新・自然主義の庭づくり。ナチュラリスティック・ガーデンは21世紀に登場したガーデンスタイル。といえますよね。
まだまだ、日本では、知名度も、低いかもしれない潮流。
(写真はアキレア。湿気の多い土地では美しく育たない。好きなんだけれど)
新・の、つかない、自然主義は、19世紀のヨーロッパで発祥し、100年以上の歴史があるので、あえて、新・自然主義と言われています。
今週末、11月30日(土)今年最後の講座が、池袋のコミカレにて開催されます。
舘林正也さんやピート・アウドルフさんのところで働いた経験もある藤森由紀さんのお話も聞ける。
まさに、21世紀のガーデニングの大ヒントにもなろうかという講座です。
現在、すでに70名以上のお申し込みをいただき、私たちも随分前から準備を進めてきました。
去年の同じ頃、Piet Oudolf Five Seasons の上演をこちらで開催した際には、私もその内容に沿った講座を開催させていただきました。
今回は、3人の講師が登場。最初に年の功で、吉谷から、現状〜歴史・経緯〜Pietさんや他のデザイナーの話も含め、現在の庭の問題提起を。ただ、所用時間は20分ほど。限られた時間のなかで全部は語れないと思うので。ここにある程度、こんな感じのことをお話しつつ、写真と同時に講義を展開。
今までとはまた違ったアプローチを。
まず、歴史篇。私が必ず歴史を入れるのは、やはり、時間の積み重ねで生まれてくるものに大きな意味を感じるから。特に西洋の歴史。庭だけでなく、洋服も椅子やベッドのインテリアも、歴史ありき。日本では戦後突然広まったようなところがあるから基礎は大事。
1・イギリスで18世紀末に始まった産業革命の後、19世紀には自然保護運動が始まり、宿根草を中心としたナチュラルガーデンに100年以上の歴史があることはご存知の通り。ナショナルトラストが発足したり、ウイリアム・モリスも自然保護運動。ウイリアム・ロビンソンが自然な庭のスタイルを提唱しました。ジーキルは栽培面だけでなく、庭の芸術性を強調。花のイングリッシュガーデンは文字通り花盛り。1940年代の世界大戦で一旦こうした文化がストップ。
2・1990年代ミッドセンチュリー以降、ピートさんに多大な影響を与えた20世紀モダンガーデンのマザーといわれるオランダのミーン・ルイスが活躍した。去年のツアーで訪問しましたよね。
それに「!」強く反応した私。なぜか!ミッドセンチュリーは、オランダに発祥した、デ・スティル (De Stijl) の影響も大きかったはず。バウハウスにも多大な影響を与えたデ・スティルは、私たち1970年代の美大デザイン科の学生は必ず勉強するデザインの王道です。みんなリートフェルトの椅子の真似した模型を作ったり。
イギリスではそのころ、あまり目立ったモダンデザインの潮流は生まれていない(むしろアンビルト。実現しない建築案などはあった)
20世紀、近代ドイツ、オランダでプロダクトデザインや建築の分野でモダンデザインが隆盛したこと、デ・スティルの画家
Piet Mondriaan !
おお、我らがピート先生と同じファーストネームだが、そのコンポジション主義、ピート先生、影響がなかったとはいえなくない?モンドリアンはシカク。アウドルフはマルだけど、その図面のコンポジションはまさに?!
3・私が住んでいたイギリスの1990年代、古き良きイギリスの最後の時代。
しかし遅かったようにも思えるのは、
バイゴンイングランドがようやく「モダンブリティッシュ」に変化した時代。
20世紀の終わりのテレンス・コンラン卿の登場の意味は、大きいでしょう。
みる間に、食べ物も美味しくなったし。
雨の多かったイギリスに、夏の間雨が降らず渇水問題が生じ、ウォーターショーテージの冠水制限もでて、乾燥に強い植物(宿根草やグラス類)にも注目が集まりました。
地球温暖化の問題が浮上したのです。
1996年のチェルシーフラワーショウで、ダン・ピアソンのルーフガーデンがチェルシーゴールドを受賞したころには、オーナメンタル・グラスの流行がスタート。
翌年のチェルシーゴールドの(最高賞)をとったクリストファー・ブラッドレイホールも、乾燥に強い植物を選んだモダンガーデンでした。
安藤忠雄さんの影響を多大に受けていると、実際にNHKBS2 の取材で伺った際にインタビューでそう伺いました。あのころのイギリス、モダンデザインが新鮮だった。なんて理解し難いと思いますが。
4・2000年以降、21世紀に入って、メディア的な意味でナチュラリスティックガーデンを世の中に広めたのは、ピートさんだと言えるのかもしれませんが、ピートさんのデビュー前に多くのイギリス人が自然主義を実践していました。
ハドスペンのノリとサンドラ、ベス・チャトーさんは、私にとってその代表です。
余談ですが、1998年には NHKBS2 の番組で「秋のイングリッシュガーデン」グラスの庭や枯れた植物の庭の美についてルポする番組を作っています。
1999年にはNHK BS2 「イングリッシュ・ガーデン四季物語」で、こうしたイングリッシュガーデンの視点、秋や冬も庭の美しさがあることを番組でも紹介しました。
でも、こうしたイギリスの自然主義的考え方は19世紀から続いてきたことだと思います。
オーナメンタルグラスや宿根草の自然な庭は、ピートさんの影響というよりは、自然発生的で、むしろ、影響力はベス・チャトーさんのほうが大きかったと思います。
多くのガーデナーが、エコロジカルプランティング・システムを提唱していました。
ベスさんだけでなく、やはり番組でインタビューに行ったダンピアソンさんも、同じようなことを言っていました。
でも、Piet Oudolfさん本人も「○○ムーブメントとか言われるけど、自分は別に自分が好きだと思う植物で庭を作っているだけだ」と、周囲から作り挙げられてしまう部分もあるのでしょうか。
無農薬で無化学肥料、自然界とのチューニングが重要だと。
5・前述の1998年後から、ピートさんはイギリスでいくつかの庭を作り、注目を浴びました。
ウィズレーもそうですが、スキャンプトン・ホールは、広大なエステートのメンテナンスフレンドリーな庭としても注目されました。
多くのガーデンがその維持管理費に悩んでいたからです。さもなくばナショナルトラストに助けを求めるか。
6・その後ハイラインが完成し、ビジネス的にも大成功。あとはいわずもがなです。
(次回に続く)