あっという間に今年も残すところあとわずかになってしまいました。
12月は師走といいますが、何かと慌ただしくしておりまして、
こちらのブログの更新も遅れがちになってしまいました。
さて、今年の最後に、「これまで我が家の庭で、実際育ててきたバラの中で、
今は手放してしまって手元にないバラだけど、とても気に入っていたバラ」
というテーマで、バラのタイプごとに一挙にご紹介する企画を立ててみました。
バラを始めて、もうかれこれ9年くらい経ちます。
まだ栽培初心者の頃に手に入れて育てていたバラも、何らかの理由で
今は手元にないバラも数多くあります。
そんなバラたちを改めて振り返ってみて、良かったところ、イマイチだった
ところなど、実際に育ててみて感じたことをお伝えできればと思います。
これまでに撮影した何万枚の写真の中から選りすぐってご紹介いたします。
お伝えしたい品種が多いので、以下の3回に分けてご紹介いたします。
「木立性バラ編」、「シュラブ樹形のバラ編」、「つるバラ編」の3本立てで
紹介していきますが、分類はあくまでも僕の主観的なものですので、
ご容赦ください。
第1回目は、「木立性バラ編」です。
■HTラジオ
僕がバラを始めた当初、建物の壁面に誘引して風景をつくれるつるバラをメインに
バラを集めていましたが、バラの本を読むと、いわゆるハイブリットティ(HT)品種
と言われる木立性のバラを育てるのが醍醐味のひとつ、というのを見て
何種類かはHT品種のバラを育ててみようと思って、まず一番に選んだのが
こちらの「ラジオ」というバラです。
バラの講習会の師匠に推薦されたバラということもあるのですが、
このバラが初めて咲いた時の衝撃は凄くて、その美しさに言葉を忘れるほどでした。
いの一番にこのバラが咲いたのですが、バラの花はこんなに美しいのかと思わせて
くれた、僕にとってとても思い出深いバラなのです。
黄色ベースに濃いオレンジ色が複雑に入り混じった花弁が特徴的で、
花弁に、稲妻のような筋が入ることから「電波」を連想したのか、
「ラジオ」という名前が付いたそうです。
最初の写真のような息を飲むように美しい花が咲いたのは一度きりで、その後は、こちらの写真のような
ほぼ黄色の花しか咲かなくなってしまい、何度も最初に見た美しい花を咲かせるべくチャレンジしてみたのですが
うまく行かず、結局手放してしまい、今は友人宅で育ててもらっています。
■ディスタント・ドラムス
こちらは、ディスタント・ドラムスという、アメリカで作出されたバラで、
茶色とラベンダー色のグラデーションがとても美しいバラです。
中心部が上品な茶色、外側の花弁がピンクがかったラベンダー色という、なかなか他にはない個性的な配色が
特徴的です。
真正面から見たところ。
花形もとても美しく、とてもフォトジェニックで写真映えするバラと言えます。
園芸研究家の河合伸志さんがスーパーバイザーを務めておられる横浜イングリッシュガーデンには、
このディスタント・ドラムズをメインにしたコーナーがあって、何株も群生して植栽されていて、
とても美しい風景でした。
咲き始めの頃は、中心部がフレッシュなオレンジ色で、いかにも若々しい印象です。
咲き進むと、中心部のオレンジ色は退色し茶色へ、外側のラベンダーピンクの花弁は淡いピンクへと変わります。
とても個性的で気に入っていたバラですが、個性的過ぎて他のバラの花色と合わせにくく、特に我が家の庭のような
派手な色彩のバラが多い庭では逆に浮いてしまって手放すことになってしまいました。
広い庭で、このバラばかりを群生させることができると、色の変化を楽しみながら魅せる美しい風景が作れるのでは
ないかと思います。
■ダブル・デイライト
こちらは、殿堂入りしているバラのひとつで、ダブル・デイライト。
花色のベースが、りんごの果実のような淡いアイボリー色で、開花とともに赤色に変色していくというバラです。
丸弁・高芯咲きのHT(ハイブリッドティ)品種。
このバラの特徴は、その見た目の派手さだけでなく、香りの強さもピカイチです。
まさにリンゴのようなフルーツ香りが周囲に漂います。
咲き始めの頃のアイボリー色の花弁に赤色が乗ってくる様子。
咲き進むと、全体的に赤色が濃くなっていきます。
とても気に入っていた木立性バラのひとつでしたが、癌腫に罹患し、やむなく廃棄となってしまいました。
■アイズ・フォー・ユー
こちらもとても個性的なバラで、アイズ・フォー・ユーという、イギリスで作出されたバラです。
花の中心の大きな赤紫色のブロッチが入るのが特徴です。
中央のブロッチや花弁の色は、気温により濃い紫色から薄紫色に変化します。
花弁全体が紫色の染まった様子が、お酒に酔ったみたいでとても愛らしいです。
個性的な花姿だけでなく、香りも個性的で、強いスパイス香があります。
花持ちはあまりよくありませんが、花付きはよく(多花性)、
四季咲き性なところも良いです。
中央で金色に輝くシベも特徴的です。
株姿としてはこんな感じで、我が家では大きなテラコッタ鉢に植えていました。
分類的にはシュラブ樹形になるようですが、ほぼ木立性と同じような樹形です。
咲き進むにつれて花色が変化するため、株全体で様々な花色が楽しめる点も
良いところです。
ずっと大株で元気だったのですが、ある時から調子を崩し、そのまま枯れて
しまいました。
■ブルー・フォー・ユー
こちらは、アイズ・フォー・ユーの兄弟品種で、ブルー・フォー・ユー。
花の形は、アイズ・フォー・ユーとほぼ同じですが、ブロッチはなく、
花色が淡い藤色なのが、とても個性的です。
アイズ・フォー・ユー同様、中央のシベはゴールドで、藤色の花弁とのコントラストもとても美しいです。
また、アイズ・フォー・ユーと同様、房で咲くのでボリューム感が出るところも良いです。
千葉の京成バラ園へ行った際、エントランス付近にこのブルー・フォー・ユーの大株が地植えされていて
とても美しく印象的だったので、我が家のガーデンにも導入しました。
咲き始めの頃は、濃い紫色で咲きます。
香りもアイズ・フォー・ユー同様、スパイス香りです。
咲き進むと、淡い紫ピンクへと変化していきます。
僕自身がブルー好きなので、青に近い花色で房で咲いて、こんもりと茂り、風景を作ってくれるので、
期待の大きかったバラなのですが、軽い癌腫に罹患したあと調子を崩し、残念ながら枯れてしまいました。
いつかまた育ててみたいバラのひとつです。
■モニーク・ダーヴ
こちらも、バラを育て始めた頃、バラの師匠から薦められて我が家の庭に導入したバラで、モニーク・ダーヴ。
フランス・ギヨー社作出のとてもコンパクトなバラです。
花は淡い桃色中心部が、少し濃い色に染まります。
花弁の中央が外側にツンと尖った形状をしているのが特徴的です。
気温によって、少し花色が変わるのか、こちらは、中央部がアプリコット色をしています。
花持ちが良くて、強いミルラ香がありますが、樹勢が弱く、なかなか大きくならないという欠点もあります。
咲き進むと、中央部が外に押し出されるように広がります。
樹勢が弱く、とにかく繊細なバラという印象です。
ただ、花形はとても美しく、花弁の中央がツンと尖った形状が魅力的で、とてもフォトジェニックです。
ずっと鉢植えで育てていたのですが、なかなか大きくならないので、しびれを切らして、
今は友人に託し、地植えで育ててもらっています。
■ヴァンテロ
こちらも、バラを始めた頃、勧められて自宅ガーデンに導入したバラで、
同じくフランス・ギヨー社のヴァンテロという品種です。
濃い赤い花が、Theバラ的な印象で、整った花形も美しいです。
咲き始めの頃の様子。
この小さな花が、このあととてもゴージャスに変化するとは思えないほどの控えめな佇まいです。
幾重にも重なった波打つ花弁が特徴的で、とてもゴージャスです。
先に紹介したモニーク・ダーヴ同様、とてもコンパクトなバラで、
樹勢も強くなく、繊細。
生育も緩慢で、なかなか大きく育ってくれないのがネックです。
ただ、咲き進んでもとても美しく、シャクヤクのようなゴージャス・シックな咲きっぷりを見ると
愛おしくなるバラです。
こちらも鉢植えで育てていたのですが、何とか大きくしたいので、日当たりの良い友人宅に託し、
現在は地植えで育ててもらっています。
■ハイディ・クルム・ローズ
こちらは、ドイツ・タンタウ社作出のバラで、ハイディ・クルム・ローズという品種。
女優さんの名前が付いた美しいバラです。
このバラとの出会いは、千葉の京成バラ園。
京成バラ園で見たこのバラは、とても低い位置で、まるで宿根草のように
咲いていたのです。
分類ではシュラブ(もしくはフロリバンダ)となっていますが、
小さな木立性バラといった樹形ですが、花はとても大きくゴージャスです。
バイオレットピンクの丸弁のロゼット咲きで、房でなく一輪で咲きますが、
花首がしっかりしていて、真っすぐ上を向いて咲いてくれます。
とてもコンパクト(矮性)で、まさにボーダーガーデンの足元に宿根草的に
使えるバラとして我が家の庭にも導入したのですが、植えた場所があまり条件
が良くなかったのか、うまく育ってくれず、友人宅へ移植させてもらいました。
■かおりかざり
こちらは、F&Gローズの「かおりかざり」という品種で、友人から譲り受けたバラです。
ピンクとオレンジが混じったアプリコット色の花色がとても美しいバラです。
切り花にも使えるバラということで、花形がとても整っている上、花持ちもとても良いバラです。
個性的な花色と葉の緑のコントラストもとても魅力的です。
その名前のとおり、香りも強く、フルーツ香が楽しめます。
咲き進むと、淡いピンク色に退色しますが、その風情もなかなか良いです。
地植えで育てていたのですが、植えた場所の環境が少し過酷だったのか、
枯れてしまいました。
このバラも、またいつかもう一度育ててみたい品種のひとつです。
■杏
こちらもF&Gローズのひとつで、「杏(あん)」というバラ。
花形や花色はイングリッシュローズに似た感じです。
名前の通り、杏子色でまったりとした印象のバラです。
香りも見た眼のイメージ通りのフルーツ香。
咲き進むと、色が抜けてシックな感じになっていきます。
この杏も樹勢が弱かったためか、我が家の環境には馴染めず、枯れてしまいました。
■HTマヌウ・メイアン
こちらは、冒頭に紹介したHTラジオと同様、バラを育て始めた当初に、HT品種をいくつか育ててみよう
ということでセレクトしたバラのひとつで、フランス・メイアン社のバラで、HTマヌウ・メイアン。
HT品種の特徴である剣弁高芯咲きをあまり感じさせない、少し優しい花形が特徴的です。
このバラを選んだ理由のひとつが、その花色です。
いわゆるショッキングピンクと言われる、とても人目を惹く花色が特徴です。
緑の葉っぱとのコントラストも美しいです。
咲き始めはとても整った花形をしています。
咲き進むと、HT品種らしく、ゴージャスに変化し、花弁も波打ってきます。
このバラも途中で調子を崩して、友人宅で地植えで育ててもらっていましたが、
残念ながら調子を戻すことなく、枯れてしまったと聞いています。
■ホワイト・マスターピース
こちらも同じく、初期の頃に育てていたHT品種のバラで、ホワイト・マスターピース。
いわゆる、剣弁高芯咲きの「The バラ」的な品種で、花形もととも大きく、気高く咲きます。
ただ、やはり今どきのバラというより、ひと昔前のバラといった雰囲気ですね。
我が家では、真っ白のバラというのは少なくて、ここまで白く、威風堂々と咲くバラはこのバラしかなく
とても貴重なバラだったのですが、このバラも途中から調子を崩してしまい、友人宅に引き取ってもらい
養生中です。
まさに「The バラ」といった風情です。
■シャルル・ドゴール
こちらのバラは、少し古いバラで、パテントも切れているためか、ホームセンターでお手頃価格で売っていたので
購入したのですが、HT品種のシャルル・ド・ゴールというフランスの大統領の名前が付いたバラです。
濃いラベンダー色の半剣弁高芯咲きで、香りも強いバラです。
このバラの特徴は何と言ってもその美しい花色でしょう。
今でこそ、かなり青に近いバラが開発されていますが、このバラが作出された1974年、約50年前では
かなり青味を帯びたバラだったのではないでしょうか?
咲き始めは少し控えめな感じですが、咲くととてもゴージャスな一輪となります。
初期生育が悪いのか、我が家ではうまく育てられず、現在は、隣町に住む叔母の家の庭で育ててもらっています。
■ニコール
こちらは、ドイツ・コルデス社作出のバラでニコールという品種です。
白地にピンク色の覆輪が特徴的なバラです。
次回・その2で紹介する予定の「ストロベリー・アイス」という同じような覆輪のバラを片親に持っているため
似た感じの花が咲きます。
分類ではフロリバンダに分けられているみたいですが、ほぼ木立性、HT品種に近い樹形のように思います。
シュートが出にくいらしく、なかなか大きくなりませんでした。
咲き進むと、花弁が広がり、花色も色がにじみ出すような変化を起こします。
とても特徴的な花色でガーデンでは目につくバラですが、我が家のような日陰の庭では大きく成長できないと
判断して、条件の良い叔母の家に引き取ってもらいました。
如何でしたでしょうか?
年末企画「今は手放してしまったけれど、気に入っていたバラたち」の第1回目(木立性バラ編)。
バラは品種選びが肝といいますが、いろんな本や雑誌、ネットなどをみて、自分の好みに合うバラを選んで
育て始めますが、なかなかイメージ通りに咲かなかったり、育てている環境に合わないとか、
さまざまな理由でそのバラと離別することも多いのではないでしょうか?
日々新しいバラが開発され、市場に出回りますが、かつて育てた思い出のバラをもう一度育ててみたいと
思うこともあるでしょう。
そんな少しノスタルジックな思いも込めて、今回僕が育ててみて良かったバラをご紹介してみました。
次回は、その続編・その2(シュラブ樹形のバラ編)をご紹介したいと思います。
乞うご期待!
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