階の廊下方向を見上げたアングルですが、
ところどころに、ツルが伸びているのが分るかと思いますが、
それが新たに植栽したつるバラです。
こちらは、4階の共用廊下の内側から見たアングル。
奥に見えているのが5階の空中ブリッジです。
手前の手すりの際に植栽したのが、棘のないつるバラで、白モッコウバラ。
植栽して2年が経ち、だいぶ大きく育ちました。
同じ部分を違うアングルで撮影したものです。
明るい方向が南に当たるので、基本的には外側に張り出すようにツルを伸ばして生育します。
こちらは、5階の空中ブリッジより、4階、3階の共用廊下を見たアングル。
4階に2本、3階に1本、つるバラを植栽しました。
共用廊下の端の小さな植栽スペースに植えていますので、ほぼ鉢植えと同じような環境になるため、
普通の地植えに比べると、やはり生育は緩やかなように思います。
こちらは、6階の共用廊下から、ひとつ下の5階の共用部を見下ろしたアングル。
空中ブリッジが取りつく部分に、少し広めのアルコーブ状のスペースがあります。
ここは、共用部でありながら隣接する住戸の専用使用部分(いわゆるルーフバルコニー)にあたる場所で、
まとまった植栽スペースには、この住民の方が植えて育てておられる植物があり、
その前には、木製のデッキチェアやテーブルが置かれています。
その共用部の専用使用部分を横から見たアングル。
空中ブリッジや廊下といった、住民の方が普通に利用する共用部分と一体となっているスペースですが、
マンションの共用廊下とは思えない、豊かな緑地空間となっています。
この共用部分の専用使用部分を持つ住戸の壁面を使って、大型のつるバラ(品種は、パレード)を、
2年前に植栽させていただきました。
品種選定については、居住者の希望もうかがいながら、選ばせていただきました。
2年経って、だいぶ大きく育ちました。
地植えのように見えますが、ここも廊下の一角の植栽枡に植えています。
同じスペースを、空中ブリッジ側から見てみます。
ここにはもう一本、フランソワ・ジュランビルというつるバラを
植栽しています。
このバラは、枝垂れても咲く性質を使って、手すりの向こう側に垂れ下がる
ように誘引していて、開花期には滝のように咲かせるイメージです。
このつるバラも、植えた時は1.5m程度でしたが、今は最長部で5m以上に
育っていると思います。
細い枝が絡まりながら伸びていましたが、それを一旦引っ張り上げて、
葉を落としながら、不要な枝を剪定し、また、外壁に沿うように
下に垂らすように誘引しています。
冬のつるバラ誘引作業は、大阪ガスの社員の方、入居者の方と一緒に行っています。
こちらは、そのフランソワ・ジュランビルの剪定・誘引が終わった様子。
基本的には、すべての枝を手すりの外側(南川)に出し、外壁に沿って枝垂れて滝のように咲かせる誘引を
行っています。
今年は、5m以上は枝垂れているので、開花期には、バラの滝のようになるのではないかと、
とても楽しみにしています。
こちらは、建物の壁面を使った誘引をした大型のつるバラ、パレード。
建物の外壁の仕上げを傷つけないように、手すりや竪管(雨どいなど)を手掛かりにして
ステンレスワイヤーを張ってもらい、そのワイヤーにつるバラを誘引しています。
このパレードも、2年前に植えた時は1mほどの小さな株でしたが、日当たりと風通しが良いためか、
一気に大きくなり、この春の開花がとても楽しみです。
白い背景に、鮮やかなローズピンクのパレードの大輪花が咲くと、この場所も一気に華やぐと思います。
こちらは、5階の共用廊下から、4階の共用廊下を見下ろしたアングル。
住民の方に、葉をむしっていただき、枝だけの状態にしてから、誘引をしました。
誘引といっても、手すりから外側に張り出しているので、壁面とかはなく、空中に浮かんでいる状態です。
何もしなければ、枝が暴れてしまうため、手すりや枝同士を麻ひもで留めて、立体的に固めるような誘引です。
壁面を活用した自宅ガーデンや、京北バラ園のような群生させるバラ園とはまた違った、
都市の中の集合住宅の庭をつるバラを使って演出するという、新たな試みをしいています。
今年の春、どんな風景に仕上がるか、乞うご期待ください。
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