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専門家「風景」をつくるガーデニング術

生命の神秘を感じる球根植物、シラーの開花

居場英則

あっという間に、1月も半月を過ぎました。

我が家では、昨年末からスタートしたつるバラの誘引作業や

鉢植のバラの植え替え、寒肥やりなどの一連のバラの作業の他、

以前から気になっていたガーデンのマイナーチェンジなどの作業を終え、

これで、あとは春が来るのを待つばかり・・・といった感じです。

今回は、そんな春を心待ちにするシーズンにぴったりな春咲きの球根植物を

紹介したいと思います。

春咲きの球根植物といえば、チューリップや水仙などが思い浮かびますが、

今回は、少しマニアックな球根植物「シラー」を採り上げてみます。


シラーは、釣鐘や星のような形の花が一般的な球根性多年草植物で、

世界中に分布し、地中海沿岸地域が原産とされています。

シラーの中にはいくつかの品種がありますが、僕が育ててみて特におススメと

思うのが、「スプリング・ビューティ(Spring Beauty)」と呼ばれる品種で、

その名の通り、「春の到来を告げる花」とも言われ、早春の3月上旬に開花します。

「スプリング・ビューティ」を含む「シラー・シベリカ」という品種は、

草丈が10~20cmと小ぶりで、透明感のある青い星形の花が特徴です。

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この↑写真は、「シラー・スプリングビューティ」の花が

咲き始めたばかりの瞬間を捉えたものです。

僕は植物を育てることももちろん好きなのですが、

植物、特に美しい花の写真をカメラに収めることが趣味で、

普段から庭に出る時は、必ず一眼レフカメラを持って出ているほどです。

これまで、何万枚、何十万枚もの花の写真を撮っていると思いますが、

その中でも、この写真は特に気に入っている一枚です。

主題であるシラーの青い花が、今まさに開きつつある動きのある瞬間を

切り取った一枚で、構図や背景の処理、色のバランスなど、

上手くまとまった、まさにフォトジェニックな一枚です。

ちなみに、この写真を撮るのに、僕は地面に這いつくばっています(笑)。

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まず、この「シラー・スプリングビューティ」の満開の様子から見ていただきましょう。

小さなお気に入りのテラコッタ鉢に植えて咲かせています。

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花のアップです。

品種紹介でも書きましたように、草丈が10~20cmと小ぶりで、

開いた花は透明感のある青い星形をしています。

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鉢を斜め上から見下ろして見たところです。

僕は、植物は寄せ植えにせず、一品種一鉢というスタイルで育てることが多く、

この「シラー・スプリングビューティ」も、この単品種だけで育てています。

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背景に、同じ時期に咲く黄水仙を映り込ませるようにして撮ってみました。

黄色とブルーという補色対比を使って、よりシラーのブルーが浮き上がるように撮影しています。

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シラーは、前年の秋に球根を植え付けるところから始めます。

地植えすることによって、年々球根を増やしていくこともできますが、

僕の場合、花の写真を撮りたいので、地植えしてしまうと低い位置での撮影が難しくなるので、

鉢植で育てています。

花後に、液肥をやって球根を太らせたあと、土から取り出し、秋まで冷暗所で保管しています。

それを秋(11月頃)に、テラコッタ鉢に植え付けます。

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お気に入りのテラコッタ鉢の鉢底に、収穫ネットに鉢底石を入れて置き、

水はけが良いようにしてから土を入れていきます。

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赤玉土、腐葉土、牛ふん堆肥に加え、水はけ対策にパーライトなどを混ぜて、土を作ります。

草丈が低いため、根もそんなに深く張らないので、地表面に近い浅い位置に球根を埋めています。

球根の間隔は、なるべく密集させて咲かせたいので、一般的な間隔より少し狭く植え付けています。

球根の配置が終わったら、この上に土を厚さ2センチほど被せていきます。

あとは、定期的な水やり以外には特に何もすることなく、ただ春の開花を待つばかりです。

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そして、3月上旬、待望の開花のシーズンを迎えます。

土の中から緑の葉が伸びてくると、その葉がパカっと割れて、

中から瑞々しいブルーの花が顔を出します。

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そして、中から力を振り絞って、青い花が緑の葉を押し分けて出てこようともがいています。

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そして、突然、青い花がパッと花開くのです。

まさに、生命の神秘を感じる、花が咲く瞬間を目の当たりにすることができます。

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そして、こちらは冒頭に紹介した写真を少し引いて撮ったところ。

左側の花芽は、3つ連なったまま、まだ花を開かず、花茎をのばしています。

葉の中に包まって収納されていた痕跡のように、花茎の先端が腰を曲げたようになっています。

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そして、アッという間に、花が弾けるようにパッと開いてしまいます。

この一連の開花の様子を観察しながら、カメラで写真に収めるのがとても楽しい時間です。

この写真を撮るために、半年間育ててきたようなものです。

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更にアップで、開花の瞬間を見てみましょう。

どこかドキュメンタリー映像を見ているような、植物の力強さを感じます。

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緑の殻(葉)を破って、今誕生した命のようです。

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しばらくすると、太陽の光の方に向かって、花が開いていきます。

ほんの僅かな瞬間ですが、この場に立ち会え得たことの喜びを実感できますよ。

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そして、次々と青い透明感のある星形の花が開いていきます。

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本当に小さな花ですが、とても美しいシーンを観察できるのが、

このシラーを育てる楽しみのひとつです。

シラーを育てるには、ほとんど手間もかからず、植えたまま放置してしまっても

大丈夫なほど強い品種なので、是非育ててみてはいかがでしょうか?

そして、あなたも「生命誕生の瞬間」的なフォトジェニックな写真を

撮ってみませんか?


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居場英則

『進化する庭、変わる庭』がテーマ。本業は街づくりコンサルタント、一級建築士、一級造園施工管理技士、登録ランドスケープアーキテクト(RLA)。土面の殆どない庭で、現在約120種類のバラと、紫陽花、クレマチス、クリスマスローズ、チューリップ、芍薬等を育成中。僕が自身の庭を創り変える過程で気づいたこと。それは、植物の持つデザイン性と無限の可能。そして、都市部の限定的な庭でも、立体的な空間使用、多彩な色遣い、四季の植栽の工夫で、『風景をデザインできる』ということ。個々の庭を変えることで、街の風景も変えられるはず…。『庭を変え、街の風景を変えること』が僕の人生の目標、ライフワーク。ーー庭を変えていくことで人生も変えていくchange my garden/change my lifeーー

個人ブログChange My Garden

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