自分の手で作られる"もの"
藤田 昌宏さん
家具職人
自分の手で作られる"もの"
私がものづくりに初めて触れたのは小学生の頃だった。木製バットが欲しかったが、高価な既製品は買えず、代わりにホームセンターでバットの太さ程度の丸棒を親に買ってもらい、それをバットの形になるようにヤスリで削り続けた。これがものづくりを好きになったきっかけであったように思う。歳を重ね、その関心は建築へと発展、建築の設計を学べる大学へ入学した。しかし、学ぶ中でどこかしっくりこない自分がいた。その根源は、建築が設計をした人ではなく、大工・職人さんの手によって作られることであった。私は、丸棒から削り出した木製バットのように、自身の手によって生み出されるものづくりがしたいことに気がつき、家具制作と店舗内装を自分の手で行える会社へ就職。人の手に触れられる家具は少しの違いで、印象や使い心地が大きく変化する。誰も気が付かないようなこだわりを詰め込むことが楽しく、私の手で作った"もの"が、誰かの手に触れ、使われ続けることが一番の喜びであり、その人のくらしが、その"もの"によって少しでも豊かになると嬉しい。