2020.10.23 / 美しい景観のまち
このディノスさんのガーデニングサイト「ガーデンスタイリング」の中で、僕のブログ記事を書かせていただいて、
間もなく丸5年になります。
書かせていただいた記事(テーマ)も100を越えました。
これもひとえに、読んでいただいた読者の皆様方のおかげと、大変感謝しています。
僕が担当させていただいたコーナーのタイトルは、『「風景」をつくるガーデニング術』ということで、
いつも「風景」を意識してきました。
本業の仕事でも、まちづくりや建築物での「風景」を常に意識していますし、自宅ガーデンにおいても、
庭単体だけではなく、建物と一体となった「風景」を意識してデザインしてきました。
ところで、日本には、日本人の感性を揺さぶる美しい風景がいくつもあります。
それは自然だけでなく、人間が作り出した街並みやガーデンなどもそうです。
今回は、そんな日本の美しい風景のひとつ、滋賀県近江八幡市の「八幡掘り」の風景をご紹介したいと思います。
滋賀県近江八幡市に行ったのは数年前の5月。
濠端には黄色いカキツバタが咲いていました。
この近江八幡市のシンボルである「八幡掘」は、安土桃山時代に豊臣英次が八幡山城を築城した際、
市街地と琵琶湖を連結するため造られたものです。
城を防御するための軍事的な役割と、当時の物流の要であった琵琶湖の水運を利用する商業的な役割を
備えていました。
堀沿いには裕福な豪商たちの白壁の土蔵や旧家が立ち並んでいます。
この八幡掘付近は、重要伝統的建造物群保存地区として昔ながらの建物や街並みが守られています。
写真は、堀を渡る橋の真ん中から、八幡掘の遠く奥の方まで見渡したものです。
堀の両側の石垣から伸びた巨木の緑陰が堀を覆って、緑のトンネルのようです。
ひとつ上の写真の橋は、実は二艘の船を橋の橋脚替わりにした「浮き橋」です。
対岸の柳の奥にちらっと見える白壁の建物は、「瓦ミュージアム」です。
建築家・出江寛氏が設計した、伝統を重んじながら、モダンな手法で設計された秀逸な建物です。
この美しい八幡掘も、戦後の高度経済成長期の頃になると、生活排水が流れ込み、川底にはヘドロが堆積し、
悪臭を放つようになっていたそうです。
市は一時、堀を埋め立てて公園と駐車場にする計画を立てていたそうですが、地元の青年会議所が中心となって、
堀を近江八幡の誇りとして蘇らせようと活動を開始し、やがて堀の保存・修景運動は市民全体の運動へと広がりました。
そして、昭和57年(1982年)、国土庁の「水緑都市モデル地区整備事業」に指定され、
堀の石垣が復元され、堀沿いに遊歩道や親水広場が作られていきました。
そして、平成4年(1992年)、付近一帯が国の重要伝統的建造物群保存地区として選定されたそうです。
地域住民の熱い思いが形になって、美しい風景が後世に受け継がれていくことができた素晴らしい事例です。
堀には観光客を乗せた船が行き来しています。
狭い堀ですが、船頭さんが上手く船を操作して、すれ違います。
このあたりは船が振れ違えないほど、堀の花葉狭くなっています。
堀の両サイドには、黄色いカキツバタの花が咲き揃って風情があります。
この八幡掘は、様々な時代劇のロケ地にもなっているそうです。
こちらが、船着き場です。
堀の両側には遊歩道も整備されているので、船に乗らずとも八幡掘を散策できるのも魅力です。
橋の下をくぐって、堀はまだまだ先へと続いています。
ここか先は桜並木のようです。
堀へと張り出した桜の花が満開になると、さらに美しい風景になるのでしょうね。
橋の上に登って、今歩いてきた八幡掘を振り返ってみました。
堀の両側に白壁の土蔵と旧家、堀の両側に黄色のカキツバタの花、その中を先導さんが船を漕いでいく・・・、
何とも風情のある風景です。
如何でしたでしょうか?、近江八幡市の八幡掘。
是非一度訪れていただきたいおススメの風景のある街です。
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