2022.3.29 / 唐招提寺・薬草園プロジェクト
3月に入りました。
いよいよ春本番、樹々が新芽を吹き始める季節になりました。
さて、以前からこのコーナーでもご紹介しておりますが、今、僕の住む地元・奈良で関わっているのが、
世界遺産・唐招提寺の境内で、開祖・鑑真和上ゆかりの薬草園を再興するというプロジェクト。
昨年夏にようやく国(文化庁)の許可がおり、準備工事を経て、昨年末から整備工事が始まりました。
前回記事では、本プロジェクトの支援者の方が岐阜で育てておられる薬草・薬木のうち、
本薬草園に移植・植栽する薬木を唐招提寺境内まで持ち込んだところまでをご紹介いたしました。
今回はその続編として、その高木薬木を植栽するまでの進捗をご紹介したいと思います。
こちらのプレゼン資料は、当初この薬草園の計画の話をいただいた際にまとめた図面です。
薬草園内には、大きく3つのゾーンを設定しているのですが、
その一番大きなエリア(東側の約半分)が薬草・薬木植栽エリアになります。
薬草園北側には、唐招提寺を代表する植物・蓮を展示した蓮鉢を並べたエリアがあるのですが、
蓮に日陰を落とさないよう、高木の薬木は薬草園の南側、東側に集約させています。
こちらが、工事着工前(昨年10月頃)の薬草園の全景。
写真手前が、薬草園の東南角にあたるエリアですが、このあたりを中心に、高木の薬木を植栽していきます。
そして、こちらが今年1月の様子。
上の写真とほぼ同じアングルから撮影していますが、サビ御影石の石積みで花壇が作られました。
当初計画では、フラットな地面に全ての植物を植栽する予定でしたが、土中の奈良時代の遺構面を
高木の根が傷めないよう、離隔距離を取ることが許可条件となり、高木を植栽するエリア全体に盛土を行いました。
こちらが、高木花壇を横から見たところ。
高木の品種ごとに樹高も根の張り具合も異なることから、将来一番樹高が高くなる高木を植栽するエリア(中央部)
に1mの盛土を行い、そこか緩やかにスロープ状の傾斜を付けながら花壇を設計しました。
薬草園のシンボルツリー・瓊花(ケイカ)を植栽する部分だけ独立し、楕円形の花壇を作っています。
この瓊花も樹高5mくらいあり、将来、根も1m以上に伸びる可能性があるため、
瓊花を植栽する花壇にも1mの盛土を行います。
この日(1月20日)、いよいよこの高木花壇に、岐阜の神薬才花苑より持ち込まれた高木薬木を
移植する工事を行いました。
まずは、シンボルツリーの瓊花を移植します。
重機を使って準備工事が始まりました。
昨年10月に岐阜より奈良・唐招提寺境内の圃場(仮植え場)に移植された高木の薬木たち。
持ち込まれた際にはまだ葉がついていましたが、すっかり落葉し、枝だけが見える状態です。
まず、シンボルツリーの瓊花を重機を使って掘り出します。
岐阜の山中(神薬才花苑)から移植される際に、丁寧に根回しされてきましたので、
根鉢も整ったまま、薬草園の定植場所へと運び込まれました。
楕円形の瓊花花壇に一旦据えられましたが、許可条件の地盤面からの高さ(1m)に足りず、
さらに盛り土されます。
瓊花を一旦花壇の外に出して、設定の盛土高になるまで土を盛っていきます。
再度、瓊花を吊り上げてもらい、規定の高さに据えました。
こちらは、薬草園の中心部から東側方向へ、シンボルツリーの瓊花を真正面に見るアングルから見た写真です。
樹の表裏、枝ぶり、樹傾き等を確認して、最終決定となりました。
引き続き、瓊花の後ろ、高木花壇に植え付ける高木薬木を場内(薬草園内)に仮配置していきます。
高木薬木植栽エリアを横から見たところです。
緩やかに傾斜を付けた花壇に、薬木を間配り、全体のバランスを見ます。
岐阜より持ち込まれた薬木は、大小があり、本来欲しい樹高がないものもあり、
バランスが悪くなってしまうため、当初こちらの高木花壇への移植を予定していなかった薬木も
こちらの高木花壇へ定植させるなど、現場の判断に変更を加えていきます。
樹木の配置と樹の表裏、傾きなどを一本づつ確認し、OKとなったものから順に植え付けていきます。
こちらは、高木花壇・南端エリア。
どんどん樹々が植え付けられていきます。
こちらは、高木花壇の北側の端。
こちらの植栽が完了すれば、高木花壇の植え付けも終了です。
高木花壇の裏側(東側)からのアングル。
奈良時代の遺構面と樹木の根の離隔距離を確保するために実施した石積み擁壁。
中央部が最大盛土高さ1mで、両サイドに向けて緩やかに傾斜していきます。
薬草園の中央エリアから、シンボルツリーの瓊花、ならびにその後方の高木薬木植栽花壇を見たところ。
ご本尊のシンボルツリー・瓊花を守るように、その背後から円形に配置された高木薬木群の様子が分かります。
高木薬木の移植工事より数日後の様子。
シンボルツリーの瓊花花壇にも土が盛られています。
シンボルツリーの瓊花は、薬草園の中心部から東方向を見た軸線(園路)の正面に位置していますが、
画面右側が方位でいうと南になりますので、今後は南に向いて枝を伸ばしていくと思われます。
そんなこともあり、楕円形をした瓊花花壇は、南西に向けて軸を振って配置しています。
南西方向より、高木花壇ならびに瓊花花壇を見たアングル。
この高木花壇・瓊花花壇の画面左側に、薬草植栽ゾーンが作られます。
まだ、そのエリアの整備が終わっていないので、少し唐突で違和感があります。
真横から高木花壇を見たところ。
緩やかに傾斜を付けた花壇の断面形状が分かると思います。
高木花壇を裏側から見たところ。
高木花壇の中央部。
こちらには、トチュウ、キハダ、ホオノキという、将来大きく育つ高木の薬木を植栽しています。
岐阜の神薬才花苑は、急こう配の山中にあり、重機が入らず、大きく育ったこれらの樹木は掘り上げて
持ち出すことができなかったため、まだ幼木を植栽することになりました。
当初の風景としては、少し残念ではありますが、成長も早い樹木なので、あと数年もしたら、
他の樹木と並ぶように風景を作ってくれると期待しています。
こちらは、高木花壇の北東角から見たアングル。
今後は、この奥に見えている平坦な場所に、草本類の薬草を植栽する花壇を整備していきます。
そのエリアに近い部分に仮植えしていた樹高7mくらいあるヤマモミジの大木。
環境省主催のコンテスト、「みどり香るまちづくり企画」コンテストに入賞した際の副賞として
いただいたヤマモミジです。
第二期工区の工事の着手に向けて、場内(薬草園敷地内)の邪魔にならない場所に、さらに移動されました。
そのヤマモミジが移動したことで、薬草園の北側に位置する戒壇の門が、
邪魔されることなく正面に見えるようになりました。
今年4月には、薬草園の一部(東側半分)が公開される予定で、
この戒壇前の門の位置から、薬草園にアプローチできるよう、仮設の出入り口が整備される予定です。
こちらは、岐阜の神薬才花苑から奈良・唐招提寺へと運び込まれた高木薬木を仮植えしていた圃場の隣地。
本薬草園の整備地の南側にある圃場です。
今こちらには、研究者より寄贈された大和芍薬の苗を仮植えしています。
大和芍薬も薬草として使われる植物で、唐招提寺・薬草園の第二期工区に定植する予定です。
移植時期は来年の冬になる予定で、それまではこちらの圃場で育成することになっています。
こちらは、薬草園計画地に並べられている蓮鉢。
毎年3月中旬頃に、植え替え作業を行っています。
今年は、その蓮の植え替え作業と同時並行で、薬草園への薬草の定植作業も行われる予定です。
この4月に、薬草園の一部開園に向けて、急ピッチで工事が進んでいます。
今回はここまで。
次回は、薬草園の薬草植栽エリア花壇の整備工事、そして薬草植栽作業へと続きます。
順次レポート記事を書かせていただこうと思っておりますので、こうご期待!
この4月に唐招提寺・薬草園は一部開園される予定です。
是非、唐招提寺・薬草園にもお立ち寄りいただけたら幸いです。
■おすすめ特集