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専門家「風景」をつくるガーデニング術

「ランウェイスタイル花壇(鉢の入れ替え方式でつくる花壇)」の作り方

居場英則

今年の我が家の庭で、一番大きく変化した場所、それは、中庭の『ランウェイ花壇』と名付けた場所。

我が家のガーデンは、前面道路に面した「前庭」と、建物に囲まれた「中庭」の大きく2つのエリアに分かれます。

「前庭」は日当りも風通しも良く、植物を育てるには適した環境なのですが、こと「中庭」に関しては、

隣接建物が近接している関係で日影になってしまい、かつ、コの字型をした我が家の建物に三方を囲まれ、

風通しも悪く、植物を育てるにはかなり厳しい環境といわざるを得ません。

しかも、「中庭」の大部分が乱張り石仕上げのテラスとなっており、土のある部分が非常に少ないという

現実があります。

そんな我が家の「中庭」の限られた空間である「花壇」ですが、ここに何度もバラ等の植物を地植えで

育ててみましたが、ことごとく調子を崩し、散々な結果を招いていました。

とはいえ、静謐な空間であるこの「中庭」にも色とりどりの花を咲かせたい、そう思って今年は新しい作戦に

チャレンジしてみました。

それが、「ランウェイ方式」と勝手に呼んでいる「鉢植えの入れ替えスタイル」による、「展示型花壇」なのです。

環境条件に起因する様々な課題を逆手にとって、四季折々の花を咲かせ、庭に風景をつくるという手法です。

今回は、その「ランウェイ花壇」の作り方について、少し書かせていただこうと思います。


● 6月、色とりどりの紫陽花を咲かせる「ランウェイ花壇」

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こちらが、その我が家の中庭、「ランウェイ花壇」と呼んでいる場所です。

一見すると、ただ単に紫陽花を植えただけのコーナーに見えてしまいますが、そうではありませんよ。

どんな工夫をしているのか、これからひも解いていきますね。


● 我が家では限られた土のある花壇スペース

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こちらが、「ランウェイ方式」を採用する前の中庭花壇コーナーです。

前庭から中庭の玄関に至る、玄関アプローチに沿って、幅約7メートル、奥行き1メートル強の

小さな花壇スペースです。

ただ、この写真では分かりにくいですが、この手前(写真右側)にサンルームがあり、サンルームに南側を塞がれ、

またこの花壇の上には、2階の部屋がオーバーハング(張り出)していて、雨露が当たらない場所です。

また、写真には写っていませんが、写真左側に前庭と中庭を仕切るガラスの扉があるため、風が吹き抜けず、

ここに淀んでしまうという場所になっています。

これまでに、何度も様々な草花を地植えして育てて来ましたが、枯れはしないものの、

日照不足で花が咲かなかったり、ハダニの温床になったりと、散々な結果になり、毎年残念に思っていました。

前庭から、中庭の玄関へとお客様をお招きするメインアプローチなので、何とか、この場所でたくさんの花を

瑞々しく咲かせたい、そう思って試行錯誤してきました。

写真は、今年の初めに、「ランウェイ方式」の花壇に変えるべく、花壇の土を天地替えして、

土壌改良を行っているところです。


● テラコッタ鉢を地中に埋める

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花壇の土壌改良が終わったところで、次は、テラコッタ鉢を用意します。

今までも、この花壇に植物を地植えせず、鉢植えでこのスペースに花を飾ることはありました。

ただ、鉢植えだと、地面から高さが出てしまうのと、やはり鉢植えのままだと、テラコッタ鉢がずらりと

並んでしまい、「庭の景観」という観点からすると、どうしても違和感がでてしまうのが難点でした。

そこで、今回の「ランウェイ・スタイルの花壇」では、このテラコッタ鉢を地面に埋めてしまうというアイディアに

辿り着いたのです。

こちらの写真でいうと、画面左端にひとつだけ、テラコッタ鉢が地面に埋め込まれているのが分かると思います。

このように、この場所に設置するテラコッタ鉢全部を地面の中に埋め込んでしまうのです。


● 様々な大きさのテラコッタ鉢を埋めて行く

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この「ランウェイ・スタイル」の花壇では、ベースとなるのが、8号スリット鉢です。

一般的に扱い易いと言われている8号スリット鉢で植物を育て、その花が咲いたところで、

この中庭の「ランウェイ花壇」に持ち込むという方式です。

日当りや風通しの良い場所で、季節の花を咲かせ、花が咲いたら、ここに移動させるという訳です。

それなら、この場所の環境条件の悪さもあまり気にならないはずです。

その8号スリット鉢がすっぽり納まる10号サイズのテラコッタ鉢をメインに、花壇の中にバランス良く配置して

行きます。

株が育って、大きく枝が張った状態で、お互いの枝が干渉しない程度の間隔を置いて、鉢を埋めて行きます。

そして、その10号サイズのテラコッタ鉢の間に、少し小さな(6号や5号サイズの)スリット鉢がすっぽり納まる

テラコッタ鉢も同様に埋めて行きます。

そうすることで、メインの植物、その廻りに脇役となる植物(宿根草や一年草)を一緒に並べることができ、

花壇の花にバリエーションが生まれます。



● テラコッタ鉢の間の土に、装飾用の砕石をかぶせる

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こちらは、「ランウェイ花壇」のアップ写真です。

奥行き1メートルほどの小さな花壇にたくさんのテラコッタ鉢がびっしり並んでいます。

そして、その間の土の部分には、テラコッタの色に合うような黄色い砕石を敷き詰めています。

もちろん、機能的には花壇の土のままでも全く問題はありませんが、砕石を敷き詰めて土を見えなくした方が、

見た目にきれいですし、土がむき出しになっているより清潔感があります

もし、植木の葉っぱが落ちても拾いやすいですし、雑草も生えにくい。

生えたとしても引き抜き易いというメリットもあります。


● 段差を付けてテラコッタ鉢を埋め込む

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こちらは、「ランウェイ花壇」を真正面から見た写真。

奥行き1メートルほどの狭い花壇ですが、そこに少し傾斜を付けているのが分かりますでしょうか?

奥に行くほど少し地面を高くして、スロープ状になっています。

さらに、埋め込んでいるテラコッタ鉢の埋め込み深さが、手前と奥とで異なっているのも分かりますでしょうか?

一番手前のテラコッタ鉢は、ほぼ地面と同じ高さに埋め込んでいます。

そして2列目は、鉢の高さの3分の1ほどが地上に出るように。

一番奥の3列目のテラコッタ鉢は、鉢の半分ほどの高さが地上に出るようにしています。

この理由は、この狭いスペースの中に、高密度で鉢をセッティングしているので、実際にスリット鉢の植物を

ここに持ち込んだ際に、枝の密集ぐあいでお互いに蒸れたりするのを防ぐため、少しでも風通しを良くするために、

地面の高さと、テラコッタ鉢の埋め込み深さを変化させているのです。

こうすることで、同じくらいの高さの植物に高低差をつけ、立体感を出させるというメリットもあります。


●ランウェイ花壇に植物を配置する

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それでは、この「ランウェイ花壇」に、スリット鉢に植えた植物を配置して行く様子を順を追ってご説明します。

まず、脇役の宿根草や一年草の小さな鉢からセットしていきます。

最後列には、壁面やポールに仕立てるつる性植物のクレマチスをセットしています。

これだけは、「誘引」を伴うため、鉢の入れ替え方式ではなく、埋め込んだテラコッタ鉢に直接植えています。

ただ、テラコッタ鉢の底は抜いていますので、一種のレイズドベッドのようなスタイルになっています。

二列目と一番手前の一列目には、宿根草のギボウシやヒューケラ、アサギリソウなどを

5号スリット鉢に植えたものを、テラコッタ鉢を鉢カバー的に使ってセッティングしています。


● 6月、紫陽花シーズンのランウェイ花壇

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今回は、今年の6月、紫陽花のシーズンに入ったところで、バラの庭から紫陽花の庭へとスイッチする

タイミングの様子をご紹介します。

小さな鉢植えの宿根草や一年草をセッティングしたあとは、最後列(奥の方)から、メインとなる植物の鉢植えを

セッティングしていきます。

ここでは、ガラスの開口部の前に、比較的背丈のある紫陽花の鉢植えをセッティングしてみました。


● 徐々に鉢植えのセッティングが進み、仕上がりのイメージが見えて来た

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メインの8号スリット鉢に植えた紫陽花の鉢植えを、2列目のテラコッタ鉢にセットしているところです。

これで、半分くらいの鉢のセッティングが終わったところでしょうか?

仕上がりのイメージが見えて来ました。

この「ランウェイ・スタイル」の利点は、何度も鉢のレイアウトを変えれるところにあります。

自分のセンスで、いろいろ花の色や形、背丈などを考慮しながら、ベストなレイアウトを探るのも

楽しいプロセスです。

まるでイベント時の会場構成のような感覚で、装飾できるのが、この「ランウェイ花壇」の最大の魅力です。


● 最後のひと鉢をセッティング

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いよいよこれが最後のひと鉢です。

このスリット鉢を、最後に残ったテラコッタ鉢にセッティングすると、紫陽花バージョンのランウェイ花壇の

完成です。

最初の鉢植えをセットしてから、ここまでの作業時間は15分程度でしょうか?

あっと言う間に、「バラの庭」から「紫陽花の庭」へと模様替えが完了しました。


● ランウェイ花壇、紫陽花バージョン完成

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そして、紫陽花バージョンの「ランウェイ花壇」が完成しました。

今年は、挿し木で増やした紫陽花を後列に、新しく買い求めた発色の良い青い紫陽花を最前列にセットしました。

画面右側から青い紫陽花が、次第に紫色、そしてピンク、赤色へと変化しています。

まさに紫陽花の花を使ったグラデーション、「レインボーガーデン」の出来上がりです。

地植えでは、なかなか花期や花色を合わせることは難しいですが、鉢植えだからこそ、

自由にレイアウト出来ますし、必要な色の紫陽花が咲かなければ、その色の紫陽花を新しく買い足して、

8号スリット鉢に植え替えさえすれば、ランウェイ花壇が完成するのです。

ちなみに、「ランウェイ」とは、モデルさんがファッションショーでいろんな服を来て歩く花道のこと。

まさしく、モデルさんが服を着替えて歩くが如く、いろいろな植物を着替えることが出来るスタイルの花壇という

ことで、「ランウェイ花壇」とネーミングしました。


● 同アングルで見る、6月の紫陽花ガーデン

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完成した「ランウェイ花壇」、6月・紫陽花バージョンを斜め横から見た写真です。

画面左手奥に見えているのが、ガラス扉とその向こうの前庭。

前庭から、このガラス扉を開けて中庭に入ってすぐのところに、この「ランウェイ花壇」があるのです。

この写真だとよく分かると思いますが、このランウェイ花壇の真上には、2階の部屋が張り出しており、

夜露も当たらず、ガラス扉を閉めていると、風も通り抜けないという悪条件の場所なのです。

ただ、玄関アプローチ沿いという、我が家では最も目立つ場所であるため、こんな条件の悪い場所でも、

季節の花を咲かせるために、この「ランウェイ・スタイル」という手法をとった訳です。


● 同アングルで見る、5月のローズガーデン

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そして、こちらが時期を遡ること1ヶ月、5月のバラの最盛期の頃の「ランウェイ花壇」。

画面右側、玄関ドアの横の小さな壁面に、イングリッシュローズのテス・オブ・ダーバービズルという

小型のつるバラを誘引しており、赤い美しい花をたくさん咲かせてくれました。

その下の「ランウェイ花壇」には、色とりどりのイングリッシュローズを配置してみました。

バラだけでなく、小さな鉢には、青や紫色の宿根草、サルビアも脇役としてバラを引き立ててくれています。

たった1ヶ月違いで、紫陽花とバラの庭が入れ替わるのです。

如何でしたでしょうか?

我が家の「ランウェイ花壇」。

都市部の住宅地の狭いガーデンにおいては、如何に小さなスペースで、四季の移り変わりをどう見せるのかが

課題になります。

そういう意味では、この「ランウェイ・スタイル」の花壇は、その課題を克服するひとつの手段に

なるかもしれません。

皆さんのお庭でも、何かのご参考になれば幸いです。


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居場英則

『進化する庭、変わる庭』がテーマ。本業は街づくりコンサルタント、一級建築士、一級造園施工管理技士、登録ランドスケープアーキテクト(RLA)。土面の殆どない庭で、現在約120種類のバラと、紫陽花、クレマチス、クリスマスローズ、チューリップ、芍薬等を育成中。僕が自身の庭を創り変える過程で気づいたこと。それは、植物の持つデザイン性と無限の可能。そして、都市部の限定的な庭でも、立体的な空間使用、多彩な色遣い、四季の植栽の工夫で、『風景をデザインできる』ということ。個々の庭を変えることで、街の風景も変えられるはず…。『庭を変え、街の風景を変えること』が僕の人生の目標、ライフワーク。ーー庭を変えていくことで人生も変えていくchange my garden/change my lifeーー

個人ブログChange My Garden

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