2023.7.31 / 美しい自然風景
前回、前々回に続き、今回も長野県白馬村近郊の美しい自然風景をご紹介します。
前編の「白馬五竜高山植物園」では、割と一般的にも見ることができる植物が多かったですが、
今回の後編では、高山植物らしい植物を紹介していきます。
アルプス展望ペアリフトで、一旦、地蔵ケルン(標高1,676m)近くまで登って、
その後、地蔵沼付近の湿原を経て、また高山植物園エリア(標高1,550mくらい)まで降りてきました。
このころになると、霧が晴れて、下界の白馬村への視界はだいぶ見えるようになってきました。
このあたりは、高山植物園の中でも、「ロック委ガーデン」と呼ばれているエリアで、
白馬連峰高山植物生態園、スイスアルプス・ヒマラヤエリアとも呼ばれている場所になります。
背丈の高い植物はほとんどなく、地面を這うような植物が多いエリアです。
山頂方向を振り返るとこんな感じ。
遠くに「地蔵ケルン」が見えています。
その先の山頂は、まだ深い霧の中です。
地蔵ケルン近くは、中低木の緑が茂っていますが、このロックガーデン周辺は、低い草しかありません。
このロックガーデンの植物の中で、代表格なのが、こちらの「コマクサ」。(花期:6月下旬~8月中旬)
「高山植物の女王」とも呼ばれる、日本の高山植物の代表格です。
北アルプスの標高2,500m以上のガレ場で見られる、まさに高嶺の花です。
ここ五竜高山植物園では、約12万株が生育し、コマクサ群落を再現しています。
背丈は小さく、10センチほどしかありません。
なので、撮影するのも地面すれすれにしゃがみこんで撮影することになるので大変です。
さらに近くに寄ってみました。
ペンダントのような美しい造形が、「高山植物の女王」と呼ばれる所以でしょうか?
こちらは、コマクサと双璧の有名な高山植物で、「チングルマ」。(花期:6月ごろ)
高山植物の代名詞としても有名な、白い楚々とした花を咲かせるバラ科の植物です。
岩壁から湿ったところまで、生育環境は広いようですが、雪の多く残る場所には一面に咲いていることもあり、
その群落には圧倒されるそうです。
今回訪れた時は、すでに花は終わっていて、種になっていました。
チングルマの種は、花以上に有名な姿かもしれません。
風になびくような綿毛が群生している姿は、独特の風情があります。
漢字では「稚児車」と表記されることから、江戸時代の子供の髪型がこの種に似ていることから
名づけられたそうです。
こちらもロックガーデンに生育する植物で、「キリンソウ」。(花期:8月ころ)
キリンソウは、海岸の岩場から高山の岩場まで幅広く分布する植物です。
南アルプス南部の光岳の高山帯のキリンソウは、草丈が極端に低く、趣があるため、
古くから山野草業界で出回っている植物なんだそうです。
良く似た植物で、こちらは「イワベンケイ」。(花期:6月~7月ころ)
高山帯に自生する多肉質の多年草で、多肉質の葉と太い根茎で過酷な高山を生き延びているそうです。
黄色い花、赤い実、紅葉と、季節によって違う姿を見せてくれるのが魅力です。
こちらは、「ウルップソウ」。
花は終わっていてイメージがつかないかもしれませんが、宿根草のアジュがのような、
青い花穂を上げて咲く植物です。
北方四島の北にあるウルップ島が、最初の発見地であることから、その名前が付けられたそうです。
本州では、八ヶ岳と白馬岳の山頂部にしか見られない珍しい植物のようです。
花が鮮やかな青で見栄えがするので、登山者にも大変人気がある植物です。
白馬五竜高山植物園のロックガーデンには、このような切り立った岩壁のような場所も作られています。
上から見下ろすと、こんな感じ。
岩と岩の間に、コケ植物やハイマツのような針葉樹系の植物も見えています。
この険しい岩壁にも、意図的に植物が植えられているのです。
こちらのツワブキによく似た植物は、「オタカラコウ」という、ツワブキと同じキク科の植物。
(花期:7月~8月ころ)
沢沿いや湿り気のある場所に生育する大型のキク科の植物で、時に大きな群落をつくることがあるようです。
漢字では、「雄宝香」と書くそうです。
こちらは、スイス3大名花のひとつで、「アルペンローゼ」。(花期:6月ころ)
ドイツ語で「アルプスのバラ」という意味の名前がついていますが、
バラ科ではなくツツジ科の植物です。
「バラ」のように美しい花という意味も込めて、名付けられたのかもしれません。
自生地では群生するらしく、ツツジ好きの僕としては、
是非、実際の群落地を見てみたいです。
ここから、いよいよ白馬五竜高山植物園の最大の見せ場、
「ヒマラヤの青いケシ」です。(花期:7月)
ヒマラヤの標高4,000m級に自生する「幻の花」です。
目の覚めるような美しい「青色」が特徴です。
花弁の裏側から見たところ。
よく見ると、青のグラデーションが分かります。
花を正面からアップで見たところ。
まさに「幻の花」といった風情があります。
花期は7月ころとのことでしたが、訪れた日は6月下旬で、
まだ少し早かったのですが、ちょど2輪咲き始めたばかりですと、
園内のスタッフの方が教えてくれました。
「幻の青い花」を見れて、ラッキーでした。
「ヒマラヤの青いケシ」は、こんな岩場に生育しています。
手前に植えられているのも、このヒマラヤの青いケシのようです。
もうひとつ、青い花を紹介します。
こちらは、「ゲンチアナ・ディナリカ」というリンドウ科の植物です。(花期:6月ころ)
日本では、チャポリンドウとも呼ばれる春咲きのリンドウの仲間らしいです。
スイス3大名花のひとつにも数えられ、株の大きさの割に大きな花を咲かせるので、見ごたえがあります。
青いこのリンドウとミントグリーンのギボウシの葉のコントラストが美しいです。
こちらは、「ベルゲニア・プルプラッセンス」というユキノシタ科の植物。
(花期:6月~7月ころ)
庭先でよくみられるヒマラヤユキノシタの仲間で、雪解け直後に咲き出します。
一般的なヒマラヤユキノシタよりも花色が濃く、花茎が伸びるのが特徴とされています。
こちらは、イングリッシュガーデンでも良く植栽されるアサギリソウ。
葉っぱに細かい毛がたくさん生えていて、ふわふわして可愛らしいです。
アサギリソウの隣には、コケ植物が生えていました。
細い黄色い茎をのばして、花を咲かせるのでしょうか?
なんだかジブリアニメのような世界観です。
こちらは、「シロバナヘビイチゴ」。(花期:7月ころ)
名前にヘビイチゴとついていますが、ヘビイチゴとは違い、普段食べているイチゴと同じ仲間だそうです。
7月中旬ころに、普通のイチゴのような小さな赤い実が成ります。
白馬五竜高山植物園の中で、一番群生している感じがあるのは、こちらの「シモツケソウ」。
(花期:7月上旬から8月上旬)
品種札に貼られたピンクの花が一面に咲く様子を一度見てみたいです。
今回は、まだ少し開花には早い時期でした。
このシモツケソウの群生地がピンクに染まり、その背景に白馬連峰の山並みが見えると、
きっと絶景になるんでしょうね?
いつかこの目で見てみたいです。
ロープウェイの降り場、アルプス平駅まで戻ってきました。
駅前の花壇に、「タイツリソウ」が見事に咲いていました。
本当に赤い鯛を何匹も釣ったような花姿は、本当に不思議ですね。
「高山植物の女王」と呼ばれる「コマクサ」と色や形が若干似ていますが、
こちらのタイツリソウの方が、よりフォトジェニック、今の言葉でいうと「映え」ますね!
なかなかうまく写真に撮るのは難しいのですが、このタイツリソウに惹かれます。
コマクサはホームセンターで見かけることはありませんが、このタイツリソウは、
普通にホームセンターで売ってますもんね。
そう考えると驚きです。
こんな高山植物が普通に手に入って育てられるんですから。
ここから先は、「絶滅危惧種コーナー」紹介。
白馬五竜高山植物園は、高山植物の「域外保全」の拠点としての役割を持っているそうです。
貴重な高山植物が、これからも引き継がれていくことを願います。
こちらは、その絶滅危惧種コーナーに展示されていた植物で、ホテイアツモリソウ。
絶滅危惧種だけあって、とても珍奇なフォルムをしています。
こちらは、「キバナノアツモリソウ」。
1884年(明治17年)に、東京帝国大学理学部教授の矢田部良吉らによって戸隠山にて発見され、
1899年(明治32年)に、牧野富太郎によって新種記載された植物らしいです。
亜高山帯の崩壊草原に分布することから、暑さに弱く、低地で栽培することは困難な植物で、
白馬五竜の冷涼な気候を活かして栽培していると、書かれていました。
如何でしたでしょうか?
日本にはいくつかの高山植物園があると思いますが、その地方地方の特色を生かした展示や風景が
見られるのが魅力ですね。
白馬五竜高山植物園、是非、白馬村に行かれることがあれば、是非足を伸ばして訪れていただきたい場所です。
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