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専門家吉谷桂子のガーデンダイアリー ~花と緑と豊かに暮らすガーデニング手帖~

草地 ワイルド・アバウト オーナメンタル・グラス@Japan

吉谷桂子

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私は、近年ますます オーナメンタル・グラス が好きになっているので、その分、とても悩むことがあります。

植栽デザインに入れても許される場合と、ダメな場合があまりにもあるからです。

それは、

「評価(雑草扱いされている)」の点と、

「栽培環境問題(環境により、思うように育たないこともある)」

「評価」問題では、日本にもオーナメンタル・グラスを「美しい!」と称賛するガーデナーは 昔から、たくさんいらっしゃいました。

また、一般的に、フウチソウとか、日本庭園でも古来から愛されている在来種は良いのですが

プレイリー系、たとえばアメリカ原産とか少し大きくなる系。やはり、秋に枯れ

今から20年ほど前に、パニカム`ヘビーメタル`を手に入れた時、これを作る生産者さんが日本にいる事実に飛び上がって喜んだし。

この写真のグラスは、すくなくとも19年ほどは、私のルーフガーデンに植ったまま、息災です。

去年の夏あたりから厳しい夏に、いくつかの丈夫さで信頼のあったエンピツビャクシンたちが枯れて。

このまま自分自身も歳をとっていく中、苦労をして、生きながらえるよりも、

過酷な環境であるルーフガーデンに関しては、生き延びる者たちだけをうまくバランスよく育てられたらと思っています。

グラス類いろいろ。まずは、環境にあうかどうか。合いすぎて増えすぎるのも困る

⚫︎乾燥に強いもの そうでないもの しかし、多くの場合は....

⚪︎永続的に植木鉢でうまく育つものがそれほど多いとは言えない

⚪︎地植えで根が張れば... 生き延びる... 場合によっては 増えすぎる品種もあり...

⚫︎理想とする「フォルム」に育つかどうか。やはり、環境によって かなり差異あり。

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もう、6年くらい前か。これはたしか、アンドレポゴン。北海道の大森ガーデンさんから頂いた品種で

宿根草あるあるという点では、最初の2年ほどは、存在感がなかったものの、もうずっとここで生き延びて

秋冬は、実にユニークな姿、夕陽が当たると美しい。風通しよく、おそらく乾燥に強いというよりは、

かなり深く根を張ってサバイバルしているものと思います。プレイリー・プランツは、まさに根の張りがいのち。

グラスの形の美しさにはいろいろあって、倒れてバラバラになるなら それは美しくないので、困りもの。

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逆に、スックと直立して美しいのはやはり美しい。しかし、↑の写真は、2001年に日本のナーサリーで

作っていた糸葉ススキ すっごくキレイだったのですが、これが後から増えて増えて!

その違い。あるものの、一般的にグラスは、雑草と思われていて、よく耳にする言葉では、

これは「雑草?」「この庭、草ぼうぼう!」といった訪問された方の意見をよく耳にします。

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私自身は、オーナメンタルグラスに出会った時からその魅力に取り憑かれ。

この写真は忘れもしない20年前、パニカムが関西の圃場で見つかったときの。なんてかっこいい!

と一目惚れでしたが、この時からです。このパニカムを植える都度、雑草といわれ。

この時の写真のパニカム、実は今も私の家で育っていて、それが一番上の写真です。

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このとき、スキザクリウムとか、ほかにも注目の ナチュラリスティック・ガーデンで使えそうな

グラスを育てているナーサリーがありました。

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この写真2006年の写真です。私はこのころ、六本木ミッドタウンのボタニカの設計も始まっていたので

探してもらっていたのです。プレゼンする相手が、イギリスのテレンス・コンラン氏とそのデザインチームだったので

全部、英語です。アイアンのオブジェはこの時はまだ提案前で。

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植栽に使う植物を探してくるのは、今より、大変だったというか。実際に現物を見に行くのは大切ですが。

今はほぼ、ネット注文が増えましたね。これは2007年

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これは、2006年秋に開催された 丸の内ガーデニングショウ で私がデザインした庭。

このときのみなさまの評価、感触で驚いたのがパニカム の「雑草扱い問題」でした。嗚呼!!!!

無理解。といってはイケナイのですが。そういう課題はいまだにあります。

私自身がどんなにこれを、とても美しいと思っていたとしても。

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それまでも、フェスツカ・グラウカ、カレックスは寄せ植えの脇役的に手に入っていました

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すでに人気の植物でした。↑この写真も古いです。2006年のバラとガーデニングショウのときの

この頃、カレックス、流行っていました。「枯れているからカレックス?」とは、よく嫌味をいわれましたが

短命の、寄せ植えの、この当時は、花の脇役としてよく使われていました。でも多くは

一年草扱い。

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オーナメンタルグラス、もっとうまく小さな自分の庭にも活かしたいと思うのですが、

たくさんの種類があるオーナメンタルグラスの中でも 案外難しいのが環境との兼ね合い。

私が言いたいのは、そのデュラビリティというか、長生き。長い付き合いができるかどうか。

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植木鉢で育つものと育たないものがあり、ベランダガーデンできれいに育つかどうかについても

あれから30年近く経っているのに、試行錯誤。まだまだ続きます。

↑の写真にフェスツカが見えます。ベランダガーデンを作って最初の夏。

↓の写真は、↑の写真から2年後。もうほかの生長の早い品種に負けて。

その後、消えてしまった。

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フェスツカ・グラウカ 美しいと思うので、何度でも挑戦しましたが、だいたい

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水捌け、日当たり、通気性 いろいろ工夫したけど、1年以内に消えていまった。

で、脇役の域をでないのは、つまらない。つまり、オーナメンタル・グラスを主人公にしたい。

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間違いなく、育つのは日本原産のグラス。 私の中の絶対的王者は、フウチソウ。です。

32年前にイギリスでガーデニングを覚えて以来、名前はイギリスで覚えた植物名がインプットされて

いまだに 学名のHachonechloa macra が先に思い来る名前で

この頃は、より一層、植物名が思い出せなくなっているので、今でも、フウチソウが出てこなくて。

さて、悩み続けて2024年、 去年と今年は最新型のイングリッシュガーデンに尋ねることもできたし、

そのおかげで日本にもこうしたナチュラリスティックガーデンの考え方が少しずつ浸透しつつあります。

素晴らしいチャンスだと思います。

しかし、それだけに、それぞれの環境に合った植物が正しく選ばれて、美しく育ち、環境のために

役立つということも大切。そのための植物を選んでいく必要があります。

比較的に多くの人々から好かれるし、あまり迷惑な育ち方増え方はしないという点で、

今後も採用していこうと思う少し大型のグラスは..

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私の定番、カラマグロスティス`カールフォスター`

早めの5月に穂が上がるので、絵になる。まっすぐ立ち上がる。倒れにくい

(でも、水捌け悪くて、日当たり悪く、雨が多いとダメ)

しかし、十分に根が張れる環境でないと、直径30センチ程度の少し大きいと 思えるようなコンテナでも

見事な穂が上がったりする事はなく、生きてはいるけど、ぱっとしない状態ではあります。

なので、やはり地植えで。

想像しなくてはいけないのは、この穂や茎が上がっている高さや、この葉が張っている幅(葉張り) 

見えている広がりと同じ程度のスペースがこの植物には必要だと言うことです。

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↑の写真は中之条ガーデンズのミューレンベルギア・カピラリス 

↓の写真は代々木公園モデルガーデン。

秋にならないと この見事な赤いふわふわは、登場しませんが、一旦こうなると大人気ですし、霧がかかったような赤は実に見事です

こちらもやはり、それなりの根っこを貼るスペースが必要です。風通しが悪かったり、環境に合っていないと、この細い葉っぱも倒れます。

小さな植木鉢では実現できない。

↓の写真、左のミューレン。右側のデスカンプシア`ゴールドタウ`は、この秋に、かなり、コガネムシの幼虫にやられてしまった。

また、今年もコガネムシが多いので、もしもこれ以上デスカンプシアが、やられるようなら諦めようと思っています。

中之条ガーデンズでは水捌けの悪い土壌でも、素晴らしく美しいですが。あまり乾燥には強くないのがデスカンプシア。

代々木で今丈夫なのは、カラマグロスティス`ブラキトリカ`、そして、やはり、パニカム ヘビメタ

ほかにもいくつか入れてみていますが、植栽から3年くらい経たないとまだなんともと思うものあり。

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それから、 東京の私の家ではルーフガーデンだろうが、地植えだろうが、うまく育たない スティパ`エンジェルヘアー`。

雨が多かったりするとアウト!

例えば、秋に植えて、初夏まではきれいに育ちますが、梅雨の時期や大雨に当たるとその後暴れてしまいます。

見るも無惨といった風情に。

中之条ガーデンズでは、 梅雨や夏の大雨に備えて、穂先が重たくなるシードヘッドは、手でしごいてとってしまうとのこと。

このスティパのシードヘッドがお団子になるのが楽しくて。

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中之条ガーデンズの スパイラルガーデンでは夢のように美しいです。でも正直をいうと、

これも最初のうち(苗を植えたばかりの年)はうまくいかなかった。しかし、水はけの良い、太陽光線が強く当たり風通し最高。

こんな場所で、現在ここで生えてるスティパは、すべてこぼれ種です。こぼれ種で育つと環境にあった証拠。

自分でここがよくてここで育った子たちです。

その後の植物は健康的ですよね。

そして、美しく育つスティパは、最近は中之条ガーデンズでも市民権を得て、ちょっとした人気です。

でも環境が合わないとやっぱり....

難しいですが。面白いです。

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口では簡単に言えますけれども、それぞれの環境に合った植物を選ぶと言うのは、まさにそれぞれの体験を通し、最初に飢えた1年目はやはりわからない。

2〜3年して結論が出ることが多いので、時間がかかります。

↑の写真は、去年の12月の中之条ガーデンズ、ナチュラルガーデン。

去年と今年はイギリスにも行き、ほんとに素晴らしい庭をたくさん見ましたけれど、

この瞬間の中之条ガーデンズのナチュラリスティック・ガーデンの景色は、去年見た中では、私にとっては、最も美しかったです。

そして、この感動をおいそれと他者とは共有できないような「歯痒さ」にもぶつかるのでした。

この庭のメンテナンスをするヘッドガーデナーのMちゃんやこの庭にボランティアで関わってくださる一部の人たちだけの秘密の景色。

「マツコの知らない世界」 で「極シブ〜!」といわれて、それで、終わりたくはありませんが、難しい。

ああ 来年もいくつか新しい庭のプロジェクトがありますが、

どうかなああああ。


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吉谷桂子

英国園芸研究家、ガーデン&プロダクトデザイナー。7年間英国に在住した経験を生かしたガーデンライフを提案。さまざまなイベントや雑誌などに出演するほか講師を務め、著書も多数。また国際バラとガーデニングショウやレストランなどの植栽デザインを担当。2013年春にファッションブランド「Shade」を立ち上げた。


Instagram@keikoyoshiya 

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