早いもので、今年2017年もあと1週間あまりになりました。
今年も月1回ペースで、こちらに記事を書かせていただきました。
本格的に庭を作り始めて5年が経過した我が家の庭づくりを通して感じたこと、庭づくりの工夫やアイディアなど、
「風景を作るガーデニング術」という一貫したテーマで書いて参りましたが、いかがでしたでしょうか?
読者の皆様に、多少なりとも参考にしていただけるような内容であればと願っております。
さて、今年最後の記事は、我が家の「つるバラの誘引術」について書いてみようと思います。
以前、こちらのブログでも、我が家の庭のつるバラの誘引に関する記事を2つ書かせていただいております。
以前の記事では、我が家のつるバラを誘引している部分の「ビフォー・アフター」的に、誘引作業直後の様子と
開花した状態の比較を見ていただきました。
今回の記事では、つるバラの誘引作業そのものにフォーカスして、その作業状況をご紹介したいと思います。
具体的には、我が家の前庭、建物(母屋)とその向かい側にあるサンルームの壁面を使って一体的に演出している、
つるバラの誘引作業の様子を見ていただこうと思います。
● 今年5月の建物外壁面に誘引したつるバラの開花風景
まず最初に、今年の5月、我が家の前庭の建物外壁面に誘引したつるバラが開花した様子を見ていただきましょう。
前面道路から玄関アプローチを抜けてくると、中庭へと迎え入れるガラス扉があります。
このガラス扉の両側に、白い大理石タイルを貼った建物外壁面があり、そこにつるバラを5本、誘引しています。
白いタイルを背景とし、コントラストを効かせて、右側の壁面に、ローズピンクのキングローズ(右側上)、
レッド・キャスケード(右側中)を誘引し、鉢植えのアントニオ・ガウディ(右側下)をあしらっています。
ガラス扉の向かって左側には、地植えのつるバラ、ジャスミーナと鉢植えのレッド・レオナルド・ダ・ヴィンチを
配置しています。
この風景を構成しているつるバラの現在の様子を次に見ていただきましょう。
● 冬のつるバラの様子
こちらは、今月12月初旬の様子。
夏以降、旺盛にシュートを伸ばしたつるバラ、ジャスミーナ(画面中央)には、
12月だというのに、まだ青々とした緑色の葉が残っていました。
ガラス扉の左側、サンルームの外壁面に誘引したつるバラ、キングローズやレッド・キャスケードの方は、
既に落葉し始めています。
● 旺盛につるを伸ばしたジャスミーナ
こちらは、前庭に面した建物外壁面を斜め横から見たところ。
白い大理石タイルの外壁に誘引した大型のつるバラ、ジャスミーナ(画面手前)は、
返り咲くタイプのつるバラなのに、一季咲きのつるバラのように、
夏以降、勢いのある太いシュートを何本も出し、空中を舞っています。
この新しく出たシュートは、来年の即戦力になる大切なシュートになりますので、重みで折れてしまう前に、
早く壁面に誘引して留めてやる必要があります。
● 誘引作業は、まず「誘引を解く」ことから始める
今年の誘引作業のスタートは、まず、昨年誘引したシュート(枝)を壁面から引きはがすことから始めます。
これを、「誘引を解く」と呼んでいます。
昨年の誘引枝を残したまま、新しく出たシュート(枝)だけを誘引していくという方法もありますが、
ボクは一旦、すべての誘引を解いて、リセットします。
● 葉を落とし枝だけにし、強制休眠させる
誘引を解いた枝は、落葉せずに残っていた葉もすべて取り除き、強制的に休眠させます。
葉が残ったままだと誘引するのにも邪魔になるため、枝だけにし、すっきりさせます。
その上で、来春咲かせるのに必要な枝なのかどうかの見極めを行います。
ジャスミーナは、枝を更新しやすいタイプのバラなので、夏以降、何本もの新しいシュートを伸ばしているので、
古い枝は極力根本から切り、新しい勢いのある枝に切り替えていきます。
また、花を咲かせる太さまで枝を切り戻していきます。
ジャスミーナの場合、中輪花のため、「鉛筆」の太さの枝まで切り戻すことを原則にしながら、
成熟し締まった枝のみを残すようにしています。
締まった枝かどうかの見極めは、剪定バサミを入れた時の音を頼りにしています。
パチンと乾いた音が鳴る枝が、成熟した締まった枝です。
● 枝の選別、剪定が終わったら、いざ誘引!
来春に花を咲かせる必要な枝が決まったところで、枝を壁面に誘引していきます。
一番長く、中心となる枝から、壁面のどこに配置するのか、全体をイメージしながら誘引を始めます。
この際、「つるバラの特性」を考慮しながら誘引します。
「つるバラの特性」の中で、特に意識しているのが花茎(ステム)の長さです。
このジャスミーナというつるバラは、花茎(ステム)が長く、しかも房咲きするため、
その花の重さでうつむいて咲きます。
したがって、低い位置に誘引しても、花が見えないため、なるべく高い位置に持ち上げて咲かせるように
誘引しています。
● 脚立に乗って、高所での誘引作業は危険を伴う
高いところに持ち上げて咲かせるために、壁面の高いところに登っての誘引作業が必要になります。
脚立に乗って、両手を使って壁面につるバラを誘引していく作業はなかなか怖いものです。
特に不安定な足場に脚立を立てると、転倒するリスクがありますので、
脚立を立てる場所には十分注意が必要です。
また、このジャスミーナという大型のつるバラは、太いシュートに鋭い棘が無数に生えています。
誘引時のシュートの取り回し時に、気を抜くとシュートが勢いよく顔面に向かって
跳ね返ってくることがたまにあります。
棘が目に刺さると大変なことになりますので、棘の強いつるバラを誘引する際は、
つばのある帽子を身に着けて作業することにしています。
これだけでも随分危険を軽減することができます。
● サンルーム側の壁面誘引
続いて、こちらの写真は、サンルームの前庭に面した外壁面に誘引した
つるバラの様子です。
今年の12月初旬の状況です。
花後に伸びた、細かい枝が無数に伸びています。
この壁面を、来年春に向けて、仕立て直して行きます。
● 複雑に絡まった枝の整理を行う
先ほど同様、こちらの壁面の誘引しているつるバラの「誘引を解いて」行きます。
ここでは地植えのつるバラ2本と、鉢植えのつるバラ1本を、狭いスペースに
交差させるように誘引しているため、枝が複雑に絡まり合っています。
誘引を解きながら、交差した枝を折らないように、ほどいていきます。
まるで、絡まり合ったあやとりの紐をほどいて行くような感じです。
● 脚立に載って上の方から誘引をスタート
誘引を解き、絡まった枝を整理した後、これまた先ほどのジャスミーナと同様、
枝の選別、剪定を行います。
不要になった古い枝を根元から切り、新しい勢いのある枝に更新します。
そして、残った枝を壁面に誘引して行きます。
まずは、つるの長いキングローズを壁面の上部に誘引する作業から始めます。
複数のつるバラを同一面に誘引する場合、カバーする面積の大きい方、
太い枝を持つ方、壁面の上部を覆う方を先行して誘引するようにしています。
● 波状紋をイメージしながら誘引
つるバラの誘引の際に、特に注意しているのが、その枝の誘引による風景。
バラが開花している期間より、冬の枝だけの期間の方が圧倒的に長いので、
枝だけでも美しい風景が作れるように心がけています。
美しい誘引のスタイルはいろいろあると思いますが、
ボクは、波状紋をイメージしながら誘引しています。
重なる波のように、円弧を重ねるような誘引を心がけています。
写真は、この壁面上部をカバーする、ローズピンク色のバラ、キングローズの
誘引完了時の様子です。
● 背景を活かす誘引
今年は、例年と少し趣きを変えた誘引を行いました。
これまでは、なるべく咲かせる枝を多く残し、たっぷりと壁面を覆い尽くす
ような誘引をして来ましたが、今年は敢えて咲かせる枝を少なくしています。
その理由は、つるバラの背景となる壁面にあります。
我が家では、この建物外壁面に割肌調の白い大理石タイルを貼っています。
写真でも分かるように、割肌調のタイルのため、太陽の光が乱反射して、
壁面に陰影が出来ます。
この陰影や、大理石という質感を活かし、バラの花の背景として活かすことにしました。
バラの花の鮮やかな色合いを引き立てるベースとなる「地」の部分をうまく活かすことによって、
「柄」となるバラの花がより一層引き立つのではないかと考えたからです。
● 背景(壁面)と花のバランスに美を見出す
こちらの写真は、今年2017年春の前庭、建物外壁に誘引したつるバラが開花した時の風景。
壁面を覆い尽くすように、赤〜ピンクのグラデーションでバラの花を咲かせています。
これはこれで気に入っているのですが、来春2018年は、これとは少し違う風景になるのではないかと考えています。
今年より、背景の白い壁面が所々に見えるような風景になるはずです。
思惑通り、うまく行くかは分かりませんが、この試行錯誤こそが庭づくりの醍醐味なのかもしれません。
如何でしたでしょうか?
そろそろ皆様方も、ご家庭でつるバラの誘引作業を始められた頃ではないでしょうか?
つるバラのある庭ごとに、風景やストーリーがあると思います。
どれが正解ということもないと思います。
つるバラを誘引し、庭の風景をデザインすること、これがバラを育て始めて一番楽しいことかもしれません。
来春どんな風景に出会えるのか、ワクワクしながら寒さ厳しい冬を過ごしていきたいと思っています。
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