お正月を祝う縁起物が豊富に入ったおせち料理の中で、栗きんとんにはどのような意味が込められているのでしょうか。ここでは、おせち料理における栗きんとんとはどのような一品か、栗きんとんに込められた「意味や由来、いわれ」などを説明します。

栗きんとんは、「金運を上げる」縁起のよい食べ物とされています。栗きんとんは漢字にすると「栗金団」となり、金団には「金の団子」や「金の布団」という意味があります。

そのため、さつまいものあんと栗が黄金に光る栗きんとんは、「財産・富・金運」を得る縁起物と言われているようです。なお、栗きんとんを手作りする際は、スパイスのくちなしの実を使用するとより鮮やかな黄金色に仕上がります。

栗きんとんには、「勝負運を上げる」といった意味も込められています。現代では茹でて食べることの多い栗ですが、戦国時代には栗の実を干して臼で搗（つ）いて、殻と渋皮を取り去った「搗栗（かちぐり）」が保存食として重宝されました。

古語で「臼で搗（つ）く」ことを意味する「搗（か）つ」と、「勝つ」の音が通じていることから「勝ち栗」とも言われるようになり、昔は戦の出陣時に勝ち栗などで戦勝を祈る儀式を行っていたようです。今でも栗は、勝負事の成功、試験に勝つなど、「勝負運を上げる」縁起物とされています。

お正月を祝うおせち料理の中で、口取りを構成する料理は以下のようなものがあります。

・栗きんとん
・紅白かまぼこ
・伊達巻き
・昆布巻き
・ハゼの甘露煮

おせち料理は祝い肴（いわいざかな）・口取り・酢のもの・焼きもの・煮ものとジャンルが分かれており、栗きんとんは口取りに含まれます。「口取り」は、室町時代の武家で出されていた「本膳料理」というおもてなしの料理で、お吸い物と一緒に最初に出されていた酒の肴を指し、甘い味付けの料理が一般的です。現在では、年始の挨拶に訪れた来客をもてなすため、おせち料理に口取りが入っている意味合いもあるようです。

栗とさつまいものあんを材料としたおせち料理の栗きんとんには、どのような歴史があるのでしょうか。ここでは、栗きんとんの歴史や発祥地などを説明します。

栗きんとんは、少なくとも明治時代以降に普及したと言われています。栗きんとんに関する最も古い文献は1895年（明治28年）で、現在と同じような栗きんとんの作り方が記載されているようです。その後、栗きんとんの色や輝きから「金運が上がる」食べ物として有名になり、新年の縁起物としておせち料理に加えるようになったと考えられています。

栗きんとんの形状は、「栗金団」と「栗金飩」の2つに分かれます。おせち料理によく詰められている、形を残した栗に甘いあんをまとわせたものを「栗金団」と呼びます。もう一方の「栗金飩」は栗を裏ごしして成形したもののことで、茶巾で絞って形を整えるなどした和菓子のことを指すようです。栗金飩の発祥地は、恵那栗が多く収穫される岐阜県東濃地方と言われています。

上記の材料・作り方で、裏ごしなしの簡単で手軽な栗きんとんを作ることができます。マッシャーでさつまいもを粗めに潰すことで、栗とさつまいもの両方の食感の違いを味わえます。完成した栗きんとんはより艶を出すために、バットや皿に広げて手早く冷ますようにしましょう。

さつまいものあんなどがなくても、栗だけでおやつにおすすめの「簡単きんとん」が作れます。上記の材料・作り方で約8個分の栗きんとんが出来上がります。きんとんの形を綺麗に仕上げるためには、ラップの口を閉じて力を入れながら絞っていくことがポイントです。

おせち料理に入れる栗きんとんは、重箱のどの段に詰める料理なのでしょうか。また、栗きんとんの日持ちや賞味期限なども気になります。ここでは、栗きんとんに関する疑問点を3つ紹介します。

おせち料理の栗きんとんは、重箱の「二の重」に入れます。口取り（くちとり）と呼ばれる栗きんとんをはじめ、伊達巻きなど甘みのある料理は全て二の重に詰め、その他かまぼこなども入ります。栗きんとんを重箱に詰めるときは汁気があるので器に入れて盛り付けますが、茶巾絞りのように形を整えてから入れることもあるようです。

おせちの口取り（くちとり）に用いられる料理は甘く味付けするため、日持ちが長いものもありますが、手作りの栗きんとんはあまり日持ちしません。そのため、手作りの栗きんとんは常温での保存はおすすめしません。冷蔵で保存して、約2〜3日後が賞味期限です。

より長期保存したい場合は栗きんとんをラップで包んで密閉袋に入れて冷凍すると、約1か月程度は日持ちすると言われています。栗きんとんを手作りする際は日持ち・賞味期限を考慮し、食べる前日の夜頃までに仕上げると良いでしょう。

おせち料理は地域によって具材が異なることがありますが、栗きんとんは関東・関西ともにさつまいもあんと栗の甘露煮で作ります。しかし、栗きんとんの味は地域によって違い、関東の方が関西よりも甘みが強いことが多いようです。

栗きんとん以外のおせち料理にもそのような傾向がみられ、関東では「濃口醤油」をしっかりしみ込ませ「砂糖」で甘く味付けします。一方、関西では「薄口醤油」や「出し汁」を使い、あっさりとした味わいに仕上げるのが特徴です。関東では栗きんとんや伊達巻きなどの甘い品が好まれ、関西では海老煮やくわい煮などが親しまれているとも言われています。

おせち料理で栗きんとん以外に入れる具材は、以下のようなものがあります。

おせち料理には、栗きんとんと同じ口取り（くちとり）と言われる甘い味付けがされた伊達巻きのほか、紅白かまぼこなども詰められています。伊達巻きには「学業成就」、紅白かまぼこには「喜び」などの意味が込められているようです。

また「一の重」に詰められる祝い肴（いわいざかな）と呼ばれる数の子や黒豆には、「子孫繁栄」の願いが込められています。このようにおせち料理のひとつひとつの具材には、さまざまな縁起の良い由来があります。

栗やさつまいものあんなどを材料として作るおせちの栗きんとんには、「金運上昇」や「勝負運向上」の願いが込められています。これらは栗きんとんの黄金に近い色合いや、戦の出陣などに欠かせなかった「勝ち栗」が由来となっているようです。お正月を祝うおせち料理の「二の重」に、口取りの栗きんとんなどの縁起物を詰めてみてくださいね。

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