おせちの赤い縁起物、芋虫のような形の
「チョロギ」とは?
食べる地方・地域や意味も紹介
リード文
おせち料理の「チョロギ」とは何か知っていますか?ぐるぐる巻きで芋虫のような見た目ですが、〈植物?・巻貝?〉でしょうか。普段から馴染みがなく、「おせちのあの赤いやつ」「芋虫みたいなやつ」なんて話に出ることもあるかもしれませんね。今回は、お正月のおせち料理に入れる赤い食材「チョロギ」の〈栄養・特徴〉や、〈関西などの地方・地域では食べないか〉を紹介します。おせちにちょろぎを入れる〈意味・由来・いわれ〉、〈美味しい作り方・基本レシピ〉も紹介するので参考にしてみてくださいね。
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おせち料理に入っている赤色のチョロギは
おせち料理に入っている赤色のチョロギは、ぐるぐる巻きの貝や芋虫のような見た目をしていて気持ち悪いと感じる人もいますが、どのような食べ物なのでしょうか。ここでは、チョロギの正体やどんな味なのかに加えて、栄養や、中国での用途、産地などを紹介します。
チョロギは中国原産のシソ科の植物
チョロギとは、中国を原産地とするシソ科の植物のことを指します。チョロギの歴史は長く、江戸時代頃に日本へ伝わって栽培が始まり、漬物料理として使われるようになりました。
シソ科の植物は葉を食べることが多いですが、チョロギは地中で成長した根の先端にできる塊茎(かいけい)部分を食用とします。塊茎とは、地下茎の一部分が成長して栄養を蓄え、塊の状態になったもののことです。塊茎を食用とするのは、チョロギのほかにじゃがいも・れんこん・里芋・生姜などが挙げられます。
チョロギは、中国名では「甘露子」と書きますが、トビケラの幼虫「石蚕(いさごむし)」のような見た目をしているため、「草石蚕」と表記されることもあります。チョロギの塊茎は、1〜3cmほどの長さの巻貝のような見た目が特徴です。おせち料理に使われるチョロギは、梅酢などに浸けられているため赤い色に染まっていますが、掘り起こした直後のチョロギは白い色をしています。
チョロギの食感・味わい
シソ科に分類されるチョロギを調理をせずに生のままで食べると、カリカリとした歯ごたえを感じます。ややえぐみを感じる場合もありますが、苦味や辛味はほとんどありません。チョロギ自体にはあまり味がないので、シソ科の植物のなかでも色々な味付けで食べられる食材だと言えます。
加熱調理したチョロギは、さつまいも・にんにく・ゆりねなどに似たホクホクとした食感に変わります。おせち料理に入っている甘酢浸けのチョロギは、酸味があるため箸休めに最適な味わいで、カリカリ梅やらっきょう浸けのような食感が特徴です。
チョロギの栄養成分
小さなチョロギですが、栄養が豊富に含まれています。
チョロギには、ビタミン、鉄分、タンパク質などが含まれています。ほかにオリゴ糖も含まれているため、チョロギは腸活にも良さそうな健康的な食材です。中国では、チョロギは漢方薬としても使われているそうです。
チョロギの産地・旬
シソ科の植物であるチョロギは、北海道・秋田県・福島県・広島県・大分県・京都府などで栽培が行われており、東北地方から九州地方まで日本の各地で生産されています。チョロギの名産地は大分県竹田市・広島県福富町・岩手県釜石市などで、岩手県の青ノ木地区においては特産品として愛されています。
チョロギの旬は冬の11月〜1月ごろで、気温が下がって土の上に出た葉が枯れたころに収穫するのが最適です。チョロギは手作業で収穫する必要があり、洗浄にも手間がかかることから、近年は生産者が減っている状況です。そのため流通数も減少傾向にあり、希少性が高い食材となっています。
チョロギを食べる地域・地方
チョロギはかつて東北地方を中心に栽培されていた食材であるため、主に東北から北関東の地域で食べられています。この地域では、おせち料理の黒豆の上に、梅酢に漬けこまれた赤色のチョロギを一つ乗せて出すことが多いそうです。関西よりも西側に位置する地域では、おせち料理にチョロギを入れる機会は少ないようです。
また、チョロギは中国や日本だけでなくフランスにも伝わっており、Crosne du Japon(クローヌ デュ ジャポン)と呼ばれ、フランス料理に使われることもあります。
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おせち料理の昆布巻きは
シソ科の植物であるチョロギは、どのような願いを込めておせち料理に入れるのでしょうか。ここでは、長い歴史をもつチョロギをおせち料理に入れる意味や、中国と日本での表記の仕方、黒豆に沿える理由などを紹介します。
そもそものおせちの意味や由来については下記を参考にしてください。 おせち料理の意味・由来とは?各お重・食材名に込められた願いも一覧でご紹介!
おせち料理に入れるチョロギの意味・
願いは「健康長寿」
シソ科の植物のチョロギは、できる限り健康で長生きをすることを意味する「健康長寿」を願って、おせち料理に入れられています。中国では、チョロギを「甘露子」や「草石蚕」と表記しますが、日本では「長老喜」「長老木」「千代呂木」などの漢字が使われており、長寿を願う意味が込められています。
チョロギを黒豆に添える理由ですが、おせち料理の黒豆には、「まめに働く」という意味があります。そこで、黒豆に「健康長寿を意味する」チョロギを添えて、「健康でまめに長く働くことができるように」と両方の願いを込めているためです。そのほかにも、チョロギは1つの種から多くの塊茎(かいけい)が収穫できることから、「子孫繁栄」の願いも込められた縁起物です。
おせち料理に入れる黒豆については下記を参考にしてください。 おせち料理の黒豆の意味や由来は?縁起物?人気レシピや煮方も紹介
おせち料理でチョロギと似ている意味を
持つ食材も知っておこう
おせち料理のなかで、チョロギと同じような長寿の願いが込められた食材には、海老・昆布巻き・菊花(きっか)かぶなどが挙げられます。海老はヒゲが長く、加熱調理すると身が固くなって背中が丸くなるのが特徴です。この様子が老人のような見た目をしているため、「老人になるまで長く生きられるように」といった願いを込めて、おせち料理に使われます。
昆布は「養老昆布」と表記して「よろこぶ」と呼ぶこともあるため、「不老長寿」の意味があります。菊花かぶとは、かぶに包丁で細かく切れ目を入れて作る酢の物料理のことです。菊は「邪気を払う」と信じられているため、「長寿」の象徴としておせち料理に入れます。
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おせち料理に入れるシソ科の植物のチョロギ
おせち料理に入れるシソ科の植物のチョロギは、新鮮なものを使って長く味わいたいものです。ここでは、「新鮮なチョロギの選び方」や、「日持ちしやすい保存方法」について紹介します。
表面が白いチョロギを選ぼう
生のチョロギを購入する際は、塊茎(かいけい)の表面が白いものを選ぶとよいでしょう。収穫直後のチョロギの塊茎は表面が白っぽい色をしており、時間の経過とともに黄色味を帯びたり茶色っぽく変色します。白に近い色のものは新鮮な証拠です。特に、塊茎の見た目が丸みを帯びていて大粒のものは、味が良くて美味しいと言われています。
チョロギの保存方法
チョロギの保存方法は、以下の通りです。1.チョロギを新聞紙に包む
2.ポリ袋に入れて冷蔵庫で保存する
チョロギは乾燥に弱い食材のため、冷蔵庫で保存する際は、乾燥を防ぐために塊茎(かいけい)を新聞紙に包んでください。冷蔵庫での保存期間は3〜4日程度で、保存期間が長くなるにつれて鮮度が落ちて変色が進むため、早めに調理して食べましょう。チョロギは冷凍すると食感が変わりますので、冷凍保存はおすすめしません。チョロギを大量に入手した場合は、表面が白く新鮮なうちに塩漬けにするのも良いでしょう。次でチョロギの塩漬けの方法をご紹介します。
チョロギの塩漬けで長期保存も可能
チョロギは、塩漬けにすれば長期保存することができます。塩浸けにする際は、表面が白い新鮮な塊茎(かいけい)を使用し、約15〜20%の塩分濃度にして漬け込みます。塩浸けにしたチョロギを料理に使う前には、水にさらして塩抜きしてください。
チョロギの塩浸けは、保存状態が良ければ半年持ちしますが、塩以外の調味料を入れた場合の保存期間は2〜3カ月程度と短くなります。
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おせち料理には、
おせち料理には、シソ科の植物であるチョロギの梅酢漬けを入れることが多いです。ここでは、「不老長寿」の意味を持つチョロギの梅酢漬けを作る際に使う材料と、詳しい作り方の手順を紹介します。
材料
・チョロギ:200g
・塩:小さじ1
・酒:大さじ2
・砂糖:大さじ2
・梅酢:200cc
作り方・手順
チョロギの梅酢漬けの基本的な作り方と手順は、以下の通りです。
1.チョロギに変色している部分や根が長い部分があったら、切り落としておく
2.チョロギをしっかり水洗いして、水気を切る鶏のもも肉を使って昆布巻きを作る場合は、圧力鍋を使うことがおすすめです。
3.鍋に水を張って沸騰させ、酒とチョロギを投入して3分間茹でる
4.保存袋にチョロギ・塩を入れて混ぜた後、冷蔵庫に半日~1日ほど置く
5.チョロギを水にさらし、時々水を替えながら、冷蔵庫に1日置いて塩抜きをする
6.保存袋に砂糖・梅酢・チョロギを入れて中の空気を抜き、冷蔵庫で2日置いて完成
上記の手順でチョロギを塩浸けにする時の塩の量は、塊茎(かいけい)の重さの3%程度を目安にしてください。チョロギを茹でて味見をし、柔らかくなったら湯から取り出しましょう。チョロギの漬け方は、保存袋の代わりに煮沸消毒した保存瓶を使用しても構いません。
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中国を原産地とするチョロギは、
中国を原産地とするチョロギは、「不老長寿」の願いを込めて梅酢漬けにしておせち料理に入れるだけでなく、炒め物や汁物・揚げ物などに調理しても美味しく食べられます。ここでは、チョロギを使ったおせち料理以外のレシピを紹介します。
①バター炒め
チョロギのバター炒めに使う材料と作り方の手順は、以下の通りです。
【材料】
・チョロギ:両手で2つかみ程度
・ベーコン:4~5枚
・バター:3~5g
・しめじ:1袋
・塩こしょう:適量
【作り方】
1.調理の直前に、チョロギの表面についた土を水洗いする
2.フライパンにバターを入れて、弱火で加熱する
3.カットしたベーコンとしめじをフライパンに入れて炒める
4.具材に火が通ったら、チョロギを投入する
5.塩コショウを振って味を整えて完成
チョロギには味が付きにくいため、チョロギだけを味見すると料理全体の塩味を感じにくいです。そのため、他の具材と一緒に味見をして塩コショウの量を調整してください。上記の作り方のようにチョロギを下茹でせずに作ると、シャキシャキとした歯ごたえの残る食感が楽しめます。
②味噌漬け
チョロギは、以下のような材料と作り方で味噌漬けにすると、お酒のつまみに最適なおかずに仕上がります。
【材料】
・チョロギ:500g
・味噌:200~300g
・みりん:大さじ5
【作り方】
1.チョロギをしっかりと丁寧に洗う
2.容器に味噌とみりんを投入して混ぜる
3.チョロギを容器に入れて、よくもみ込んだ後一晩置く
4.5~7日程度冷蔵庫に置いて完成
味噌漬けに適した容器がない時は、密閉式の保存袋などでも代用することができます。
味噌とみりんが入った容器にチョロギを入れてもみ込む際は、味噌がまだ硬い状態ですが、一晩置くと水分が出て柔らかくなります。完成した味噌漬けはそのまま食べられますが、塩分が気になる人は味噌を洗い流してください。少量で作る場合は、チョロギ:100g、味噌:大さじ2、みりん大さじ1、で作ってみてくださいね。
③天ぷら
チョロギの天ぷらを作る際は、以下の材料と作り方を参考にしてください。
【材料】
・チョロギ:ひとつかみ程度
・薄力粉:100g
・冷やした水:150cc
・レモン:適宜
・塩:適宜
【作り方】
1.チョロギをよく水洗いする
2.ボウルに薄力粉と水を投入して混ぜ、天ぷらの衣を作る
3.チョロギを天ぷらの衣に付ける
4.鍋に油を注いで加熱し、170℃の中温にする
5.衣をまとわせたチョロギを鍋に投入する
6.揚がったら油から取り出し、油を切って皿に盛り付ける
7.レモンと塩を添えて完成
チョロギの表面についた土が落ちにくい時は、歯ブラシを使うとよいでしょう。チョロギを短時間で揚げて半生の状態にするとシャキシャキとした食感に、長めに揚げてしっかり火を通すとホクホクとした食感に仕上がります。衣を付けずにそのまま素揚げにしても良いですし、塊茎(かいけい)に片栗粉をまぶして油で揚げるのもおすすめです。
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おせち料理を作る時に
おせち料理を作る時に、「不老長寿」の意味をもつチョロギを何段目に入れるかや、どの程度日持ちするのかなど気になることがあるかもしれません。ここでは、おせちのチョロギに関するQ&Aを紹介するので、参考にしてください。
おせちのチョロギは何段目に入れる?
盛り付け方・詰め方は?
おせちに使うチョロギは酢の物料理のため、おせちの重箱が五段の場合、チョロギは酢の物などを入れる「二の重」に詰めます。梅酢に漬けたチョロギの赤色は、「魔除け」の色とされています。見た目が鮮やかなので、黒豆の飾りとして添えるなど、おせち料理の飾りつけとして詰めることが多いです。
また、チョロギの梅酢漬けのような酢の物は、おせちの中では箸休めとして食べられる料理です。そのため、チョロギを重箱に大量に入れることはせず、他のおかずを重箱に詰めた後にできた隙間に入れたり、盛り付けたりするとよいでしょう。
おせちの詰め方、盛り付けの例は下記を参考にしてください。 おせち料理のおしゃれな盛り付け方 由来を知って縁起よく!伝統の重箱・人気のプレート盛り
おせちのチョロギの日持ち・賞味期限は?いつ作るべき?
おせち料理のチョロギなどの酢の物は、常温に置くと傷みやすくなるため、冷蔵庫で保存して早めに食べ切るのがおすすめです。冷蔵庫でのチョロギの保存期間は3〜4日程度ですが、材料や調理方法・保存状態にもよります。冷凍庫で保存すると味が落ちるため、避けてください。
チョロギの梅酢漬けは、塊茎(かいけい)を塩漬けにして、さらに塩抜きする工程があるため、完成まで3日程度かかります。また完成した後も冷蔵庫で保存ができるので、お正月の3~4日前に作り始めるとよいでしょう。
おせちのチョロギはどこで手に入る?
おせちに入れるチョロギの梅酢漬けは、スーパーなどの量販店や通販サイトでも購入することが可能です。しかし、チョロギの甘酢漬けは、全国の販売店で扱っているわけではないようです。確実におせち料理に梅酢のチョロギを入れたい場合は、通販サイトで購入するのが良いでしょう。
なお、生のチョロギは流通数が少ないため、スーパーや青果店で購入するのは難しいでしょう。チョロギの産地に近い道の駅や物産展などでは、生のチョロギを販売している場合があります。
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シソ科の植物であるチョロギには
シソ科の植物であるチョロギには「不老長寿」の意味がありますが、そのほかのおせち料理に込められた意味も知っておきましょう。チョロギの甘酢漬け以外におせち料理に使われる食材や料理は、以下の通りです。
・えび
・かまぼこ
・くわい
・ごぼう
・こんにゃく
・たまご
・なます
・蓮根
・伊達巻き
・黒豆
・数の子
・栗きんとん
・昆布巻き
・筑前煮
・鯛(タイ)
数の子は卵の数が多いことに由来して、「子孫繁栄」の意味があります。たたきごぼうに使われるごぼうは土に根を張る野菜であることから、「家業の繁栄」を願っておせちに使われる料理です。伊達巻は見た目が巻物を連想させるため、「学業成就」を願う意味があります。栗きんとんは黄金色をしていることから、「金運上昇」の意味が込められている縁起物です。
鯛は「めでたい」に繋がる魚で、赤く華やかな見た目をしているため、お正月などの祝い事によく使われています。筑前煮は、一つの鍋でたくさんの野菜や肉などを煮込んで作る調理方法から、「家族が仲良く暮らせる」ことを願う意味をもちます。
おせち料理の中身・具材は下記を参考にしてください。 おせち料理の中身・具材の一覧 定番のメニューや種類ごとの意味を紹介
おせちで「あの赤いやつ」「芋虫みたいなやつ」と認識されているぐるぐる巻きのものは「チョロギ」です。チョロギは、中国を原産地とするシソ科の植物で、塊茎(かいけい)を食用とする貝のような見た目が特徴です。おせち料理に入れるチョロギは梅酢漬けにするのが一般的で、「不老長寿」を願って使われますが、味噌漬けや天ぷらなどに調理しても美味しいです。この記事を参考にチョロギについて知り、「不老長寿」の願いを込めて、おせち料理にチョロギの甘酢浸けを入れてみましょう。
おせちの意味や由来については下記を参考にしてください。 おせち料理の意味・由来とは?各お重・食材名に込められた願いも一覧でご紹介!
おせちを種類で選ぶ