2019.6.28 / イギリスで訪ねた庭レポート
昨年の2018年の5月、世界的に有名な日本人ガーデンデザイナー、石原和幸氏のサポートメンバーとして、
イギリス・ロンドンで開催されたチェルシー・フラワーショーに、石原さんの庭をつくりに行ってきました。
早いもので、それから1年が経ちました。
(石原和幸氏は、今年2019年もチェルシー・フラワーショーに挑戦され、
見事、通算11個目のゴールドメダルを受賞されました!)
昨年のチェルシーフラワーショーで、石原さんのコンテストガーデンづくりに参加させていただき、
フラワーショー開催中の庭のメンテナンスもさせていただくことになって、都合3週間ほどイギリス・ロンドンに
滞在することができ、その間、ロンドン市内や近郊に点在する世界的に有名なガーデンをいくつも見て回りました。
こちらのディノスさんのコーナーで、僕が訪ねたロンドン近郊の12の庭をレポートさせていただくことなった
この企画、今回はその第11回目、「シシングハースト・カースル・ガーデン」の後編です。
「イギリスの宝石」と称えられるシシングハースト・カースル・ガーデン、
その美しさは、想像を超える素晴らしいものでした。
前回のレポート記事(前編)では、ガーデンの中心にそびええるタワーからの俯瞰のアングルで、
そのガーデンの全体像をご紹介いたしました。
今回は、その後編ということで、地上から、その美しいガーデンの魅力に迫りたいと思います。
訪れた日は快晴の天気に恵まれ、鮮明な画像の良い写真をたくさん撮影することができました。
今回は、その中から選び抜いた写真を使って、シシングハーストの全貌をご紹介いたします。
シシングハーストに着いて、まず最初に登ったのが、ガーデンの中心で天に向かって聳え立つこのタワー。
四角い建物の両側に六角形の塔がくっついたような特徴的なフォルムです。
六角形の部分が螺旋階段になっていて、そこから屋上の展望台に登ることができるようになっています。
屋上の展望台に人が写っているのが分かるでしょうか?
前編では、あの場所からタワーの周囲を見下ろした様子をレポートしました。
かつて、廃墟のように打ち捨てられていたこの地を買い取り、20年以上の歳月をかけて美しい庭を作った
詩人のヴィタ・サックヴィル=ウェストと、その夫で外交官であったハロルド・ニコルソン。
今回は、彼らの情熱が注ぎ込まれたこの美しい庭を、実際に歩いたように、順に巡って行きます。
まず最初に足を運んだのは、シシングハーストといえば、ここ、「White Garden」です。
シシングハースト・カースル・ガーデンの中で最も有名で、象徴的存在となっているガーデンです。
シンボリックなタワーを背景に、手前に白い花を入れれば、とてもフォトジェニックなシーンになります。
「White Garden」の中心にあるのが、ロサ・ムリガニーという原種系のランブラーローズ。
こんもりと緑のパラソルのように、ガゼボに誘引されています。
訪れた時(5月末)は、まだ開花には程遠く、6月下旬から7月上旬ごろに見頃を迎えるそうです。
たわわに咲き誇る姿は圧巻!とのこと、見れなかったのが残念でなりません。
そのロサ・ムリガリーのガゼボの下、大きな黒い壺とその周りに配された白い小花のコントラストが
とても印象的でした。
オルレアのような小花と、丸いぼんぼりのような白いアリウム。
同じ花色で花形の違うものが共存し、庭にリズムが生まれていました。
「White Garden」のエリアは、1950年頃までローズ・ガーデンだったそうですが、
手狭になったため、バラを移植。
残っていた白いグラジオラスやアイリスを見て、白い花ばかりを集めたコーナーにしては?というアイディアが、
ヴィタの頭の中に浮かんだのだそうです。
白い花と緑の葉、そして背景となる赤いレンガの建物。
派手な色がない、凛とした美しさが感じられる、ガーデンです。
「White Garden」の一角に作られたパーゴラのあるテラス。
パーゴラには、早咲きのクレマチスのようなつる性植物の白い花が咲いていました。
何とも心地よさそうなテラスです。
「White Garden」を後にして、隣接するイチイの道(Yew Walk)を進みます。
ちょうどタワーの正面当たりで、イチイを刈り込んだ緑の壁が低くなっていました。
枯れこんだのか、現在、養生・育成中なのかもしれません。
イチイの道(Yew Walk) の中は、こんな感じになっています。
両側に、3mはあろうかという緑の壁が立ち上がっています。
ずっと先の方へ進むと、ガーデンの南側の「Rose Garden」につながります。
イチイの道(Yew Walk) を振り返ると、こちらは突き当りになっていて、
石でできた彫刻が置かれていました。
幾何学的な構成の庭でありながら、通路の両サイドの作り込み方が異なるという、
非対称なデザインも面白いところです。
イチイの道(Yew Walk) を抜けると、「Rose Garden」に出ます。
ここには白い大理石で作られた女神像が、遠くに聳えるタワーを見つめるように置かれていました。
「Rose Garden」側からレンガ造りの壁を隔てて、「Tower Lawn」という、
タワーの足元の芝生広場方向を見たところ。
小径が、壁越しにつながり、奥行き感のある演出となっています。
壁面には、赤や白のつるバラが誘引され、その手前のヤマボウシのような高木は、白い花が満開です。
赤いレンガ壁に穿たれた開口部には、鉄の格子が施されています。
かつて、捕虜収容所として使われていた頃の名残でしょうか?
ヤマボウシに似た白い花と赤いつるバラ、レンガ壁のコントラストが絶妙です。
今の部分を真正面から見たところ。
壁の向こうにタワーが聳え、レンガ壁に穿たれた開口部が奥行き感を演出しています。
手前のボーダー花壇には、様々な植栽が施され、美しい風景を形作っています。
「Rose Garden」の中は、バラだけではありません。
訪れた5月末は、まだイギリスではバラの開花には少し早く、バラの花は少なめでした。
代わりに、アイリスが美しく咲いていました。
ここには白いアイリスが群生しています。
こちらには、紫色のアイリスが満開でした。
その背後には、つるバラが仕立てられています。
「Rose Garden」の中は、どこを切り取っても美しい風景ばかりです。
青紫色のアイリス、濃い赤紫色のアリウム、奥には薄紫色の花、そして、かすかに咲き始めた黄色いバラ。
混植の中にも、緻密に計算された配色が見て取れます。
こちらは、「Rose Garden」の中央に作られた芝生敷きの円形広場。
イチイの葉が刈り込まれて、円形の壁を作っています。
タワーから見下ろしたこの円形広場は、目線ではこのように見えるのです。
ここから、東西南北に小径が伸び、それぞれの「Garden Room」へと導かれていきます。
こちらは、「Rose Garden」の西の端。
高さ4mはあろうかという巨大な半円形のレンガの壁が正面に見えています。
ここは、シシングハーストの中でも、特に見たかった場所です。
この壁面には、ペルル・ダ・ジュールという青い花の咲くクレマチスが誘引されいるのです。
壁面を埋め尽くすように青い花が咲く満開の頃の写真を見たことがあるのですが、それは美しいシーンでした。
残念ながら、僕が訪れたこの時期は、まだ開花には少し早かったようです。
正面に人が座っている木製のベンチは、イギリス人・建築家のエドウィン・ラッチェンスが設計したベンチで、
日本では「貴族ベンチ」(Nobility Bench) と呼ばれています。
とてもこの空間に合っていると思いました。
このベンチに腰掛けて、円形の壁を背に、「Rose Garden」を見渡してみたかったのですが、
よっぽど座り心地が良かったのか、ずっとこの人が座ったままでした(笑)。
円形のレンガ壁とその壁面に誘引されたクレマチス、ペルル・ダ・ジュール。
この壁面が青で染まると、息をのむほどに美しいでしょうね、きっと。
またいつか、そんな光景を目にする機会があることを祈るばかりです。
「Rose Garden」は、まだ開花には少し早く、ほとんど咲いていませんでした。
ですが、その代わりに、どのように仕立てられているのかが、よくわかりました。
ここでは、つるバラがフェンスなどの工作物を使わずに、スクリーン状に仕立てられていました。
弓状に曲げられた枝からは、頂芽優勢の原理に従って、たくさんの花茎が上がっていました。
このような仕立て方も、とても参考になります。
こちらの写真は、「Rose Garden」からタワー方向を見たアングル。
オレンジ色で咲いているのは、ルピナス。
タワーのように花穂を上げて咲く様は、とてもフォトジェニック。
背景のタワーに呼応するかのように、リズミカルに垂直のラインを描いているのが印象的でした。
こちらは、半円形のレンガ壁から続く壁面。
開口部が開いていて、奥に行けるようになっているみたいです。
その開口部を真正面から見たところ。
開口部の左側にはつるバラ、右側にはイチジクの木が壁面に誘引されています。
イチジクの枝は、くるくると丸く仕立てられ、とても印象的なデザインです。
こんな仕立て方を見たのは初めてでした。
ガーデナーの発想力と遊び心を強く感じました。
そして、こちらが、先ほど見た青い花の咲くクレマチス、ペルル・ダ・ジュールを誘引している半円形の壁面の
裏側になります。
実際に行ってみないとなかなか見ることができない、レアなショットです(笑)。
ここにもつるバラが誘引されていました。
半円形の壁の裏側(西側)は、圃場になっていました。
ガーデン内に植栽されている様々な植物を栽培・育成していて、枯れたり、旬を過ぎたりすれば、
すぐに補植することができるように準備されているのです。
こちらもバックヤード(圃場)です。
ここで気になったのが、画面真ん中辺りに見える、木で作られた特徴的なデザインの柵です。
人工物がなるべく見えないように、自然のものを活用しながら、バックヤードとはいえ、美しい風景になるよう
意識が行き届いているように感じました。
こんなバックヤードさえも、気軽に公開しているあたりに、シシングハーストの懐の深さを感じます。
バックヤードから再び「Rose Garden」へと戻りました。
園内の小径は、人が一人通れるほどの細さです。
ツゲの緑の葉で囲われた花壇は、手前から奥へと高さを変えながら、立体的に植栽が施されています。
こちらは、青いクレマチスを誘引した円形の壁面の反対側の角です。
ここには黄色いつるバラが誘引されていて、かなり咲き出していました。
どこにいてもタワーが見通せるという安心感がありますね。
黄色い花のつるバラの隣の壁面には、またしてもイチジクが誘引されていました。
葉が旺盛に茂る前のちょうどこの時期に見ると、その美しい姿が際立ちますね。
こちら側の扉は固く閉ざされていましたが、この扉があることで、何か物語を感じさせ、
この赤いレンガ壁が一層美しく見えるような気がします。
イチジクを誘引した壁面のすぐ横には、「Main House」が迫っています。
そのコーナー部分に、何やら小さな青い花が咲く木があるのが見えました。
手前のボーダー花壇には、淡い水色や黄色の花のアイリスも咲いていて、とても賑やかな感じです。
もう少し近寄ってみます。
そう、ロンドン市内や、コッツウォルズ地方のガーデンでも咲いているのを見かけたセアノサスです。
樹高は4mくらいあるでしょうか?
ここまで大きく育つんですね。
やはり、青い花が咲く木はいいですね。
ここから「Rose Garden」を離れてタワーの東側に広がる「果樹園」(Orchard)と呼ばれるエリアに向かいます。
途中、つるバラが仕立てられている風景に出会いました。
ここでも無粋なフェンスなどはなく、切り倒した木を使ってフレームを作り、そのフレームに引っ掛けるように
つるバラが誘引されていました。
ツルは弓状に曲げられ、頂芽となる枝の中心部分から、たくさんの花茎が立ち上がっているのが特徴的でした。
こちらが、タワーの東側に広がる「果樹園」(Orchard)と呼ばれるエリア。
果樹がランダムに植栽され、その足元には、ワイルドフラワーが無造作に広がっています。
早春の頃、この果樹園の広大なオープンスペースは、水仙の咲き乱れているそうです。
その風景も是非見てみたいものです。
こちらは、果樹園一番奥、北東角にある東屋(Gazebo)です。
小さな木造の六角形をした建物で、その内部も見学できるようになっています。
東屋(Gazebo)の内部に入ると、ご覧の風景が目の前に広がります。
美しい田園風景を見ながら、読書をしたり、手紙を書いたであろう場所になっています。
東屋(Gazebo)の前には、濠(Moat)があります。
濠の両側には高木が植えられ、涼しげな雰囲気になっていました。
この濠が、ガーデンとその向こう側の田園地帯との境界になります。
写真は、濠(moat)の南端です。
高木に両サイドを挟まれた濠は水草に覆われ、黄緑色の道のようです。
その手前には、青紫色のアイリスと菜の花のような黄色の花が咲き乱れ、絵のような美しいシーンが広がります。
プロジェクトがあり、そのガーデンデザインをさせていただいていますが、薬草といえば、ハーブ。
このシシングハーストのハーブガーデンからも、いくつものインスピレーションをいただきました。
「Herb Garden」の一角に置かれた多肉植物の鉢植え。
センペルビブムの寄せ植えです。
イギリスのあちこちのガーデンで、この多肉植物の鉢植えやガーデンを見かけましたが、流行りなのでしょうか?
土の部分が、細かい砕石のようで、高山に植わっている感じが出ています。
こういうところも参考になりますね。
続いては、「Herb Garden」から続く、ヘーゼルナッツの木の庭(Nuttery)。
ここは緑だけで構成されたガーデン。
ヘーゼルナッツの森の足元には、シダやギボウシ、ササなどが生い茂っています。
こちらは、「Moat walk」と呼ばれる、濠へ向かう道。
道には芝生が敷かれていますが、この道は通行する道ではなく、
その両端からこの道に面した植栽を眺めるための装置という感じの場所です。
こちらは、濠(Moat)側から見たシーン。
向かって右側のレンガ壁の後ろから白藤が、見事に枝垂れ咲いています。
その足元には、黄色と紫色の宿根草が楚々と咲いています。
白藤の反対サイドには、黄色やオレンジ色のツツジが咲き誇っています。
中央の緑の芝生とも相まって、非常に美しいカラーバランスです。
この時期に来なければ、この美しいシーンは見ることができなかったかもしれません。
とてもラッキーでした。
こちらは、「Moat Walk」を逆サイドから見たシーン。
ゆっくりと奥へ向かって下っていく芝生の道の先には、アイキャッチとなる彫刻が置かれています。
そこに、濠(Moat)が掘られているのです。
「Moat Walk」の濠(Moat)とは反対側に行くと、「Cottage Garden」につながっています。
この「Cottage Garden」にあるのが、「South Cottage」と呼ばれる、
かつて、ヴィタやハロルドが仕事やプライベートに使っていた邸宅です。
この「Cottage Garden」には、黄色やオレンジなどの鮮やかなビタミンカラーの
花が咲く植物が植えられています。
小径の両側に、所狭しと埋め尽くされた植栽は、
ヴィタの「どんな隙間にもどんどん詰め込む」という考えが
色濃く反映されています。
この「Cottage Garden」で写真を取り合う若者がとても微笑ましくて
気に入っている写真です。
こちらは、「South Cottage」という邸宅の壁面に誘引されたつるバラで、
「マダム・アルフレッド・キャリエール」というオールドローズ。
ヴィタとハロルドがシシングハースト・カースルの購入を決めて、
契約を交わしたその日のうちに、「South Cottage」の扉の脇に最初に植えた
記念すべきバラだそうです。
風化したレンガの壁面にやさしく寄り添い、可憐な白い花を咲かせていました。
この「Cottage Garden」には、見たこともないような珍しい植物が
植えらていました。
こちらは、品種タグに「Lotus Berthelotii」(ロータス・ベルテロッティ)と
記載されていました。
調べてみると、カナリア諸島ベルデ島玄さんの固有種で、
マメ科の植物のようです。
アサギリソウに似た松葉状のシルバーリーフに、鳥の嘴状形で朱赤の花が特徴で、
花言葉は「熱い恋慕」。
どこか、情熱的でありながら、脆さを感じるしまうのは僕だけでしょうか?
こちらは、オレンジ色のハニーサックル。
こちらは、赤いチューリップで、花芯が黒く、とても個性的な花です。
こちらは、品種名が分からなかったオレンジ色の花。
この「Cottage Garden」という2人のプライベートな空間だった場所では、赤・黄・オレンジに色彩が限定され、
一見すると、奇抜ささえも感じる難しい花色の植物たちを巧みに組み合わせ、調和させているところに脱帽です。
こちらは、「Cottage Garden」と「Rose Garden」をつなぐ、「ライムの並木道」(Lime Walk)。
事前の情報収集では、このライムの木は、「ブリーチング」と呼ばれる、枝と枝を橋のようにつなげる仕立て方を
しているようなのですが、葉が茂っていて、その様子は良く分かりませんでした。
その様子を見るには、冬に来る必要がありますね(笑)。
再び、タワーの西側、「Front Courtyard」に戻ってきました。
ここからは、画面左側に見える「Main House」と「Long Library」がつながった長い建物に沿って見ていきます。
「Front Courtyard」からエントランスホールのアーチの向かって左側が
「Main House」と呼ばれているゾーン。
このレンガ造りの壁面に、いくつものつるバラが誘引されています。
品種名は分からなかったのですが、アプリコット色の早咲きのバラが
咲いていました。
その横では、これまた品種名が分からないのですが、ツル性の植物が
鮮やかな青い花を咲かせていました。
風化した味わいのあるレンガ壁奈良、どのような植物を合わしても美しいですね。
長い年月を経た建物だけが持つ深みを感じます。
さらにその右側へと歩を進めます。
シシングハースト・カースル・ガーデンの見所は、完璧な植栽や、カラーバランス、ガーデンデザインなど、
書き尽くせないほどの魅力がありますが、この古いレンガの壁や建物もその魅力のひとつです。
夫妻は、この庭園をつくり始めた時、残存していた古い建物の雰囲気を失わないように、
再利用可能な古いレンガや石を使って修復していったそうです。
ガーデン雑誌などでたびたび見かける、シシングハースト・カースル・ガーデンを代表する定番アングルです。
このアーチ状の出入口のフレームを彩るように配された赤やゴールド色のつるバラ。
本当に美しいシーンです。
「Long Library」側から見た建物全景です。
三角屋根から何本も突き出た煙突のデザインが、美しいスカイラインを構成しています。
本当に、どこを切り取っても美しい風景なのです。
「Long Library」の壁面を覆いつくさんばかりの勢いのつるバラ。
まだ開花には少し早かったのですが、このバラが開花すると、
また見事な風景になるんでしょうね。
つるバラが誘引された壁面の下、木製のドアのある部分にクローズアップ。
出入口には、ユーフォルビアがテラコッタ鉢に植えられていました。
バラとユーフォルビア、他のガーデンでもよく見かけた組み合わせでした。
こちらは、「Front Courtyard」の西端にある「Purple Boarder 」と呼ばれる紫色の花を集めたボーダー花壇。
紫色の花を中心に、赤い小花を散らして、より印象的な演出がされています。
「Purple Boarder 」を正面から見たところ。
手前、中間、奥、そして壁面のつるバラ、何層にもレイヤーが作られ、花壇に厚みが出ています。
それぞれの植栽もひと固まりづつ、丸く植栽されているのが良く分かります。
ヴィタは巧みに色彩を操って、印象的な花景色をつくり上げています。
紫色の花壇といっても、単色の紫色ではなく、ピンク、ブルー、ライラックなどの花色に加え、
銅葉の植物もうまく取り混ぜて、色彩の広がりを演出しています。
シシングハーストの旅も終盤に近づいてきました。
「Purple Boarder 」から、その奥に続く小径を進みます。
正面に見えているのが、「Priest's House」と呼ばれる邸宅です。
その「Priest's House」の横には、芝生に広場が広がっていました。
その真ん中に、石をくり抜いたような鉢があって、淡い紫色の花があしらえてありました。
これまで見てきたメインのガーデンとは全く別の、肩の力が抜けた優しいガーデンです。
そして、その横のバラの花壇では、ピンク色のバラの花が咲き始めていました。
その後方の木製のフェンスも、とても特徴的で目を惹かれました。
後ろにある建物は、元々は家畜小屋だったような建物ですが、今はナショナルトラストの売店になっています。
長らくお伝えしてきたシシングハースト・カースル・ガーデンも、この写真が最後です。
駐車場の近くに作られた苗などの花卉類を販売しているショップです。
苗を置いた台も、その上に置かれた鳥のオブジェなど、売り場ひとつとってもオシャレです。
如何だったでしょうか?
ガーデニング大国・イギリスにあって「イギリスの宝石」と呼ばれるほどに完成度の高い庭園は、
夫であるハロルドが庭園のデザインを、妻のヴィタがカラースキームと植栽をそれぞれ担当し、
彼らがが夢見た理想のガーデンを生み出しました。
現在、シシングハースト・カースル・ガーデンは、イギリスの誇るべき文化財保護財団「ナショナル・トラスト」が
庭園、農場、建物すべてを管理をしているそうです。
※ ナショナルトラスト「シシングハースト・カースル・ガーデン」のHPは、こちら↓
https://www.nationaltrust.org.uk/sissinghurst-castle-garden
ヴィタとハロルド夫妻の意思やビジョンを失うことなく、150年経った今も当時の輝きを維持し続けている、
シシングハースト・カースル・ガーデンは、まさに「聖地」と呼べる場所でした。
次回・第12回目は、この「シシングハースト・カースル・ガーデン」からほど近い場所にある、
「クレート・ディクスター」を巡ります。
「グレート・ディクスター」もシシングハーストに負けず劣らずの素晴らしいガーデンです。
乞うご期待ください!
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