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専門家「風景」をつくるガーデニング術

県立奈良高校・創立100周年記念事業・中庭プロジェクト、その8(工事編:ロックガーデン・景石設置ほか石工事)

居場英則

2024年が幕開けしました。

さて、こちらの dinos ガーデンスタイリングで連載コーナーを持たせていただいて、8年目を迎えます。

自宅でバラの庭を作り始めて12年。いろいろなことがありました。

徐々に大きなガーデンに関わらせていただける機会も増え、昨年から関わっている僕の母校、県立奈良高校の

創立100周年記念の中庭プロジェクトの工事が、いよいよ佳境に入っています。

CGパース昼景(最終版・枠なし)(奈良高校・中庭PJ).jpg

今年3月末に竣工予定で、急ピッチで工事が進んでおります。

今年も、この母校の中庭プロジェクトの進捗をレポートしながら、どんな風にガーデンが出来上がっていくのか、

ご紹介できればと思います。


さて、昨年末最後のレポート記事(その7)では、校舎に囲われた中庭に、楕円形のスタンドベンチが

その全貌を現したところまでお伝えしました。

まずは、それ以降、昨年末(12月)までの工事の進捗をご覧いただきたいと思います。

配置図.JPEG

こちらが、今回デザインさせてもらった母校の創立100周年記念でつくる中庭の全体像です。

東西南北を校舎に囲われた中庭に、楕円形のスタンドベンチを設けますが、校舎の影になり、

日照条件の悪いエリアには、スタンドベンチの代わりに、ロックガーデンと植栽スペースを設けています。

(上記図面の左側半分あたり)

今回は、そのロックガーデンの石の据え付け工事の様子をレポートしたいと思います。


【2023年11月30日 (木)】

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前日から、造園施工会社さんの方で、現場への景石搬入、据え付け工事が始まっていました。

この日はその2日目です。

すでにいくつかの景石はロックガーデンエリアに設置されていました。

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景石を積んだトラックが、西側校舎から中庭へと唯一アプローチできる進入口から入ってきました。

トラックの両側には盛土を支えるコンクリート擁壁が立ち上がっていまして、ギリギリの幅となっていますが、

なるべく景石を据え付ける場所に近いところまでトラックを寄せて、あとはクレーンで下すことになります。

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トラックには、この日設置する大きな景石がいくつも積みこまれています。

奈良高校のロックガーデンに設置する景石は、いろいろ検討した結果、地元の生駒石で行くことになりました。

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景石は、ワイヤーで吊り上げられ、設置する場所に下していきます。

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地面に景石を下したあと、設計者のイメージに従って微調整を指示します。

樹木と同じく、石にも表裏があり、設置する高さや向き、傾きなどを、細かく指示していきます。

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設置する景石が落ち着いたら、職人さんたちが、石が動かないように、突き棒で土を押し固めていきます。

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こちらは、前日に設置された、カタチの良い景石。

職人さんたちがとても気に入っていた景石だったのですが、据え付けられた位置が、

プラトン・アリストテレス立像の後方で、スタンドベンチや広場から見えにくい場所でした。

せっかくカタチの良い景石なので、もっとよく見える場所に移すべきだと思い、

造園工事業者さんに景石の移動をお願いしました。

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一度設置された景石をチェーンで吊り上げ、別の場所に移動してもらっているところです。

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クレーンで吊り上げられた景石の裏側(接地面)が見えます。

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中庭の中央広場やスタンドベンチから良く見える、ロックガーデンの中腹に設置してもらうように指示しました。

向きと方向、高さなどを調整してもらって、据え付ける位置を微調整してもらいます。

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最後に、石と土の隙間を突き固めて、固定します。

このような作業を延々と繰り返しながら、ロックガーデンの石の配置を進めていきます。

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この段階では植栽は入っていないので、この後工程で、高木の植栽を行うのですが、

高木が入ったイメージを持ちながら、景石の配置を決めていきます。

これがなかなか難しいのです。

今回の工事現場の施工の段取り上、高木植栽の際には重機を使えず、場内は手運びとなります。

したがって、植栽工事の際に、景石を移動させることができないので、ここでしっかりと決め切る必要があります。


ロックガーデンへの景石の設置と同時並行で、もうひとつの石工事が進んでいました。

中庭東側、中庭への昇降口側擁壁の石積みと、中庭へのアプローチ床面への石張り工事です。

全ての工程に立ち会えなかったので、ここからは現場監督のTさんが撮影された写真もお借りしながら、

現場の進捗をまとめてみました。

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校舎東館の1階に生徒の昇降口があり、そこから中庭へ出入りができるようになっています。

その部分に、スタンドベンチや高木植栽を支える盛土があるのですが、その盛土の土留め擁壁を設置しています。

小型重力式擁壁というスタイルで、なるべく威圧感が出ないように、徐々に擁壁の高さが小さくなるように

デザインしています。

土留め擁壁はコンクリート製ですが、そのままだと無粋なため、その表面に積み石を貼り付けて化粧をします。

検討の結果、今回は木曽石を使うことになりました。

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L字型の擁壁で、先に行くほど擁壁の高さが低くなる構造をしています。

そのL字の擁壁二面に木曽石を積み上げるように貼っていただいています。

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斜めになっている擁壁は珍しく、でも違和感のないようにきれいに積んでもらっています。

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擁壁の先端部から見たところ。

階段状にスタンドベンチを配置するため、また高木植栽のために、中庭には約1mの土盛りをしているのですが、

その端部の土圧に対抗するのがこの土留め擁壁です。

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土留め擁壁への石張りが終わると、今度は、その土留め擁壁に挟まれた、昇降口(写真右側)から中庭への

アプローチ部分の床に、石張りをしてもらう工事が始まりました。

もともと数段の階段があったのですが、緩やかなスロープとし、バリアフリー化しました。

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両側の擁壁の石張りと、それに挟まれたアプローチ床の石張り工事が完成しました。

小型重力式擁壁が思っていた以上に存在感を強調しすぎず、広々としたアプローチ空間になりました。

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石張り工事が完了した土留め擁壁と、その奥の4段のコンクリート製のスタンドベンチの様子。

中央広場でのイベントなどが見やすいようにスタンドベンチに高低差を設けています。

その高低差を生み出すための土盛りと土留め擁壁ですが、いい感じになりました。

(次回以降のレポート記事で)後述しますが、コンクリート製のスタンドベンチには、

白いペンキが仕上げとして塗られています。

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校舎東棟の2階廊下から、中庭へのアプローチ部分を見下ろしてみました。

石張りした小型土留め擁壁(左右のL型の擁壁)と石張りのアプローチ床とも、上品に仕上がっています。

【2023年12月19日 (火)】

この日は、石ベンチの設置を行うため、立ち合いに来ました。

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中庭の楕円形のスタンドベンチの内側の中央広場の一角に、石を使ったベンチを設置する計画です。

当初は棒状の御影石を使った石ベンチの計画でしたが、ロックガーデンに地元の生駒石を使うことにしたため、

石ベンチも生駒石を加工して作ってもらうことにしました。

こちらが、当日持ち込まれた生駒石で作った石ベンチです。

全部で5個あります。

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石ベンチの設置に先駆けて、今回協力して下さっている造園会社さんの事務所兼石置き場を見せていただきました。

事務所前には、大きな生駒石の景石や手水鉢が置かれていました。

最近では、公共工事(公園など)でも生駒石が使われる機会が減っているそうです。

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たくさん置かれた生駒石置き場で、今回の中庭の大きさにぴったりな、ベンチのサイズの生駒石を

用意していただきました。

これらに生駒石の天端をカットして、研磨してベンチを制作していきます。

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石ベンチ設置当日、トラックで運ばれてきた石ベンチをクレーンで吊って下します。

天端の磨き加工面を傷めないよう、毛布などを巻いて養生してあります。

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石ベンチの設置場所付近に下してもらいました。

生駒石の側面は荒々しい粗面ですが、磨いた天端は黒い美しい面が見えています。

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当初計画とは少し向きを変えて、ベンチに座った際、中央広場でのイベントが見やすい角度に設置しました。

景石ではありませんが、景石の配置にならって、5つの大小の石ベンチを配置していきます。

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概ねの配置が決まった段階で、天端の座面高さや座面の水平を確保するために、

バールや水準器を使って石の傾きなどを調整していきます。

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最後には、GL(基準高さ)よりベンチ高さを測量して、最終調整します。

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こちらは、小型の(一人掛け)ベンチです。

可愛らしいサイズです。

大きなベンチより、少し低めに据え付けています。

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まず3つの石ベンチの設置が確定しました。

ベンチの後方には、高木を植栽するため、植栽を植える穴も開けてもらっています。

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中庭のロックガーデンエリアへの景石据え付け、昇降口からのアプローチ両側の擁壁及び床の石張り、

そして石ベンチの設置と、一連の石工事も無事完了しました。

まだ植物(樹木)が植わっていないので、少々殺風景ですが、かなり形が見えてきました。

あと一息です。

DSC_2748.jpg

生駒石のベンチは、この後の工事で傷がつかないよう、天端の磨き面を保護するために、

ブルーシートで養生、その上からフィルム張りをしてもらいました。

次は、いよいよ植栽や中央広場のタイルの施工、プラトン・アリストテレス像の移設(本設置)など、

クライマックスへ向けて工事が進んでいきます。

乞うご期待ください。

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【 奈良高校・創立100周年記念事業について 】

今回の奈良高校・創立100周年記念の中庭プロジェクトは、50年前の創立50周年の時と同じく、

OBOG(卒業生)をはじめとした、様々な方々の寄付によって創られる事業になります。

「奈良高校 100周年記念特設サイト」も、2023年9月1日よりオープンしております。

  [ 奈良高校 100周年記念特設サイト] は、こちら ⇒ 奈良高校 創立100周年 (narahs100th.jp)

 
 創立100周年を機に、ますます発展する奈良高校へご支援いただけましたら幸いです。   

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居場英則

『進化する庭、変わる庭』がテーマ。本業は街づくりコンサルタント、一級建築士、一級造園施工管理技士、登録ランドスケープアーキテクト(RLA)。土面の殆どない庭で、現在約120種類のバラと、紫陽花、クレマチス、クリスマスローズ、チューリップ、芍薬等を育成中。僕が自身の庭を創り変える過程で気づいたこと。それは、植物の持つデザイン性と無限の可能。そして、都市部の限定的な庭でも、立体的な空間使用、多彩な色遣い、四季の植栽の工夫で、『風景をデザインできる』ということ。個々の庭を変えることで、街の風景も変えられるはず…。『庭を変え、街の風景を変えること』が僕の人生の目標、ライフワーク。ーー庭を変えていくことで人生も変えていくchange my garden/change my lifeーー

個人ブログChange My Garden

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