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専門家「風景」をつくるガーデニング術

県立奈良高校・創立100周年記念事業・中庭プロジェクト、その3(工事編:着工~基礎工事)

居場英則

前回は、僕の母校である、奈良県立奈良高等学校の創立100周年記念事業でつくる中庭プロジェクトについて、

ランドスケープアーキテクトとして考えたガーデン設計のコンセプトやデザインについてご紹介しました。

中庭の工事はすでに始まっておりまして、来年2024年春(3月末頃)に完成する予定です。

ここからは、その中庭の工事がどのように行われていくのか、この規模のガーデンが出来上がるまでの様子を

見る機会もないと思いますので、何回かに分けて、ガーデンが出来上がっていく工事過程をご紹介したいと

思っています。

それぞれの工程にどんな意味があるのか、また様々な問題をクリアしながらになるかと思いますので、

ご興味のある方は、ご覧いただけましたら幸いです。

しばらくは、造成工事主体になりますので、植栽の話はだいぶ先になりますが、ご容赦ください。

【 2023年8月21日(月)】

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大阪・関西万博のパビリオン建設の建築費がなかなか合わず、入札不調になったり、

事業予算が当初の倍近くになるといった話を耳にされると思いますが、

民間の工事でも、同様に、人件費の高騰、建築資材の高騰など建築費が大幅に上がっています。

この奈良高校の中庭プロジェクトでも、同様に当初見込みの予算に対し、施工費が上振れし、

施工会社さんと、なかなか請負工事代金の折り合いがつきませんでした。

様々な合理化案に加え、将来大きくなる植栽については、当初かなり小さくても良いのではないか、

という話もあり、それらを含んだ減額案を取り纏め、ようやく、今年(2023年)のお盆明けの8月21日に、

中庭の工事に着手しました。

着工日は、雲ひとつない青空の朝でした。

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中庭にユンボが導入され、時計塔のある中央花壇の植栽の伐採から始まりました。

中庭に置かれているバスケットボール部のインターハイ出場記念碑が見守る中での工事着工です。

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あっという間に、中央花壇の植栽はむしり取られ、何もなくなってしまいました。

続いて、奥の花壇の植栽の伐採へと、ユンボは動いていきます。

低木だけでなく、八重桜やカリンの木も次々に伐採されました。

当初は、右奥に見えている樹形のキレイなカリンは移植できればと思っておりましたが、

夏場の移植はリスクも大きく、移植費用も新植より過分にかかることから、やむなく断念しました。

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続いて、中庭への昇降口側(東側)の花壇へとユンボは進みます。

何本もあった八重桜もあっという間に、伐採されてしまいました。

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工事に着手して2時間ほど、お昼前はほとんどの樹木も伐採されてしまいました。

広い中庭が、ますます広く見えます。

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午後からは、現場監督さんと、各協力業者さんとの打ち合わせを別室で行っていたのですが、

その間も、中庭の伐採工事は進められ、花壇の樹木だけでなく、下草も根こそぎ掘り起こされ、

あらかた土面が見えるようになりました。

【 2023年8月26日(土)】

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工事着工から5日後、この日は土曜日でしたが、校舎では模試が行われていましたので、工事は中断。

僕は、園芸YouTubeチャンネル「ショクナナ」の撮影のため、奈良高校を訪れました。

中庭は、花壇の立ち上がりのコンクリート部分もすべて撤去され、一面が土面になっていました。

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中庭から校舎北棟(本館)方向を見たところです。

中庭の中央に、ポツンと時計塔が残るのみです。

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あと、中庭に残されたのは、奈良高校・野球部が30年ほど前に、春のセンバツ大会に出場した際の記念碑と、

バスケットボール部のインターハイ出場記念碑のみとなりました。

これからは、旧・法蓮校地からこの新校地(朱雀校地)に移設されたものですが、

一旦中庭に仮置きされていたもので、このあと、校内の別の場所に本設置されることになります。

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こちら↑が、奈良高校の創立100周年記念事業でつくる中庭の図面ですが、この楕円形の中庭の左半分に、

ロックガーデンをつくる予定にしています。

中庭の右半分(東側)には、スタンド(ベンチ)を中心とした観客エリアを配置しているのに対し、

西側半分に、ロックガーデンを設置し、そこに高木、中低木、宿根草などを植栽する予定になっています。

現場での工事と並行して、様々な建築資材の決定を設計監理者としてしていくことになりますが、

この日は、そのロックガーデンをつくるための石を造園業者さんと一緒に見に行ってきました。


【 2023年9月5日(火)】

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この日訪れたのは、奈良県と大阪府の県境にまたがる生駒山の東側(奈良側)の中腹にある、

今回の中庭工事に関わっていただいている造園会社さんの資材(石材)置き場です。

生駒山中腹から眺めることができる眺望です。

奈良盆地とその間の矢田山丘陵が見えています。

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こちらが、その造園業者さんのオフィスとモデルガーデンです。

手前のヤシの木が植えてあるエリアに置かれているのが、地元奈良の有名な石材で「生駒石」、

その左側、事務所との間に置かれている、少し黄色っぽい石は、「大和石」というそうです。

アウトドアショップなど、今風の外構工事に使われる石材です。

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今回のお目当ては、こちらの「生駒石」。

一昔前は、公園などの公共工事や住宅の擁壁などの多く使われていたらしいですが、

今はほとんど使われなくなったそうです。

今回の奈良高校の中庭では、風化して黒くなる渋めの石を使いたかったのと、

やはり地元の石を使うべきだということで、この「生駒石」を採用することにしました。

モデルガーデンに置いてある生駒石は巨大なものばかりでしたが、雨風に晒されて黒くなっているのが

なかな良いかなと思っています。

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こちらが、生駒石の置き場です。

風化する前は少し黄色っぽいのですが、徐々に苔むして黒くなっていくみたいです。

今回使う石は、モデルガーデンに置いてあったような大きなものでなく、ここに見えている程度の大きさのものを

大中小とミックスして組み上げていくようなイメージで考えています。

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今回の中庭には、この生駒石を使ったベンチも計画しています。

荒々しい生駒石のトップを水平に切って磨き、そこに座れるようにします。

写真のものは、切っただけなので、白っぽいですが、これを磨くと、もう少し黒くなるそうです。

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この日は、ロックガーデンに使う石材を見に行ったあと、現場で現場監督さんとの打ち合わせ、

その後、学校の先生との打ち合わせの予定がありましたので、午後に奈良高校に立ち寄りました。

中庭の工事現場では、擁壁の基礎工事を行うため、掘削工事が行われていました。

掘り上げられた土が、中庭に山のように積み上げられていました。

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そんな中、現場監督さんは、常に測量器を携えて、擁壁を設置する位置を正確に測っておられました。

今回の中庭は、楕円構造の非常に難しい形態をしておりまして、寸法がずれてしまうと納まらなくなってしまう

ため、慎重に測量を重ねながら、施工する位置を確認しておられました。

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こちらは、校舎東棟1階・昇降口から中庭への出入り口となる部分。

ここもすでにL字型平面の重力式擁壁の基礎コンクリートが打設されていました。

中庭が完成すれば、ここから緩やかなスロープで中庭へアプローチすることができるようになります。

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こちらは、校舎西棟。

このぽっかり穴が開いた部分からしか、工事車両は中庭へ入ることができません。

なので、工事施工上、小運搬で資材を中庭へ入れたり、何かと工期や手間(コスト)が掛かる要因になっています。

こちらにも、西棟へのアプローチ両側のL字擁壁と、プラトン・アリストテレス像の後方から包み込むような

R型の擁壁を設置するための基礎の掘削が始まっています。

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こちらは、校舎南棟側の小型重力式擁壁を設置するエリアです。

今回の中庭計画では、楕円形に盛土をして、そこのスタンド(ベンチ)やロックガーデン、樹木を植栽しますが、

そのための盛土を押さえるためのコンクリート擁壁が必要なのです。

写真は、その盛土を支える擁壁の基礎部分の施工中の様子です。


【 2023年9月9日(土)】

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この日は、奈良高校の文化祭の「青丹祭(せいたんさい)」に行ってきました。

土日の2日間開催される文化祭ですが、初日の土曜日は、卒業生(OBOG)の他、地域住民の方にも開放され、

小さなお子様連れの方など、多くの人がお越しになっていました。

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僕も母校の文化祭は、うちの息子が在学中に行って以来で、久しぶりでした。

もちろん、この新校地(朱雀校地)に移転してからは、まったく初めてでした。

自分が青春時代を過ごした校舎ではありませんが、母校の空気を味わえるいい機会でした。

今年の青丹祭のテーマは、「青丹祭であることを用いて、最高の青春を求めよ」でした。

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こちらは、正面玄関前に仮設置されているプラトン・アリストテレス立像。

僕たちが在学中の頃には、神格化され触れてはいけない存在だったように記憶していますが、

昨今の学生たちは、とてもフランクな距離感で接していて、今年も仮装されていました。

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解体中の中庭に置き去りにされていたバスケットボール部の記念碑も、生徒の昇降口の前に本設置されていました。

野球部のセンバツ大会出場記念碑も、別の場所にちゃんと本設置されていました。

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文化祭の出し物(模擬店)は、校舎南館の裏側(運動場側)の少し殺風景な場所に並んで設置されていました。

来年の今頃は、中庭も出来上がっているので、きっと賑わいの空間として活用されているでしょう。

早く、学生たちに活動の場として提供できるようにしてあげたいなと思います。

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こちらは、この日の中庭。

文化祭なので、当然工事は中断。

人でごった返していた周りの喧噪から隔てられて、中庭はひっそりとしていました。

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この日は文化祭で、校舎の上層階で展示されている部屋への立ち入りもできたので、

上から中庭を見下ろしてみました。(南棟4階廊下からの眺め)

上から見下ろすと、なかなか広い空間です。

前の花壇がすべて撤去され、土面だけになったので、一層そう感じるのかもしれませんが。

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東棟3階から中庭を見下ろしたとところです。

正面中央あたりに、プラトン・アリストテレス像が設置されます。

ここの楕円形のコロッセオのようなスタジアムができると思うと、なかなか感慨深いものがあります。

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1階東棟から見た中庭の全景です。

右端に見えるのが、昇降口から中庭へとつながる出入口部分にあたる場所です。

下の完成予想のCGパースとほぼ同じ位置から見たアングルになります。

今は土しか見えませんが、やがて、ここに中央広場(プラザ)ができ、その広場を囲むように

楕円形のスタンド(ベンチ)が取りつきます。

そして、さらに植栽が覆い被さるように配置される予定です。

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こちらが、その完成予想図。

少しづつではありますが、カタチが見えてきました。

次回は、擁壁工事~盛土工事あたりをご紹介していきたいと思っています。

乞うご期待!

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【 奈良高校・創立100周年記念事業について 】

今回の奈良高校・創立100周年記念の中庭プロジェクトは、50年前の創立50周年の時と同じく、

OBOG(卒業生)をはじめとした、様々な方々の寄付によって創られる事業になります。

「奈良高校 100周年記念特設サイト」も、2023年9月1日よりオープンしております。

  [ 奈良高校 100周年記念特設サイト] は、こちら ⇒ 奈良高校 創立100周年 (narahs100th.jp)

 
 創立100周年を機に、ますます発展する奈良高校へご支援いただけましたら幸いです。   

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居場英則

『進化する庭、変わる庭』がテーマ。本業は街づくりコンサルタント、一級建築士、一級造園施工管理技士、登録ランドスケープアーキテクト(RLA)。土面の殆どない庭で、現在約120種類のバラと、紫陽花、クレマチス、クリスマスローズ、チューリップ、芍薬等を育成中。僕が自身の庭を創り変える過程で気づいたこと。それは、植物の持つデザイン性と無限の可能。そして、都市部の限定的な庭でも、立体的な空間使用、多彩な色遣い、四季の植栽の工夫で、『風景をデザインできる』ということ。個々の庭を変えることで、街の風景も変えられるはず…。『庭を変え、街の風景を変えること』が僕の人生の目標、ライフワーク。ーー庭を変えていくことで人生も変えていくchange my garden/change my lifeーー

個人ブログChange My Garden

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