2020.5.18 / ネットでオープンガーデン京北・香りの里/六ヶ畔・花簾庭(京北バラ園)の四季
5月に入り、待望のバラシーズンを迎えています。
とはいえ、今年は新型コロナウィルス感染予防のため、当面の間、不用不急の外出もできなくなり、
『Stay Home』の合い言葉の通り、家で時間を過ごさざるを得ません。
せっかくのバラシーズンに見頃のバラ園を見に行けないのは、バラ好きにとって残念でしかたありません。
そんなことで、少しでも気が晴れるようにと、前々回の記事で『ネットでオープンガーデン』(自宅編)を
書きました。
今回は、その続編です。
僕がガーデンデザインをさせていただいた京都市右京区にできたバラ園『京北・香りの里/六ヶ畔・花簾庭』
(通称:京北バラ園)のバラの最盛期の風景をご紹介します。
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※ 京北バラ園については、こちらのdinos ガーデンスタイリングでバラ園が出来るまでの経緯を書いています。
ご興味のある方は、バックナンバーをご覧下さい。
・京北バラ園ができるまで 〜の3年間の軌跡(前編)〜 は、こちら → ※
・京北バラ園ができるまで 〜の3年間の軌跡(後編)〜 は、こちら → ※
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『京北バラ園・花簾庭』は、今年3月発売のガーデン雑誌『Garden Daiary』(Vol.13、2020年春号)に
採り上げていただいたこともあって、今年のバラシーズンに是非行ってみようと思っていただいていた方も
おられると思います。
京北バラ園は、隣町の京都府亀岡市の『オープンガーデンかめおか2020』および、
地元京北の住民有志で開催される『京北オープンガーデン2020』に参加予定でしたが、
残念ながら、どちらもオープンガーデンも新型コロナウィルス感染予防の観点から中止になってしまい、
今年の春のバラシーズン中の見学はできなくなってしまいました。
ですので、代わりに『京北バラ園・花簾庭』を見に行った気になっていただけるよう、
バラシーズン最盛期の様子をダイジェストでご覧いただけるようにまとめてみました。
京北バラ園は、京都の北部・山間部にあることから、冷涼な気候のため、バラの最盛期は5月末〜6月上旬頃です。
このブログ記事を書いている時点(5月7日)では、まだ咲いていませんので、
昨年2019年の写真を振り返ってご紹介いたします。
では、【Stay Home 企画】第2弾、『ネットでオープンガーデン、京北バラ園・花簾庭2019』と題して、
昨年の京北バラ園のバラシーズン真っ盛りの頃の風景をご覧いただきたいと思います。
こちらが、京北バラ園・花簾庭のメインゲートを入って正面に見える風景です。
山合いの谷筋の棚田の一枚分(約300坪)をバラ園にしています。
平坦な敷地に湾曲する園路をつくり、2枚目の棚田との段差(約1m)を使って、枝垂れ咲くつるバラで
流れ落ちる滝のような風景をデザインしています。
メインゲートから向かって右側方向を見ると、正面に家の形をしたパーゴラが見えます。
ここはちょっとした休憩スペースであるとともに、家のような建造物の壁面を使って、つるバラを誘引しています。
もともと田んぼで平坦な土地であったことから、ただ単にバラを植えてしまうと、バラ畑(圃場)のようになって
しまうため、構造物を作って、その壁面につるバラを誘引することで、立体的に花を咲かせるようにしています。
パーゴラも一般的な藤棚のようなものだと趣きがないので、一番奥に見える切妻屋根の建物に調和するように
切妻屋根型のパーゴラをデザインしています。
切妻屋根型のパーゴラの手前は、色鮮やかなイングリッシュローズゾーンです。
京北バラ園自体は、『里山風景に馴染む、和の趣きのバラ園』をデザインコンセプトにしていますが、
色鮮やかで、自然樹形が美しいイングリッシュローズは外せないバラです。
イングリッシュローズというと、その名の通り、ガーデン大国・イギリス発祥のバラで、
和の趣きとは対極にあるように思われますが、宿根草のブルーサルビアや、バラ同士の配色を工夫すれば
和の趣きにも十分調和させることができると思います。
向かって右側の平瓦を載せた木製フェンスの外は、国道に面した駐車場です。
この地域は、鹿などの獣害が発生しますので、鹿の侵入を阻むため、
バラ園の外周にはフェンスが張り巡らされています。
その木製フェンスにも、つるバラを誘引し、単調になりがちな平坦な場所に立体的に花を咲かせるように
工夫しています。
こちらは、メインゲートを入ってすぐ左側に見える八連のアーチです。
メンテナンス用の軽車両がその下を通れるように、最頂部は約5mほどの高さがあります。
あまりにも大きなアーチなので、まだ全体をつるバラが覆えていませんが、あと数年で全体を覆い、
バラのトンネルが完成すると思います。
通常、アーチというと円弧型のものが多いと思いますが、ここでは周囲の民家の屋根に馴染むよう、
切妻屋根型にデザインし、地元のアイアン作家さんに制作してもらいました。
手前のイングリッシュローズゾーンから、一番奥の滝のように枝垂れ咲くつるバラのエリアまで、
遮るものがなく、全体を見渡すことができるよう、バラの高さを考慮して剪定しています。
最盛期には、バラの花の海のようになります。
バラ園の一番奥、棚田の段差を活かしてつくった、堰を流れ落ちる水の流れ(滝)をバラの花で表現した
このバラ園の最も象徴的なゾーンです。
この風景をつくるため、小花のつるバラ、群星・群舞という白と淡いピンクのバラをランダムに配置しています。
その奥には、茅葺きの家が見え、まさに里山風景の中のバラ園を感じていただける場所となっています。
つるバラ、群星・群舞による、水が流れ落ちる風景をデザインした壁面。
枝垂れても咲く品種を選びつつ、早春の誘引時に、つるの先端を地面の方に引っ張るようにして
この風景を作っています。
また、園路には備前焼を思わせるような赤いレンガブロックを敷き詰め、和の風情を演出しています。
こちらは、オールドローズゾーン。
このバラ園の大きなテーマは、「周囲の里山風景に馴染む、和の趣きのバラ園」ですが、
もうひとつ大きなテーマが「香り」です。
特に、このオールドローズゾーンは、香りの良いバラを選定しています。
また、オールドローズゾーンには、和風庭園にある石組みを随所に配置し、岩を乗り越えて流れる瀬を
オールドローズの自然樹形で表現しています。
ひとつ上の写真の岩の反対側から見た写真がこちら。
石組みの裏側にオールドローズを植栽し、伸びた枝が岩を乗り越えるように誘引をしています。
小さな岩を乗り越えるように誘引したオールドローズ、デュイユ・ドゥ・ホール・フォンティーヌ。
オールドローズゾーンなど、多くの部分は芝生を敷き詰めて、地面が美しく見えるようにしています。
バラの株元に芝生が入り込まないよう、株元を囲むように仕切り板で、芝生の侵入を防止するなど、
細かい工夫を施しています。
こちらは、オールドローズゾーンに設置した木製の低い壁面。
ここには、オールドローズのつるバラ、ヨーラン・ダラゴン(右側)、ウィリアム・ロブ(左側)を誘引。
隣接する建物を囲う白壁には平瓦が載せられ、瓦と木塀、ピンクのオールドローズも違和感なく調和しています。
オールドローズゾーンから続く木製フェンスには、モダンローズのつるバラも誘引しています。
中央の紫色のつるバラは、パルフェ・タムール、左側の赤い一重のつるバラはカクテル、
右側にちらっと見える赤と白の絞りのつるバラはニュー・イマジン。
どのバラも和のテイストを感じる風情を持っています。
こちらは、小輪で一重のパルフェ・タムールの花。
このバラ以外にも、どこか着物の柄や配色を思い浮かべるような品種にこだわってセレクトしています。
こちらは、駐車場との境の木塀に誘引したつるバラ。
左から、パープル・スプラッシュ、エクセレンツ・フォン・シューベルト、ニュー・イマジンです。
竹格子や平瓦、木塀など、和の風情を感じるアイテムとの相性も良いです。
赤と絞りのバラ、ニュー・イマジン、このバラも和の風情を感じさせてくれます。
こちらは、家型パーゴラの前に設けた、和の雰囲気のバラゾーン。
「あおい」や「つきよみ」などの和バラ(F&Gローズ)に加え、「清流」「しのぶれど」といった和をテーマ
にした品種を植栽しています。
こちらは、F&Gローズの「あおい」
同じくF&Gローズの「かおりかざり」
同じくF&Gローズの「たまき」です。
こちらは、淡い紫色のバラ「しのぶれど」
写真は、バラ園の中央付近から、メインゲート方向を見たところです。
メインゲートは、神社の鳥居のようなデザインとなっています。
メインゲートから大きく湾曲しながら奥へと導く園路の両側には、色鮮やかなイングリッシュローズを配置。
その足元には、バラにはない鮮やかな青のサルビアを植栽して、バラの色を一層引き立てています。
イングリッシュローズゾーンに面した駐車場の木塀にも、色鮮やかなつるバラを誘引しています。
手前のシュラブ樹形のイングリッシュローズと壁面を彩るつるバラで、立体的な空間をデザインしています。
こちらは、イングリッシュローズのオリビアローズ・オースチン
こちらも、イングリッシュローズのプリンセス・アレキサンドラ・オブ・ケント
こちらもイングリッシュローズのムンステッド・ウッド
こちらもイングリッシュローズのメイド・マリオン
花びらが薄く、透明性が高く、繊細でかつ柔らかな印象のイングリッシュローズが、このバラ園を彩っています。
八連の切妻屋根型の大型アーチです。
遠くに見える美しい山並み風景とも調和していると思います。
隣接する丘の上からバラ園全体を見下ろしてみました。
奥に見える日本家屋の屋根と調和するようにデザインした切妻屋根の家型パーゴラが見えます。
手前には、八連のアーチ、そして園内を交差する2本の園路など、バラ園全体の構成が分かります。
再び、メインゲート付近からのバラ園全景です。
バラ園は山合いの谷筋に立地し、棚田を風が吹き抜けます。
この環境を活かし、香りがガーデンに滞留・循環し、町へと広がる「香り環境」を生み出します。
このような香り空間の創出が高く評価され、環境省主催の第16回「みどり香るまちづくり」企画コンテストにも
入賞しています。
如何でしたでしょうか?、「京北・香りの里/六ヶ畔・花簾庭」。
写真は昨年2019年のものですが、きっと今年2020年も昨年以上に美しく咲き誇ってくれることでしょう。
今年は、新型コロナウィルス感染予防のためオープンガーデンは中止になり、
この風景を実際に皆さんに見ていただくことができず残念でなりません。
今年はこのような形で、『ネットでオープンガーデン』を開催させていただきましたが、
是非来年は、現地に足を運んでいただいて、見学していただけましたら幸いです。
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【 京北・香りの里 六ヶ畔・花簾庭(京北バラ園)について 】
住所:京都市右京区京北比賀江町口烏谷(くちからすたに)
(京北にある皇室ゆかりの御寺・常照皇寺に向かう国道477号線の左側にあります。)
2022年・オープンガーデン情報
開催期間:令和4年5月27日(金)~令和4年6月5日(日)の10日間限定
開園時間:9:00~16:00 駐車場:7台あり
※ 「維持管理協力金」についてご協力のお願い
当園は個人の私庭であり、有志ボランティアにより維持管理されています。
昨年(令和3年)までは、庭主のご厚意により、無料で一定期間開園しておりましたが、
昨年本年度より、入園されるお客様から、お一人500円の「維持管理協力金」をお願いしております。
皆様から頂戴いたしました「協力金」は、バラ園の今後の永続的な維持を目標とした
園内のバラの育成・保護、資材購入、園内の整備等に使用させていただきます。
ご理解ご協力の程、お願い申し上げます。
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