ナラ材は身近な家具にもよく使われており、詳しくは知らなくても、名前だけは聞いたことがあるという人も多いでしょう。「ナラ」とは、どのような樹木で、材木にしたときにどのような特徴があるのか、ナラ材の魅力を詳しく紹介します。

ナラ材は、ブナ科コナラ属に属する広葉樹から得られる木材の総称です。ナラの木は高さ20〜30メートルに成長する落葉広葉樹で、樹皮は灰色がかった褐色をしています。葉は縁がギザギザしていて、秋に紅葉するのが特徴です。

日本では、主にナラ材としてミズナラが使用されており、樹齢500年から1000年にもなる高い生命力を持つ樹木として知られています。

ナラの生育地域は非常に広く、日本国内では北海道から九州まで全土で見られる身近な樹木です。日本だけでなく、中国やインド、タイなどのアジアから、ロシア、ヨーロッパまで北半球の広い地域に分布しています。ナラの木は、特に寒冷地での生育に適しており、国内では北海道産のナラ材が品質の高さで評価されています。

ナラ材は、主に次のような製品の材料に使用されています。

・家具
・フローリング
・船舶
・楽器
・ウイスキー樽

ナラ材の堅い木質と耐久性の高さから、家具やフローリングの素材として重宝されています。また、木材の中でも安定性が非常に高く、楽器の部材にもよく使われます。特に日本のナラ材は耐水性に優れ、独特の香りを持つのが特徴です。このため、ウイスキーに芳醇な風味を与える樽材として重要な役割を果たしています。

日本ではナラ材と言った場合、ほとんどの場合、ミズナラを指します。ナラ材は英語で「オーク」と呼ばれますが、海外では特に日本産のものを「ジャパニーズオーク」として区別しています。このため、カタログなどで「オーク材」と「ナラ材」が書き分けられている場合は、それぞれ質感や特徴が異なることがあり、注意が必要です。

ナラ材には次のような特徴やメリットがあります。高級木材として知られるナラ材の優れた特徴やメリットなどを紹介しますので、家具や内装材を選ぶ際の参考にしてください。

・硬くて耐久性が高い
・美しい木目が特徴的
・加工がしやすい
・湿気に強く耐水性が高い
・経年変化で風合いが増す
・防虫効果が期待できる
・高級感があり多用途に使用可能

ナラ材は、ブナ科の広葉樹の中でも特に硬い性質の木材として知られており、日本の伝統的な建築材料としても重宝されてきました。ナラ材は、木材繊維の密度が高く、木部細胞の壁が厚いため、圧縮強度、衝撃吸収性、耐傷性に優れています。そうした特徴から、家具として使用した場合、日常的な使用による摩耗や傷に強い耐性を発揮するのが特徴です。

さらにナラ材は、日本の過酷な気候条件下でも形状を維持できる、優れた構造的特性もあります。このため、ナラ材は耐久性も高く、長期間使用する家具や建材に使用されます。

ナラ材の大きな魅力の一つは、美しい独特の木目です。丸太から切り出す方向によって、柾目（まさめ）と板目（いため）という2種類の木目が分けられますが、特に柾目には「虎斑（とらふ）」と呼ばれる独特の模様が現れることがあります。虎斑がある木材は高級家具の材料として使われるほど人気です。虎斑は他の部分とは異なって光沢があり、欧米でも虎斑は「シルバーグレイン」と呼ばれ、日本と同様に高く評価されます。

日本の職人たちに愛されてきた理由の一つが、この上品で落ち着いた木目です。ブナと比較してもより深みのある表情を持ち、インテリアとしての存在感を高めます。また、時間とともに深まる木目の色合いも、木材としての価値を高めています。

ナラ材は木繊維の方向が均一で、細胞間の結合が比較的緩やかなため、切削（せっさく）加工や研磨作業を容易に行えます。ナラ特有の材質の均一性によって精密な切削が可能で、加工時の繊維破壊が少ないのが特徴です。木材の含水率が適切な範囲にある場合、使用する工具への負担も少なく、表面を滑らかな状態に仕上げられます。

こうした木目の直線性と繊維強度のバランスによって、日本の家具職人たちから長く好まれてきました。また、木材の中でも釘やビスの保持力が高く、接着剤や塗料との相性が良いのも加工しやすい理由です。

ナラ材は優れた耐水性も特徴です。ナラ材の道管内部に形成されるチロースという閉塞構造が水分の侵入を物理的に防ぎます。さらに、木材の細胞壁に存在するリグニンとヘミセルロースの複合構造にも、水分子の浸透を抑制する働きがあります。

この分子レベルでの防水メカニズムによって、ナラ材は含水率の変動が少ないという特徴を持ち、寸法安定性を高めます。このため、ナラ材は日本の湿潤な気候でも、湿度の変化による伸縮を抑えて、木材の耐久性を長く保つのです。

ナラ材には、時間の経過とともに味わい深い色合いへと変化していくという特徴もあります。日本の伝統的な建築や家具に使用されてきた理由の一つが、こうした美しい経年変化です。新材時の明るい色から、徐々に深みのある飴色へと変化していき、長年使い続けるほど、独特の艶が出てきます。ブナなど他の木材と比較しても、経年による色合いの変化が大きな魅力です。

ナラ材は日本の在来種の木材の中でも、特に防虫効果の高い木材として知られています。それは木目の中に防虫効果のあるタンニンが豊富に含まれているからです。そのため防虫剤による処理を最小限に抑えられ、より自然な状態での使用が可能になります。こうした防虫性も耐久性の高い理由です。

ナラ材はその優美な木目と高級感から、さまざま用途で用いられます。ブナと比較すると、より重厚な印象があり、モダンなデザインから伝統的な和風まで、幅広いスタイルに対応が可能です。木目の美しさと耐久性を兼ね備えていることから、商業施設の内装材としてもよく使われます。

ナラ材家具を長く愛用するためには正しい使い方やメンテナンスの方法を知っておくことも大切です。ナラの木材ならではの魅力を生かしながら、長期間使い続けられるよう、適切なケアを怠らないようにしましょう。ナラ材家具を長持ちさせるポイントやメンテナンスの方法を紹介します。

ナラ材家具は、日本の住宅環境に合わせて配置場所を決めることがとても大切です。ナラ材は直射日光に当たると、その部分だけ色味が濃く変色していき、木目の見え方も変化していきます。リビングやダイニングでは、日光が直接入る窓際の設置は避け、カーテンやブラインドで日差しを遮るなどして紫外線対策を行ってください。

ナラ材は耐水性に優れていますが、湿度が高いところではカビが発生したり、変色や腐敗が起きたりするので設置は避けましょう。また、エアコンの風が直接当たる場所は乾燥してしまうので設置はおすすめしません。ナラ材家具を長持ちさせるには、直射日光や湿気を避けた場所に配置しましょう。

経年変化を楽しむためには、ナラ木材本来の風合いを生かせるよう、オイル塗装で手入れをすると良いでしょう。ナラ材はオイル塗装を施すことで、艶感を維持しつつ、時間とともにさらに深みのある色合いへと変化していきます。ナラ材は使い込むほどに味わいが出てくる木材なので、長い時間をかけて自分好みの色合いに仕上げましょう。

リビングテーブルや食器棚など、日常的に使用する家具に取り入れると、自然な経年変化を日々の生活の中で楽しめます。新品の頃から写真に収めておくと、変化の過程も思い出として残すことができます。

木材の美しさを保つには、定期的なケアが欠かせません。ナラ材の木目を生かすため、ワックスやオイルを塗布して、年に1回程度のメンテナンスをしましょう。また、日本の湿度変化に対応し、反りや乾燥を防ぐため、室内の湿度は40〜50%を目安に管理してください。加湿器を使うと乾燥対策になります。

日々のメンテナンスでは、ナラ材家具の表面を柔らかい布で優しく拭き、シミ防止のため、汚れがない状態をキープすることが大切です。必要に応じて専用クリーナーを使い、しっかりと汚れを落としましょう。

ナラ材のデメリットも理解しておくことも、家具選びではとても大切です。ナラ材には、次のようなデメリットもあります。

・価格が高い
・重量があるため扱いにくい
・湿気が多い環境では反りが生じやすい

ナラ材は、木材市場において高価格帯に位置しています。その主な理由は、大きく育つまでに100年以上の歳月を要するためです。また、家具や建材として使用できる良質な部分は木全体の一部だけなので、無駄になる部分も多く、これも価格上昇の要因となっています。さらに、近年のナラ枯れによる供給量の減少や、国内外での需要の高まりも価格に影響を与えているようです。

ナラ材は高密度な木材として知られ、一般的な木材と比べて重量があり、運搬や施工にも手間や時間がかかります。硬い性質を持っているため、細かい加工作業が難しく、施工時には特別な準備や手順が必要です。例えば、釘を打つ際には下穴を開ける必要があり、作業工程が増えてしまいます。

ナラ材は、硬くて耐久性が高い反面、伸縮性に乏しいという性質があります。そのため、湿度変化による膨張や収縮を繰り返すことで、反りや割れが生じやすいのが欠点です。ただ、他の木材と比較すると伸縮する幅は比較的小さいようです。

日本の伝統的な木材であるナラ材と、世界各地で使用されているオーク材は、同じ仲間の樹木が原料ですが、特徴がやや異なります。よく確認せずに購入して、ナラ材だと思っていたのに、オーク材だったということもあるようです。ナラ材とオーク材にはどのような違いがあるのかを紹介します。

ナラ材を英語で言うと、「ジャパニーズオーク」となり、オーク材とは区別されます。日本で育つナラの木から採取される木材で、主にミズナラを指し、緻密な木目が特徴的です。和の空間によく合う木材として知られており、ブナ科の木を原料にした木材の中でも特に人気があります。他の木材と比べて、やや赤みがかった色調を持ち、時間とともに深みのある色に変化していきます。

ヨーロッパで育つオークが原料となっている「ヨーロッパオーク」は、日本のナラ材と比べてより大きな木目のパターンを持ちます。ブナ科の中でも高級材として知られ、重厚な雰囲気を醸し出します。日本のナラ材が持つ繊細さとは異なり、力強い印象を与える木目が特徴的で、色調は黄褐色から茶褐色まで幅広く、木材としての硬さも日本産よりやや高めです。

「ホワイトオーク」はナラ材とは原産地が異なり、北米産の木材で、日本のナラ材よりも明るい色調が特徴です。木目のパターンは比較的穏やかで、ブナに似た落ち着きのある表情をしています。日本のナラ材と比べると木目パターンは均一で、現代的なデザインの家具や内装材として人気があります。

「レッドオーク」は、特徴的な赤みを帯びた色調が特徴で日本のナラ材と比べると、木目パターンは大きめです。ブナ科の中でも比較的手頃な価格帯で、加工もしやすいのですが耐久性は日本のナラ材に劣ります。

ナラ材とタモ材は、日本では家具の材料として人気の高い木材です。「タモ材」は、ナラ材より淡い色調と細かい木目が特徴で、よりモダンな印象を与えます。ブナ科のナラ材が持つ重厚感に対し、タモ材は軽やかな印象です。木材としての硬さはナラ材の方が上回りますが、タモ材も十分な強度を持っています。

日本で育まれたナラ材を使用したおすすめの家具を5つ紹介します。いずれもナラ材の特徴を生かしつつ、現代的なデザインと機能性を融合させた家具職人たちの技が光る逸品ばかり。ナラ材家具の購入を検討している人はぜひ参考にしてください。

北海道産のナラ材を使用した重厚感あふれるローこたつです。天然木の美しい木目を活かしたオイル仕上げで、使うほど味わいが深まります。薄型ヒーターなので足元はすっきり広々とし、リビングテーブルとしても活躍します。高級感と機能性を兼ね備えた逸品で、インテリアに上質な温もりを添えるおすすめの商品です。

北海道産ミズナラ材の天板を生かしたスタイリッシュなブックシェルフです。ブラック塗装を施しているため、洗練された雰囲気。棚は可動タイプなので、収納したい文庫本やコミックに合わせてアレンジできます。木材の自然な風合いと現代的なデザインが融合し、書斎からリビングまでさまざまな空間に馴染む、インテリアのアクセントとなる逸品です。

北海道産のナラ材と道産牛革を使用した、旭川の家具職人による軽量スツールです。玄関や作業スペースで活躍し、持ち運びも簡単にできます。SDGsに配慮した日本の伝統技術が光る一品で、軽くて使いやすく、肌触りも良好です。来客用チェアやキッチン作業椅子としても重宝する、機能性の良いスツールです。

ナラ材の温もりを感じる、ユニークな半円形のリビングダイニングテーブル。幅89cmのコンパクトサイズで、壁際につけて使うのはもちろん、壁から離して円卓としても使えます。子どもにも安心な優しい曲線デザインも特徴で、虎斑（とらふ）模様が木の魅力を引き立てます。新進気鋭の建築オフィス「トラフ建築設計事務所」と日本の老舗家具メーカー「飛騨産業」との協同で生まれた逸品です。

北海道産ミズナラ材の天板が特徴の、おしゃれなワークデスクです。脚部のブラック塗装がモダンな印象を与え、ホームオフィスに置くと自由でリラックスした空間が生まれます。個性的で存在感のある日本製デスクで、木材の風合いと現代的なスタイルが見事に調和し、仕事への意欲を高めてくれます。

ナラ材は、優れた耐久性と美しい木目を持つ日本の代表的な木材の一つです。ブナ科の広葉樹として、家具からウイスキー樽まで幅広い用途で活用されており、私たちの生活に深く根ざしています。ナラ材家具選びの際は、その特徴や用途を十分に理解し、目的に合った商品を選びましょう。