2019.7.17 / 京北バラ園ができるまで京北・香りの里/六ヶ畔・花簾庭(京北バラ園)の四季
古都・京都の中心部から車で約1時間ほど山に入った、「京都市右京区京北町」という、のどかな里山風景が広がる
中山間地域に、バラ園をつくるというプロジェクトに関わらせていただくようになって、丸3年の年月が流れました。
今年2019年5月、そのバラ園が一般公開されることになりました。
地域の花好きの有志の方々が開催されている街のオープンガーデンも参加させていただき、
地域の方々はじめ、噂を聞きつけて駆けつけていただいた方など、多くの方々にご訪問いただきました。
そのバラ園の正式名称は、「京北・香りの里 六ヶ畔・花簾庭(かれんてい)」という長い名前ですが、
通常は、「京北バラ園」と略して呼んでいます。
京都の奥座敷とも呼ばれる京北町は、京都中心部の市街地より気温も低く、バラの開花時期も半月ほど遅れます。
バラが美しく咲き揃ったのは、6月初旬でした。(写真は、今年2019年6月4日に撮影したものです。)
この「京北バラ園」は、公共の施設ではなく、一個人の「私庭」のようなものですが、
オーナーの好意により、バラのハイシーズン(春と秋)には、無料で広く一般公開されています。
このプロジェクトが始動してから3年目を迎えた今年、想像を上回るほどたくさんのバラが咲き、
美しい風景が目の前に現れました。
どこか懐かしい里山風景が広がる京都市右京区京北町に、
『和の趣きを備えた、香りをテーマにしたバラ園をつくろう!』というプロジェクトが、
どのように始まり、どうやって出来上がったのか?、今回、そのレポート記事を書かせていただける機会を
いただきましたので、『~「京北・香りの里 六ヶ畔・花簾庭」(通称:京北バラ園)ができるまで~』と題して、
紹介させていただこうと思います。
前述しました通り、このバラ園はあくまでも個人の庭で、入場料をいただいて公開しているバラ園ではありません。
構想から造園、その後の運営に関しても、人員的また予算的に限られた範囲の中で、
地元の方々と試行錯誤しながら作り上げたバラ園です。
たくさんの失敗や回り道もしましたが、その過程も見ていただきながら、
ひとつのバラ園が出来上がって行く様子を見ていただければ幸いです。
この「京北バラ園」は、「私庭」ということもあり、まだほとんど知られていないガーデン(バラ園)です。
これを機に「京北バラ園」に興味を持っていただけましたら、来シーズンのバラの開花時期には、
是非、風光明媚な京北町へもお立ち寄りいただければと嬉しく思います。
レポート記事は、前編(構想からバラ苗の植栽まで)、後編(その後、オープンまでの活動記録)の
2部構成となっています。
最後まで読んでいただけましたら幸いです。
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ことの発端は、今から遡ること約3年半前、2016年を迎えてすぐの頃でした。
僕の仕事(建築・設計関係)の関係先の会社のオーナーからの話で、
「京都の京北町というところに土地を買ったので、バラ園をつくってみないか?」という、
何ともミラクルな打診がきっかけでした。
そのオーナーは、僕が自宅でバラの庭を作っているのをご存じだったようですが、
当時はまだ自宅の庭以外にガーデンを本格的につくったことがない僕に、何故か声を掛けて下さったのです。
そして、初めてバラ園の計画地を見に行ったのが、2016年2月24日。
小雪が降りしきるまだ寒い中、現地を案内してもらいました。
その場所は、京都の市街地から紅葉で有名な高雄を越えて、京都盆地の山の北側へ車で約1時間ほどの場所。
皇室ゆかりの御寺・常照皇寺へと向かう国道477号線に面した土地でした。
谷筋から緩やかに下る4枚の棚田があり、その一番手前の国道に面した田んぼ一枚分(約300坪)を
バラ園にしようという話でした。
その棚田を上から見下ろしたところ。
隣接地には、元・料亭だった建物が残り、その横(ブロック塀の内側)には和風庭園が造り始められていました。
遠くには美しい京北町の山並みが見渡せ、牧歌的な風景が広がる場所でした。
バラ園の計画地は、元々田んぼだったということもあり、何もない真っ平らな敷地。
どんなバラ園を設計すべきか、手がかりがなく、ここにバラを植えるだけでは、
「圃場(バラ畑)」のようになってしまう、という懸念だけが真っ先に頭に浮かびました。
周辺を散策しながら手がかりを探す中で、この京北町という、まさに「日本の原風景と言えるような里山風景」
に調和する「和の趣き」のバラ園をつくってみたい、そんな思い心に抱き、この場所を後にしました。
「私庭」としてのバラ園にしてはあまりに広い敷地で、全体を整備しようとすると、
かなりの時間や手間に加え、費用も掛かるので、このプロジェクトはすぐには動き出さないだろうと、
高をくくっていたのですが、オーナーからは、すぐにでも着工したいのでバラ園の図面を急いでまとめて欲しい、
という話が来ました。
大慌てで、バラ園をどのようなデザインにしようかと構想を練りました。
公共施設としてのバラ園や、観光地となっている有名バラ園など、いくつも参考になる事例を研究しました。
現地を訪れて一番気になった、単にバラを植えました的な「バラ畑のようなバラ園」にはしたくなかったので、
何かこの場所らしいストーリーや意味を持たせたデザインにしたいという思いで、デザインを検討しました。
そして、何度もエスキースを重ねたのち、まとめ上げたのが、こちらのスケッチです。
現地を初めて見に行ってから、たった1週間ほどでまとめた原案です。
このバラ園をデザインするにあたって手掛かりにしたのは、国道を挟んで敷地の向かい側を流れる「桂川」。
この桂川を下っていくと、京都の有名観光地である嵐山や桂離宮の畔(ほとり)へとつながります。
また、この桂川は鮎釣りが有名で、シーズンになると、多くの釣り人が京北町を訪れます。
桂川と弓削川に沿って町が広がる京北町において、バラ園の計画地は京北町の原風景ともいえる場所なのです。
バラ園の計画地付近の桂川には、下流域の6つの村に水を分ける「六ヶ堰」(ろっかせき)と呼ばれる堰があります。
バラ園計画地横の旧・料亭は、「六ヶ堰」を望む河畔にあったことから、「六ヶ畔(ろっかはん)茶寮」と
呼ばれていたそうです。
桂川の流れを見ながら、この六ヶ堰を流れ落ちる「水の流れをバラの花で表現できないか」と思いついたのでした。
現地を見に行って、僅かな時間でまとめた原案をもとに、詳細を詰めていきました。
「水の流れをバラの花で表現する」というデザイン的なコンセプトに加え、
「香り」をもう一つのテーマに据えて、京北町の里山風景に調和する「和の趣きのバラ園」を創ることにしました。
バラ園全体を以下の6つのゾーンに分けて、それぞれに特徴あるシーン(風景)を描いていくことにしました。
・ゾーン1:堰を越えて溢れる水の流れをバラの花で表現するゾーン(シンボルローズの群星・群舞ゾーン)
・ゾーン2:オールドローズを中心とした香るバラゾーン(石を越える水の流れをバラの花で表現するゾーン)
・ゾーン3:東屋(切妻屋根の家形パーゴラ)の壁面・屋根を使ったつるバラゾーン
・ゾーン4:大型アーチ(オリジナルデザインの切妻屋根型アーチ)を使ったつるバラゾーン
・ゾーン5:F&Gローズを中心とした和の雰囲気のバラゾーン
・ゾーン6:色鮮やかなイングリッシュローズゾーン
それぞれのゾーン毎のイメージ写真をまとめたイメージシートを作成、オーナーにプレゼンして、了解を得ました。
実は、今回のバラ園プロジェクトには、「隠れキーワード」があるのです。
「六ヶ畔」という場所、オーナーの名前に「六」の字が入っていることから、「6」という数字を
このプロジェクトにおけるキーワードに据えていましたので、バラ園のゾーニングにおいても「6」にこだわり、
「6つのテーマ(シーン)」で構成することにしたのです。
写真は、2016年3月25日。
いよいよ、バラ園をつくるための工事に着手しました。
こちらが、棚田の段差部分。
段差は70cmほどですが、ここの段差を活かして、更にここにブロックを数段積み上げ、段差を強調します。
ここに群星・群舞という、白と淡いピンクの一季咲きのつるバラを一直線に植栽する予定です。
バラ苗が生育すれば、堰(滝)を流れ落ちる水の流れのように、バラの花が枝垂れ咲くはずです。
僕が描いたエスキース(基本プラン)に基づいて、現地で縄張りが始まりました。
バラ園の中につくる園路を実寸で書き出しているところです。
また、このあたりは、鹿や猪などの獣(けもの)による食害が多発するそうで、バラの苗を守るため、
バラ園の周囲を高いフェンスで囲う必要がありました。
写真の一番右側の白いラインがバラ園の外周を囲うフェンスの位置になります。
その外側(右側)には、国道に面して駐車場を整備する予定です。
現地での工事と同時並行で、肝心のバラの苗の調達準備も始めました。
まず、コンセプトに基づいて、数あるバラの中から、このバラ園に植える品種選びを行います。
「バラは、品種選びが肝」と言われるだけあって、品種選びの成否が、このバラ園の成否を決めると言っても
過言ではありません。
バラに詳しい友人をスカウトして、プロジェクトメンバーに加わってもらいました。
6つのゾーン毎に、花形や花色、香り、花期、伸びる大きさ、他のバラとの相性など、様々な要素を吟味しながら、
約250品種、約300株のバラの品種選びを行いました。
バラ苗の調達には、地元・京都のナーセリー、まつおえんげいさんに協力をしていただき、
ほぼ希望通りの苗を調達してくださいました。
季節は進み、夏になりました。
写真は、2016年7月1日。
計画地では、バラ園をつくる工事が進んでいました。
道路(国道477号線)の向こう側がバラ園の建設地です。
写真は、駐車場とバラ園を区切る木製フェンスの施工中の様子です。
この頃は、まだこの場所に本当にバラ園ができるのか、半信半疑でした(笑)。
バラ園の計画地には、バラだけではなく何本かの高木を植えることにしました。
写真中央の株立ち樹形の高木はアオダモ、その左後ろに見えているのが、このバラ園のシンボルツリーになる
株立ち樹形のエゴノキです。
高木が入ることで、立体感と奥行き感を演出し、「バラ畑」的な風景にならないよう、配慮しています。
計画地には、大きな石もたくさん運び込まれました。
香るバラとして、オールドローズを集めたゾーンをつくるのですが、そこに岩や石を組んで、
その岩や石の後ろにオールドローズを植栽し、岩を乗り越えるように自然樹形で咲かせます。
川の瀬を流れてゆく水の流れをバラの花で表現しようという作戦を立てています。
棚田の段差を活かし、さらにブロックを数段積み上げて、高さ1.5mほどの段差を作ります。
ブロック積みも着々と進んでいます。
ブロックを積んだ部分を後ろから見たところ。
この次の段の棚田から、一季咲きのつるバラ、群星と群舞を枝垂れるように咲かせ、
あたかも水が滝のように流れ落ちる風景をつくろうとしています。
この演出こそがこのバラ園の一番の特徴となる部分で、ここが予想通りに行くか、実はヒヤヒヤしていました。
のどかな田園風景の中で始まったバラ園づくり。
地元の職人さんたちが、コツコツと仕事を進めてくださっています。
遥か向こうには、京北町の美しい山並みが連なっています。
ここが花いっぱいのバラの園になることを夢想する日々が続きます。
現地では、工事が着々と進むので、月2回の頻度で、京北町に足を運ぶようになりました。
写真は、2016年7月29日。
国道側の木製フェンスは既に出来上がっていました。
「和の趣きのバラ園」というコンセプトなので、オーナーとも相談し、木製フェンスには瓦も載せています。
園内には何本かの「園路」をつくるのですが、そのうちの一本、メインゲートから奥へとつながる、
緩やかにカーブしたメインの園路の位置が決まり、印が打たれていました。
一方で、工事とは別に、バラ苗を植えるための土壌についても検討を重ねました。
元々、水田だったということもあり、粘土層で水はけもあまり良くないという懸念がありました。
広範囲にわたり土壌改良を行うには、かなりのコストもかかるため、
どのような対策を施すべきか、専門家にも相談しながら、検討を重ねました。
写真は、1ヶ月後の2016年8月26日。
猛暑が続く中で、現場では工事が進行していました。
枝垂れ咲くつるバラを植える擁壁も完成し、ブロックだった塀には木が貼られ、茶色の防腐塗料が塗られました。
天端部分にも、オーナーの遊び心で木が組まれ、和の雰囲気を醸し出しています。
続いて、園内に岩や石を組む作業が始まりました。
主にオールドローズを植えるゾーンに、石組みを施します。
川の瀬を越える水の流れのように、岩の後ろに植えたバラが岩を越えて枝垂れ咲く風景をイメージしながら
どの位置にどの岩をどのように配置するのか、職人さんたちに指示を出していきます。
デザインだけではなく、バラ園として求められる基本的な性能も考慮しなければなりません。
ここは、元・水田だったこともあり、水はけの悪い粘土質の土壌で覆われています。
少しでも水はけを改善するために、メインの園路の脇に、「暗渠排水」を設置することにしました。
写真は、その暗渠排水の施工中の様子です。
所々に会所(浸透桝)も設置しています。
暗渠排水が設置されたあとは、砂利で埋め戻し、土をかぶせて分からないようにします。
これで、水はけ問題はずいぶん改善されるはずです。
写真は、2016年9月23日。
ここまで順調に工事が進んできたのですが、ここでトラブルが発生。
手続き上の問題があり、工事が一時ストップすることになってしまいました。
バラが休眠する冬の間に植え込みできるように、
スケジュールを組んでいたのですが、難しくなりました。
工事が中断している間、園内に設置する大型のアーチの製作を進めました。
地元・京北町のアイアン作家さんに、アーチの試作品を作ってもらいました。
一般的なアーチは、円弧状のものが多いと思いますが、ここでは
「和の趣きのバラ園」というコンセプトに合うように、オリジナルデザインの
切妻屋根のように見える不等辺三角形のアーチを作りました。
最頂部で約5mほどある、大型のアーチで、これを八連で園内に設置します。
時はさらに進んで、年末も押し迫った2016年12月22日。
京都のまつおえんげいさんに頼んでいたバラ苗が納品されました。
つるバラは、可能な限り長尺苗で調達しました。
どれも素晴らしい仕上がりの苗でした。
バラ苗は、鹿などの食害に備えて、ネットフェンスの中にしまって、冬越しさせることになりました。
年が明けた2017年2月22日。
山深い京北町では、毎年、数十センチもの雪が積もるそうです。
この年も例年並みの降雪で埋まっていたバラ苗が、雪解けとともに姿を現しました。
残念なことに、何本かは降雪の重みで枝が折れたり、寒さで枯れこんだりしたものがありました。
京北町では、バラの冬越しをどのようにするかが、今後の課題となりました。
京北バラ園のプロジェクトが始動するとともに、とある事業コンテストに応募していました。
環境省が主催する、『「みどり香るまちづくり」企画コンテスト』です。
このコンテストは、住み良いかおり環境を創出しようとする地域の取り組みを支援するため
「かおりの樹木・草花」を用いた「みどり香るまちづくり」の優良企画を支援する取り組みとして、
平成18年から環境省が主体となって実施しているコンテストです。
企画段階のプロジェクトを評価するもので、まだ出来上がっていない事業が対象になります。
結果は、入賞。
日本の中央省庁が主催するコンテストでの入賞という社会的な評価を得られたことは、
とても嬉しく、今後、プロジェクトを進めて行く上においても、大きな励みになりました。
さて、諸所の手続き上の問題が解決し、バラ園の工事が再開されました。
写真は、2017年3月31日。
京北町にバラ園をつくるという話が持ち上がって、あっと言う間に1年が経ちました。
写真は、バラ園のメインエントランスになる部分です。
オーナーが京北町の別の場所に所有する土地に植栽されていた立派な梅の木を、
このバラ園のメインエントランスの横に移植してもらえないかと、かねてよりお願いしていたのですが、
冬の間に、造園屋さんが移植をしてくれていました。
移植したばかりですが、梅の木には赤い花が少しだけですが、咲いてくれました。
梅の開花期は2月~3月で、バラとは開花期が異なりますが、梅もバラ科の植物ですし、
何よりも立派なこの枝ぶりの紅梅が、この和のバラ園のシンボルになってくれるのではないかと思っています。
工事は急ピッチで進められることになりました。
京北町では、バラの開花時期が5月末~6月ということで、少しでも早くバラ苗を地植えしてしまいたいと、
気が焦る中で、職人さんたちが奮闘してくれました。
写真は、家形のパーゴラ(東屋)を建てているところです。
コンクリートの土間が打ち終わって、柱を立て始めたところです。
園路の施工も再開されました。
雨の中、足元もぬかるむ状態でも、着々と工事は進められました。
写真は、2017年4月6日。
巷では桜が咲く季節ですが、京北町はまだ肌寒い日が続きます。
現場では、職人さんがウッドデッキを施行中です。
一戸建て住宅を作っているように見えますが、こらはれっきとしたパーゴラ。
田んぼだった平地に、立体的にバラを咲かせるための装置のひとつで、休憩ができる東屋も兼ねています。
家のように見えますが、屋根はなく垂木(屋根の下地部分の斜めに取り付けられた部材)に
つるバラを誘引するためのパーゴラなのです。
一般的なパーゴラは、藤棚のような形をしていますが、ここでは、里山風景に馴染むように、
隣接する家屋(旧料亭の建物)と同じような切妻屋根の形状でパーゴラをデザインしています。
もう少し引きで、全景が分かるように撮ってみました。
緩やかにカーブするメインの園路と、その横に建つ家形のパーゴラ、
左側奥にはバラの花を滝のように枝垂れ咲かせる擁壁も見えています。
園内では、オールドローズを植え込むゾーンを中心に、石を組む作業も再開されました。
川の瀬で水をせき止める石のように、大きな石をリズミカルに並べていきます。
石の裏側は少し土を盛り上げて、石に沿わせるようにバラ苗を植栽する予定です。
駐車場側の木製フェンスには、茶色い防腐塗料が塗られ始めました。
素地の木の色から茶色に変わり、より一層、「和の趣き」感が出てきました。
一方で、バラ園へのメインエントランス付近は、まだこんな状況。
まだまだバラを植えられる状況ではありません。
大型アーチを設置するための基礎工事も始まりました。
こちらも、緩やかにカーブを描きながら、八連のアーチを設置します。
現場視察のあと、地元・京北町のアイアン作家さんの工房(アトリエ)を訪れました。
以前試作してもらっていた、切妻屋根を模したデザインの大型アーチが八連、製作されていました。
8つ並ぶとなかなか壮観です。
これを現場で溶接して組み立てる予定です。
2017年4月14日、京北町に遅い春が訪れました。
バラ園建設地の向かいにある桜が満開です。
バラ園は、京北町の名勝地、桜で有名な皇室ゆかりの御寺・常照皇寺に向かう国道477号線の左側にあります。
園内では、急ピッチで工事が進んでいますが、まだまだこんな状態。
とてもバラ苗を植えられる状態には至っていません。
できれば、桜が咲く頃にはバラ苗を植えてしまいたかったのですが、
まだあと少し工事が進捗するのを待たざるをえません。
細かな部分も仕上げ段階に入って来ました。
バラ園の中央を緩やかにカーブするメインの園路は、四角い石と玉砂利石のコンビネーションのデザインです。
これも、「和の趣き」を意識した演出のひとつです。
こちらは、もう一方の主要な園路。
こちらの仕上げは、先ほどの園路とはまた違うデザインにしています。
園路の両脇に自然石を並べ、その間は玉砂利洗い出し仕上げとする予定です。
園内で交差する主要な2本の園路を作っているところです。
バラを植栽するエリアに据えた石組みは、ほぼ出来上がっています。
いよいよバラ苗を植えるための準備にも取り掛かりました。
懸案の土壌改良を行っています。
元々田んぼで粘土質の土壌のため、バラを植えるのに適した土壌にするため、
腐葉土、牛ふん堆肥などをユンボを使って混ぜ合わせているところです。
当初は人力で実施しようと思っていましたが、広範囲かつかなりの重労働だったため、機械の力を借りました。
家形のパーゴラ(東屋兼用)も、まだ完成途上の建物のように見えますが、これでほぼ完成しています。
家形パーゴラを横から見たところ。
壁面の一部には、板を貼り、つるバラを壁面誘引できるようにしています。
将来的につるバラが成長すれば、屋根の垂木部分へとつるバラが這い上がり、
屋根一面にバラの花を咲かせることも夢ではないかと思います。
バラ園の東端、隣接する旧料亭だった建物(現在は、休憩所兼事務所)との境に白い漆喰壁があります。
その白壁の向こう側には、日本庭園が造られています。
白壁の手前、バラ園側に小さな路地状の通路をつくるのですが、オーナーの発案で、
その路地との仕切り塀として、背の低い(高さ約1.2m)木製フェンスを設置することになりました。
この木製フェンスを使って、つるバラを誘引する予定です。
そして、いよいよバラ苗を植える日が近づきました。
苦労して品種選びを行ったバラ苗を、テーマごとに沿って植えこむのですが、
再度、現場の状況に合わせて、バラ苗の配置を再検討しました。
写真は、現地調査に基づく手書きのバラの配置図です。
手書きのバラの配置図をもとに、より正確にバラの配置を決定するために、配置図を作り直したのがこちら。
第一次の植え付けは、約250品種、約300株ありますが、咲いた時の風景を頭に思い描きながら配置しました。
それでも、実際に植え付ける際には、現場での微調整が更に必要になってくると覚悟していました。
そして、いよいよバラ苗の植え込み作業を行うことになりました。
日付は、2017年4月26日と27日。
2日間かけて、バラ苗の配置と、植え付け作業を行います。
写真は、植え込み初日の4月26日。
普通の場所なら、もうすぐバラの開花も始まろうかという時期になっての植え付けです。
本来はバラの休眠期に植え付けたかったのですが、諸事情により工事が大幅に遅れたため、やむを得ません。
写真は、バラの配置図に基づいて、バラ苗を間配りする作業前のバラ園全景です。
園路には土除けのためのシートが養生され、粗く土壌改良された土がむき出しになっています。
この日は、朝からあいにくの雨模様。
小雨が降りしきり、園内はぬかるみ、作業もはかどりません。
そんな中、バラ苗を各ゾーンごとに間配り、植え込み位置を決めていきます。
バラ苗の配置図を基に、間違いがないかチェックをしながらの作業が続きます。
何度も配置図段階でチェックしてきましたが、実際にバラ苗を間配っていくと、妙に隙間が空いていたり、
思っていたほどスペースがなかったり、図面と現場が異なっていたり、と問題山積でした。
現場優先でバラ苗の配置を調整をしながら、何度もバラ苗の入れ替え作業を行い、徐々に配置が固まっていきます。
棚田の段差を使った擁壁部分です。
上の段の棚田に、滝のように枝垂れて咲くつるバラ、群星・群舞の長尺苗を間配りました。
その下の園路は、まだ完成しておらず、これから赤い焼成煉瓦ブロックを敷き詰めることになっています。
いろんな作業工程がオーバーラップしながら進んでいるのです。
つるバラ、群星・群舞を植える擁壁の裏側。
南側のバラ園の中心方向に向かって、斜めに長尺苗を植え付けていく予定です。
東屋兼家形パーゴラの周囲にもバラ苗を配置しました。
次第に雨も強くなり、この日の作業は途中で中断せざるを得ませんでした。
植え込み作業2日めの2017年4月27日。
この日は朝から好天に恵まれました。
前日、雨の中、必死の思いで配置したバラ苗を植えこんでいきます。
地元の方々も、助っ人として植え込み作業を手伝って下さいました。
写真は、棚田の段差を活かした擁壁部分に、長尺のつるバラ、群星・群舞を植え込む作業の様子です。
バラの植え込み作業と同時並行で、擁壁の足元の園路の舗装工事も行われました。
レンガブロックひとつとってもこだわって、「和の趣き」に合うレンガブロックを選んでいます。
ここでは、備前焼のような質感の赤い焼成煉瓦ブロックを敷き詰めていきます。
バラ苗の植え付けと同時並行で、土壌改良が済んでいなかった場所の土壌改良をユンボを使って実施しました。
園路やせっかく並べたバラ苗を傷めないように慎重に作業をしてもらっています。
この日一日で植え付けを終わらせないといけないため、様々な作業が交錯し、現場は騒然としていました。
駐車場との境の木製フェンスの足元にもつるバラを植え付け、その横のイングリッシュローズゾーンにも、
バラ苗を植え付けているところです。
品種間違えがないか、その都度確認しては植え込む、という作業が延々と続きました。
バラ園西側には、8連の大型アーチも設置されました。
8つ揃うと、なかなか壮観です。
このアーチの下には、軽トラックがメンテナンス作業で入れるよう、園路を整備する予定になっています。
インターロッキングを敷き込む作業も後日に行う予定で、まずはアーチに誘引するつるバラの植え込みを
優先して行いました。
アーチに植えるバラは、大きく伸びるランブラーやラージクライマーといった品種で、
長尺苗を調達しましたが、それでも大きなアーチの半分にも届かない長さです。
アーチの頂点に到達するには、まだ数年時間が掛かりそうです。
写真は、大型アーチの手前、バラ園のメインエントランス付近です。
ここでも、バラ苗の植え付け作業と同時並行で、ゲートを作る工事が進行中でした。
神社の鳥居のような大きなゲートを建てるため、頑丈な基礎を作っているところです。
東屋兼家形パーゴラの周囲にも、つるバラを植え込みました。
とりあえず、この日は植え付けるだけで、誘引はまた後日、行うことになりました。
こちらは、バラ園東側の旧料亭の建物側に新設した低い木製フェンス。
まだ出来上がったばかりで、防腐塗装が終わっていませんが、先にバラ苗を植え付けを行いました。
後日、つるバラを誘引する前に、この木の素地の部分に防腐塗料を塗る作業を行う予定です。
地元の助っ人の方々の協力もあり、何とか夕暮れ前には、ほぼ全てのバラ苗の植え付けが完了しました。
鉢植のままだと、水やりなど、バラ苗の管理が大変でしたが、地植えしてしまえば、
そのあたりの負担もずいぶん軽減されると思います。
5月の開花直前での植え付けだったため、この年(2017年)の開花は期待できないと諦めましたが、
これで何とかバラ園として、最初の形はできたのかなと感慨深かったです。
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前編は、ここまでです。
「私庭」とはいえ、一般家庭の庭ではここまでの規模のバラ園はなかなかつくれないと思います。
構想段階から、設計、品種選定、造園施工、そして植え付けというところまで、その経緯を振り返りながら
レポートさせていただきました。
如何でしたでしょうか?
次回の「後編」では、バラ苗植え付け後、未完成の造園工事のその後、そしてバラの育成、管理など、
いろいろと失敗も重ねながらバラ園を苦労して作り上げて過程をレポートしたいと思います。
構想から3年目の一般公開までのドラマに乞うご期待下さい!
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【 京北・香りの里 六ヶ畔・花簾庭(京北バラ園)について 】
住所:京都市右京区京北比賀江町口烏谷(くちからすたに)
(京北にある皇室ゆかりの御寺・常照皇寺に向かう国道477号線の左側にあります。)
2022年・オープンガーデン情報
開催期間:令和4年5月27日(金)~令和4年6月5日(日)の10日間限定
開園時間:9:00~16:00 駐車場:7台あり
※ 「維持管理協力金」についてご協力のお願い
当園は個人の私庭であり、有志ボランティアにより維持管理されています。
昨年(令和3年)までは、庭主のご厚意により、無料で一定期間開園しておりましたが、
昨年本年度より、入園されるお客様から、お一人500円の「維持管理協力金」をお願いしております。
皆様から頂戴いたしました「協力金」は、バラ園の今後の永続的な維持を目標とした
園内のバラの育成・保護、資材購入、園内の整備等に使用させていただきます。
ご理解ご協力の程、お願い申し上げます。
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