2021.4. 1 / バラのある家の外壁塗り替え術
たくさんのバラを庭で育てておられる方で、ご自宅の外壁塗り替え工事でお悩みの方は
意外に多いのではないかと思います。
僕自身がその一人でした。
築20年を越えた自宅の外壁塗り替え工事を決断するのに大きな障害となった、建物外壁面に誘引したつるバラ。
3年前の冬に外壁塗り替え工事を実施した我が家では、たくさんのバラのある家の外壁塗り替え工事の
様々な制約を承知の上、施主の気持ちに寄り添ってくれる施工業者さんと出会い、結果、
「一本のバラを抜くことなく、一本の枝を折ることもなく」無事、外壁塗り替え工事を実施することができました。
その工事の過程での注意点など、同じ悩みを持たれるロザリアンの方に参考にしていただければと思い、
このたび、我が家での外壁塗り替え工事の様子を振り返って、記事を書いてみました。
前回の「前編・準備編」に続き、今回は「後編・実施編」と題し、その様子をレポートします。
多少なりともご参考にしていただけたら幸いです。
「前編・準備編」では、工事着工までにしておくべきこと、そして工事着工当日、
最も気をつけないといけない足場設置について、詳しく書いております。
今回は、それ以降の実際の外壁塗り替え工事、そして付帯工事の屋根の葺き替え工事
の様子、最終的に工事完了後の様子などをご紹介したいと思います。
今回も少し長めの記事ですが、よろしければお付き合いください。
足場および養生シートの設置が完了したあと、早速、外壁の高圧洗浄作業が
始まりました。
外壁に塗装する前に、雨やほこりの汚れを徹底的に洗浄します。
植栽や地面に汚れが付かないように、シートが掛けられています。
こちらは、建物北側の凹んだ坪庭。
内側(部屋側)の開口部から高圧洗浄の様子を見ることができます。
こちらは、前庭側の建物外壁。
2階のサーモンピンクの壁面の汚れを高圧洗浄するのですが、
汚れが1階の白いタイル面に流れて行かないよう、
ビニールの養生テープが張られています。
細かい所まで配慮が行き届いています。
足場から下を覗き込んだアングルです。
建物外壁面のタイルや、その壁面に誘引したつるバラにも水すら掛かっていません。
壁面に誘引している大型のつるバラ、ジャスミーナの株元。
高圧洗浄で汚れた水も流れ落ちることなく、奇麗な状態です。
玄関アプローチのガラス扉に反対側、こちらの壁面に誘引したつるバラ、
キングとレッド・キャスケードの株元も、同様に無傷です。
こちらは、中庭。
足場に養生シートが掛けられた上、ウッドデッキや植栽周りにも
ビニール製の養生シートも被せてあります。
高圧洗浄する壁面に近い位置に植えられた高木の常緑樹のソヨゴにも
全体に養生シートが被せてあります。
こちらは、大型のつるバラでスパニッシュ・ビューティ。
鋭い棘のあるバラですが、こちらも高圧洗浄で流れる汚れた水が掛からないよう
養生シートで覆われています。
アングルを変えてもう一枚。
バラに悪影響を与えないよう、細々とした配慮の跡がうかがえます。
こちらは、中庭のサンルーム。
中庭側のガラスの壁面に大型のつるバラ、ピエール・ド・ロンサールを誘引して
いますが、この壁面は塗り替え対象ではないので、例年通りの誘引を行っています。
ただ、長い枝先は塗り替え対象の外壁に誘引するためフリーにしていたのですが、
足場に張り出して邪魔だったので、このあと枝を束ねてサンルーム側に固定しました。
足場が掛かってしまわないと分からない細かいことは、その場で臨機応変に対応し、
作業の効率化、作業の安全性重視で修正することも肝要です。
こちらは、建物北側のパーゴラに誘引している大型のつるバラで、コーネリア。
パーゴラの上にも足場が掛かっているため、誘引は後回し。
枝を束ねて、足場の通行の邪魔にならないようにしています。
こちらも建物北側の窪んだスペースの坪庭。
この坪庭に植えているヤマモミジや、その足元の低木(アオキやシダ類)にも
養生シートが掛けられています。
こちらは、前庭から中庭への玄関アプローチ。
高圧洗浄作業が終わったので、いよいよ外壁塗り替え工事が始まりますが、
ペンキで床の乱張り石が汚れないよう、徹底的に養生されています。
いよいよ塗装工事が始まりました。
下塗り→中塗り→仕上げ塗りという工程を経て工事が進められますが、
塗装工事が行われている時は、会社に出勤していましたので、
写真をほとんど撮っていませんで、数日のうちにあっという間に
全ての工程の塗装工事が終わっていました。
週末の工事がお休みの日、仕上がった塗装工事の様子を撮影してみました。
1階の玄関アプローチから中庭方向を見たところ。
写真左側の三角に張り出した壁面は、以前は白い壁でしたが、
今回の塗り替えでテラコッタ色に変更しました。
塗装が済んだ外壁面がちらっと見えるように、施工会社さんが配慮してくれました。
以前の左官仕上げの時より少し濃い色ですが、なかなか良い仕上がりです。
左官仕上げの上に塗料を塗り重ねたようには見えない、自然な仕上がりです。
白い大理石タイルの壁面に誘引したつるバラ、ジャスミーナも
全く問題なさそうです。
今回の外壁塗り替え工事では、建物外周に足場を設置するため、
併せて屋根の葺き替え工事もすることになりました。
新築から20年が経ち、事前の調査では外壁だけでなく屋根もかなり傷んでいました。
外壁ほどの痛みではないとはいえ、数年後にまた足場を組んで屋根の葺き替え工事を
実施するとなると、費用面もさることながら、またバラの問題も出るため、
この機に一気に屋根の葺き替え工事をした方が合理的だろうとの判断です。
外壁塗り替え工事が一旦片付いてから、屋根の葺き替え工事が始まりました。
我が家の急こう配の屋根に向かって、長い梯子が掛けられました。
我が家の屋根は、元々コロニアルという窯業系の材料で葺かれていましたが、紫外線による劣化や割れのほか、
北側の日陰になる部分には苔が付いていたりと、屋根は想像以上に過酷な環境下にあり、
外壁同様、10年~15年のレンジで葺き替えやメンテナンスを行うのが理想的なようです。
今回の屋根の葺き替え工事では、元々のコロニアル屋根を撤去し同じ材料で葺き替えることも可能でしたが、
撤去した廃材の処分費がバカにならず、このコロニアル葺きの屋根の上に、ガルバリウム鋼鈑という
金属の屋根を被せるという「カバー工法」を採用することにしました。
併せて、破風(はふ)と呼ばれる屋根の小口面も、元々の木の上に、
同じガルバリウムを被せるという工法で補修しています。
濃いグレー色のガルバリウム製の屋根と破風に変わり、建物外観がとても
精悍になりました。
屋根工事にあたっては、ガルバリウム鋼鈑などの材料を屋根に運ばなければ
なりませんが、この急こう配のはしごを使って電動で揚げられるのですが、
職人さんもこの梯子を使って屋根に上られます。
普段、仕事でマンション建設現場等の足場に上ることはありますが、
流石にこの急こう配のはしごを上る勇気はありませんでした。
数日のうちに、屋根の葺き替え工事も終わり、前庭に面した足場の養生シートが取り外されました。
ガルバリウム鋼鈑で葺き替えられた屋根です。
とてもスッキリして奇麗になりました。
足場の高い位置に登らせてもらって、前庭を見下ろしたところです。
改めて足場の設置状況を見てみると、前庭に面した建物外壁部分、
シンボルツリーの株立ち樹形のアオダモがある部分の足場板は、他の部分より
細い板が掛けられ、アオダモの枝のスペースになっているのが分かります。
足場設置の際、手間は掛かると思いますが、このような配慮のおかげで
繊細な株立ち樹形の木は守られたと思います。
こちらは、中庭。
屋根の葺き替え工事が終わったあと、足場を解体する前に、
再度、塗装担当の職人さんが現場にお越しになり、現場監督も一緒に
建物の全周を見て回って、ダメ工事がないか確認しました。
細かい指摘にも誠意をもって手直し対応していただきました。
こちらは、前庭の小壁。
この小壁も非常に汚れていましたが、塗り直してきれいになりました。
誘引していたつるバラ・モーツアルトも、工事中は枝を束ねて壁に固定していました。
足場解体を前に、この小壁のつるバラ・モーツアルトを早速、誘引しました。
手直し工事もすべて完了し、足場解体前の休日。
慌ただしかったこの1ヵ月の工事期間中を懐かしむように、建物全周を見て回りました。
こちらが、西向きの前庭全景。
新しく塗り直したテラコッタ色の外壁は、青空ともよく馴染みます。
我が家のメインファサードを下から見上げたところ。
正直なところ、外壁塗り替え工事で、当初の趣きある左官仕上げの外壁が失われてしまうことが最大のネックで
外壁塗り替え工事を先送りにしていましたが、いざ実施してみると、
意外にもうまくいって、もっと早くにやっておくべきだったと思う始末です。
建物外壁面に誘引した大型のつるバラのことも工事の支障に感じていましたが、
こちらもあっさりとクリアして、全くの杞憂でした。
現場監督さんの気遣いで、足場の設置から塗装工事、屋根工事、板金工事など、
いろいろな業種の職人さんが出入りする現場にあって、どの職人さんも丁寧に
それぞれの仕事を全うしてくれました。
こちらは、建物東側の外観全景。
今回、最も大きく変わった部分です。
建物右側半分(バルコニー部分)を以前の白色からテラコッタ色に変更しました。
塗り替え工事の場合、色の塗り分けや色そのものを以前と変えられるという点も
大きなメリットのひとつといえると思います。
足場に上って、中庭全景を見てみました。
コの字型の複雑な形をした建物ですが、改めて上から見ると
とても効率的に足場が掛けられているのが分かります。
中庭を見下ろしたところ。
狭い中庭ですが、真ん中のテラスに、大型の鉢植えのバラを集約しています。
小さな鉢植えのバラやその他の植物は近所に借りた駐車場に仮置きしました。
(詳しくは、「前編・準備編」をご覧ください。)
最低限の庭の整理整頓をすれば、庭に鉢植えのバラがたくさんあっても
外壁塗り替え工事は可能かと思います。
懸念していた地植えのつるバラも、うまく足場をかけてもらえたので、
短く枝を剪定したり、抜いたりせずに施工できました。
中庭から玄関アプローチ方向を見たアングルです。
ここも以前とは部分的に色を塗り替えたエリアです。
さんざん迷った部分ですが、ここもうまく仕上がりました。
足場解体前に、記念に足場に上って写真撮影をしました(笑)。
新しく塗り替えたテラコッタ色の外壁面に落ちる足場の影。
これも明日になれば、もうなくなってしまいます。
夕方のマジックアワーに、三脚を立て夜景の撮影までしてしまいました。
足場のある風景は、どこか工場の夜景写真のようで、足場の影が建物に落ち、何とも言えぬ風情があります。
足場のある家の夜景写真を撮っていると、道行く人から怪訝な目で見られましたけど(笑)。
今となっては、外壁塗り替え工事も我が家の良き思い出のひとつです。
そして、翌日には足場が一気に解体され、
その翌日には、足場のないスッキリとした外観で静かな朝を迎えました。
複雑な足場が掛かっていた中庭も、すっかりきれいになりました。
まるで新築住宅のように見違えるほどキレイに仕上がりました。
出来上がりに見とれる間もなく、近くに借りた駐車場に仮置きしていた鉢植えの植物を自宅の庭に戻すべく
車の荷台に乗せてピストン運航をしました。
この中庭にも、鉢植えの鉢が戻ってきました。
こちらは、前庭の駐車場。
近所に借りた駐車場に避難させていた鉢植えのバラや植物、大量のテラコッタ鉢が戻ってきました。
これだけの荷物をちゃんと仕舞えるのかと思えるほどの大量の荷物。
半日がかりで、元の位置に戻していきました。
そして週末には、鉢植えのつるバラなど、外壁塗り替え工事のため、
誘引を中断していたつるバラの誘引作業を再開しました。
こちらは、建物外壁面に誘引している鉢植えのつるバラたち。
こちらは、建物北側のパーゴラに誘引したつるバラ、コーネリア。
こちらは、一番手を焼いた中庭のつるバラ、スパニッシュ・ビューティ。
複雑な足場をかいくぐって無事生還しました。
温存した長いつるを十二分に使って誘引できます。
写真は、2月下旬の小春日和の中、スパニッシュ・ビューティを誘引しているところです。
如何でしたでしょうか?、築20年を越えた我が家の外壁塗り替え工事レポート。
個人ブログにはずいぶん以前に、外壁塗り替え工事の一部始終を詳細に書いているのですが、
あまりにも長い記事で、どちらかというと、自分自身の備忘録的に書き残したものだったので
今回、その中からダイジェスト的に外壁塗り替え工事のポイントをまとめてみました。
長い間、外壁塗り替え工事を決断するのに大きな障害となった「バラ問題」。
自分自身の事前の周到な計画と、様々な制約のあるバラ庭のある家の外壁塗り替え工事に際し
施主の気持ちに寄り添ってくれる施工業者さんと出会えたことが、
「一本のバラを抜くことなく、一本の枝を折ることもなく」、外壁塗り替え工事を完了することが
できた秘訣ではないかと思っています。
このレポート記事が、これから外壁塗り替え工事を検討されている、バラ庭をお持ちの方の
少しでも参考になれば幸いです。
長いレポート記事を読んでいただき、ありがとうございました。
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