お庭からベランダ、エクステリアなどガーデニング回りをスタイリッシュに演出

 

専門家「風景」をつくるガーデニング術

京北バラ園・花簾庭、2021年早春のつるバラ誘引作業

居場英則

3月も終盤を迎え、春本番間近となりました。

今回は、今年の2月末に、僕がデザインさせていただいた京北バラ園(京北・香りの里/六ヶ畔・花簾庭)の

バラの剪定、ならびにつるバラの誘引作業に行って来た話を書かせていただこうと思います。

京北バラ園は、京都市内より気温の低い地域にあるため、春の開花時期も京都の中心市街地より半月ほど遅い

6月上旬が見頃になりますが、冬の剪定・誘引作業も他より遅めの2月末~3月初旬に行っています。

京北は降雪もあるため、雪解けのこの時期に毎、この作業を行ってきました。

例年、この時期の週末の土日の2日間で、つるバラの剪定・誘引、木立性バラの剪定、寒肥やりなど、多くの作業を

集中してやっていましたが、年々バラが大きくなり、2日間で全ての作業を終えることが難しくなっていました。

今年は、現地スタッフがコツコツと作業を進めてくれていたため、時間に追われることなく、

自分のペースでバラと向き合い、納得のいく作業ができたと思います。

今回は、そんな京北バラ園での早春の作業の様子をご紹介したいと思います。

DSC_5924-1.jpg

朝早くに奈良の自宅を出て、8時過ぎには京北バラ園に到着しました。

この日は天候にも恵まれ、暖かく青空の広がる一日でした。

DSC_5902.jpg

バラ園の入口横には、見事な紅梅が植えられ、毎年この時期に美しい花を

咲かせてくれます。

この梅の木は、バラ園オーナーが所有する別の敷地に植えられていたものですが、

バラ園の設計段階で、この場所に移植してもらえるようお願いしたものです。

とても美しい枝ぶりの紅梅は、このバラ園のシンボルツリーでもあります。

DSC_5897.jpg

バラ園の造園工事をお願いした職人さんが、伸びた不要枝を剪定してくれたそうで、

とてもスッキリした立ち姿をしています。

バラの咲く季節には梅の花は見ることができない、この時期だけの美しい風景です。

DSC_5906.jpg

バラ園に着くなり、園内の様子をぐるっと見て回りました。

写真右側の駐車場側の木塀には既につるバラが誘引済でした。

前回来た晩秋の頃は、落ち葉だらけでしたが、今はキレイに清掃してもらって凛とした空気感が漂っていました。

DSC_5904-1.jpg

メインエントランスから向かって左側に8連の大型アーチがあるのですが、その手前2連のアーチ部分の

つるバラ誘引作業を残しておいてもらいました。

DSC_5912.jpg

奥の6連のアーチは、隣町の亀岡市から来ていただいているスタッフの方が、既に誘引を完了して下さっていました。

最も高い部分で4mくらいある大型のアーチなので、脚立の乗っての誘引作業もとても大変なのですが、

とても美しい仕立てでした。

DSC_5913.jpg

バラ園の北側の棚田2段目にも、大型のパーゴラがあって、そこに我が家の庭から持ち込んだモンスター級の

つるバラ(ポールズ・ヒマラヤン・ムスクやドロシー・パーキンス)や京北バラ園で不調のバラを植栽しています。

DSC_5939.jpg

その大型パーゴラの方も、概ね作業完了して下さっていました。

このエリアは、弱ったバラの養生ゾーンであり、奥まってもいるため、積極的に見学していただくエリアでは

ないのですが、今年は是非、見ていただけたらと思います。

DSC_5919.jpg

こちらは、京北バラ園・花簾庭の一番の見せ場、棚田の段差を活かしたエリアで、トゲのないつるバラ、

群星・群舞を滝のように咲かせるエリアですが、こちらもスッキリ整えていただいています。

DSC_5909.jpg

園内をぐるっと一回りしたところで、本日の作業メンバー6名が揃い、それぞれに担当エリアを決めて

つるバラの剪定・誘引、木立性バラの剪定、一部バラの植え替え作業を行います。

僕の担当は、この大型アーチの手前2本分、つるバラ5本を誘引します。

一番手前のアーチの右側には、大型のつるバラ、マニントン・マウブ・ランブラーが植えてあり、

旺盛に枝を伸ばしています。

DSC_5932.jpg

まずは、手前のアーチ左側に植えているつるバラ、ブルー・マジェンタを、手前の木塀に誘引しました。

このブルー・マジェンタ、昨年まではアーチに誘引していたのですが、開花期が他のバラより遅く、

最盛期に良く見えるこの場所だけ花が咲いていないのがずっと気になっていまして、今年は株元から倒して

手前の木塀に誘引することにしました。

代わりに、アーチの間に、イングリッシュローズゾーンよりつるバラのモーバンヒルを移植して、

そのモーバンヒルをアーチの一番手前左側に誘引するよう変更を加えました。

DSC_5931.jpg

9時作業スタートで、お昼を挟んで14時頃には、なんとか僕の担当のアーチの2列分、

5本の大型のつるバラの誘引が完了しました。

今年は、枝数を減らし、花数より咲いた風景を重視するような誘引方法を取りました。

DSC_5934.jpg

既に誘引作業を完了してもらっていた奥の6列のアーチのつるバラも、枝数を例年より間引き、

スッキリした誘引となっています。

園芸研究家・育種家の河合伸志さんがスーパーバイザーをされている横浜イングリッシュガーデンの

大型アーチの誘引をお手本にさせていただいています。

DSC_5948.jpg

僕が大型アーチのつるバラ誘引作業を行っている間に、他のスタッフがどんどん作業を進めてくれています。

こちらは、バラ園東側の低い木製フェンスゾーン。

こちらには、オールドローズのつるバラを中心に植えていますが、開帳型の誘引をしていただいています。

DSC_5949.jpg

一部、まだ誘引作業が終わっていない部分は、後日、残りの作業をスタッフの方々にお願いしています。

DSC_5956.jpg

こちらは、オールドローズゾーンでのオールドローズの仕立て作業の様子です。

DSC_5935.jpg

京北バラ園では、園内の約1/3を占めるオールドローズゾーンのつるバラは、

石を組んだ後ろ側から前に水が流れる「瀬」を表現するような誘引を心掛けています。

その誘引作業を2人一組で行ってくださっています。

DSC_5946.jpg

こちらが、仕上がったオールドローズのつるバラの仕立ての様子。

岩の後ろ側から手前に、弧を描くように引っ張って誘引しています。

現在は、枝が揺れて花芽が飛ばないように、支柱を立てていますが、花芽が膨らんできたら支柱を外し、

癖の付いた枝は、花の重みだけで枝垂れ咲くようになります。

DSC_5944.jpg

バラ園の南東に、家の形をしたパーゴラ(東屋)があります。

周囲の里山風景や古民家の屋根並みに調和するようにとの配慮から、切妻屋根型にデザインしたものです。

この家形パーゴラ(東屋)の壁面に、いくつかの大型のつるバラを誘引しています。

DSC_5953.jpg

植栽して数年が経ち、大きく育ったつるバラは、壁面だけでは収まり切れず、屋根面にも誘引しています。

本来、パーゴラなので、屋根をバラの花で覆い尽くすというコンセプトでデザインしたものです。

DSC_5926.jpg

こちらは、東屋南側の軒を支える柱に誘引したつるバラで、メイ・クィーン。

細かい枝が出すぎて、毎年困っているのですが、今年は、このあと細かい枝を全て枝抜き剪定し、

先の方だけを残し、全て屋根の上に載せるという誘引方法をやってみます。

今回は時間がなかったので、後日、男性スタッフが屋根に上って誘引作業をやってくれることになっています。

DSC_5954.jpg

こちらは、バラ園南側のイングリッシュローズ・ゾーン。

花色や花形の美しいイングリッシュローズをセレクトし、色のグラデーションをデザインしています。

(京北バラ園のバックナンバー記事を読んでいただけると、このエリアの開花期の風景がご覧いただけます。)

ここの品種選定を行った、当プロジェクト当初から参加してくれている女性メンバーのセンスが光るエリアです。

DSC_5937.jpg

こちらが、京北バラ園・花簾庭の一番の見せ場、滝のようにバラの花を咲かせるゾーンです。

群星と群舞という日本で作出された、トゲのないバラを混植しているのですが、

最盛期には白と淡いピンクの小花がランダムに混じり、滝を流れ落ちる水のしぶきのように見えます。

とてもダイナミックな風景で、是非実物を見ていただきたいです。

現在は、木塀に這わせたワイヤーに、枝を束ねて癖をつけている状態です。

もうしばらくすると、束ねた枝を外し、ボリューム感のでるように誘引します(枝を間配ります)。

この日の作業の最後に、そのあたりの方法について、スタッフと打合せをしました。

DSC_5940.jpg

写真は、その滝ゾーンのつるバラ、群星・群舞を植えているゾーンを裏側から見たところです。

なるべく細く長いシュートを出させて、しなやかに曲げられるよう、工夫しています。

今年はどんな風景になるか、今からとても楽しみです。

DSC_5941.jpg

日没も迫り、この日の作業を終えました。

例年は時間に追われ、ただただ慌ただく作業をしていたのですが、今年は事前に現地のスタッフが作業を進めて

くれていたので、とてもスムーズに、予定していた作業を終えることができました。

心行くまでバラと向き合い、泥のように疲れましたが、とても充実した時間を過ごすことができました。


このような日々の隠れた作業の積み重ねで、バラの最盛期の見事な風景が出来上がります。

昨年は新型コロナウィルスの影響で、限定的なオープンガーデンでしたが、

今年はまだどのような形で公開できるのかはっきりとは決まっておりません。

また決まり次第、こちらでも情報公開させていただけたらと思っております。

乞うご期待ください。

****************************************************

【 京北・香りの里 六ヶ畔・花簾庭(京北バラ園)について 】

   住所:京都市右京区京北比賀江町口烏谷(くちからすたに)

        (京北にある皇室ゆかりの御寺・常照皇寺に向かう国道477号線の左側にあります。)

   2022年・オープンガーデン情報

     開催期間:令和4年5月27日(金)~令和4年6月5日(日)の10日間限定

     開園時間:9:00~16:00  駐車場:7台あり    

   ※ 「維持管理協力金」についてご協力のお願い

     当園は個人の私庭であり、有志ボランティアにより維持管理されています。

     昨年(令和3年)までは、庭主のご厚意により、無料で一定期間開園しておりましたが、

     昨年本年度より、入園されるお客様から、お一人500円の「維持管理協力金」をお願いしております。

     皆様から頂戴いたしました「協力金」は、バラ園の今後の永続的な維持を目標とした

     園内のバラの育成・保護、資材購入、園内の整備等に使用させていただきます。

     ご理解ご協力の程、お願い申し上げます。

****************************************************


■おすすめ特集

gar_rosegarden_w.jpg

居場英則

『進化する庭、変わる庭』がテーマ。本業は街づくりコンサルタント、一級建築士、一級造園施工管理技士、登録ランドスケープアーキテクト(RLA)。土面の殆どない庭で、現在約120種類のバラと、紫陽花、クレマチス、クリスマスローズ、チューリップ、芍薬等を育成中。僕が自身の庭を創り変える過程で気づいたこと。それは、植物の持つデザイン性と無限の可能。そして、都市部の限定的な庭でも、立体的な空間使用、多彩な色遣い、四季の植栽の工夫で、『風景をデザインできる』ということ。個々の庭を変えることで、街の風景も変えられるはず…。『庭を変え、街の風景を変えること』が僕の人生の目標、ライフワーク。ーー庭を変えていくことで人生も変えていくchange my garden/change my lifeーー

個人ブログChange My Garden

Archives

Recent Entories