2023.11.29 / 県立奈良高校・創立100周年記念・中庭プロジェクト
僕の母校である、県立奈良高等学校の創立100周年記念事業でつくる中庭プロジェクト。
徐々に出来上がっていく中庭の様子を、ランドスケープアーキテクトの視点でご紹介していく企画、
工事編の続きです。
今回は、この中庭の大きな特徴のひとつ、楕円形のスタンド・ベンチ(観覧席)の基礎工事~コンクリート型枠
設置工事までの様子をご紹介していきます。
だんだんと形が見えてくる中庭の様子をご覧いただければ幸いです。
【 2023年10月12日(木)】
創立100周年記念の県立奈良高校の中庭整備プロジェクトは、土留め擁壁設置工事が終わり、引き続き、
今度は楕円形のガーデンの主要構造物のコンクリート製のスタンド・ベンチ(観覧席)の設置工事へと
移っています。
現場に行ってみると、一旦かまぼこ型(半円形)に盛られた土砂が、階段状に削られていました。
平面的には、中央の広場を囲むように楕円形に土が鋤取られています。
この辺りは、中庭の北西角あたりになるのですが、このゾーンは、スタンド・ベンチがなく、
植栽帯(ロックガーデン)になるエリアですので、土が山脈のように盛られています。
西側からのアプローチ部分。
現在は、工事車両が唯一出入りできる場所となっていますが、将来的には、こちらは中庭の裏口的な場所に
なります。
この通路には、つるバラのアーチが設置されます。
その両側には、モモジなどの紅葉する樹木を植栽するエリアとなっています。
この西側通路部分を横から見たところです。
台形型のコンクリート擁壁が設置され、その両側からの盛土の土圧を支えます。
まだ、手前側には土は盛られていませんが、そのうち奥と同じように土が盛られていきます。
ちょうど、このあたりに中庭から西館2階の図書館へとつながる屋外階段があるのですが、
そこから中庭の全景を撮影したのがこちらのアングルです。
中庭全体に、楕円形の形が見えてきたのが分かるでしょうか?
中庭に中央あたりから、北棟(本館)方向を見たアングルです。
階段状にスタンド・ベンチの基礎をつくるための段差ができているのが分かるでしょうか?
スタンドベンチは、平面的には楕円形をしていますので、位置出しが非常に難しいのです。
現場監督のTさんが、常に測量をかけて、正確な位置出しをしてくださっています。
中庭への昇降口方向(東棟)方向を見たところです。
楕円形のスタンド・ベンチの基礎をつくる地盤面(段差)が露わになっています。
こちらが、中庭への昇降口、現在は工事中のため、安全対策上、こちらの昇降口は閉じていますが、
中庭完成の折には、こちらから生徒が中庭へと入っていくことになります。
昇降口付近にも小さな重力式擁壁(山形をしたコンクリート製の物体)を設置していて、
その両側の土圧を受けるようになっています。
こちらが、その昇降口側の小型重力式擁壁。
建物に近い位置で、中庭へのアプローチ部分になるため、なるべく存在感を抑えるような、
デザインとしています。
このコンクリート擁壁には、小端積み石で仕上げを施す予定になっています。
この日は、現場から以前の中庭にあった時計塔を、新しい中庭に戻すにあたっての位置出しを求められました。
中庭の各所、および校舎側からの見え方を確認しました。
南棟の共用廊下側から中庭の時計が見えるようにとの学校側からのリクエストに応えて、設置位置を決めました。
現場監督のTさんに、時計塔と同じ長さの約5mの棒を持っていただき、植栽が入ったあとの時計の文字盤の
視認性などもを考慮して、設置位置を決めています。
【 2023年10月27日(金)】
この日は、中庭の「羅針盤」と呼んでいる石板プレートのデザインを在校生と一緒につくるワークショップの
第2回目が夕方から行われれるため、学校に来ました。
ワークショップの前に、現場にて現場監督さんと、もろもろの打ち合わせも行いました。
中庭へ入ることができる西側のアプローチ部分(工事車両入口)から、中庭方向を見ると、
奥にスタンド・ベンチらしきものが、ちらっと見えています。
西棟2階の図書館へとつながる外部階段からの中庭全景です。
向かって左側に見えているオレンジ色の物体は、スタンド・ベンチをつくるためのコンクリート型枠です。
昇降口右側は、まだスタンド・ベンチの基礎だけが見えています。
もう少し階段を上って、俯瞰のアングルで中庭前回を見てみました。
ようやく楕円形の形がはっきり見えてきましたね!
しかも非対称(アンシンメトリー)の形がよく分かると思います。
中庭のレベルに降りて、楕円形のスタンドベンチの型枠を、職人さんが建て込んでおられる様子を見に行きました。
曲率が一段毎に微妙に異なる複雑な形状をしています。
この型枠の中に、今後、コンクリートを流し込むのですが、今の段階では、巨大な鉄道模型のようにも
見えたりするのが不思議です。
東棟の生徒の昇降口付近の様子。
こちらにはスタンド・ベンチが4段設置されるエリアです。
緩やかな勾配に沿って、スタンド・ベンチが配置されている様子がよく分かると思います。
少し引いて撮影すると、こんな風に見えます。
スタンド・ベンチの断面は、台形になっていて、後ろ側はほぼ垂直、手前(足元側)は、
少し内側に切れ込むように傾斜のついたデザインにしています。
こうすることで、脚を入れやすい構造にしています。
その分、型枠づくりは格段に難しくなるのですが・・・。
スタンド・ベンチを少し上から見下ろす感じで見てみました。
オレンジ色の型枠が何重にも張り巡らされていて、不思議な風景に見えますが、鉄筋でつながれた空間の中に、
後日コンクリートを流し込みます。
職人さんたちが、コツコツと型枠を組みながら、難しい曲面を作り出す作業を進めてくださっています。
こちらが、東棟の1階正面の昇降口です。
このあたりは、ほぼ対称(シンメトリー)にデザインしている部分です。
昇降口に向かって右側のスタンド・ベンチは、まだ基礎底盤のみが出来上がっているだけです。
こちら側は、南館(4階建て)の校舎の影の影響が大きいエリアのため、スタンド・ベンチ(観客席)は
少し少な目にして、植栽スペース(日陰に強い植物を植えるゾーン)を広げています。
このあたりは、その日陰に強い植栽を植えるゾーンで、スタンド・ベンチはなく、ロックガーデンとして
デザインしています。
盛土の部分に岩や植物を植えるのですが、その手前(広場側)には、排水を受ける側溝を設置します。
その側溝を据えるために基礎をつくっているところです。
南棟から広場を挟んで北棟を真正面に見たアングルです。
日当たりの良い、北棟の足元には、長いスタンド・ベンチを設置しています。
一番右側には4段、それが順次少なくなって、最後は一段のスタンド・ベンチになります。
逆に、北棟(本館)側から、南棟を真正面に見たアングルです。
一番最初に現場を見に来た際に、中庭の中心と、南棟の壁面に貼られた茶色いタイルの位置が、
微妙にズレていることが気になりました。
南棟にエキスパンション・ジョイント(地震時の緩衝帯)が入っているためですが、そのために南棟の
タイル面の中心と、楕円形の中心を合わせるために、楕円形を少し東側にずらすデザインとしています。
ぐるっと、中庭を一周してきましたが、こちらの位置が、中庭が出来上がった際に、
中庭に入る昇降口から一歩中庭に入った場所になります。
イメージ、つきますでしょうか?
視点を上げて、昇降口の上の階、2階共用廊下から、中庭を見下ろしたアングルです。
かなりスタジアム感が出てきたと思いませんか?
さらにもう1階上がって、東棟の3階共用廊下から見下ろした中庭は、こんな風に見えるのです。
まだ、スタンド・ベンチは出来上がっていませんが、コンクリート型枠と基礎形状で、おおよその形が見えます。
非対称(アンシンメトリー)のデザインが、なかなか良い感じです。
斜め上からのアングルだと、よりタマゴ感が出ます。
四方を校舎に囲まれて、その中にタマゴを抱え込まれたような印象があります。
南棟4階共用廊下から見下ろしたアングルです。
在校生たちは、日々現場が進んでいく様子を、休み時間等に廊下から見下ろして見てくれています。
そんな学生たちに喜んでもらえるような中庭になればと願っています。
南西角の斜め上からのアングル。
やはり楕円形のスタンド・ベンチが出来上がってくると、一気にリアリティが出てきますね。
こちらは、南東角(2階)からのアングル。
このアングル、下の完成予想CGパースとほぼ同じアングルです。
完成まで、もう少し時間が掛かりますが、ようやく形を現してきた中庭空間。
まだまだ土とコンクリートしか見えませんが、次第に、完成予想パースに近づけていきます。
今後の工事進捗レポートに乞うご期待ください!
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【 奈良高校・創立100周年記念事業について 】
今回の奈良高校・創立100周年記念の中庭プロジェクトは、50年前の創立50周年の時と同じく、
OBOG(卒業生)をはじめとした、様々な方々の寄付によって創られる事業になります。
「奈良高校 100周年記念特設サイト」も、2023年9月1日よりオープンしております。
[ 奈良高校 100周年記念特設サイト] は、こちら ⇒ 奈良高校 創立100周年 (narahs100th.jp)
創立100周年を機に、ますます発展する奈良高校へご支援いただけましたら幸いです。
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