「こんなのが欲しかった！」後片付けに驚きと楽しさをたかが水切りされど水切り

美しさと機能性を両立させる
「用の美」

「お鍋や包丁などの調理器具から水切りまで、全てに言えますが、『機能的』なのは大前提 で、それに加えて『美しさ』がなければ絶対に売れません！」と語る朝香。これまで調理用品の分野で数々のヒット商品を生み出した彼女は「『用の美』が大事です」と断言します。

世界的にも知られる金属加工の街・燕三条のものづくりの技術を擁した下村企販株式会社とタッグを組み、数々の水切りを手掛けてきました。一つの商品を作るには、本体の骨組み、溶接、板金の加工、塗装など、このエリアにあるいくつもの専門工場が関わることでようやく完成します。

特に朝香のこだわりで興味深かったのが、「シンク上水切り」の脚の部分。四角柱のステンレスのパイプを『コ』の字に曲げた2本脚の先端部のデザインです。

「パイプなので先端を閉じないと空洞が見えて見栄えが悪いんです。よくあるのは、先端に黒いゴムを被せる方法。でも黒は絶対に嫌だったので、ステンレスに馴染むようなシルバーの樹脂を使ってもらいました」

細部までこだわり抜かれた美意識と、それを叶える技術が集結して完成する水切りは、キッチンを明るく、洗練された雰囲気に見せます。

言語化できない悩みが解消され、
驚きにつながる

現在、人気の水切りの多くが奥行き58cmというサイズ。下村企販の高畑さんは、「シンクの奥行きは時代によって変化するので、その状況を製品に細かく反映させています」と教えてくれました。

ディノスが58cmを提案した時、世の中のスタンダードは45cmで、58cmサイズはほとんど流通していなかったそう。

朝香によると、「58cmにすればシンクの手前から奥まで『渡す』ことによって45cmよりさらにスペースを活用できます。住宅事情にも詳しい下村企販さんとだからできた商品で、『渡す』という発想はそれまでほとんどなかったはずです！」

「シンクに渡せる水切り」だけでなく、その後に発売された「シンク上水切り」も大好評。高畑さんは、「便利で使いやすいというお声の他、『洗い物が楽しくなった』という口コミを見た時は本当に嬉しかった」と顔をほころばせます。

まさかの空間活用術！ユーザー自身も気づかなかったニーズを掘り起こされ、「こんなのが欲しかった！」という驚き、喜びにつながっています。

「言語化できない悩みってすごく多いと思うんですよ。水切りの置き場所ないけど、シンクの上に置けたらいいな〜、なんて具体的に考えられる人はいないですものね（笑）」 と朝香。言葉になる前のモヤモヤを解消できる商品を作れるかが、開発者としての腕の見せ所です。

料理をもっと楽しく、
ストレスフリーに

「水切りは、キッチンの主役ではありません」と高畑さん。「でも、実は使い勝手の良い水切りがあると、小さなストレスがたくさん解消されると思います。お手入れしやすい設計で水アカも気にならなくなりますし、洗い物が増えても水切りにたくさん入るから安心と思えば、料理へのハードルも下がりますよね」

「料理がしたくない時の理由って、後片付けが面倒、は大きいですからね」と朝香も頷きます。「食は、生きるための基本的な営み。それが苦でなくなれば、心も体も健康になれる。大袈裟かもしれないけど、それくらい言いたいです！」

そういえば、最近SNSで「#水切りかごのない生活」という投稿が流行っているとか!? キッチンをすっきり見せるため、使う食器も最小限にして、洗ったらティータオルの上に伏せていくそう。「でも絶対みんな水切りに戻ってきますよ（笑）」と朝香は話します。

確かに、ティータオルがなかなか乾かなかったり、たくさんの食器が使えなかったりと、制約もありそうです。そして朝香が予感した通り、「#水切りかごのない生活は無理だった」という投稿もじわじわ増殖中だとか。使い勝手の良い水切りを探すユーザーに嬉しい驚きとなる商品を届けられるよう、これからも探究は続きます。