難易度★★

ラズベリーは赤い実のイメージが強いですが、実の色は黄色や紫、黒などバリエーションがあり、本来トゲのある植物ですが、トゲなし品種もあります。これらはヨーロッパや北アメリカ原産のラズベリーを品種改良したもので、基本的には冷涼な気候を好みます。寒さには強い反面、日本の夏の蒸し暑さや、雨の多い梅雨時期は苦手です。
特に初夏の収穫時期が梅雨時期にかかる事があり、蒸れないように風通し良く、水はけの良い環境選びが大切です。春に白い可愛らしい花を咲かせ、その後初夏の６〜７月に実がなります（一季なり性・二季なり性共に）。二季なり性品種は初夏の収穫以降、8月ごろ再度花が咲き、秋の１０〜１１月頃にも収穫ができます。
年数を増すごとに地下茎が広がり、あちこちから芽が出る程繁殖力は強いです。ですので、植える場所は慎重に選び、育てると決めたエリア以外に出てきた新しい芽（サッカーと呼びます）は、根ごと掘り起こして取り除きます。芽が動く少し前の3月くらいに、その掘り起こしたサッカーを移植すれば、新たな株として活用できます。鉢植え栽培も可能ですが、地下茎をどんどん伸ばすので、大きな鉢で管理するのと、２年に１回は植え替えが必要です。
ラズベリーは自家受粉するので、１本植えるだけで実の収穫が可能です。

秋に苗が出回ります。１１〜２月頃の落葉期に植え付けるのがベストですが、最も寒さの厳しい１〜2月頭にかけては植え付けを避けます。様々な品種が出回っているので、どんな果実を収穫したいか、苗についる名札の内容を吟味したり、インターネットなどで好みの品種を調べるなどして選びましょう。
植える場所ですが、地下茎が驚くほど広がって、放置すると手がつけられなくなるほどの繁殖力を持ちます。周りの植物との間隔を２m以上開けて植えるようにします。何株か植える場合も、２mの間隔を取りましょう。既存のフェンスや杭とワイヤーで仕立てた垣根フェンスに沿って育て、そこへ麻紐などで誘引しつつ育てると管理がしやすいのでおすすめです。
栽培は、日当たりがよく、そして水はけの良い場所を好みます。蒸し暑い真夏が苦手なので、関東以南の暑い地域では、午前中によく日にあたり、午後半日陰になるくらいの場所がちょうど良いでしょう。植える場所が決まったら、堆肥と腐葉土、苦土石灰をすき込んで土づくりをしておきます。次にポットの２〜３倍の大きさの植え穴を掘り、植え付けます。植え付け後はたっぷりと水をやります。春になると地際からどんどん新しい枝を伸ばし始めます。

剪定する時は、トゲがあるので、厚手の手袋と、よく切れる剪定バサミを用意します。ラズベリー栽培に剪定は不可欠です。枝葉が混みすぎると蒸れたり、病害虫が発生しやすくなるので、季節に応じた剪定作業を行います。
ラズベリーの剪定は、一季なり性か、二季なり性かでカットのやり方が少し違ってくるので、どちらのタイプを選んだかを必ず確認しましょう。

一季なり性品種は、その年に伸びた新しい枝は初夏に花芽分化（花芽をつける準備）をして、翌春その枝に実をつけます。初夏に実をつけた枝は、秋に落葉すると、灰色がかった茶褐色の乾燥した色の枝になるので、地際から切り取ります。そうする事で、新旧の枝の整理をして、風通しを確保します。

二季なり性は、その年に出た勢いのある新芽に、秋に実をつけます。その枝は冬に少し上部を切り詰め剪定します。目安は実がなった２〜３芽下あたり、もしくは枝の３／１程度です。翌春に、この枝は再度実がなります。実を収穫後、その枝はもう実がならないので、風通しを確保するために地際からカットします。冷涼な地域では、そのまま落葉するまで待って、冬に灰色がかった茶褐色の乾燥した色の枝になるので、その時点で地際からカットします。
一季なり性も、二季なり性どちらも、落葉後の剪定の際、鉛筆以下の細さの枝は良い実がならないので、地際から切り取ります。
また残す枝だとしても、あまりにも枝が混み合う場合は、その中の良い枝を残して、残りは地際からカットします。また、残した枝はワイヤーやフェンスに誘引して、なるべく枝同士が重ならないように工夫します。

春、ラズベリーの新芽が動き始める少し前の2月頃に、長く効く緩効性肥料を施します。５〜６月に再度、そして秋に入る9月のタイミングで３枚目の肥料を施します。水やりは地植えに関しては、根付いた後は特に心配がありません。逆に過湿にならないよう水のやりすぎには注意します。鉢植えは乾いたらたっぷりが基本です。

いかに蒸れずに涼しく風通しよく、排水良く育てるかが重要です。環境が悪いと病害虫も発生しやすくなります。梅雨や真夏に蒸れて発生しやすい病気に、灰色カビ病があげられます。一季なり性の品種を育てる場合は、梅雨の長雨を避けるトマト用の支柱とトンネルなどをかけるなど、少し工夫が必要です。
ただし雨が全く当たらないと、ダニの被害に会いやすくなりますので、時折葉水を与えてそれを防ぎます。また日本の高すぎる夏の温度と合わせて、強い日差しを浴びると、葉焼けを起こしそれをきっかけに弱ってしまう事もあります。真夏の午後は少し木陰になるくらいの環境が合っています。
実がなり始めるとカメムシの被害や、枝葉が混み合うと、カイガラムシもつきやすくなります。きちんと剪定して風通しよく育てます。

ラズベリーは本当に様々な園芸品種があります。まずは、剪定や簡単栽培のコーナーを読んで、二季なり性か一季なり性どちらを育てるかを決めた後に、特性や味などを考慮して好きな品種を選ぶと良いでしょう。

とても多く出回るメジャーな品種に、インディアンサマーがあげられます。果実が大きく程よい酸味が特徴で、強健なので育てやすい品種の１つです。サマーフィスティバルは実が中粒ですが、香り高い実が魅力です。同じく中粒のサンタナは、実つきが良いのが特徴です。秋の収穫期が長く、たくさんの収穫を期待できます。ジョナゴールドは黄色の実がなる品種です。大粒で生食向きです。同じく大粒のマリージェーンは、濃厚な味わいと程よい酸味が特徴です。果実の肉質もしまっていて日持ちがします。

ファンタジーレッドはその実の大きさとしまった肉質が特徴です。大きく成長するので、広い場所での栽培がおすすめです。グレンアンプル、グレンモイは実も大きく何よりトゲがないのが魅力の品種です。ブラックキャップは、甘みとコクがある黒実種で、粒は中粒です。

ラズベリーは基本的に冷涼な気候を好みます。残念ながら、初夏の収穫と梅雨時期が同じ時期になってしまう事もあります。そうすると、どうしても蒸れて病気や虫が発生しやすかったり、せっかくなった実もカビて良い実が収穫できない事もあります。それを避けるための裏技として、二季なり性のラズベリーを秋だけ収穫する方法もあります。
その年の春に出た勢いのある枝になる実（秋収穫）をして、落葉したら、全ての枝を地際から切り戻すという方法です。本来なるはずである初夏の収穫を逃すことになりますが、秋にパワーを集中させるという方法です。
どの枝を切って、どれを残すといった難しい選択もなく、剪定も大変簡単になるので、初心者の方は、あえて二季なり性のラズベリーを秋のみの収穫で楽しむこの方法を試すのもありではないでしょうか？秋により長い収穫が楽しめる品種を選ぶとさらに良いでしょう。

プランター栽培も可能です。ただしたくさんの収穫量を目指したいのであればもちろん地植えに勝るものはありません。プランター栽培の最大のメリットは、梅雨時期に雨の当たらない場所に移動できる事です。柔らかい実は雨が続くとカビやすいのですが、それを防ぐことができます。
ただし、ずっと雨の当たらない場所で育てるとハダニが発生しやすくなるので、時々水やりの際に葉水をする事と、育てる鉢は１０号（３０センチ）に１株くらいの大きな鉢に植え付け、最低でも２年に１回は植え替えます。

ラズベリーの実は痛みやすく日持ちしない果物です。そのため年間を通して購入できるのは海外から輸入された冷凍品が主です。採れたての果実は、冷凍品に比べてとても香りが良いのが特徴です。このフレッシュな果実を食べる事ができるのは、育てた人への最大のご褒美です。

一見、剪定が大変難しいように感じますが、慣れてやり方を理解してしまえば、とても簡単です。もし、簡単に管理をしたかったら、二季なり性ラズベリーの簡単栽培の項目を参考に、裏技を試してみるのも良いでしょう。