2019.7.24 / 京北バラ園ができるまで京北・香りの里/六ヶ畔・花簾庭(京北バラ園)の四季
古都・京都の中心部から車で約1時間ほど山に入った、「京都市右京区京北町」という、のどかな里山風景が広がる
中山間地域に、バラ園をつくるというプロジェクトに関わらせていただくようになって、丸3年の年月が流れました。
今年2019年5月、そのバラ園が一般公開されることになりました。
そのバラ園の正式名称は、「京北・香りの里 六ヶ畔・花簾庭(かれんてい)」という長い名前ですが、
通常は、「京北バラ園」と略して呼んでいます。
里山風景が広がる京都市右京区京北町に、『和の趣きを備えた、香りをテーマにしたバラ園をつくろう!』
というプロジェクトが、一般公開される間での経緯を綴ったレポート記事の第二弾。
「後編」では、バラ苗を植え付け後、未完成のままの造園工事のその後、そして一般公開までの2年間の
バラの育成期間中の管理の様子など、試行錯誤の中で作り上げたバラ園の様子を時系列に沿ってご紹介します。
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2016年2月に初めてバラ園計画地を訪れてから1年余りの時間が経過し、
2017年4月末、京北バラ園に約250品種、約300株のバラ苗を植え付けしました。
(詳しくは、「京北バラ園」が出来るまで 〜3年間の軌跡(前編)〜をご覧下さい。)
写真は、2017年6月9日。
バラ園のメインエントランスに当たる角の部分に神社の鳥居のような立派なゲートができました。
まだ鳥居部分だけで、閉園時に鹿などが入ってこられないようにする鉄製の門扉はまだ取り付けられていません。
しばらくは、防獣ネットで急場をしのぎます。
京都の市街地より北の山中に位置する京北町は、市街地よりも気温が低く、バラの開花時期も半月ほどずれます。
つい1か月ほど前に植え付けたばかりのバラ苗は、ほんの少しだけ、花を咲かせてくれました。
まだメインエントランスを入った部分は、土がむき出しのままです。
左側の八連アーチの下も土のままですが、奥の棚田にメンテナンス用の作業車が入れるように、
インターロッキングで舗装する予定になっています。
棚田の一段上の部分から、バラ園全景を見下ろしてみました。
岩が置かれているエリアはオールドローズゾーンで、自然樹形で咲かせるため、株間を広くとっています。
ただ、土のままだと、雑草が伸び放題になるため、芝生を敷いて、雑草が生えにくくする対策を施しました。
写真手前の擁壁部分には、枝垂れても咲く品種のつるバラ、群星・群舞をランダムに並べて植栽しています。
枝先を下に引っ張るような誘引を行っています。
その群星・群舞を植えた擁壁を横から見たところ。
また地植えして1か月ちょっとしか経っていないのに、健気に花を咲かせてくれました。
まだ花数も少なく、水が堰を流れ落ちるような風情にはなっていませんが、その可能性を感じました。
擁壁に沿って足元には、赤い焼成煉瓦ブロックを敷き詰めた園路が完成しています。
2017年6月、何とか京北バラ園の1年目がスタートしました。
まだ建設途上という段階ですが、1年前に構想したものが現実となり、少しづつ形になっていきます。
棚田の2段目には、バラ苗のストックヤードを兼ねたブルーベリー畑も増設されました。
美しい山並みの中に、塀で囲われたひっそりとしたプライベートガーデンが出来上がったのでした。
2017年6月23日、建設途中のバラ園では、付随する工事が進められました。
こちらは、北海道のとある園芸資材メーカーから取り寄せたハーブマット。
ペニーロイヤルミントという品種のハーブの種をシート状の土の上に蒔き、発芽させたものです。
これをバラ園のある場所に使うことになりました。
ハーブマットを施工するのは、国道に面した駐車場。
駐車スペースには、景観に配慮して緑化ブロックを使うことにしていたのですが、
一般的な芝生ではなく、今回、ハーブマットを採用することになりました。
その決め手は、「香り」。
このバラ園のテーマのひとつが「香り」であり、オールドローズをはじめ、様々な香りのバラを植栽しています。
環境省主催の「みどり香るまちづくり」企画コンテストにも入賞したプロジェクトですので、
できるだけ多くの「香り体験」をしてもらえる環境を作りたいと思ったのです。
車に踏まれても強いペニーロイヤルミントのハーブマットを駐車場の緑化ブロックに敷き詰めることで、
車がハーブマットを踏みしめると、ほのかにスパイシーな香りが立ち上がり、
車を降りた人は、すぐにその香りに気が付きます。
一日がかりでハーブマット敷き詰めて、緑化ブロックの駐車場が完成しました。
見た目にもなかなか美しい仕上がりで、瓦を載せた木製フェンスとの相性もとても良いです。
オリジナルデザインの切妻屋根型(不等辺三角形)の八連アーチをエントランス方向から見たところ。
一般的な円弧状のアーチと違って、日本家屋の屋根を模したアーチは、里山風景に良く馴染んでいると思います。
頂点にまでつるバラが到達するには、まだ少し時間が掛かりそうですが、
つるバラがアーチを覆い尽くし、バラの花のトンネルができると、きっと美しい風景になるでしょう。
バラ園の全景が分かるように撮影してみました。
切妻屋根の家形パーゴラは、隣接する旧・料亭の建物とも調和し、
同じく切妻屋根型の八連アーチは、遠くに見える美しい山並みとも呼応しています。
縦格子の木塀や鳥居型のゲートなど、随所に「和の趣き」を取り入れたバラ園が出来上がりつつあります。
初めてこの場所を訪れた時、平坦な田んぼだったことが嘘のように、立体的なバラ園になりました。
オリジナルデザインは、パーゴラやアーチだけではありません。
こちらは、六角形の黒いタイルに、バラの品種名を印刷した品種プレートです。
最近は印刷技術も進化していて、一点ごとにタイルに印刷ができるのです。
また、プレートを土に刺す鉄製の支柱は、地元・京北町のアイアンワークの作家さんに作っていただいたものです。
バラ園を訪れる方々に、そのバラがどんな品種なのかが一目で分かるように作成しました。
実は、前編でも書きましたが、このプロジェクトには「隠れキーワード」があります。
それは「6」という数字。
「六ヶ畔」という地名やオーナーの名前に付くこの数字をバラ園のデザインにも活用したいと思いつき、
バラ園を6つのゾーンに分けて、それぞれ特徴的なシーンを作りました。
そして、こちらのオリジナルデザインの品種プレートも六角形のタイルを活用して作りました。
よく見ると、バラ園のロゴマークも、六角形にバラの花をあしらったオリジナルデザインになっています。
こちらは、環境省主催の「みどり香るまちづくり」企画コンテスト入賞記念に作成したオリジナルの受賞プレート。
環境省からは、この半分くらいの大きさのプラスチック製の受賞プレートをいただいているのですが、
もう少し大きく立派なものを飾りたいということで、バラの品種プレートを作成したのと同じ印刷技術を使って
和風感漂う飴色の釉薬が掛かった大判タイルを、受賞記念のプレートとして新たに作成したものです。
メインエントランスからバラ園に入ったところに設置しています。
こちらは、地元・京北町のアイアン作家さんのアトリエ。
こちらで製作中なのが、バラ園のメインゲートの鳥居門に設置する鉄製の門扉です。
メンテナンス用の作業車も入れるように、かなり大型の門扉を制作してもらっています。
日付は、2017年7月14日。
ハーブマットを敷設した国道に面した駐車場は、ロイヤルペニーミントが旺盛に茂り始めました。
殺風景な駐車場が、駐車場とは思えない、緑豊かな空間になりました。
こちらは、バラ園のメインゲート。
神社にあるような鳥居型のゲートには、地元のアイアン作家さんに制作していただいた鉄扉が取り付けられました。
これで、鹿などの獣害対策上も安心です。
バラ園の内側からメインゲート方向を見たところです。
これまで土がむき出しだった入口付近にもインターロッキングが敷き詰められ、すっきりしました。
アーチの下も同じインターロッキングが貼られ、メンテナンス車両の通行も楽になりました。
こちらは、東屋兼用の家型パーゴラ。
壁面や柱に誘引したつるバラもまだ小さいですが、将来的には、屋根の垂木にまで誘引することができれば、
パーゴラ全体でバラの花を咲かせることも出来るはずです。
この東屋は、ガーデンのメンテナンススタッフの休憩所も兼ねているのですが、
屋根がなく暑いので、写真のようにパラソルを広げて日陰をつくるようにしています。
バラ園全体の様子です。
バラ苗を植え込んだ土面には、芝生が青々と茂りだし、見た目はキレイになって来つつあります。
それでも、日々雑草との戦いです。
バラ苗を植え込んだ初年度は、薬剤散布も戦略的でなく、手探りのままでした。
地域によって発生する病気や虫も違うので、ここ京北町でどのような薬剤を散布すれば良いのか、
まだはっきり掴めていなかったので、ご覧の通り、マメコガネが大量発生して、悲惨な状態になりました。
定期的かつ、戦略的な薬剤散布が大きな課題になりました。
真夏の太陽が照り付ける京北バラ園の夏。
日付は、2017年8月5日。
国道に面した駐車場に敷設したハーブマット(ペニーロイヤルミント)が、一層旺盛に茂り、
薄紫色の花を咲かせました。
あまりにも旺盛に茂ると車が停めにくくなるので、この後、現地のメンテナンススタッフが芝刈り機で
刈り込んでくれました。
こちらが、そのペニーロイヤルミントの花です。
このハーブマットを人が踏みしめるだけで、ふわっとミントの香りが辺り一面に立ち上ります。
8月のバラ園では、芝生が青々と茂り、バラも順調に育っているように見えますが、
実は、いろいろと問題を抱えていました。
芝生が思いのほか勢いがあり、まだ植えたばかりの幼いバラ苗が生存競争に負けてしまい、
うまく育たないという課題が見えてきました。
また、ゲート手前のイングリッシュローズゾーンや和バラゾーンでは、株間が狭く、芝生を貼れなかったため、
地面が露出したままで、見た目にも美しくありません。
バラの株元をカバーするグランドカバー植物や宿根草などを植栽する必要性が出てきました。
地植えしたとはいえ、植え付けたのが開花直前の4月末で、根が成長する前に過酷な夏を迎えたこともあり、
弱い品種のバラは、枯れ込むものが出て来ました。
一方で、剛健な品種のつるバラは早くも新しいシュート(枝)を勢いよく伸ばし、この環境に適応していました。
写真は、東屋兼家形パーゴラに誘引したつるバラで、ロサ・フェリペ・キフツゲート。
イギリス・コッツウォルズ地方にある名園、キフツゲートコート・ガーデンズで発見されたバラです。
また、バラ園の隣にある旧・料亭だった建物では、夏期限定で「六ヶ畔茶寮」がオープンし、
オーナーが周辺の農地で栽培しているブルーベリーを使ったかき氷などが提供されています。
日付は2017年8月30日、植え付けして初めての夏剪定を行いました。
木製フェンスに誘引したつるバラのシュートを整理したり、返り咲くバラの剪定作業を、
現地のスタッフの方々と行いました。
インターロッキングも整備され、見た目にもスッキリした八連のアーチ。
ここは横に水路があるため、水はけも悪く、植栽したつるバラが活着するか、心配していたのですが
何とか無事に育ってくれているようです。
日付は、2017年9月27日。
9月に入り、少し暑さも和らいだ京北町では、秋バラに向けて、バラの成長が始まっています。
オールドローズゾーンに敷き詰めた芝生も青々と茂り、美しくなりました。
棚田の段差を活用した擁壁部分のつるバラ、群星・群舞ゾーン。
これらは一季咲きのつるバラなので、旺盛に枝を伸ばし、成長を続けています。
ここにはバラ園を東西につなぐ園路を通していて、滝のように枝垂れ咲いても、通行者がトゲで怪我をしないよう、
棘のないバラの群星・群舞をセレクトしています。
擁壁の足元、赤い焼成煉瓦ブロックとの間に黒い玉砂利石を入れて、ここでも「和の趣き」を演出しています。
暑い夏を乗り切れずに枯死したバラや、春の植え付け前、ストックしていたバラ苗が降雪により折れたり、
枯死したりと、当初予定していたバラのいくつかがなくなってしまい、
バラ園の一部で、歯抜け状態になっている場所がありました。
オーナーとも相談し、追加のバラを補充する準備を進めてきました。
いくつかの園芸ショップやナーセリーに協力していただき、このバラ園のコンセプトに合う補充苗を
入手することができました。
それらが、バラ園後方のストックヤードに搬入されました。
また、京北町と連接する美山町にある、バラ専門のナーセリーさんにも協力を仰ぎ、
バラ苗の補充、宿根草の調達、定期的なバラの薬剤散布などをお願いしています。
この日は、バラの剪定などのメンテナンス作業について、レクチャーをしていただきました。
日付は、2017年10月5日。
返り咲くバラの秋の開花が近づいています。
実は、この日は夏以降問題になっていた芝生の対策を行うために、やってきました。
バラの株元の雑草対策と美観上から、バラ園のバラの株元に当初より芝生を敷いてきました。
しかし、芝生の勢いが強く、バラの育成に支障が出始めてしまいました。
バラの株元まで迫った芝生の根の影響で、バラの根張りが悪くなってきたのです。
そこで、バラの株元周りの芝生をはぎ取って、芝生除けのサークルを設置することにしました。
ホームセンターで売っている波板を半分の高さにカットして、円弧状につないで、
芝生止めとして、バラの株回りに設置します。
日付は2017年10月31日。
バラの株元へ芝生対策とし設置した波板サークルの施工がほぼ終わり、
続いて、枯死してしまい歯抜け状態になっていた場所に、補充苗を植え付ける作業を行いました。
補充苗の植え付けと同時に、いくつかのコーナーでは、コーナーごとバラの品種の入れ替えを行うなど
大掛かりな植え替え作業を実施しました。
この時、まだ10月ということで、早めに植え替えしておくことで、バラが休眠する前に、
少しでも根の活着が進めば、という配慮から、この時期に実施しました。
また、バラ苗のストックヤードやブルーベリーの育成畑として使っている、棚田2段目のメッシュフェンス前に、
新たにロングパーゴラを設置することになりました。
少し前にオーナーに了解をいただき、これまでにアーチやゲートの門扉などを製作していただいた、
地元のアイアン作家さんに追加で製作を依頼していました。
ロングパーゴラが出来上がったと連絡を受け、この日、現場で組み立て作業の立ち合いにやってきました。
ロングパーゴラの全長は、25mくらいはあるでしょうか?
これほど大きなパーゴラは、なかなか他でも見たことがありません。
塗装はバラの植え付け後に行い、黒く塗ってもらう予定です。
このロングパーゴラができたことで、無粋なメッシュフェンスが目立たなくなり、
また、育成・養生中のつるバラなどを、ここに誘引することも可能になります。
こちらは、京北バラ園1年目の秋バラ。
園内で咲いているバラをメンバーが摘んで、ブーケにしてくれました。
春は植えて間もなかったため、期待した花は咲きませんでしたが、
秋は、そこそこいい花も咲くようになってきました。
日付は、21017年11月25日。
この日は、僕の自宅ガーデンから、大型のつるバラを3本、持ち込みました。
我が家のメインローズと位置付けていたピンク色の花が咲くつるバラ、ドロシー・パーキンス、
桜の花のように咲くポールズ・ヒマラヤン・ムスク、そして日本固有品種の紫玉。
どれも我が家では大きく育ちすぎ、一般家庭の小さな庭では手に負えなくなってきたので、
この秋、掘り上げて、京北バラ園に移植させてもらうことにしたのです。
我が家から持ち込んだ大型のつるバラを移植する場所は、こちら。
先日、棚田2段目のブルーベリー苗の育成畑前に設置したロングパーゴラ。
現場でくみ上げられた鉄製のオリジナルデザインのパーゴラは、黒い塗装で仕上げられ、出来上がっていました。
これだけの長さがあれば、大きくなるランブラー品種のつるバラも十分誘引できそうです。
我が家から持ち込んだ大型のつるバラを、パーゴラの足元に植え付けました。
他にも、バラ園の調子の悪いつるバラをこちらに移植し、養生することにしました。
降雪の恐れがある京北町では、つるバラの誘引は雪解け後の2月末~3月上旬頃に行う予定で、
それまで、このままの状態で越冬させます。
そして、年の瀬が迫る2017年12月5日。
この日、京北バラ園にバラ苗を植え付けて初めての冬を迎えるための「冬越し作業」を行いました。
京北町では、例年20cmほどの降雪に見舞われるそうです。
昨年もバラ苗をバックヤードにストックしていた時期に降雪があり、
雪の重みで何本か枝が折れたり、寒さで枯死した株がありました。
来春に向けて、そのようなことを起こさないよう、万全の対策をとることにしました。
写真は、棚田の段差を使った擁壁部分に植栽しているつるバラ、群星・群舞ゾーン。
来春、滝のように枝垂れて咲かせるため、雪の重みで枝が折れないように、枝を束ね、古い葉を取り除く作業を
現地のスタッフの方々も交えて総出で行っているところです。
オールドローズゾーンのつるバラは、自然樹形を活かした開帳型で咲かせたいので、
長く伸びた枝を温存すべく、支柱を立てて真っすぐ上を向いて固定させます。
シュラブ樹形や木立性のバラも、支柱に括り付ける形で、降雪に耐えうるようにして固定しています。
イングリッシュローズや、F&Gローズ等の和バラゾーンでは、ワラを束ねて株の周りに被せ、凍害から保護します。
この風景は、その後も、京北バラ園の「冬の風物詩的な風景」になっています。
ワラを被せるバラ以外にも、寒さから苗を守るため、敷ワラを施していきます。
これで、冬越し作業も終了し、安心して年を越せそうです。
次は、雪解け後の剪定と誘引作業を行う2月末~3月上旬まで、京北バラ園は深い眠りに就くことになります。
年が明けて、2018年3月8日。
3ヶ月ぶりの京北バラ園です。
昨年2017年4月にバラ苗を地植えして、約1年が経過しました。
今回は、降雪や凍害の被害もなく、バラは無事、春を迎えました。
芝生はまだ冬枯れのままですが、バラは新芽が動き始めています。
擁壁部分のつるバラ、群星と群舞のエリアは、冬越し後はこんな感じになっていました。
冬越し作業の際、取り切れなかった古い葉が枯れていますが、ここから新芽が展開するので全く問題ありません。
通路側に枝垂れる咲くように、枝に癖もついています。
シュラブ樹形や木立性のバラ、自然樹形で咲かせるオールドローズなどは支柱を外し、
寒肥を入れるための穴を株元に掘っているところです。
芝生対策で導入した波板サークルも、バラの株元に寒肥を入れられるようにという配慮から、
その大きさ(直径約1m)を決めています。
八連アーチでは、冬越しの際、枝が折れないよう仮留めしていたつるバラを一旦外し、
再度アーチに誘引する作業を行いました。
初年度よりだいぶ成長して、アーチの側面のかなり上の方まで、ツルが到達してきました。
バラ園の外では、駐車場脇に植樹した梅の木に、赤い花がまだ少し残っていました。
まだ肌寒い京北町ですが、遅い春がもうすぐそこまで迫っています。
バラ園のメインエントランスの鳥居型ゲート、ここも雨風で汚れてきたので、
木製フェンスと同様の防腐塗装をすることになりました。
日付は、3か月ほど進んで、2018年6月2日。
バラ園のメインエントランスの鳥居型のゲートは、茶色い防腐塗料が塗られていました。
前よりシックになって、より周囲の景観に調和しているような気がします。
この年(2018年)、GW明けから約1か月弱、世界的ガーデンデザイナーの石原和幸氏のサポートメンバーとして
イギリス・ロンドンで開催されたチェルシー・フラワーショーに、石原さんの庭を作りに行っていました。
帰国してすぐ、京北バラ園に足を伸ばしました。
街中より気温の低い京北町では、バラの開花のピークは5月ではなく、6月上旬。
ちょうどいいタイミングでした。
昨年2017年4月に植樹してから丸1年。
まだまだ本来の姿には程遠いですが、バラは元気に咲いてくれました。
奥の方では、このバラ園の一番の見せ場、つるバラの群星・群舞が滝のように咲いてくれました。
一季咲きのつるバラ、群星・群舞が枝垂れ咲く様子です。
淡いピンク色の群舞と、白い花の群生がランダムに配置され、2色が交じり合った柔らかい花の滝が、
奥行き約30mに渡って一列に咲き乱れています。
一番最初にこの場所を訪れた時、夢に見た風景、「桂川の堰を流れ落ちる水をバラの花で表現する」という
デザインコンセプトが、現実のものとなりました。
こちらは、エントランスゲート付近に作ったイングリッシュローズゾーン。
まだひ弱な株ですが、色とりどりに咲いてくれて、徐々に風景ができつつあります。
木製フェンスに誘引したつるバラも、まだ1年しか経っていないので、壁を覆い尽くすほどには程遠い感じです。
2018年は、まだバラ園も完成と言える状態ではなかったので、一般公開は行いませんでした。
関係者だけが見ることができる、あくまでも「私庭」という扱いで、バラの開花シーズン中も
メインゲートは締めたままで、関係者以外、まだほとんどこのバラ園のことは知られていませんでした。
メインゲート側からの眺めです。
手前のイングリッシュローズゾーンでは、株間を埋めるために、早春に宿根草のブルーのサルビアを植栽しました。
まだ小さい株ですが、バラの足元で淡い紫色の花を咲かせているのが分かるでしょうか?
奥に見える東屋を兼ねた家形パーゴラも、風雨に晒され、色が明るい茶色からこげ茶色に変色しています。
さらに奥に見える、六ヶ畔茶寮の建物と同じ切妻屋根でデザインされ、風景に馴染んでいます。
よもや、これがつるバラを誘引するためのパーゴラとは思えないかもしれませんね。
東屋兼パーゴラ同様、オリジナルデザインで製作した、切妻屋根(不等辺三角形)の八連アーチ。
こちらに誘引したつるバラも続々と開花しています。
まだアーチの側面を覆うだけですが、来年には斜めの部分にも到達してくれるかもしれません。
将来的には、頂点にまでツルが到達すれば、満開時には、花のトンネルができるはずです。
八連アーチを、バラ園横の土手から見たところ。
高さ約5mの巨大なアーチが8つ連なる様は、なかなか圧巻!
一般的な円弧状のアーチではなく、切妻屋根に似せてオリジナルで製作したアーチが、
里山風景に馴染んでいるように見えます。
道路を挟んで隣接する小高い丘の上から、バラ園全体を見下ろしてみました。
獣害対策で四方を塀で囲み、園内には、緩やかなカーブを描く2本の園路が横切り、
切妻屋根の家形パーゴラや8連のアーチなど、様々な造形物をつくりながら、
立体的にバラの花を咲かせるバラ園が出来てきました。
元々、ここが単なる平地の田んぼだったとは思えないような変貌ぶりです。
そして、2年目の夏、日付は、2018年9月7日。
バラ園は一層、緑が深くなってきました。
つるバラ、群星・群舞の擁壁部分も、こんなに旺盛に茂っています。
そして2年目の秋、2018年10月7日。
一季咲きのオールドローズやつるバラが多い京北バラ園では、春のような一面に花が咲くといった美しい風景には
なりませんが、イングリッシュローズやF&Gローズなどの和バラは、秋色の美しい花を返り咲いてくれます。
そして、2年目の年末、日付は2018年12月8日。
冬を目前にして、この年もバラの冬支度を行いました。
前年に同じことをやっているので、地元スタッフの皆様方の作業も手際よく、順調に作業は進みます。
2日連続で、バラ園の冬支度。
日付けは、2018年12月9日。
年々大きくなるバラの冬支度は、やはり時間が掛かります。
バラの冬越し作業と同時並行で、以前から気になっていた場所の改修・修景作業を行いました。
メインエントランスの鳥居型ゲートの横に植えている梅の木の足元花壇がスカスカだったので、
ここを緑あふれる花壇にするため、バラ園内に植えていたユキヤナギをこちらに移植したり、
新たに追加したシモツケ、サツキなどの低木を植え込む作業を行いました。
来春(2019年)には、一般公開する予定ですので、少しでも良い状態でお客様を迎えるべく作業を進めました。
冬が終わり、雪解けの2019年3月9日。
今年も京北町の遅い春の訪れを、メインエントランス横の紅梅の花を見て実感しました。
3月9日、10日と週末の土日2日間を使って、バラの剪定、誘引、寒肥などの作業を行いました。
昨年同様、ワラで防寒措置を施したバラたちは、無事、冬を越すことができました。
スタッフ総出で、このワラを外し、支柱に留めたツルを外していきます。
春の剪定・誘引作業の2日目、2019年3月10日。
木立性バラ、シュラブ樹形のバラの剪定作業に加え、全てのバラに寒肥を与えました。
京北バラ園では、香りの強いオールドローズを集めたゾーンを作っているのですが、
中でもつる樹形のオールドローズは、川の瀬の岩を越えて流れる水を表現するように咲かせたいということで、
岩の後ろに植えたつるバラのツルを、支柱を使って岩の手前側に引っ張るように誘引しています。
こうすることで、枝先だけでなく、まんべんなく花芽が付き、開花直前に支柱から外せば、
花の重みで枝垂れるように咲くはず、という誘引方法です。
開花時には支柱がなくなるので、風景的にも美しく見せることができます。
八連アーチでも、誘引を一度解き、改めてつるバラを仕立て直しています。
昨年は側面しか覆うことができなかったつるバラも、何本かは斜めの部分に到達しました。
来年には、全てのアーチで頭頂部までツルを伸ばし、花のトンネルをつくれるのではないかと、期待しています。
日付は、2019年4月27日。
いよいよ今年のバラの開花を目前にして、最終チェックで現地を訪れました。
どのバラも順調に花芽を伸ばしています。
オールドローズのつるバラも、ご覧のとおり、頂芽優勢の見本のように、たくさんの花芽を上げています。
蕾が膨らみ始めれば、いよいよ支柱を撤去して、岩を越えて枝垂れるよう咲かせます。
駐車場側の木製フェンスに誘引したつるバラです。
駐車場側が南になり、南側にフェンスを背負うことから、日当たり条件が他のバラに比べると悪いのですが、
それでもずいぶんと大きく成長してくれました。
この木製フェンスに誘引したつるバラと、手前のイングリッシュローズの色の対比が見せ場です。
つるバラ、群星・群舞の擁壁部分。
実は、春に鹿が園内に侵入するという事件があって、一部、群星・群舞の枝が鹿に食べられるというトラブルが
発生したのですが、その後持ち直し、ほぼまんべんなく花芽も付き、今年も滝のように花を咲かせてくれそうです。
つるバラ、群星・群舞の擁壁部分を正面から見たところ。
3分割している擁壁の間には、園路から奥のロングパーゴラへとつながる小径があるのですが、
旺盛に茂った群星・群舞がつながり、トンネルのようになっています。
最後は、伸び放題の芝生を奇麗に刈り込んで仕上げます。
これで5月中旬~6月中旬のバラの開花シーズンに向けての準備が整いました。
あとは、開花を待つばかりです。
そして、待望のバラの開花シーズンを迎えました。
日付は、2019年6月4日。
バラ園のメインゲートを開けた正面から、バラ園全景を見たところです。
切妻屋根形状の八連アーチの斜め材部分まで、バラが駆け上がっています。
手前のイングリッシュローズゾーンも色とりどりの花が咲き乱れ、その手前には、
ブルーのサルビアが花壇を縁取るように咲き、バラの花を引き立ててくれています。
一番奥では、つるバラ、群星・群舞が、当初のイメージ通り、滝のように花を枝垂れ咲かせています。
昨年の台風による影響で、正面奥のバラ園に隣接する森の一部が倒れてしまっているのが少々残念です。
八連アーチの間から、オールドローズゾーンを見たアングルです。
オールドローズゾーンには、香りの強い品種のバラを植えており、バラ園に一歩足を踏み入れるだけで、
心地よいバラの香りに心満たされます。
このオールドローズゾーンでは、なるべく自然樹形に近い形で花を咲かせるようにしており、
ところどころに置いた岩を川の水が乗り越えるように、バラの花を咲かせています。
画面左側には、つるバラ、群星・群舞のエリアがあり、堰を乗り越えて流れ落ちる水のように花が咲いています。
概ね、イメージした通りに仕上がってきたのではないかと思っています。
こちらは、旧料亭を背景にした低い木製フェンス部分。
ここには、和の雰囲気をつるバラを誘引しています。
中央の紫色の一重のバラは、パルフェ・タムール、左側の赤の一重は、名花・カクテル。
右側にちらっと見えているのは、赤と白の混じった絞りのバラで、ニュー・イマジン。
色合い、花型など、「和の趣き」を感じる取り合わせになっています。
こちらは、駐車場側の木製フェンスに誘引したつるバラです。
中央の赤と白の絞りは、パープル・スプラッシュ、右側にちらっと混じっているピンクのバラが、プリュム、
左側下にちらっと見えているのが、エクセレンツ・フォン・シューベルト。
このゾーンも、焦げ茶色の木格子のフェンスを背景に、「和の趣き」を演出するような品種選びの一環です。
これが最後の一枚です。
京北バラ園、正式名称「京北・香りの里 六ヶ畔・花簾庭」のメインエントランスを入った正面に広がる風景です。
手前は、色鮮やかなイングリッシュローズゾーン、右手の駐車場側の木フェンスに誘引したつるバラにも
たわわに花が咲いています。
奥に見える東屋を兼ねたパーゴラは、旧料亭の建物と同じ切妻屋根のデザインで、
京北町の里山風景に馴染んでいるように思います。
構想から3年、幾多の試練や苦労を乗り越えて、ようやく多くの方に見ていただけるバラ園ができました。
来年2020年もまた、一般公開する予定になっております。
茅葺屋根で有名な美山町にもほど近い、京都の奥座敷、京北町。
JR京都駅からも車やバスで1時間ほどの場所ですので、近くにお越しの際には、
是非、京北バラ園「花簾庭」にもお立ち寄りいただければ幸いです。
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【 京北・香りの里 六ヶ畔・花簾庭(京北バラ園)について 】
住所:京都市右京区京北比賀江町口烏谷(くちからすたに)
(京北にある皇室ゆかりの御寺・常照皇寺に向かう国道477号線の左側にあります。)
2022年・オープンガーデン情報
開催期間:令和4年5月27日(金)~令和4年6月5日(日)の10日間限定
開園時間:9:00~16:00 駐車場:7台あり
※ 「維持管理協力金」についてご協力のお願い
当園は個人の私庭であり、有志ボランティアにより維持管理されています。
昨年(令和3年)までは、庭主のご厚意により、無料で一定期間開園しておりましたが、
昨年本年度より、入園されるお客様から、お一人500円の「維持管理協力金」をお願いしております。
皆様から頂戴いたしました「協力金」は、バラ園の今後の永続的な維持を目標とした
園内のバラの育成・保護、資材購入、園内の整備等に使用させていただきます。
ご理解ご協力の程、お願い申し上げます。
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