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県立奈良高校・創立100周年記念事業・中庭プロジェクト、その4(工事編:擁壁工事~盛土工事)

居場英則

僕の母校である、県立奈良高等学校の創立100周年記念事業でつくる中庭プロジェクトの工事が始まっています。

徐々に出来上がっていく中庭の様子を、ランドスケープアーキテクトの視点でご紹介していく企画、工事編です。

今回は、中庭の植栽を植える盛土を支える擁壁工事と、盛土工事の様子をご紹介していきます。

今回もまだ土しか見えませんが、ご興味のある方は、ご覧いただけましたら幸いです。


【 2023年9月21日(木)】

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中庭の設計者であり監理者でもある僕は、ずっと現場に張り付いているわけでななく、工事の途中途中の

重要な局面で、現場を見に行き、現場監督さんと打ち合わせをしながら、中庭を作っています。

この日は、中庭のコンクリート擁壁の型枠が概ね出来上がっているとのことで、現場を見に来ました。

現場は、擁壁の基礎をつくる際に掘り返した土が、あちこちに山のように積まれていました。

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こちらは、中庭南側(校舎南棟)の足元の小型重力式擁壁の型枠の様子。

楕円形の盛土を支えるので、中央から両端に行くにしたがって、低くなっています。

まるで恐竜の背中みたいなフォルムです。

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その南棟前の重力式擁壁を横から見たところ。

当初は楕円形の盛土に沿うように、平面的に楕円形の擁壁をデザインしていたのですが、工事費削減のため、

平面的に直線形状になり、逆に断面は、底に行くほど広がる重力式の擁壁に形状変更しました。

地面を掘って先行して作っていた擁壁の基礎と、コンクリートで一体化します。

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こちらは反対側の北棟(本館)側の小型重力式擁壁。

近寄ってみると、基礎に近いほど断面が広くなる(断面が台形になる)形状をしています。

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擁壁のトップには隙間が空いています。

まだコンクリートを打設していないので、中は空洞です。

小型重力式擁壁は、基本的に無筋(鉄筋なし)で、両側からコンパネ押さえて断面形状を作ります。

コンクリートを打設した際に、圧力で広がらないよう、両側から支保工で支えています。

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北棟側の重力式擁壁を正面から見たところ。

楕円形の盛土のトップが、この擁壁の中央あたりに来ます。

約1mの盛土ですが、その部分が一番高い場所になります。

奥は、事務室、職員室などですが、擁壁の高さがさほど高くないため、窓からの視界は確保されています。

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少し引いて北棟(本館)側の重力式擁壁の型枠を見たところ。

周りに積み上げられた土の山の方が迫力あります。

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こちらは、東棟の昇降口から中庭へつながる出入口付近です。

こちらにも楕円形の盛土を押さえる擁壁が必要になります。

ここは出入口になるので、あまり擁壁が大きくならないよう、存在感を低減するようなデザインとしています。

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左側が昇降口で、右側の中庭へと緩やかなスロープで降りてくる部分です。

擁壁の存在感を消すために、ここも小型の重力式擁壁にしているので、緩やかに内側に向かって

倒れ込むようなデザインとしています。

このアプローチの両側の重力式擁壁には、仕上げとして本物の石材を小端積みする予定です。

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西棟2階部分から、中庭の全景を見下ろした様子です。

正面の昇降口側の擁壁と、南北の校舎の足元に幅の広い重力式擁壁が設置され、楕円形の盛土を支えます。

まだまだこの辺りは土木工事ばかりです。

展開図.JPEG

こちらが、中庭の完成時の断面です。

上の断面図の両側が斜面になっているのが分かると思います。

最大4段のスタンド(ベンチ)と、その外側の植栽帯の盛土(約1m)を支える擁壁が必要になるのです。

中庭にすり鉢状の土の断面をつくるための工事を行っているところです。

【 2023年9月26日(火)】

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この日は、中庭の擁壁にコンクリートを流し込む(打設する)初日ということで、現場を見に来ました。

校舎西棟の1階の中庭へのアプローチ部分の目の前には、オレンジ色の化粧型枠が建てられていました。

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その西側アプローチ部分のL字擁壁の型枠が設置されているのを、真横から見たところです。

ここはコンクリート打ち放し仕上げになりますので、きれいな仕上げ面がつくれる化粧型枠が使われています。

この擁壁は、厚みの薄いL字擁壁になりますので、このあと鉄筋が配筋されます。

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中庭から、西棟へとつながるサブ動線です。

この両側にも楕円形の盛土が来ますので、その盛土を押さえる擁壁が必要になるのです。

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積まれた土の上に登って上から、この西側アプローチの両サイドのコンクリート擁壁の型枠の状況を見渡してみます。

基礎底盤も含めてL字型になっているのが分かるでしょうか?

職人さんたちが、このL字擁壁に鉄筋を配置し、針金で固定していきます。

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地面のレベルから見た、L字擁壁。

型枠だけを見ていると、やけに大きく見えますが、実際は鉄筋の入っている高さまでになります。

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いよいよ擁壁へのコンクリートの打ち込み作業が始まります。

コンクリートミキサー車が続々と集結する中で、中庭にミキサー車は入れないため、鉄管をつないで、

擁壁部分までコンクリートに圧をかけて押し出します。

まずは、正面奥、東棟の昇降口側の重力式擁壁にコンクリートを流し込むようです。

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こちらが、一番最初にコンクリートを打設する重力式擁壁。

この型枠の間の狭い空間の中に、コンクリートを流し込んでいきます。

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コンクリートが擁壁の型枠部分まで圧送されてきました。

鉄の管につないだ先端はホースになっていて、その先端を型枠の中に押し込んでいます。

かなりの圧が掛かっているので、ホースが暴れないよう人が抱えて体重をかけて抑え込んでいます。

コンクリートが生き物のように脈打ちながら、型枠の中へと流し込まれていきます。

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続いて、こちらの北棟(本館)側の重力式擁壁へのコンクリートの打設です。

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こちらの重力式擁壁は長さ(幅)も大きく、断面も斜めになっているため、型枠を押さえつける支保工も

斜めに設置されています。

コンクリート工事業者さんの職人さん総出で作業をされています。

ホースからコンクリートを流し込む作業は、一番奥の方がされていますが、手前では、打ち込んだコンクリートに

気泡ができないよう、バイブレーターを使ってコンクリートの均一性を保つための作業をされています。

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普段仕事で関わっている建築の現場では、通常のL字擁壁は見ることもありますが、このような無筋の重力式擁壁は、

土木の現場でしか、なかなか見ることがありませんので、とても新鮮でした。

配置図.JPEG

こちら↑が、今回の創立100周年記念でつくる中庭の設計図面。

図面では分かりにくいかもしれませんが、図面の上下に中庭の敷地いっぱい(側溝)に接して

重力式擁壁を設けています。

また、図面右側、東棟側のアプローチの両側に、重力式擁壁(斜めに傾けた擁壁)を設けています。

逆に、西棟側(プラトン・アリストテレス像の後方)にも校舎に通じるサブアプローチがあるのですが、

そちらにも両側のL字型の擁壁を設けています。

今、それらの擁壁のつくるためにコンクリートを打設しています。


【 2023年10月6日(金)】

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この日は、楕円構造の中庭の2つの焦点のひとつ、「羅針盤」と呼んでいる石材プレートを、学生たちと一緒に

制作するためのワークショップの第一回目を開催するために、学校に来ました。

授業終わりの夕方にワークショップを実施するまで時間がありますので、現場で監督さんと打ち合わせです。

前回来た時は、まだ型枠設置中だった西側アプローチ両側のL字擁壁も出来上がっており、

コンクリート型枠も外されて(脱型)、自立していました。

この擁壁は化粧せず、コンクリート打ち放しのままの仕上げです。

思ったほど高くないので圧迫感はあまり感じませんでした。

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こちらは、南棟側の重力式擁壁にもたせ掛けるように、土を盛っているところです。

まだ形がよく分かりませんね?

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こちらは、反対側の北棟(本館側)の様子です。

重力式擁壁が支えるように、すり鉢状に盛り土がしてあるのが分かるでしょうか?

土も整地され、なんとなく楕円形が見えてきたように思います。

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こちらは、東棟の昇降口から中庭へとアプローチする出入口部分。

こちらにも小型の重力式擁壁がアプローチの両側に設置されました。

その両側に土も盛られているのが分かるかと思います。

こちらの擁壁はコンクリートむき出しではなく、石を小端積みにする予定です。

アプローチに相応しい雰囲気をつくります。

右端に青い線で円(直径3m)が描かれているのが分かりますでしょうか?

そこに、「羅針盤」と呼んでいる石材プレートが設置されます。

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東棟の出入り口付近から見た重力式擁壁の形です。

平面的にはL字に折れているのですが、立体的にみると三角形の富士山のような形をしています。

その奥には、北棟(本館)に沿って、楕円形を描きながら、すり鉢状に土が盛られているのが見えています。

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この日の夕方、中庭の「羅針盤」制作ワークショップを開催するのですが、

参加希望の有志約20名の学生に、普段工事中で入れない中庭に、特別に入れてもらうよう現場にお願いしています。

「羅針盤」(石材プレート)を設置する実施の場所や大きさ(直径3m)、その羅針盤の上に立った時、

どのような風景が見えるのか、また「羅針盤」の正面に立つ、プラトン・アリストテレス立像が、どのように

見えるのか、そのあたりを実際に体感してもらえるように、現地にその場所が分かるようにしてもらいました。

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こちらのドラム缶が、プラトン・アリストテレス像が立つ場所です。

ドラム缶の高さは、実際に立像が立つ高さ(GL+600㎜)で、学生が現場を見に来る時には、

現場監督さんにこのドラム缶の上に立ってもらおうと思っています。

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そして、こちらが、学生ワークショップで制作する「羅針盤」(石材プレート)の設置位置。

青い丸は、直径3mの平面の大きさを表しています。

ここに立ち、真正面(奥)を見ると、そこにプラトン・アリストテレス像が見える感じがよく分かります。

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こちらが、CGパースによる中庭の完成予想図。

手前の黒い丸が「羅針盤」(石材プレート)、奥にプラトン・アリストテレス像の位置関係は、

こちらの絵の通りになります。

現場の工事も順調に進み、学生とワークショップで「羅針盤」の制作も始まります。

次は、この中庭の最大のポイントで難所でもある、楕円形のスタンド(ベンチ)の設置工事です。

次回も乞うご期待ください!

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【 奈良高校・創立100周年記念事業について 】

今回の奈良高校・創立100周年記念の中庭プロジェクトは、50年前の創立50周年の時と同じく、

OBOG(卒業生)をはじめとした、様々な方々の寄付によって創られる事業になります。

「奈良高校 100周年記念特設サイト」も、2023年9月1日よりオープンしております。

  [ 奈良高校 100周年記念特設サイト] は、こちら ⇒ 奈良高校 創立100周年 (narahs100th.jp)

 
 創立100周年を機に、ますます発展する奈良高校へご支援いただけましたら幸いです。   

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居場英則

『進化する庭、変わる庭』がテーマ。本業は街づくりコンサルタント、一級建築士、一級造園施工管理技士、登録ランドスケープアーキテクト(RLA)。土面の殆どない庭で、現在約120種類のバラと、紫陽花、クレマチス、クリスマスローズ、チューリップ、芍薬等を育成中。僕が自身の庭を創り変える過程で気づいたこと。それは、植物の持つデザイン性と無限の可能。そして、都市部の限定的な庭でも、立体的な空間使用、多彩な色遣い、四季の植栽の工夫で、『風景をデザインできる』ということ。個々の庭を変えることで、街の風景も変えられるはず…。『庭を変え、街の風景を変えること』が僕の人生の目標、ライフワーク。ーー庭を変えていくことで人生も変えていくchange my garden/change my lifeーー

個人ブログChange My Garden

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