2024.3.18 / 県立奈良高校・創立100周年記念・中庭プロジェクト
僕の母校である、県立奈良高等学校の創立100周年記念事業でつくる中庭プロジェクト。
徐々に出来上がっていく中庭の様子を、ランドスケープアーキテクトの視点でご紹介しています。
中庭の工事も、いよいよ最終段階を迎えつつあります。
第15回目は、新しくつくる創立100周年の中庭の新たなシンボルとなるモニュメント「羅針盤」と呼んでいる
石板プレートの設置セレモニーが、先日学校で行われましたので、その様子をレポートしたいと思います。
【 2024年2月29日(木)】
創立100周年の中庭整備プロジェクトも、ほぼ完成に近い形となり、あとは、植栽工事のうち、
宿根草などのグランドカバープランツを植栽する工事を残すのみといったところまで来ました。
構造物や仕上げもほぼ終わった中庭ですが、まだこの時2月末で、すでに植栽されている高木、中低木も
落葉樹が多いため、冬枯れに近い様相のままですが、ゆっくりと春の足音は近づいているように思います。
旧校舎(法蓮校舎)から移された、創立50周年記念でつくられたプラトン・アリストテレス立像も、
所定の位置に設置完了し、周囲のしつらえ(仕上げ)も終わって、
あとは、中庭が学生たちに使われるのを待っているかのようです。
2月の最終日、翌日に3年生の卒業式を控えて、この日は、3年生が久しぶりに登校してくる日だそうです。
明日の卒業式の予行が行われるとのことで、それに合わせて、中庭でセレモニーが行われることになり、
中庭の設計者として、私もそのセレモニーにお招きいただきました。
この日行われるのは、中庭に設置した「羅針盤」と呼んでいる石材プレートの設置式です。
学校の先生方が、そのセレモニーの準備に中庭にお越しになりました。
「羅針盤」を養生していたブルーシートと合板がどけられました。
代わりに、真新しい白い布が「羅針盤」の上に掛けられました。
今日のセレモニーでは、昨年10月~11月にかけて実施した、「羅針盤」制作ワークショップに参加してくれた
学生たちが、設置を祝って、除幕式を行ってくれることになっています。
「羅針盤」(石板プレート)は、直径3mもある、かなり巨大なもので、それをすっぽり隠す
大きな白い布が敷かれました。
正面には、創立50周年記念でつくられた「プラトン・アリストテレス立像」が見えています。
学生(在校生)ワークショップで制作した「羅針盤」は大きく8つのパーツに分割されていて、
そのうちの7つ(外側の扇形6枚と中央の円形パーツ1枚)はすでに、工事で設置されています。
残りの中央に収める直径30センチ程度の最後のパーツを、本日「羅針盤」をデザインした学生が
設置することになっています。
これまで、工事中の中庭は、基本的に工事関係者以外、立ち入り禁止となっていまして、
ほとんどの学生は、中庭を校舎から見下ろすことはできても、中に入ることはできませんでした。
本日は、各クラス代表と、式典のファンファーレを鳴らしてくれる吹奏楽部のメンバー、先生方も
中庭に入っていただくことになっているので、これまで養生されていた、生駒石のベンチの養生も外して、
すっきりとした状態にしていただきました。
卒業式の予行が終わって、教室に戻った学生のうち、1年~3年生のクラス代表が、中庭へと降りてきました。
そして、楕円形のベンチに固まって座ってくれました。
これだけの人数がベンチに座ったのは、初めてです。
また、校舎の廊下側の窓や各クラスの窓から、多くの生徒が中庭を見下ろすように顔を出してくれました。
見上げると、すべての窓から学生たちが顔を出してくれて、賑やかしくなってきました。
いよいよセレモニーが始まります。
まずは、前田景子先生が、ご挨拶をされました。
セレモニーのご招待いただいた私も、中庭の設計者として、簡単にご挨拶させていただきました。
そして、いよいよ「羅針盤」の除幕式です。
「羅針盤」制作ワークショップに参加してくれた学生(2年生、1年生)有志が、その大役を担います。
吹奏楽部メンバーのファンファーレのあと、ワークショップ参加メンバーが、白い布を引きます。
白い布の下から、黒い御影石でできた「羅針盤」が姿を見せました。
2年生の森川夢可さんがデザインし、大西雪乃さん・前田悠里花さんと3人で意見をまとめて完成させた
「羅針盤」の最後のパーツを、羅針盤の中心に嵌めるところです。
この日は、地元新聞社の記者さん(彼女も奈良高校のOBです。)が取材に来てくれました。
そして、最後の中心パーツがピタリと「羅針盤」に納められて、「羅針盤」は完成しました。
セレモニーの司会を担当してくださった吉村先生(吉村先生も奈良高校のOBです。)が、
頭上の校舎の窓からセレモニーを見ていた学生たちに、ここまで丁寧に施工をしてくださった建設会社の皆さんへの
拍手を促しておられました。
「羅針盤」の最後のパーツが納まったあと、その羅針盤の中心から、サプライズで、噴水が上がりました!
約2mほど、吹き上がりました。
原設計では、「キャンドル噴水」と呼ばれる、コンピュータ制御で間欠泉的に吹き出しがコントロールできるものを
イメージしていたのですが、工事費圧縮のため、やむなく「キャンドル噴水」はなくなってしまいました。
学校側から、何とか水が吹き上がるようにだけはして欲しいという意向もあり、施工会社さんの協力もあって
簡易な噴水として手動式の噴水が、なんとか実現しました。
セレモニーの最後に、中庭へ降りて式典に参加してくれた各学年のクラス代表と、「羅針盤」制作ワークショップに
参加してくれたメンバー、学校関係者、施工関係者と一緒に完成した「羅針盤」の前で記念撮影を行いました。
高校を卒業して、もう何十年にもなりますが、学生たちと一緒に記念撮影に参加させていただき、
何とも晴れがましい気持ちになりました。
記念撮影のあと、「羅針盤」制作メンバーの一人(書道部の部長さん)が、僕のリクエストに応えて書いてくれた
「書」を披露してくれました。
新しい中庭にふさわしい「書」を書いてもらえないかとリクエストしたのですが、どんな字を書くかは、
お任せしていました。
書いてくれたのは、呂本中(りほんちゅう、1084年~1138年)という北宋末期から南宋初期の詩人・学者の
『庵居』に典拠がある「鳥語花香」(ちょうごかこう)という言葉(四文字熟語)でした。
鳥の鳴き声と花の香がする、春ののどかな情景のことを表しているそうです。
新しい中庭にピッタリの言葉ですね。
その「鳥語花香」の書の前で、「羅針盤」ワークショップに参加してくれたメンバーと、記念撮影をしました。
そして、セレモニーが終わっでひっそりと静まった中庭です。
「羅針盤」の養生も、もう取り付けられず、ほぼ完成の状態で、供用を待つばかりです。
残すは、現在土が露出している部分に、宿根草、グランドカバープランツを植栽する工事のみです。
3月中旬に、今度は、奈良高校の卒業生有志を募って、植栽ワークショップを行う予定にしています。
現役生、OBOGの卒業生が、力を合わせて、創立100周年記念事業の中庭整備の最終仕上げを行います。
次回は、その植栽ワークショップの様子をご紹介できればと思っています。
乞うご期待ください!
****************************************************
【 奈良高校・創立100周年記念事業について 】
今回の奈良高校・創立100周年記念の中庭プロジェクトは、50年前の創立50周年の時と同じく、
OBOG(卒業生)をはじめとした、様々な方々の寄付によって創られる事業になります。
「奈良高校 100周年記念特設サイト」も、2023年9月1日よりオープンしております。
[ 奈良高校 100周年記念特設サイト] は、こちら ⇒ 奈良高校 創立100周年 (narahs100th.jp)
創立100周年を機に、ますます発展する奈良高校へご支援いただけましたら幸いです。
****************************************************
■おすすめ特集