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専門家吉谷桂子のガーデンダイアリー ~花と緑と豊かに暮らすガーデニング手帖~

草地 ワイルド・アバウト オーナメンタル・グラス Why we Glass in the garden?

吉谷桂子

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やっぱりメドウの美しさ。花はもちろん!美しいいけど、グラスの美しさに惹かれます。

でも、この景色、やはり統制が取れていてバランスよく美しいから良いのです。

絵心のある人がデザインをして、栽培面も見守っているからこそ。

バサバサと乱れていれば、鑑賞に値せず、それは厳しい眺めです。

東京は、8月も、9月中旬以降も、長いあいだ35度以上は当たり前。でも、街路の雑草は元気でした。

で、先日、エノコロ草が50度以上はありそうなアスファルトの割れ目から

きれいに整列してボーダー状に生えていたので、好感をもって眺めていました。

強いなあ。雑草という観念で見るのではなく、プランツビューティとして、魅力的でした。

しかし、勝手気ままに増えて、あたり構わずは、困る。...ので、やはり自分の庭では抜いてしまう。

イヌの尾っぽのような草 なので、 狗尾草なのだそうですね。

東京の我が家の日なたにおいてある温度計は、いつも、50度を振り切っていました。

高温障害。起きていました。

びっくりします。オーブンのなかにいるみたい。

日が翳ると35度くらいには下がりますが、本当に危険です。

温度の高い階段室においてあった掃除機が、壊れました!

テレビの天気予報やニュースで頻繁に「危険な暑さ」という表現をよく耳にしました。

絶望的な暑さとか命が危険な暑さとか、本当に危険であり、

私たちは毎日を、注意深く、過ごしていかなくてはならない時代にいるのだと思います。

これからは秋。秋風にほっとできるタイミングも期待ですが。まだまだ大雨や台風の心配もあります。

でも、自分たちにできる対策はあるので、そこを怠りなく。と思う次第です。

その中には、今までやっていたようなガーデニングの作業を諦めるという選択肢も。

さて、徒然なるまま、長く書いてしまいました。無駄も多い文章ですが...。

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シャっと天に葉面を向けて元気いっぱいに太陽光線を吸収しようと葉を広げている植物を見ると、見ているこちらも元気が出てくるような気がしていたのは、6月上旬ごろまでで、

その後、紫外線の強さに負けそうな緑の葉群をよく見かけるようになりました。

↑中之条ガーデンズ6月

今年は代々木公園では高温障害が出て、焦げてしまったような枯れ方をする植物も多かったです。悲しいです。

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しかし、葉を広げて。という表現とは違うかもしれませんが、

オーナメンタル・グラスが地面からスック!と 立ち上がる姿は力強く。それが風に揺れる様が美しくて。

もちろん、種類にもよりますが、針のような細い葉っぱは、葉面の蒸散が少なくて済むのか。

などと思いながら真夏の暑い時期に存在するグラス達に感謝したい気持ちになります。

写真は中之条ガーデンズの9月。天気があまりよくない日でしたので、却って曇り空、雨のほうが一息つける。

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さて、RHSで発刊された「grasses choosing snd using thrse ornamental plants in the garden」という本、10年以上前に買った本が今手元にあります。

グラス 庭に植えるオーナメンタルプランツの選び方と使い方 という本

タイトルだけで飛びついた買った本、あまりじっくり読んではいませんでした。

よくあることなのですが、タイトルでパッと買って積み読になる本は多い。

ざっと10年以上も積みっぱなしの本は少なくありません。トホホ。それを「積み読」というそうです。

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駅のホームがグラス低いほうはブリザのようだった。背の高いほうはカラマグロスティス。

「グラスは、21世紀のガーデニングとガーデン・デザインにとって基調植物になる」

そんな文章で始まる「grasses 」 ...なんだか、予言的。と思った次第。温暖化の今。

今、新しい庭のデザインが7月から始まっていて、まさにそう思っています。

グラスを基調植物として使った庭を進めたい私は、しかし、日本の状況ではそれは難しいこともわかっていますから、そこは本で研究。と思った次第。また、過去にたくさん見てきた素晴らしいイギリスやオランダの事例を見直して。

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私たちの庭の向こうの自然界に溶け込むグラス。

と、スー・スチュワート=スミスさんが語る場合は、カントリーサイドに住むガーデナーの家の庭から、その先に見えている自然の景色のことです。

ルーラル。 と言う言葉を思い浮かべることができる。これは日本のカントリーサイドにはあまり見かけないような気がする景色です。

この写真↑トムさんの愛犬、ロケットが横に走っています。このロケットくんは敷地内を自由に動き回って。

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写真は逆に同じ場所から振り返って、自然側から、スチュワート=スミスさんの家を見た景色。ああ!どちらも美しい!

私自身、このグラスの見えている景色がどうしても好き。なのでした。花が咲いているよりも好きだと言ったら怒られるでしょうか。

あるいは、メドウ(草原)の雰囲気 が 限りなく好きです。

でも、 日本の私たちにはなじみが薄いのか、今回の6月のツアーで参加した時も、トムのガーデンで案内をしてくれたガーデナーに質問をされている方がいらっしゃいました。

この時、通訳として、白井法子さんがいらっしゃったので、私も大変助かりました。

「なぜこのように庭の一部を草原にしているのですか?」と。

私としては一瞬驚き、しかし、こうした質問の出ることは、非常に大切です。実は、それを

なぜか?とも、思わない自分はそれに対する答えも持たない。この草原が、庭の一部になっていることが当たり前だと思っているからです。

イングリッシュガーデンの様式の一部分として、よくあるパターン、外界との堺に、必要なLAWN 芝の部分、昔は短く刈り込んでゴルフやテニスができそうな管理が一般的でしたが、今は、生物多様性や干ばつ対策やさまざまなサステナビリティのためと、やはり、この景色が好きだ。ということも大きいはずです。でも...

ただ、好きだから。とか。これを美しいと思っている自分には、質問の答えは不意打ち的にレスポンスの用意が自分がない。

ガーデナーの答えは、たしか「広い敷地面積の一部はこうして野生的にしています」的なことを言ってた覚えがありますが、伝統的に家の外周を「ハーハ」などで、芝生のランドスケープを広々と見せていたイングリッシュ・ガーデンのランドスケープでは、あって当然のメドウの眺めでもありました。

あの時、その質問をされた方にちょっと聞いてみてもよかった。

なぜそんな疑問がでたのか。

私には若干。トラウマがあるので。

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銀河庭園のメドウ。正式には、メーズ(迷路)ガーデンですが、レンガで作った迷路ののあいだはフラワーメドウになっていて。花の時期がある程度限られていますが、私はここの花の咲いていない時の景色も大好きなのです。

ここをデザインしたバニー・ギネスさんの傑作。ここで、この景色を眺めていましたら

「草ボウボウ!」呟くなり踵を返していなくなったお客さまあり。 

こうしたイングリッシュガーデンの自然主義。

銀河庭園の閉園。今年に至っても最後までポピュラーな人気が得られなかったことを、私の力が及ばなかった。

嘆いても仕方がないけれどなんとか、ご理解をいただく感性を育てられないか。

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しかし、それでは、ガーデンデザイナーとして、人を説得できないわけで。

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花の咲く庭はもちろん、美しいコンポジションで美しく開花する花の芸術性も自然な力強さも、そこはたとえば銀河庭園のオーガニックなローズガーデンは絶対的に素晴らしさですが、これくらいではわんさかと人が集まってくれないもどかしさ。(有名じゃない。ってだけなのだろうか)

私は農薬を使っていないローズガーデンのこの有機的な甘い香りが本当に好きです。

多少葉っぱが病気になってたって、かえってその方がちょっと安心だったりして。

一面のラベンダー、ネモフィラ...などの方が、人は集まる。

で、私の気持ちとしては、もっと自然主義。

で、今、なぜ、オーナメンタル・グラスがこんなに良いと思うかの答えがでました。

人類が誕生して以来、イネ科の植物は私たちの主食として、またその他の多くのニーズを満たしてきた。
しかし、観賞用として庭に植えられるようになったのはごく最近のこと。 儚くも永続的な花の透明感、純粋なラインと独特のテクスチャー、季節の移り変わりや風の動き、他の花々や庭の外の自然界との調和など、イネ科植物が評価されるようになったのは、ごく最近のことである。
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本能的な「これが自然(あたりまえ的な、自然な流れ、みたいな意味での自然)だ」と思える感覚で、
自然に親しんで暮らせたら、幸せな気がします。不自然ではないもの
私たちの バイオフィリア。そこが大きく影響していると。
自然との距離感によっては、
人工的な手の入り方、精一杯の丹精によって咲くバラ、とか、素晴らしいのですが、個人的には
一面のネモフィラ...的な世界。苦手です。人工的な景色が。
やはり、本来の自然に近い感じを愛する。
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↑今年6月の代々木公園にて。 花は評価される。グラスはまだ雑草と言われる。

評価されないと、価値がない。なんて、残念ですが、植物を見る目の多様性の広がりに期待です。

わたしは....グラスばっかりの庭。...なんて、デザインをしてみたいけれど。

日本では無理でしょうか?


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吉谷桂子

英国園芸研究家、ガーデン&プロダクトデザイナー。7年間英国に在住した経験を生かしたガーデンライフを提案。さまざまなイベントや雑誌などに出演するほか講師を務め、著書も多数。また国際バラとガーデニングショウやレストランなどの植栽デザインを担当。2013年春にファッションブランド「Shade」を立ち上げた。


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