お正月に振る舞われるおせち料理は、日本各地でいろいろな特色がありますが、ここでは北海道のおせち料理について詳しく説明します。北海道ではおせち料理をいつ食べるのかなども紹介しますので、参考にしてください。

一般的におせち料理は元日から食べ始めますが、北海道では大晦日の31日から振る舞う習慣があります。北海道の開拓が始まった、江戸〜明治時代ごろの人々の移住によって北海道独自の文化が形成され、伝統的な風習が根付いたことが主な理由とされており、大晦日の夕方から食べ始めるのが通例です。「北海道の家庭ではおせち料理を食べない」と紹介されることもありますが、それは北海道以外の地域と食べるタイミングが違うことが原因のようです。また、北海道だけでなく東北の一部の地域でも、大晦日からおせち料理を食べる家庭が多いと言われています。

大晦日の夜からおせち料理を食べるという北海道の独特の文化は、「年取り膳」という風習が元になっています。年取り膳とは、神様への今年1年の感謝と、新しい年神様を迎えるために、お供えしたお膳と同じものを食べて祝うものです。

江戸時代ごろから大晦日に年取り膳を食べる風習があり、北海道ではこの文化が色濃く残っています。江戸時代から明治時代にかけて、北海道が開拓されるとともに、東北や新潟などさまざまな地域の人が北海道に移り住みました。各地から移住した人が北海道に故郷の味を伝えたとされており、年取り膳の習わしもそのひとつと言えるでしょう。

北海道の独特のおせち料理の文化は、旧暦と新暦の違いも関係しています。旧暦では、日が沈むと新しい1日が始まるとされているため、大晦日の日没から新年になる、という考え方です。北海道では旧暦を基にしたお正月の過ごし方が、今も残っているといえるでしょう。

地域ごとに個性があるおせち料理ですが、北海道では特に独特のおせち文化が現在まで伝わっています。ここでは、北海道のおせちの特徴について詳しく説明します。

北海道では、おせちを大晦日の夕方から食べ始めることが多いようです。普段の食事とは違い、夕方から宴会が始まり、19時頃にいったん小休憩を挟むのが一般的です。年越しそばはいつ食べるのかというと、多くの家では他の地域と同様に23時頃から準備をして、除夜の鐘を聞きながら食べられています。

北海道のおせち料理は他の地域と食材が異なることがあり、代表的なものは以下の通りです。

・昆布巻きの中身は鮭ではなくニシン
・なますに氷頭（ひず）という鮭の軟骨の酢漬けが入っている
・茶碗蒸しは甘く、中には銀杏ではなく栗が入っている

北海道は本州などとは気候が大きく違うため、手に入る食材も異なります。特に、魚介類は違いが顕著で、ニシンや鮭などその時期に手に入りやすいものを使っておせち料理を作るため、独特の文化が発展したようです。

北海道には、おせち料理をお菓子で表現する「口取り菓子」という、独特の文化もあります。北海道は土地柄から、鯛や海老といった縁起物を手に入れることが難しかったため、代わりにお菓子で表現するようになりました。交通網が発達した現代でもこの独特の文化は残っており、カラフルで甘いお菓子は老若男女を問わずに人気があります。

北海道内でも地域ごとにおせちの食材は異なります。北海道は土地面積が広く、地域によって取れる食材などが異なるため、おせち料理のメニューにも違いが現れるようです。魚介類を例に出すと、北海道の南部ではクジラやハタハタを、北海道の東部や石狩地方では鮭が使われています。

北海道では大晦日におせち料理を食べるのが一般的ですが、正月や元旦には何を食べるのでしょうか。ここでは北海道の正月・元旦の食事について説明します。

北海道の正月・元旦の食事は、おせちの残りか普通の食事が一般的です。大晦日には、おせち料理と年越しそばを食べて、正月には残りのおせちをお重に詰め直して、お雑煮と一緒に食べることもあるようです。

北海道のおせち料理は、寒冷な気候ならではの料理がお重に詰められます。ここでは北海道のおせちの中身とレシピを紹介します。北海道では定番のものばかりなので、おせち料理を作る際の参考にしてみてください。

北海道のおせちの煮物には、筑前煮や煮しめと違い、うま煮が作られます。砂糖が多めに使われ、しっかりとした甘めの味わいが特徴です。家庭ごとに味付けや材料に違いがあり、銀杏やなるとを入れ、色鮮やかに仕上げることもあります。

松前漬けは、スルメと数の子を醤油で漬け込んだ料理で、北海道有数のイカの水揚げを誇る函館から道南の地域で作られています。家庭によって味付けや漬け込む材料に特徴があり、大根や山菜などを一緒に漬け込んだ松前漬けもみられます。

北海道では握り寿司を「生寿司（なまずし）」と呼び、大晦日の宴会ではおせち料理と一緒に生寿司も振舞われます。大晦日には、食べ切れないほどのお寿司を豪勢に用意するのが特徴です。

北海道で大晦日にお寿司を食べるのは、鮮魚が手に入りやすい地域であることも理由のひとつとされています。最近ではお寿司を手作りするのは手間がかかるため、出前を注文する方も多くみられます。

また、お寿司はほかにも、北海道のお正月に欠かせない「飯寿司（いずし）」というものもあります。飯寿司とは、米麹に野菜や魚を漬けて発酵させた寿司のことで、低温で発酵させるのが特徴です。独特の味わいの飯寿司は、冬の保存食として北海道や東北地方など、寒い地域で親しまれています。魚はハタハタの他に鮭やニシン、ホッケなど、その地域でよく取れるものを使用するのが一般的です。晩秋から初冬にかけて漬け込み、年末年始に欠かせない一品となっています。ただ、手間と時間がかかるため現在では家庭では漬けこまず、スーパーで購入する人が増えているそうです。

おせちの定番である昆布巻きは、北海道が発祥と言われています。昆布は「よろこぶ」との語呂合わせで昔から広く用いられている縁起物です。地域によって巻く魚は違いますが、北海道の昆布巻きは、鮭ではなくニシンで作られるという特徴があります。

氷頭（ひず）とは鮭の鼻柱にある軟骨のことで、氷のように透き通っていて、一匹の鮭からわずかしか取れない貴重な部位です。歯ごたえのある独特の食感が特徴で、北海道の正月料理には氷頭が欠かせません。氷頭は正月近くになると、鮮魚店やスーパーなどでも購入できます。

口取り（くちとり）は「口取り菓子」とも言われますが、北海道で会話にのぼる際は「口取り」と短く言われることが多いです。「菓子」をつけなくても、お正月に食べる口取り菓子のことを指します。以前は落雁（らくがん）のような干菓子の口取りが多くみられましたが、現在では白あんを使った練り切りなどが一般的です。

鯛や海老などの縁起物をかたどった口取りは、鮮やかな色も特徴的です。色とりどりの練り切りの表面は寒天でコーティングされ、ツヤがあります。手作りすると手間がかかるため、スーパーやコンビニ、和菓子屋などで購入する方が多いようです。

北海道の茶碗蒸しは、銀杏の代わりに栗の甘露煮を入れる特徴があります。だしに砂糖を入れることもあり、茶碗蒸し自体が甘めの味付けです。北海道では甘い茶碗蒸しは、子どもから大人まで幅広い年齢層の方に支持されています。

北海道はおせち料理を「正月」ではなく、「大晦日」に食べる独特の文化があります。大晦日に神様への今年一年の感謝の気持ちとともに、新しい年神様を迎えるための豪華な食事をいただく「年取り膳」の風習や、旧暦の考え方が影響しているようです。おせち料理にも北海道ならではの食材が多く使われています。紹介した内容を参考に、北海道のおせちの文化を取り入れてみてください。

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